前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

文字の大きさ
上 下
51 / 135
1章 ロンテーヌ兄妹

84 命日

しおりを挟む
今日は『異なる世界の記憶』がよみがえった日。つまり、両親の命日だ。

朝のベットの中で1年を振り返る。

あれから、様々な出来事が起こった。色々な人とも出会った。毎日がめまぐるしい日々だったように思う。駆け足で人生を駆け登ってしまって息切れがしそうだ。

「。。。」

そして、あと3週間もすれば学校が始まる。学校の事を考えると、こちらの世界の学校への期待と、もう一度学生をやるウキウキ感が混ざって、テンションはマックスになるんだよね~。

我ながら複雑だ。。。焦燥と高揚が入り混じる感じ。変な感覚。

「お嬢様、おはようございます」
ケイトがカーテンを引いて窓を少し開けた。

「お嬢様、明日から学校が始まるまでの間、勉強を再開しますよ。午前中は座学で午後はダンスやマナーの授業です」

「おはよう。ケイト。まだ勉強するの?」

「そうですね。お嬢様の場合はほとんど復習になりますね。念には念を入れましょう。入学式の翌日はクラス編成テストがありますので。良い成績を収めれば2学年のクラス分けで優位に立てますから。魔法科をご希望でしょう?」

へ~。実力テストみたいなものかな?

「わかったわ。がんばるわ」

「あと、本日は領へ帰れない代わりに朝食の後、皆で大聖堂へ行く予定です。よろしくお願いします」

ゲッ。。。大聖堂か。

「ふふふ。本日はは居ないそうですよ。王城で王様と謁見の予定があるそうです。よかったですね」
ケイトは私の顔色を読んだのか、素晴らしい情報を提供してくれた。

「そうなの?情報源は確かなのかしら?」

「ふふふ。アークからの情報ですよ。ご主人様もには気を揉んでらっしゃったので、あらかじめ調べたのでしょうね」

やっほい!会いたくない人が居ないなんてラッキー。

「お嬢様ったら。お顔に出るクセは直りませんね。。。社交では不利になりますよ。お気を付け下さい」

「ふぁ~い」
と、返事とあくびが一緒に出てしまった。ギロリと睨むケイト先生の顔が怖い。


~*~*~*~*~

両親への祈りが終わり、私達は馬車に乗り込もうとぞろぞろと大聖堂前の階段を降りていた。

しかし、大聖堂の外の入り口でお爺様が呼び止めらている。
「お待ち下さい。ロンテーヌ領領主様」

息を切らせて走って来たのは警備騎士だった。私達は馬車の前でハテナな感じになって足を止めその様子を見ていた。

「ねぇ、警備騎士って兜なんて被っていたかしら?」
と、私が呟いたので、ランドも不思議に思ったのかお爺様の元へ戻って行った。

「こちらをお忘れではないでしょうか?」
と、差し出された黒い玉をお爺様が触れた瞬間、私達は一瞬にして大きな煙に包まれた。

さっと、私の手を取ったのは両隣にいたリットとお兄様。

「何?何があったの?ゴホ、ゴホ」

『しっ!声を出すな。位置がバレる』
小声で簡潔に指示をしたのはリットだった。

『カイ様、視界がありませんから、お嬢様の手を離さないように』
『ああ』

私は二人に両手を引かれながら少しずつ移動する。

何?怖いんだけど。煙で目が痛い。てか、お爺様は?

煙の外に近づいたのかな?景色がぼんやり見えてきた。大聖堂前の広場が見える。野次馬もちらほらこちらの様子を立ち止まって伺っている。

「リット。皆が無事か確認をして!」

「あぁ」

私はぐるりと周りを見渡すと、ミランとジャック、ロッシーニが2mほど離れた場所に出て来ているのを確認する。自力で煙から出たんだね。他のみんなは?

「闇雲に煙の中へ入れば何があるかわからない。敵の場合は迎え撃たれる可能性がある。ランドが恐らく転移して誰か応援を呼んでいるはずだ。それまで持つか。。。」
リットは目を凝らして煙を見つめている。風の魔法を試しているが、煙は一切風に流れていかない。

そのすぐ後にエリとケイトが口に手を押さえながら煙から飛び出して来た。

あとは、お爺様とロダン、マーサ、アーク、ランドだ。ランドとアークは問題ないとしても、姿を確認していないので心配だ。

「お兄様。お爺様は無事かしら?それにしてもなぜこんな事を。。。」

「あぁ。ロダンとアークがいるんだ。心配するな」
と、お兄様は硬い顔で周りに意識を飛ばしている。不審人物がいないか確かめているようだ。

誰?何が目的?怖い。あの事件が蘇る。。。怖い。怖い。怖い。

いつの間にか、マーサも煙の外に出て来ており、エリやケイト、ミラン、ジャック、ロッシーニが私達の場所へ集まって来ていた。今は、私はケイトに肩を抱きかかえられてみんなで煙の中を見つめている。

「グハッ」
と、誰かの嘔吐する声が響く。

「ケ、ケイト。。。誰かが。。。誰かが。。。」
「えぇ。。。」
ケイトは私の手を取りさすっている。エリはマーサと手を取り合って涙目だ。

時間にして何分経ったのだろう。。。しばらくしたら、煙が嘘のように跡形もなくパッと消えた。

「お爺様はどこ?」
私が叫ぶと、みんなが『ハッ』となり駆け出す。お兄様が一番に飛び出してお爺様が居たであろう場所へ走る。

お兄様は立ち止まり、呆然と下を向いて倒れている人を凝視している。

まさか!

