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1章 ロンテーヌ兄妹
64 夜会の前哨戦
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年が明けて数日後、今日は朝から『新年の夜会』に向けて、念入りにお肌をもみくちゃにされている。
今、2時間かけて全身エステが終わったところだ。は~しんど。
「お嬢様、ここで一旦昼食を食べて頂きます。お部屋にご用意いたしましたのでどうぞ」
ケイトは簡単につまめる系のサンドイッチを用意してくれた。
「夜会の立食で食べられるかわかりませんからね。少し多めに食べても構いませんよ。ただし、お腹が出ない程度にして下さいませ。この後のコルセットがキツくなりますよ」
あ~んとサンドイッチを堪能していた手を素早く止めた。ぐすん。。。たくさん食べようと思ったのに。
昼食を終え、少し休憩した後、ドレスを着る作業に入った。ぎゅっぎゅっ。コルセットを締めて、ドレスを着る。その後は、薄~く化粧をしてもらい、髪のアレンジだ。テキパキとエリとケイトは世話をしてくれ、ようやく準備が完了したのは1時間後だった。
「まぁ~!ステキね。ありがとう」
鏡に映る私は、お姫様のようだ。色は地味だけど、落ち着いた雰囲気で大人の女性になったみたい。私の茶色の髪と緑の瞳がよく合っている。
絹のような光沢の深緑のプリンセスラインのドレス。お揃いの手袋と、スカートの裾には金の蔦と銀の花の模様が一周してある。腰には、ドレスよりやや明る目の緑のリボンと金のリボンが波打っている。シンプルかつシックで上品だ。髪も今日は上げてもらって、金のティアラをしている。宝石はお爺様から頂いた黄色の大きな石が付いている、成人の儀で貰ったネックレスだ。確か、お婆様の形見だそうだけど。すごい大きさだよ。今回の為に、石はそのままでデザインを変えてくれた。
お爺様も何とかがんばってくれたんだ~。社交界デビューだし、精一杯奮発してくれたのかな?だって今は、新しい高価な宝石はまだ買えないのはわかっている。商会にもお金がかかる時だし。そんな中、こんなステキなネックレスを頂いて本当にありがたい。
「公爵令嬢にふさわしいネックレスです。流石はご主人様です。センスがよろしいですね」
エリは、ぽ~っとネックレスに見とれている。
「お婆様の石を頂いたのよ。本当にきれいね」
「最後にこちらを。カイ様からです」
ケイトの手には黒の柄に金の花の飾りがついた扇子があった。
「えっ!お兄様から?もしかして、これも成人の儀のプレゼント?」
「そうですよ。事前にご注文をされたそうですけど、完成が遅れた様です。お嬢様に謝っておいて欲しいと頼まれました」
すご~い。こんな上品な扇子。幾つになっても使える感じのデザインね。無くさない様にしないと。でも、このセンスはお兄様じゃないような気がする。もしかして、例のお嬢様と選んでくれたのかな?
