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1章 ロンテーヌ兄妹

76 罪と罰2

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「いや、咎はない。言葉を覆す事はない」
王様はそう言うと私に話の続きを促した。

「では、まず、このお2人にはリットとランドに謝って欲しいです。いくら好きになったからと言って、相手の気持ちを考えず追い回すのは悪質な嫌がらせです。それはわかりますか?」

2人は警備騎士に塞がれた口布を取ってもらう。でも、言葉が出てこないようだ。
「なっ!」「私は。。。ただ。。」

は~。まだわかんないかな?

「そうだな。2人はまず謝らんとな。それとジェシカ嬢にもな」
2人はもじもじして中々謝らない。

「早うせんか!」
王様が大きな雷を落とした。

「はいぃぃぃぃ。申し訳ございません。ランド様。ジェシカ様。。。」
「。。。ぐすん。申し訳ございません。リット様、ジェシカ様。。。わ~ん」

。。。反省の色なし。。。まっいっか。非公式でも謝ったんだし。

「アメリア嬢はどうする?」
王様はもう1人を忘れていなかった。

「そうですね。アメリア様は法に則って罰してください。王様にお任せします。そこの副団長もです」

いきなり、指名された副団長はびっくりしたと同時に怒り始めた。

「なぜ私が罰せられる?罪を犯したのは私の娘だが。。。私は関係ない」

「そんな!お父様。私は無理やりフェルミーナ様に。。。どうにかして下さい!副団長でしょ!」
アメリア様はまだトボけた事をほざいている。

「「「「。。。。」」」」
部屋の中の何人かが『アホじゃないの?』と言う顔で副団長親子を見た。

「王様。。。そう言う事なのでお願いします。あと、最後にいいですか?」
副団長はお任せしますよ、王様。こいつらはダメだ。手に負えない。

開き直った私は、王様に最後のお願いをする。

「あぁ、この際だ。想いの丈を言うがいい」
王様は優雅に足を組んで肘をつき私を見る。

「ありがとうございます。この度、私は大きな怪我を負いました。大司教様その節はありがとうございました」
と、一度言葉を切り大司教様に礼をする。

いえいえと、大司教様は手を振っている。

「ごほん。それで、私の家族は大変心を痛めました。昨年両親を亡くしたばかりです。これはロンテーヌ家にとっては大変な事件だったのです。今回の審議で私が怒りで暴走して、王様に失言をするかもしれないと言った所、兄は婚約者がいるのにも関わらず、自分のやりたいようにしていいと言ってくれました。お爺様も万が一は平民になってもいいとおっしゃって下さいました。皆は私に心を寄せてくれましたので、私はこんなにも早く回復できたのです。ですので、王様にお願いです。一人の娘を持つ親として、私の家族に謝って下さい」

よし、言ってやったぞ!

「それは。。。」「お前っ!」「ジェシー!」「そなた、なんて事を!」
ざわざわとみんなが騒いでいる。

第一騎士団団長のグレン様は目を瞑って沈黙だ。アダム様はニヤついてみんなの出方を傍観している。。。けっ。

王様は目を見開くと一息ついた。誰もが息を飲んで王様の返答待つ。

ドキドキドキドキ。。。ごめんね。みんな。でも、このままじゃ、腹の虫が治らない。

「そうだな。ジェシカ嬢の言う通りだ。こんな娘を放置した私も悪い。王妃のせいだけでは済まんな。。。クライス、すまなかった」
と、王様は立ち上がり軽く礼をした。

「王、もう十分です。お気持ちは受け取りました。顔をお上げ下さい!」
と、お爺様は王様に向かって叫ぶ。額に大量の汗をかいているよ。ロダンも拳を握りしめて下を向いている。

「陛下が頭を下げるなんて。。。」
ケリー王妃は目を見開いて扇子を落としていた。

フェルミーナ様とアメリア様は大口を開けて呆気に取られている。

そんな空気を気にもせず王様は語りかける。
「ジェシカ嬢。最後に思い知ったよ。私は父親としてフェルミーナを諭すべきだったのだな。父親でいる前に王である事を取ってしまった私の罪だ。ケリーお前も謝るんだ」

ケリー王妃は『ヒィ』と尻餅をついて混乱状態だ。これじゃぁ、無理ね。

「いえ。王様の今の言葉で十分です。これ以上は恐れ多い事にございます。これで、我が公爵家は王様に真の忠誠を捧げられます。ありがとうございました。それに、私にはがありますので、子を思う親の気持ちは幾分かはわかっております。王という職業は、重圧や責任が多い事でしょう。今回は無理もなかったのかなと。。。あっ、いささか、生意気すぎましたね。言い過ぎました申し訳ございません」

「ははっ。よい。王を職業と捉えるとは面白い。。。おい、まだ解らぬか?ケリーに副団長よ?」
2人を見たが、下を見て拳を握りしめている。顔は屈辱の一色だ。。。これはダメね。

「。。。わかった。もう言いまい」
王様は疲れた感じで王座に座り込む。

「それでは、ジェシカ嬢、終いでよろしいでしょうか?」
見かねた宰相様が王様の代弁をする。

「あっ!申し訳ございません。もう一つだけ」
と、私が声を出すとみんなの顔が『まだあるの?』と呆れている。

「何だ?」
顔を上げた王様は和かな表情になっていた。なんか吹っ切った?

