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2章 魔法使いとストッカー

02 乙女ゲームなの?

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「そなたは、なぜ下位貴族を無下にする?」
赤髪の美男子。。。多分あれは第二王子かな?エド様の目にそっくりだ。

「殿下。無下にはしておりません。ただ、常識をお教えしただけです」
おっとりした雰囲気のご令嬢は、ツンとするでもなく怒った風でもなく淡々と答えている。

。。。悪役?令嬢ってわけではないのね。前世の小説の読み過ぎだったかな。

私は、ちょこっとだけ耳をダンボにしながら野次馬に混じる。

「ジェシー様、急ぎましょう」
ロッシーニはこそっと耳打ちする。

「ちょっとだけ。。。ね?」
ロッシーニは呆れながらも時計を確認した。

「少しだけですよ」

了解と、私はニマニマと王子とご令嬢のバトルを見学する。

「ひどい。。。ちょっとぶつかっただけなのに。。。殿下と仲がいいのを嫉妬してるんだわ」
シクシクと王子の腕に寄り添うピンクちゃん。

「エルメダ、オーロラが泣いているではないか。許してやれ。これだからプライドが高い女は。。。そなたには心がないのか?いじめなど趣味が悪いぞ」
王子はご令嬢のエルメダ様を睨みつけ、ピンクちゃんを背中に隠す。

「許すも何も。。。始めからその事については触れておりません。しかも、そちらのオーロラ様はぶつかった際は、『失礼』と言っただけです。私は、廊下を走るのはいかがなものかと申し上げただけです」

野次馬たちはコソコソと『失礼だけなんて。。。』『いじめなの?』『見て、寄り添っているわ』と話している。

「そなたは非を認めないのだな。。。」
王子は一歩前に進みエルメダ様に対峙する。

「は~。とんだ茶番ですわね。私には殿下とオーロラ様の事はどうでもよろしいのですが?オーロラ様、今後は廊下を走らないように。では」
エルメダ様はそう言うと、一礼してスタスタとその場を去って行った。側近らしき人達も続く。

「オーロラ。泣くな。エルメダには後で言っておく」
王子はよしよしと、人目をはばからず抱き合い頭を撫でる。

「殿下。。。もういいのです。私がぶつかったばっかりに。。。私が邪魔なのですよ。。。」
ピンクちゃん事、オーロラ様も殿下の腰に手を回し、二人は抱き合う。

。。。なんだこれ?

野次馬達も入学式を思い出したのかガヤガヤと足早に解散していった。

。。。

「もういいですね。我々も行きますよ」
ロッシーニは私の手を取り、講堂へエスコートする。私は王子とピンクちゃんを見ながら手を引かれて行った。

「ミーナ。あれは日常の出来事?」

「う~ん。日常ではございませんが、月一ぐらいで見かけます。私が気がついたのは去年の3学期頃からです。その前からあったようですよ」

。。。月一って。ヤバくない? みんなも普通に見学していたし。。。ちょっとしたお芝居?感覚?

「すごいわね。。。あのエルメダ様って確か。。。」

「はい。ロスト公爵領のお嬢様です。第二王子様の婚約者候補です。私達と同級生ですよ。確か、特進科だったかと」

「そう。。。あのピンクちゃん。。。オーロラ?様は?」

「ふふふ。ピンクちゃんって。あの方は男爵令嬢で学年は1つ上です。文芸科ですよ」

ふ~ん。そうなんだ。

「確か、第二王子様は3学年よね?優秀なの?」

「ロッシーニ様の方がお詳しいのでは?同学年ですよね?」
ミーナはロッシーニに話を振る。

「あぁ。。。ここでは人目がありますので。帰りの馬車でお話しします。それより、入学式が始まります。お席について下さい」

私とミーナは魔法科クラスの席へ行く。まだチラホラとクラスメイトからの視線が気になるな。

「ミーナ。今日って入学式が終わったら授業があるのかしら?」

「予定では、オリエーテーションでしたよ。その際にクラスメイトとも仲良くなれたらいいですね。恐らくですが、年間行事の説明や今後の授業の説明があるのでは?」

「そうよね~。な~んだ」
小声で話していたが、横のご令嬢がクスクスと笑っている。

「ふふふ。失礼しました。話し声が聞こえてしまって。。。私はメリッサ。サリー伯爵家です。よろしくお願い致します」

「よろしくお願いします。私は、」

「ジェシカ様ね。先ほど教室での自己紹介を覚えています。私はミーナ様の反対側の横の席にいたんです。魔法科クラスは女性が少ないから仲良くして頂けるとうれしいわ」

「そうなのですね、メリッサ様」

「それより、あなた21領主のご令嬢ですよね?随分と側近と距離が近いのですね?」

ん?これはどっちだ?『近いから下に見る?』『近いから親近感がわく?』

「。。。ほほほ。そうですか?メリッサ様の側近はどなたかしら?」
私は様子見したいので、質問を質問で返す。

「あぁ、同じクラスにはいないのです。同学年に2人と3年に1人、1年に2人よ。ローテンションで3人付く感じかしら」

「まぁ!分家が多いとうらやましいですわ。私は分家ではございませんが、親戚筋のミーナと、分家が1人、使用人貴族が1人です」

「そうなんですね。ミーナ様の事は存じ上げています。1学年で一緒でしたの。とても真面目な印象を受けています。よろしくね」
と、メリッサ様はミーナにもニコリと目配せした。