「そうなのね。会場で会ったらお礼を言わないと」
「はい。これで出来上がりました。今日は楽しんで下さい!王城の夜会なので、エリと私は屋敷でお留守番です。会場の付き添いは、奥様がいらっしゃいませんので、マーサ様が付く事になっております。ご主人様のお付きはロダン様です。護衛は今回、会場周辺に1人と決まっておりますので、ご主人様にはリットを、お嬢様にはランドになっております」
そうなの?ケイトにも見て欲しかったな。デビューの瞬間を。
「残念だわ。あんなに練習したのだから見て欲しかったのに」
「あらあら、今、私は十分に見させて頂いておりますよ。本当にステキなレディーになられました」
私はニコニコケイトに最敬礼のカーテシーをして見せた。
ケイトとエリはうっすら涙を浮かばせてた。
「こんなにキレイに変身させてくれてありがとう。今日はお爺様と踊る約束をしたの。楽しみだわ」
エントランスでは、お爺様が目を見開いて喜んでいる。ロダンと二人して手の甲にキスを贈ってくれた。
「なんてステキなレディーなんじゃ。あいつの石がこんなにもジェシーを輝かせるとはな~。このまま、行くのはやめようかと思うくらい本当に美しくなったもんじゃ。変な虫がつきそうで。。。」
お爺様はブツブツ言っている。
「お嬢様。今日は、絶対にこのロダンから離れませんように」
ロダンはなぜか殺気を飛ばしている。殺気を向けられた、リットとランドは困惑しながらも『キレイだ』と褒めてくれた。
「ケイト、アークを呼んでくれ。厨房に居るはずだ」
ロダンはケイトに指示し、ローブを取りに行った。
「ロダン様お呼びでしょうか?」
「アーク、今日は非番だったが、お嬢様の影に入れ。護衛をしてもらう。万が一があるかもしれない」
と、アークに魔法使いが着てそうなローブを押し付けた。
アークは『え~』って顔で無言でズズズと私の影に入って行く。
「お嬢様。今日はお誘いが多いでしょうが、初対面の者とは私かマーサを先に通して下さい。しつこい様なら無視で構いません」
ロダンは昨日と反対の事を言いだした。
「昨日はデビューだから色んな人と踊ったら?的な事を言ってなかったかしら?」
「予定変更です。ご理解下さい」
つ~んとロダンは意見を変える気がない様だ。
ま~いいけど。知らない人と踊るぐらいなら私は立食コーナーに行きたい。
「お嬢様。大丈夫ですよ。こう見えて私、元伯爵家の奥方をしておりましたのよ。変な輩は、私がチョチョイのチョイッとお話を付けますので、お嬢様はニコッと微笑んで下されば結構ですよ」
今日のマーサは最高にお色気ムンムンな美魔女よろしく、ふふふふふと妖艶に微笑んでいる。いつもの『研究スタイル+目の下のクマ』とかけ離れているので、久々の美魔女にドキッとなる。
「今日は初めて会った頃のマーサみたいね。色っぽすぎてそわそわしちゃうわ」
「まぁ。お嬢様の方が若葉のようでキラキラと可愛らしいですわよ」
「では、行こうかの。ごほん。ジェシカ嬢、この老いぼれの手を取ってくれるかの?」
ウィンクしてお爺様はエスコートのお許しを請うてくれた。
「ええ、よろしくてよ」
私もお爺様の手を取って、馬車へ乗り込む。ロダンとマーサも同乗する。リットとランドは護衛なので馬で付いて来る。
王城の会場入り口付近では、様々なデビュタントが入場待ちで集まっている。デビュタントに関係のない貴族達は先に会場入りをして迎え入れてくれるのだ。
「あら、誰かと思ったら、あなたサボン姫ではない?」
突然声をかけられて、振り向いた先にいたのは、銀の髪の儚げなご令嬢だった。えっ?セリフと顔が合ってないな。誰だろ?
マーサをチラ見するとバッとカーテシーをした。
「ご機嫌麗しゅう存じます。フェルミーナ様。ジェシカ様の付き添いのマーサと申します」
フェルミーナ様!あの突撃姫じゃん!私は慌ててマーサの横でカーテシーをし首を垂れる。
「フェルミーナ様、確認ですが、サボン姫とはこちらのお嬢様の事でしょうか?」
おぃおぃ。草。サボン姫って。前世なら爆笑もんじゃん。流行らせないでくれよ~。