「はい。みんなは気を使って隠しているみたいですが、今回の事件で、我が領の騎士が不幸にも殺されてしまいました」
ロダンは私の顔を振り返り、泣きそうな顔をしている。いいんだよ、ロダン。

「もちろん我が領の騎士ですので、保証云々は我が領で十二分にしたいと思っております。だた、その若者はまだ23歳でした。王国騎士団を辞め領に移って半年です。今回に限り『王国騎士として殉職した』と、ご家族にはお知らせ願いませんでしょうか?その者は王様の命令で発展途上なロンテーヌ領に転勤してきたという事になりませんでしょうか?保証は我々がします。ただ、彼には名誉をお与え頂きたいのです。残された家族の事を思うと、とても慰みになると思うんです。どうしても人は、お金では解決できない『心』がありますので。私をたまたま護衛しただけで命を落としたのです。。。規定違反になるでしょうが。お願いします。それに、元はと言えば原因は。。。」
と、フェルミーナ様達を見る。

「わかった。できる範囲でこの私がしよう」
すぐに答えてくれたのはグレン様だった。

「ありがとうございます」

ロダンは『お嬢様。。。』と手を握ってくれ、リットはこちらを向いて無言で礼をする。

「陛下、私からも一つよろしいでしょうか?」
ここで初めて、大司教様が声を出す。

「私はジェシカ嬢の治療をしましたが、全身打撲で内臓が腫れ上がっていました。顔も頬が何十倍にもなっており、手の平は腐る魔法がかけられていて。。。その所業にしては、いささか刑が軽くはないでしょうか?私は死刑が順当かと」

!!!

大司教様!何で今頃?丸く収まったのに。。。

「今は私の治癒魔法で治っておりますが。。。皆様も当時の惨状を見れば納得されるでしょう。もし治癒魔法がなかったら?今頃、片手は腐り落ちて無いのですよ?それでもジェシカ嬢は許せるのですか?」
美人な大司教様が氷の目で王様を睨んでいる。

「先ほど、ジェシカ嬢より本人の意見を聞いたのだ。それを覆すのは本意ではない」

「しかし、生かしておけば、また悪さをするやもしれません」
と、2人の令嬢を氷の目で見る。

「ひぃぃぃ」「ごめんなさい、ごめんなさい」と2人共失禁してガタガタと震え出した。

そんな怖いの?この人?

「大司教様。ありがとうございます。しかし、いいのです。リスクは伴いますが、私は生きて地獄を見てもらう方を取ったのです」

「ほう。生きて地獄を見るか。。。それでいいのですね?」
最後の確認とばかりに大司教様は私に問いかける。

「はい。いいのです」

「わかりました。出過ぎた事を申しました」
すっと、怖い顔が無表情に変わり、美人大司教様はすんなり引き下がった。

「これで良いな。では、それぞれの刑は後日追って申し付ける。関係者には非公式になるが、事後報告書を送る予定だ」

「いやよ!お父様!なぜこんな事に!男爵なんて。。。お母様も何か言ってちょうだい!お母様!」
と、泣き叫ぶフェルミーナ様はズルズルと引きづられながら連れて行かれた。

「こんなはずじゃ。。。こんなはずじゃ。。。」
アメリア様は頭を抱えてブツブツ言っている。

「では、本日の話し合いは魔法誓約がかかっています。内容は『グレン様の特化』です。『事件の全容と処罰』などは記録に残しますので、お話ししても結構ですが、この審議会が非公式である事をお忘れなく。では、皆様よろしくお願いいたします」
宰相様がお開きの言葉を発すると、グレン様の『檻』が解除された。

「これで審議を閉廷する」
王様は立ち上がると、ケリー様の腕を片手で持ち上げ退出した。

「ジェシカ嬢。この後、お時間はありますかな?」
宰相様はスススと寄ってきて私をお茶に誘う。

私はお爺様に目で合図する。お爺様は微妙な顔だ。。。

「どうしてもですか?」

「ええ。できれば」
と、言われれば断れない。。。

「はい」

「ジェシカ。私達は王城で待たせてもらう。大丈夫じゃ。一緒に帰ろう」
お爺様は優しく頭をなでてくれた。

「では、少しだけ時間を頂けますか?すぐ終わります」
私は宰相様に断ってから、リットとランドの元へ向かった。

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