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1章 ロンテーヌ兄妹
日記 私の1日
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ふわぁ~。
雪が降り積もる窓の外を見る。ロンテーヌ領はまだまだ春の足音は聞こえない。
今日から王都屋敷へ移る。昨日は一族の墓参りをし少し領を離れる事を報告した。
来月からは学校が始まる。私の休学は異例の為、入学1週間前に学力テストがある。
「お嬢様、おはようございます。今日から王都ですね。明日から予定がびっしり詰まっていますよ。がんばって参りましょう!」
朝からテンションが高いこの侍女はユーリ。さっぱりした性格で、特技はナイフ投げ。すごくない?
「おはよう。朝から元気ね。。。ちょっとだけ声を小さくしてくれる?」
「はい!」
。。。だから声が。。。もう言ってもしょうがないか。
私は身なりを整え外出用の服に着替え部屋を出る。私達は朝食を取らず、朝一番に王都へ出発予定だ。
「みんなおはよう。準備はいいかしら?」
エントランスには、ロダン、ケイト、エリ、ユーリ、リット、ランド、ヨハンが揃っていた。
「お嬢様、学校がんばって下さい。お古で申し訳ないがこれを」
ロック爺が小さな古い本をくれた。
「これは、私のひい爺様にもらった古代語で書かれた魔法集です。聡明なお嬢様なら理解できるかもしれません。私や息子には難しすぎて。。。ぜひ使ってやって下さい」
「ロック爺!こんな貴重な物。。。ありがとう。大切にするわ。体を大事にね。無理はダメよ」
ロック爺と抱擁を交わしお別れを言う。
「お嬢様。これをお持ち下さい。日持ちするので時折食べて領を思い出して下さい」
ジャックは瓶詰めのピンクの飴をくれた。
「あら!これはもしかして西の森のベリーの?」
「はい。春の間にエキスを搾って取って作っておいたんです」
私はお礼を言い、ジャックとも握手を交わしお別れをした。
「お嬢様。私からはこれを。お嬢様には気休め程度かもしれませんが。。。万一を考えて」
マーサは例の水晶が3つも付いた髪飾りをプレゼントしてくれた。
「ありがとう。。。マーサの努力の結晶ね。とてもうれしいわ」
マーサは別れの抱擁している時に耳元でコソッと話す。
「ちなみに風の盾魔法と水の盾魔法2つです」
「では、出発します」
王都行きの一行は馬車3台にそれぞれ乗り込み、領騎士10名と魔法使い2名が護衛につく。
「「「「いってらっしゃいませ」」」」
馬車に乗り込むと早速ランドは私、ロダン、ケイト、リットを王都へ転移させた。
「お嬢様、では、私は残りを転移させます」
ランドはそう言うと目の前から消えた。
「ロダン、ここって。。。本当に転移したの?まだ馬車の中よ?」
「はい。形だけでも移動してきた体を取りました。今は使用人が増えていますので。王都屋敷の玄関前に空の馬車を用意させました」
「へ~。では、次が来るから早く出ないといけないのかしら?」
「いえ。あと10分程はこのままでお願いいたします」
ロダンはポケットから時計を取り出し時間を確認している。
「わかったわ。でも、領側の馬車は?空で問題ないのかしら?護衛たちは不振がらない?」
「問題ございません。手間はかかりますが、ランドが夕方に再度馬車へ皆を転移をさせます。休憩時などはヨハンが残りますのでどうにか対応させます。心配いりませんよ」
「ま~、そうね。手間だけど、ずっと乗ってるよりはいいのか」
「そうですよ。各地で宿泊するにしても、宿の部屋へ入ったらこちらの王都屋敷へ戻ります。ランド様はお忙しいでしょうが、警備上でもこちらの方が安全ですしね。10日間の辛抱です」
「そうね」
「お嬢様!」
と、突然馬車のドアが開きミランが外へ促す。
「ようこそおいで下さいました。直ぐに朝食の用意をいたします。カイ様がお待ちですよ」
ニコニコ顔のミランの手に捉まり、私は外へ出る。
「ジェシー、よく来た。長旅ご苦労様」
お兄様も笑顔で出迎えてくれた。
ずらっと並んだ使用人達と領騎士達。真ん中には家令のクリス夫妻が礼をしている。
「お兄様。お久しぶりです。クリスとスーザンも。これからよろしくお願いしますね」
「では、朝食を取ろうか?まだだろう?」
「ええ」