フェルミーナ様は、腕を組んで顎を上げ、フンっと鼻で笑う感じで口を開いた。
「ええ、そうよ。サボンで成り上がった公爵令嬢でしょう?生意気にもランド様を護衛に付けているそうじゃないの。噂は本当だったのね。成金が金子で殿方を誘惑するとは、はしたないにも程があるんじゃないかしら。身の程をわきまえなさい。ランド様もそんな娘の護衛などやめて、今日は私をエスコートして下さいません事?」
お爺様は無言でフェルミーナ様をじっと見ている。ロダンはさっとどこかへ行ってしまった。リットはお爺様を庇う感じで前に立つ。
「ご主人様、お嬢様、申し訳ございません。直ぐに追い払います」
ランドはお爺様に一礼し、お姫様と対峙した。
「王女様、こちらは本日デビューする方たちの待合場となっております。騒がれては困ります。それに我が主人を侮辱しないで頂きたい。私、自ら護衛の任に付いたのです。貴方には関係のない事だ。お話なら後日改めて、王様の前で致しましょう」
フェルミーナ様はオロオロし始めた。
「お、お父様は関係ないわよ。あなたがエスコートしてくれればここから去るわ。そこのサボンの令嬢、ランド様を渡しなさい」
と、私を指差す。え~、私かよ。みんなこっち見てるじゃん。目立ちたくないのに。。。
「フェルミーナ様、私は仕事中ですし、そうでなくても、あなたをエスコートしたいとは微塵も思いません。お引き取りを」
え~!公開処刑じゃん。ランドは王女様をバッサリ拒否した。
みんな見てるよ。どうするの?怒り爆発しない?こそっとフェルミーナ様を覗き見ると、プルプル拳を握って赤い顔だ。
あかん。完全に怒ってる。プンだよ。周りの貴族達もコソコソ話したりニヤニヤ見てるし。
「お待ち下さい。ランド様」
それでも諦めきれないフェルミーナ様は、ランドの手を引いて『イヤイヤ~』と駄々をこねだした。ランドはみんなの目があるから振り解きたいけど対応に困っている。
私はこそっとマーサに耳打ちする。
「マーサ、あの方っていつもあんな感じなの?どうすればいいのかしら?」
「お嬢様。フェルミーナ様はわがままで有名です。先ほどロダン様がどちらかに行かれましたので、帰るまでは無言でよろしいですよ。私が対処します。大丈夫です」
マーサはニコッと庇ってくれた。頼もしい。
「フェルミーナ様。王が呼んでおります」
ババ~ンと現れたのは、宰相アダム様だった。
ロダン~もしかして呼びに行ったのってアダム様かよ。。。救いの神じゃ無いじゃん。あかんあかん、下を向いておこう。目があったら話しかけられる。知らんぷり知らんぷり。
「えっ!お父様が。。。いっ今すぐ?なぜなの?たかが公爵に」
フェルミーナ様はすごい動揺し始める。王様が怖いのか?
「そうです。そこの近衛達、姫を王のところへお連れしろ」
はは~、と近衛達はフェルミーナ様の両脇を掴んで浮かせて持って行った。
ははははは。結構雑なんだね。日常茶飯事な感じ?でも、タイミングが悪い。今からデビューなのに。ちくしょう。
「クライス殿。大丈夫でしたか?ウチの姫が失礼いたしました。謝罪は後日改めて」
とお爺様とアダム様が話している。私はスススススっとマーサの後ろに隠れた。
「ジェシカ嬢も申し訳ございません。王より改めて謝罪がありますので、ご容赦ください」
せっかく隠れたのに、アダム様はワザとちょっと大きい声でマーサ越しに話しかけてきた。
チッ。隠れたからワザとやったな。。。くそ~。
その時ギャラリーから『まぁ、王様から?』『謝罪ですって?』と、ざわざわ声がしている。もう!余計目立ってきたじゃん。
「いえ。宰相様。お気遣い頂かなくても今のお言葉で十分にございます。それに、今回は私の護衛の私情にございます。わざわざ王様にお時間を頂かなくても私共は問題ございません。特に何をされた訳ではございませんので」
深窓の令嬢の様な仕草で礼を取る。絶対目を合わせないぞ。
「ほほ~。謝罪は必要ないとな。王直々だが?」