「はい。よろしくお願いします」
ミーナも笑顔だ。

これはいい人認定でいいのかな?

すると入学式が始まった。学校長が話し始めたので一同は黙って前を見る。

う~ん。こんなに早く他の21領主達と接触してしまったな。。。しかも同じ魔法科なんて。。。

いい人っぽいけど、どうなんだろう。ミーナは警戒していないし。。。今日は様子を見て、馬車で答え合わせしよう。そうしよう。

式典が終わるとぞろぞろと教室へ戻る。ちょうど中休みだったので、中庭へ周って教室へ帰る事にした。

「ジェシカ様!私もご一緒してもよろしくて?」
先ほどのメリッサ様が後を追いかけてきた。

「ええ」
メリッサ様は私の横に来て並んで歩く。側近達は後ろに控えている。ロッシーニとメリッサ様の代表の側近が何やら話している。

「私は学校が初めてだから、ミーナが中庭を通ったらどうかと提案してくれて」

「そうなんですね。中庭の大きなチェリーの木がきれいですわよ。今は花も見頃ですし」

「うわ~。本当にきれいですね」
渡り廊下を抜けると目の前に大きな木が見えた。中庭は芝生で覆われていて、遊歩道が何本か敷かれている。ベンチもいくつかあり、花を見るのにちょうどいい。

「そうね。春の風物詩ね。昼食をココで取る方もいらっしゃるのよ」

「そうなんですね。私もしてみたいわ」

『ゴホン』とロッシーニの咳払いが聞こえる。。。やっちゃった?

「ふふふ。私達は食堂の方がいいですよ。。。私もしてみたいのですが、こればかりは。。。ね?」
と、メリッサ様がフォローしてくれた。

「おほほほほ。失礼しました。何せ田舎者で。不調法でしたね」

「お気になさらず。私も想像の中では中庭でお茶会をしていますので。それぐらい美しいですもの。無理もございませんわ」

メリッサ様は教室までの間、校舎の案内をしてくれた。トイレや移動教室、職員塔など。

「この度は、ありがとうございました。とても参考になりましたわ」

「いえ。道中ですので。伯爵の私が言うのは何なんですが、お友達になってくれるとうれしいですわ。ジェシカ様はお優しい性格のようですので」

「ええ。私も。よろしくお願いします」
私はニッコリとメリッサ様へ返す。

私達は教室に着くとミーナ以外の側近達はそれぞれの教室へと向かって行った。

「は~。疲れた。。。あっ!ジェシカ様、ごめんなさいね。一応、初対面のご令嬢でしかも公爵様でしょう?側近の手前ちょっと気取ってたのよ。。。これが私。これじゃぁ友達になれないかしら?」
メリッサ様はいきなり態度が崩れた。両手でお手上げポーズをとっている。

私はいきなりだったのでキョトンとしてしまった。

「あ~。なしか。。。ゴホン。ごめんなさい。忘れて下さい。これからはクラスメイトとしてよろしくお願いします」
メリッサは一礼してさっさと席に戻ろうとした。

「いやいやいや、メリッサ様。いいのよ。ちょっとびっくりしただけで。私もフランクな方が楽でいいわ」

次はメリッサ様がキョトンとした。

「え~!いいの?大概の令嬢は、素を見せたらこれ以上仲良くならないのに。しかも私はあなたより下位よ?いいの?」

「ええ、タメ口ぐらいは問題ないわ。公式の場でちゃんとしてくれれば。。。学校では気にしない。私も楽な方がいいし」

「よかった~。ミーナ様と話しているのを聞いて、これは待ちに待ったご令嬢なのでは?と思ったのよ。良かった~。予想が当たって」
メリッサ様は『じゃぁ、また』と席に戻って行った。

「ジェシー様。。。ロッシーニ様がピクピクしそうですね。ふふふ」
ミーナはムフムフと笑っている。

「そうね。。。同じようなご令嬢が居たわね。ロッシーニ的には私が増えた感じになって機嫌が悪くなるかもね?ふふふ」


気さくなメリッサ様、ゲット~!

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