馬車は他にも2台あり、その中から王都行きのメンバーが出て来た。荷物もちゃんと乗っている。強いて言えば、護衛がいないんだよね。。。
「お兄様。護衛がいなくていいのかしら?」
と、チラッと馬車を見てこそこそ話をお兄様にする。
「あぁ。。。門を抜けた後、騎士は馬屋ヘ向かった事にしている。。。何か言われたら『そうなの?』とかすっとぼければいい」
まぁ、パフォーマンスだしこんなもんでいいのか。
朝食の席にはクリス夫妻も同席した。
「お嬢様。お疲れじゃろう。今日は夕方まで休んで下され。明日から色々と忙しいので、体を休めて下され」
クリスはニコニコと話を振ってくれた。
「ありがとう。明日からの予定を聞いても?」
「それは、イーグルが後で部屋に参りますのでその時に。それより、お嬢様のお顔が晴れやかで安心いたしましたわ」
スーザンは明日、お爺様の1周忌と両親の2周忌で気が沈んでいないか心配だったそうだ。
「ええ。おかげさまで。領で十分静養できました。心の方ももう大丈夫よ」
『それはようございました』と、皆がニコニコ顔になっている。
「ジェシー。後でアンジェが来る。明日も一緒に参列してくれるんだ。婚約式までまだあるが、未来の家族として一緒に行きたいそうだ。いいか?」
「ええ。私もお会いするのが楽しみです。実はアンジェ様にはプレゼントがあるんです。黄色がお好きとの事なので、黄色のスカーフを作って参りました。お揃いなのでお兄様にも渡しますね」
「スカーフ?」
「テーヌ服のスカーフですよ。王都では難しいでしょうが、いずれ領に来た時に必要でしょう?」
「そうか。ありがとう。ジェシーなりの歓迎か。アンジェも喜ぶよ」
「そう言っていただけるとうれしいです。本来なら宝石などでしょうけど。。。アンジェ様は私達寄りでしょう?私なりの最上級の気持ちを表しました」
「アンジェはわかってくれるよ。喜ぶ顔が眼に浮かぶ」
「そう言えば~聞きましたよ~。皆の前で熱烈な愛の言葉を捧げたそうじゃないですか?」
ニヤニヤしながらお兄様を揶揄ってみる。
「。。。俺の事はいいんだよ。早く食べろ。今日は疲れてるんだろ?」
お兄様は顔を赤くしてパンを頬張り出した。
「お嬢様、それはもう物語の一節のような甘い口説き文句でしたよ。私も若い頃を思い出しました」
「へ~。スーザンはどんな言葉を戴いたの?」
『ごほん』とクリスが慌てて咳払いをしている。
「内緒です。特別の愛の言葉ですから。。。これは、ロンテーヌに嫁ぐ者の特権です」
スーザンは両手を胸の前で組んで、昔を思い出している。
「え~。いいな~。私もロンテーヌ一族なのに。。。」
「お嬢様も恋愛結婚が出来るといいですね。学校でがんばって下さい!」
「ええ。ステキな方を探してみせるわ!」
私は決意を新たに最後のスープを飲み干した。
屋敷の部屋は領の部屋と同じような雰囲気になってる。お兄様が本格的に家具などを入れてくれたみたいだ。
「スーザンが選んでくれたのかしら?趣味がいいわね」
「はい。そのようです」
ケイトは返事をしながら部屋の隅々まで点検をしているエリとユーリを見ている。
コンコンコン。
入って来たのはイーグルとミランだ。
「お嬢様におかれましては、長旅ご苦労様でした。これより王都での雑事はイーグルにおまかせ下さいませ」
私は使用人だが、話をじっくり聞きたいのでソファーに座るように促す。
「では、今後の日程です。明日は朝10時より大聖堂にて大旦那様の1周忌を執り行います。この式を終えたら喪が明けたことになります。ですので、学校へ行く前に買い物をお願いします。ドレスを5着ほど新調して下さい。あとは、お茶会が2件。これは親戚筋です」
「お茶会は出なくちゃダメ?」
「はい。ご気分が乗らないのは重々承知していますが、我が領の分家と今は亡き大奥様の親戚が集まる茶会ですので。お願いいたします。あとは、ロゼ領の領主様からお招きがございます」
「ロゼ領主?なぜ?」
「領主様から直々ですし。。。カイ様の事もありますので無下にできません。何をお考えかは存じ上げません。申し訳ございません」
「。。。ミラン。大領地は子飼いがいるのよね?私の事がバレてない?」
「わかりません。刺客や偵察には目を見張らせていますが。。。」
『申し訳ございません』と、二人は頭を下げる。
「いいのよ。。。そう。では、それまでにロゼ領について勉強したいわ。詳しい者はいる?あぁ、アンジェ様以外ね」