「はい。私には恐れ多い事にございます。どうしてもとおっしゃるなら、この護衛のランドと王様と姫様でじっくりお話しをする機会を与えて頂けませんでしょうか?」
「はっはっはっ。相分かった。今回の謝罪の代わりにその様に致しましょう。寛大な公爵令嬢の御心に、こちらこそ礼を申し上げます」
宰相は最後にニヤッと笑い早々に立ち去って行った。
あっぶな~。みんなの前で変な接点作ってしまう所だった。
残った私たちはちょっと居心地が悪かったけど、お爺様は『儂らは悪くない。堂々としていろ』とおっしゃったが。。。ちょっとね~コソコソ話が気になるなぁ。。。小心者ですみません。
あ~、早く入場してしまいたい。
今、2時間かけて全身エステが終わったところだ。は~しんど。
「お嬢様、ここで一旦昼食を食べて頂きます。お部屋にご用意いたしましたのでどうぞ」
ケイトは簡単につまめる系のサンドイッチを用意してくれた。
「夜会の立食で食べられるかわかりませんからね。少し多めに食べても構いませんよ。ただし、お腹が出ない程度にして下さいませ。この後のコルセットがキツくなりますよ」
あ~んとサンドイッチを堪能していた手を素早く止めた。ぐすん。。。たくさん食べようと思ったのに。
昼食を終え、少し休憩した後、ドレスを着る作業に入った。ぎゅっぎゅっ。コルセットを締めて、ドレスを着る。その後は、薄~く化粧をしてもらい、髪のアレンジだ。テキパキとエリとケイトは世話をしてくれ、ようやく準備が完了したのは1時間後だった。
「まぁ~!ステキね。ありがとう」
鏡に映る私は、お姫様のようだ。色は地味だけど、落ち着いた雰囲気で大人の女性になったみたい。私の茶色の髪と緑の瞳がよく合っている。
絹のような光沢の深緑のプリンセスラインのドレス。お揃いの手袋と、スカートの裾には金の蔦と銀の花の模様が一周してある。腰には、ドレスよりやや明る目の緑のリボンと金のリボンが波打っている。シンプルかつシックで上品だ。髪も今日は上げてもらって、金のティアラをしている。宝石はお爺様から頂いた黄色の大きな石が付いている、成人の儀で貰ったネックレスだ。確か、お婆様の形見だそうだけど。すごい大きさだよ。今回の為に、石はそのままでデザインを変えてくれた。
お爺様も何とかがんばってくれたんだ~。社交界デビューだし、精一杯奮発してくれたのかな?だって今は、新しい高価な宝石はまだ買えないのはわかっている。商会にもお金がかかる時だし。そんな中、こんなステキなネックレスを頂いて本当にありがたい。
「公爵令嬢にふさわしいネックレスです。流石はご主人様です。センスがよろしいですね」
エリは、ぽ~っとネックレスに見とれている。
「お婆様の石を頂いたのよ。本当にきれいね」
「最後にこちらを。カイ様からです」
ケイトの手には黒の柄に金の花の飾りがついた扇子があった。
「えっ!お兄様から?もしかして、これも成人の儀のプレゼント?」
「そうですよ。事前にご注文をされたそうですけど、完成が遅れた様です。お嬢様に謝っておいて欲しいと頼まれました」
すご~い。こんな上品な扇子。幾つになっても使える感じのデザインね。無くさない様にしないと。でも、このセンスはお兄様じゃないような気がする。もしかして、例のお嬢様と選んでくれたのかな?
「そうなのね。会場で会ったらお礼を言わないと」
「はい。これで出来上がりました。今日は楽しんで下さい!王城の夜会なので、エリと私は屋敷でお留守番です。会場の付き添いは、奥様がいらっしゃいませんので、マーサ様が付く事になっております。ご主人様のお付きはロダン様です。護衛は今回、会場周辺に1人と決まっておりますので、ご主人様にはリットを、お嬢様にはランドになっております」
そうなの?ケイトにも見て欲しかったな。デビューの瞬間を。
「残念だわ。あんなに練習したのだから見て欲しかったのに」
「あらあら、今、私は十分に見させて頂いておりますよ。本当にステキなレディーになられました」
私はニコニコケイトに最敬礼のカーテシーをして見せた。