私はできるだけ早く走って行く。この際マナーなんてクソくらいだ。早く、早くとスカートを抱え急いで走った。心臓がドキドキと大きな音をたてる。

「。。。」

そっとお兄様の手を握り涙が流れた。

倒れていたのは、胸を一突きされたお爺様と、横には片腕の肘上あたりから無いロダンだった。

「お嬢!見るな!」
リットはさっと私を隠すように抱きしめる。

「おい、兄さん。目を開けろ!」
多分ミランだろう。。。ロダンを揺すっている音がする。

「ケイト!兄はまだ息がある!至急、誰かに、医者か大司教様を呼んで来させろ!」

「。。。リット。。。お爺様が。。。」
「あぁ」
リットは私を抱きしめる手が一層に力が入った。

「アーク!」
と、エリが震える声で大聖堂の入り口横の路地を指差して叫んだ。

私はリットから体を少しずらし指差した方向を見る。

「「「「!!!!!!」」」」」 

みんなの喉がヒュッと鳴った。フェルミーナ様とさっきの警備騎士がアークを盾に後退りして逃げようとしていた。

「きーさーまーーー!」
と、お兄様が後を追う。リットは素早くお兄様に続く。私も怒りで走り出していた。

フェルミーナ様と警備騎士は、剣を抜いてやって来る二人に驚いて、アークをお兄様にぶつけるように前に放り投げて路地へ入っていく。

お兄様はアークをさっと避け警備騎士に後ろから飛び蹴りを入れた。リットは倒れた警備騎士の兜をさっとぎ取った。

「あっ、あなたは!ロックウェル伯爵!」
お兄様は驚きで目を見開いている。リットは素早く両手を後ろにし、ハンカチを丸め込んで口を塞いで捕縛した。

私はとっさに一人で走り去ろうとしているフェルミーナ様を追いかけた。

路地の中程で彼女の手を捕まえると、思いっきり踏ん張る。

「きゃー」
と、フェルミーナ様は倒れ込む。すると『キッ』とこちらを睨み唾を飛ばしながら暴言を吐いた。

「本当はあなたを狙っていたのよ!あんな老人達。意味ないわ。失敗よ。お前の!お前のせいで男爵なんかに落ちたのよ!全部お前のせいよ!お前のせいであいつらは死んだのよ!あはははは、いい気味だわ!」

私は腹の底からムカムカと怒りが湧き、泣きながらフェルミーナ様をマウンティングして胸ぐらを掴む。

「全部人のせいにするんじゃない!バカヤロウ!お爺様を返せ!」

ブチっと私の中で何かが弾ける。途端に身体中から『ぼはっ』っと白い蒸気が漏れ出した。

「うわぁぁぁぁぁぁ。」
熱い!私は雄叫びをあげる。

フェルミーナ様は隙を見て私の腕を掴むと、またお得意の魔法を発動させた。が、暴走している私には効かなかった。

「なっ、なぜ?どうして腐らないの!」
と、私の腕を何度も握り返し呪文を唱えている。

「そんなの、どうだっていいんだよ!」
私は逆に『なぜ?なぜ?』とうろたえるフェルミーナ様の腕を『バッ』と掴んだ。

その途端、フェルミーナ様の腕が腐り始める。どんどんすごいスピードで腐っていく。ほんの数秒で片腕が肩からグジュっと取れてしまった。

「うそ。。。」
私は驚きで立ち上がり、後ろに一歩二歩とよろける。私がフェルミーナ様から離れると腐るのが止まり、私の身体から出ていた蒸気も出なくなった。

「グァァァァァアアアアア」
フェルミーナ様は痛みに悶えその場で気絶した。

「うそ。。。私。。。私。。。」
手が震える。ガタガタと身体も震え出す。

「うそよ。。。だって。。。私。。。」
リットが静かに私に近づき、私の目に手を当ててそっと呟く。

「大丈夫だ。お嬢。これは夢だ。大丈夫だ。大丈夫だ」
手の平を広げたままの棒立ちの私をリットは抱きしめてくれる。

路地には、ロックウェル伯爵をうつ伏せで押さえ込んでいるお兄様。路地の入り口には、先ほどの惨状を見ていたであろう、ランドとグレン騎士団長が立ちつくしていた。

『ハッ』となったグレン様が私を見て、ランドに耳打ちすると、ランドが無言でこちらへやって来た。

そして、ランドはリットとは反対側から優しく私を抱きしめ3人で転移した。

しおりを挟む
よろしければお気に入り&感想お願いします!
感想 404

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。