「はい。私が。これでも元外交官ですので。多少は知識が他よりはあるかと」
「わかったわ。イーグルお願いね。内容は結構深く知りたいわ。産業や地形など」
『かしこまりました』とイーグルはメモをする。
「あとは親戚ね?確か、お母様の方は結局爵位を返上したのよね?」
「そうですね。1億Dを集められなかったようですよ。それに悪評な領を継いでもメリットがありませんからね」
「そう。。。今はどうなったの?その領」
「はい。王が元王族を引っ張り上げました。先先代の王の弟君の家系です。そちらの一族は、現国王の粛清の際に、何も罪を犯していなかったそうです。現在は、ロックウェル伯爵領改、スワニー公爵領になりました。これで我が国は4公爵になります。家魔法は火です」
「そうなんだ。。。元ロックウェル一族はどんな感じ?」
「今は分家も含めて男爵に全て降下しました。家名もロックウェルを名乗りたくないとウェルネスと改めています。大丈夫ですよ。この一族は元々横柄な領主一族が嫌だったそうなので、今は遺恨はないかと。アークが調査済みです」
「そう。それなら良かった。逆恨みは怖いからね。ふふふ」
ピキッ!
イーグルもミランも固まってしまった。。。しまった。
「冗談よ。。。ちょっとキツかったわね。ごめんなさい」
「い、いえ。冗談が言えるほどになって良かったです」
イーグルは恐縮してしまっている。
「お、お嬢様。親戚達とのお茶会ですが学校での側近の紹介と、一族以外の親戚のミーナ嬢が来る予定です。学校で過ごす者達との交流会と考えていただければと思います」
ミランはさっと話を変えてくれた。ナイス。
「そう。そういう事なら楽しみだわ」
それから私は学校が始まる10日前まで、お茶会をしたり、ドレスを作りに行ったり、王都のお店に顔を出したり、たまには劇を観に行ったりと、王都生活をスタートさせた。
ちなみに、お爺様の1周忌で向かった大聖堂ではジェミニー大司教様は姿を現さなかった。ちゃんと保証内容を守ってくれているみたい。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ見直しちゃった。
雪が降り積もる窓の外を見る。ロンテーヌ領はまだまだ春の足音は聞こえない。
今日から王都屋敷へ移る。昨日は一族の墓参りをし少し領を離れる事を報告した。
来月からは学校が始まる。私の休学は異例の為、入学1週間前に学力テストがある。
「お嬢様、おはようございます。今日から王都ですね。明日から予定がびっしり詰まっていますよ。がんばって参りましょう!」
朝からテンションが高いこの侍女はユーリ。さっぱりした性格で、特技はナイフ投げ。すごくない?
「おはよう。朝から元気ね。。。ちょっとだけ声を小さくしてくれる?」
「はい!」
。。。だから声が。。。もう言ってもしょうがないか。
私は身なりを整え外出用の服に着替え部屋を出る。私達は朝食を取らず、朝一番に王都へ出発予定だ。
「みんなおはよう。準備はいいかしら?」
エントランスには、ロダン、ケイト、エリ、ユーリ、リット、ランド、ヨハンが揃っていた。
「お嬢様、学校がんばって下さい。お古で申し訳ないがこれを」
ロック爺が小さな古い本をくれた。
「これは、私のひい爺様にもらった古代語で書かれた魔法集です。聡明なお嬢様なら理解できるかもしれません。私や息子には難しすぎて。。。ぜひ使ってやって下さい」
「ロック爺!こんな貴重な物。。。ありがとう。大切にするわ。体を大事にね。無理はダメよ」
ロック爺と抱擁を交わしお別れを言う。
「お嬢様。これをお持ち下さい。日持ちするので時折食べて領を思い出して下さい」
ジャックは瓶詰めのピンクの飴をくれた。
「あら!これはもしかして西の森のベリーの?」
「はい。春の間にエキスを搾って取って作っておいたんです」
私はお礼を言い、ジャックとも握手を交わしお別れをした。
「お嬢様。私からはこれを。お嬢様には気休め程度かもしれませんが。。。万一を考えて」
マーサは例の水晶が3つも付いた髪飾りをプレゼントしてくれた。
「ありがとう。。。マーサの努力の結晶ね。とてもうれしいわ」
マーサは別れの抱擁している時に耳元でコソッと話す。
「ちなみに風の盾魔法と水の盾魔法2つです」
「では、出発します」