ケイトとエリはうっすら涙を浮かばせてた。
「こんなにキレイに変身させてくれてありがとう。今日はお爺様と踊る約束をしたの。楽しみだわ」
エントランスでは、お爺様が目を見開いて喜んでいる。ロダンと二人して手の甲にキスを贈ってくれた。
「なんてステキなレディーなんじゃ。あいつの石がこんなにもジェシーを輝かせるとはな~。このまま、行くのはやめようかと思うくらい本当に美しくなったもんじゃ。変な虫がつきそうで。。。」
お爺様はブツブツ言っている。
「お嬢様。今日は、絶対にこのロダンから離れませんように」
ロダンはなぜか殺気を飛ばしている。殺気を向けられた、リットとランドは困惑しながらも『キレイだ』と褒めてくれた。
「ケイト、アークを呼んでくれ。厨房に居るはずだ」
ロダンはケイトに指示し、ローブを取りに行った。
「ロダン様お呼びでしょうか?」
「アーク、今日は非番だったが、お嬢様の影に入れ。護衛をしてもらう。万が一があるかもしれない」
と、アークに魔法使いが着てそうなローブを押し付けた。
アークは『え~』って顔で無言でズズズと私の影に入って行く。
「お嬢様。今日はお誘いが多いでしょうが、初対面の者とは私かマーサを先に通して下さい。しつこい様なら無視で構いません」
ロダンは昨日と反対の事を言いだした。
「昨日はデビューだから色んな人と踊ったら?的な事を言ってなかったかしら?」
「予定変更です。ご理解下さい」
つ~んとロダンは意見を変える気がない様だ。
ま~いいけど。知らない人と踊るぐらいなら私は立食コーナーに行きたい。
「お嬢様。大丈夫ですよ。こう見えて私、元伯爵家の奥方をしておりましたのよ。変な輩は、私がチョチョイのチョイッとお話を付けますので、お嬢様はニコッと微笑んで下されば結構ですよ」
今日のマーサは最高にお色気ムンムンな美魔女よろしく、ふふふふふと妖艶に微笑んでいる。いつもの『研究スタイル+目の下のクマ』とかけ離れているので、久々の美魔女にドキッとなる。
「今日は初めて会った頃のマーサみたいね。色っぽすぎてそわそわしちゃうわ」
「まぁ。お嬢様の方が若葉のようでキラキラと可愛らしいですわよ」
「では、行こうかの。ごほん。ジェシカ嬢、この老いぼれの手を取ってくれるかの?」
ウィンクしてお爺様はエスコートのお許しを請うてくれた。
「ええ、よろしくてよ」
私もお爺様の手を取って、馬車へ乗り込む。ロダンとマーサも同乗する。リットとランドは護衛なので馬で付いて来る。
王城の会場入り口付近では、様々なデビュタントが入場待ちで集まっている。デビュタントに関係のない貴族達は先に会場入りをして迎え入れてくれるのだ。
「あら、誰かと思ったら、あなたサボン姫ではない?」
突然声をかけられて、振り向いた先にいたのは、銀の髪の儚げなご令嬢だった。えっ?セリフと顔が合ってないな。誰だろ?
マーサをチラ見するとバッとカーテシーをした。
「ご機嫌麗しゅう存じます。フェルミーナ様。ジェシカ様の付き添いのマーサと申します」
フェルミーナ様!あの突撃姫じゃん!私は慌ててマーサの横でカーテシーをし首を垂れる。
「フェルミーナ様、確認ですが、サボン姫とはこちらのお嬢様の事でしょうか?」
おぃおぃ。草。サボン姫って。前世なら爆笑もんじゃん。流行らせないでくれよ~。
フェルミーナ様は、腕を組んで顎を上げ、フンっと鼻で笑う感じで口を開いた。
「ええ、そうよ。サボンで成り上がった公爵令嬢でしょう?生意気にもランド様を護衛に付けているそうじゃないの。噂は本当だったのね。成金が金子で殿方を誘惑するとは、はしたないにも程があるんじゃないかしら。身の程をわきまえなさい。ランド様もそんな娘の護衛などやめて、今日は私をエスコートして下さいません事?」
お爺様は無言でフェルミーナ様をじっと見ている。ロダンはさっとどこかへ行ってしまった。リットはお爺様を庇う感じで前に立つ。
「ご主人様、お嬢様、申し訳ございません。直ぐに追い払います」
ランドはお爺様に一礼し、お姫様と対峙した。
「王女様、こちらは本日デビューする方たちの待合場となっております。騒がれては困ります。それに我が主人を侮辱しないで頂きたい。私、自ら護衛の任に付いたのです。貴方には関係のない事だ。お話なら後日改めて、王様の前で致しましょう」
フェルミーナ様はオロオロし始めた。
「お、お父様は関係ないわよ。あなたがエスコートしてくれればここから去るわ。そこのサボンの令嬢、ランド様を渡しなさい」
と、私を指差す。え~、私かよ。みんなこっち見てるじゃん。目立ちたくないのに。。。
「フェルミーナ様、私は仕事中ですし、そうでなくても、あなたをエスコートしたいとは微塵も思いません。お引き取りを」
え~!公開処刑じゃん。ランドは王女様をバッサリ拒否した。
みんな見てるよ。どうするの?怒り爆発しない?こそっとフェルミーナ様を覗き見ると、プルプル拳を握って赤い顔だ。
あかん。完全に怒ってる。プンだよ。周りの貴族達もコソコソ話したりニヤニヤ見てるし。
「お待ち下さい。ランド様」
それでも諦めきれないフェルミーナ様は、ランドの手を引いて『イヤイヤ~』と駄々をこねだした。ランドはみんなの目があるから振り解きたいけど対応に困っている。
私はこそっとマーサに耳打ちする。
「マーサ、あの方っていつもあんな感じなの?どうすればいいのかしら?」
「お嬢様。フェルミーナ様はわがままで有名です。先ほどロダン様がどちらかに行かれましたので、帰るまでは無言でよろしいですよ。私が対処します。大丈夫です」
マーサはニコッと庇ってくれた。頼もしい。
「フェルミーナ様。王が呼んでおります」
ババ~ンと現れたのは、宰相アダム様だった。
ロダン~もしかして呼びに行ったのってアダム様かよ。。。救いの神じゃ無いじゃん。あかんあかん、下を向いておこう。目があったら話しかけられる。知らんぷり知らんぷり。
「えっ!お父様が。。。いっ今すぐ?なぜなの?たかが公爵に」
フェルミーナ様はすごい動揺し始める。王様が怖いのか?
「そうです。そこの近衛達、姫を王のところへお連れしろ」
はは~、と近衛達はフェルミーナ様の両脇を掴んで浮かせて持って行った。
ははははは。結構雑なんだね。日常茶飯事な感じ?でも、タイミングが悪い。今からデビューなのに。ちくしょう。
「クライス殿。大丈夫でしたか?ウチの姫が失礼いたしました。謝罪は後日改めて」
とお爺様とアダム様が話している。私はスススススっとマーサの後ろに隠れた。
「ジェシカ嬢も申し訳ございません。王より改めて謝罪がありますので、ご容赦ください」
せっかく隠れたのに、アダム様はワザとちょっと大きい声でマーサ越しに話しかけてきた。
チッ。隠れたからワザとやったな。。。くそ~。
その時ギャラリーから『まぁ、王様から?』『謝罪ですって?』と、ざわざわ声がしている。もう!余計目立ってきたじゃん。
「いえ。宰相様。お気遣い頂かなくても今のお言葉で十分にございます。それに、今回は私の護衛の私情にございます。わざわざ王様にお時間を頂かなくても私共は問題ございません。特に何をされた訳ではございませんので」
深窓の令嬢の様な仕草で礼を取る。絶対目を合わせないぞ。
「ほほ~。謝罪は必要ないとな。王直々だが?」
「はい。私には恐れ多い事にございます。どうしてもとおっしゃるなら、この護衛のランドと王様と姫様でじっくりお話しをする機会を与えて頂けませんでしょうか?」
「はっはっはっ。相分かった。今回の謝罪の代わりにその様に致しましょう。寛大な公爵令嬢の御心に、こちらこそ礼を申し上げます」
宰相は最後にニヤッと笑い早々に立ち去って行った。
あっぶな~。みんなの前で変な接点作ってしまう所だった。
残った私たちはちょっと居心地が悪かったけど、お爺様は『儂らは悪くない。堂々としていろ』とおっしゃったが。。。ちょっとね~コソコソ話が気になるなぁ。。。小心者ですみません。
あ~、早く入場してしまいたい。
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