王都行きの一行は馬車3台にそれぞれ乗り込み、領騎士10名と魔法使い2名が護衛につく。
「「「「いってらっしゃいませ」」」」
馬車に乗り込むと早速ランドは私、ロダン、ケイト、リットを王都へ転移させた。
「お嬢様、では、私は残りを転移させます」
ランドはそう言うと目の前から消えた。
「ロダン、ここって。。。本当に転移したの?まだ馬車の中よ?」
「はい。形だけでも移動してきた体を取りました。今は使用人が増えていますので。王都屋敷の玄関前に空の馬車を用意させました」
「へ~。では、次が来るから早く出ないといけないのかしら?」
「いえ。あと10分程はこのままでお願いいたします」
ロダンはポケットから時計を取り出し時間を確認している。
「わかったわ。でも、領側の馬車は?空で問題ないのかしら?護衛たちは不振がらない?」
「問題ございません。手間はかかりますが、ランドが夕方に再度馬車へ皆を転移をさせます。休憩時などはヨハンが残りますのでどうにか対応させます。心配いりませんよ」
「ま~、そうね。手間だけど、ずっと乗ってるよりはいいのか」
「そうですよ。各地で宿泊するにしても、宿の部屋へ入ったらこちらの王都屋敷へ戻ります。ランド様はお忙しいでしょうが、警備上でもこちらの方が安全ですしね。10日間の辛抱です」
「そうね」
「お嬢様!」
と、突然馬車のドアが開きミランが外へ促す。
「ようこそおいで下さいました。直ぐに朝食の用意をいたします。カイ様がお待ちですよ」
ニコニコ顔のミランの手に捉まり、私は外へ出る。
「ジェシー、よく来た。長旅ご苦労様」
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ずらっと並んだ使用人達と領騎士達。真ん中には家令のクリス夫妻が礼をしている。
「お兄様。お久しぶりです。クリスとスーザンも。これからよろしくお願いしますね」
「では、朝食を取ろうか?まだだろう?」
「ええ」
馬車は他にも2台あり、その中から王都行きのメンバーが出て来た。荷物もちゃんと乗っている。強いて言えば、護衛がいないんだよね。。。
「お兄様。護衛がいなくていいのかしら?」
と、チラッと馬車を見てこそこそ話をお兄様にする。
「あぁ。。。門を抜けた後、騎士は馬屋ヘ向かった事にしている。。。何か言われたら『そうなの?』とかすっとぼければいい」
まぁ、パフォーマンスだしこんなもんでいいのか。
朝食の席にはクリス夫妻も同席した。
「お嬢様。お疲れじゃろう。今日は夕方まで休んで下され。明日から色々と忙しいので、体を休めて下され」
クリスはニコニコと話を振ってくれた。
「ありがとう。明日からの予定を聞いても?」
「それは、イーグルが後で部屋に参りますのでその時に。それより、お嬢様のお顔が晴れやかで安心いたしましたわ」
スーザンは明日、お爺様の1周忌と両親の2周忌で気が沈んでいないか心配だったそうだ。
「ええ。おかげさまで。領で十分静養できました。心の方ももう大丈夫よ」
『それはようございました』と、皆がニコニコ顔になっている。
「ジェシー。後でアンジェが来る。明日も一緒に参列してくれるんだ。婚約式までまだあるが、未来の家族として一緒に行きたいそうだ。いいか?」
「ええ。私もお会いするのが楽しみです。実はアンジェ様にはプレゼントがあるんです。黄色がお好きとの事なので、黄色のスカーフを作って参りました。お揃いなのでお兄様にも渡しますね」
「スカーフ?」
「テーヌ服のスカーフですよ。王都では難しいでしょうが、いずれ領に来た時に必要でしょう?」
「そうか。ありがとう。ジェシーなりの歓迎か。アンジェも喜ぶよ」
「そう言っていただけるとうれしいです。本来なら宝石などでしょうけど。。。アンジェ様は私達寄りでしょう?私なりの最上級の気持ちを表しました」
「アンジェはわかってくれるよ。喜ぶ顔が眼に浮かぶ」
「そう言えば~聞きましたよ~。皆の前で熱烈な愛の言葉を捧げたそうじゃないですか?」
ニヤニヤしながらお兄様を揶揄ってみる。
「。。。俺の事はいいんだよ。早く食べろ。今日は疲れてるんだろ?」
お兄様は顔を赤くしてパンを頬張り出した。
「お嬢様、それはもう物語の一節のような甘い口説き文句でしたよ。私も若い頃を思い出しました」
「へ~。スーザンはどんな言葉を戴いたの?」
『ごほん』とクリスが慌てて咳払いをしている。
「内緒です。特別の愛の言葉ですから。。。これは、ロンテーヌに嫁ぐ者の特権です」
スーザンは両手を胸の前で組んで、昔を思い出している。
「え~。いいな~。私もロンテーヌ一族なのに。。。」
「お嬢様も恋愛結婚が出来るといいですね。学校でがんばって下さい!」
「ええ。ステキな方を探してみせるわ!」
私は決意を新たに最後のスープを飲み干した。
屋敷の部屋は領の部屋と同じような雰囲気になってる。お兄様が本格的に家具などを入れてくれたみたいだ。
「スーザンが選んでくれたのかしら?趣味がいいわね」
「はい。そのようです」
ケイトは返事をしながら部屋の隅々まで点検をしているエリとユーリを見ている。
コンコンコン。
入って来たのはイーグルとミランだ。
「お嬢様におかれましては、長旅ご苦労様でした。これより王都での雑事はイーグルにおまかせ下さいませ」
私は使用人だが、話をじっくり聞きたいのでソファーに座るように促す。
「では、今後の日程です。明日は朝10時より大聖堂にて大旦那様の1周忌を執り行います。この式を終えたら喪が明けたことになります。ですので、学校へ行く前に買い物をお願いします。ドレスを5着ほど新調して下さい。あとは、お茶会が2件。これは親戚筋です」
「お茶会は出なくちゃダメ?」
「はい。ご気分が乗らないのは重々承知していますが、我が領の分家と今は亡き大奥様の親戚が集まる茶会ですので。お願いいたします。あとは、ロゼ領の領主様からお招きがございます」
「ロゼ領主?なぜ?」
「領主様から直々ですし。。。カイ様の事もありますので無下にできません。何をお考えかは存じ上げません。申し訳ございません」
「。。。ミラン。大領地は子飼いがいるのよね?私の事がバレてない?」
「わかりません。刺客や偵察には目を見張らせていますが。。。」
『申し訳ございません』と、二人は頭を下げる。
「いいのよ。。。そう。では、それまでにロゼ領について勉強したいわ。詳しい者はいる?あぁ、アンジェ様以外ね」
「はい。私が。これでも元外交官ですので。多少は知識が他よりはあるかと」
「わかったわ。イーグルお願いね。内容は結構深く知りたいわ。産業や地形など」
『かしこまりました』とイーグルはメモをする。
「あとは親戚ね?確か、お母様の方は結局爵位を返上したのよね?」
「そうですね。1億Dを集められなかったようですよ。それに悪評な領を継いでもメリットがありませんからね」
「そう。。。今はどうなったの?その領」
「はい。王が元王族を引っ張り上げました。先先代の王の弟君の家系です。そちらの一族は、現国王の粛清の際に、何も罪を犯していなかったそうです。現在は、ロックウェル伯爵領改、スワニー公爵領になりました。これで我が国は4公爵になります。家魔法は火です」
「そうなんだ。。。元ロックウェル一族はどんな感じ?」
「今は分家も含めて男爵に全て降下しました。家名もロックウェルを名乗りたくないとウェルネスと改めています。大丈夫ですよ。この一族は元々横柄な領主一族が嫌だったそうなので、今は遺恨はないかと。アークが調査済みです」
「そう。それなら良かった。逆恨みは怖いからね。ふふふ」
ピキッ!
イーグルもミランも固まってしまった。。。しまった。
「冗談よ。。。ちょっとキツかったわね。ごめんなさい」
「い、いえ。冗談が言えるほどになって良かったです」
イーグルは恐縮してしまっている。
「お、お嬢様。親戚達とのお茶会ですが学校での側近の紹介と、一族以外の親戚のミーナ嬢が来る予定です。学校で過ごす者達との交流会と考えていただければと思います」
ミランはさっと話を変えてくれた。ナイス。
「そう。そういう事なら楽しみだわ」
それから私は学校が始まる10日前まで、お茶会をしたり、ドレスを作りに行ったり、王都のお店に顔を出したり、たまには劇を観に行ったりと、王都生活をスタートさせた。
ちなみに、お爺様の1周忌で向かった大聖堂ではジェミニー大司教様は姿を現さなかった。ちゃんと保証内容を守ってくれているみたい。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ見直しちゃった。
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