【短編】1day彼氏は魔法使い

Akila

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03 お買い物

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 私たちは近所のペンギンマークのドンキなホーテへ買い物に行った。ちょっとクリストファーさんの服装は微妙だけど… まぁ今だけだしいっか。

「ユーリ殿! これは… 何て色なんだ! 絵が輝いているぞ!?」

「輝く? あぁ電飾ですよ。電気… 人工的な光を当てて遠くからでも見えるようにしているんです」

「何と! 人工的… やはり魔法ではないのか?」

「はい。科学技術です。う~ん… 職人技的な?」

「職人か! 人の手でこのような物が…」

 店の入り口で立ち止まる、一見外国人に見えるクリストファーさんはとても目立っている。恥ずかしいからさ、ちょっと、早く買い物しようよ。

「クリストファーさん、感動しているところ悪いんですが… 人通りの邪魔ですので。お店に入りましょうか?」

「ん? あぁ」

 口を開けてまだ看板を見ているクリストファーさんの手を引いて店に入った。

「じゃぁ、まずは簡単なものから。着替えから見に行きましょうか?」

 商品が山積みになっている通路を、いちいち立ち止まるクリストファーさんを引っ張りながら歩く。『これは何だ?』『あれは何だ?』と一々立ち止まるのでなかなか進まない。

「クリストファーさん、後でたくさん見れますから。まずは目的のものを買いましょう?」

「すまん。どれも珍しくてな。それにこの音楽はどこから聞こえるのか? 楽団がいるのか? それにしても少々耳が痛くなるような曲だが」

「楽団はいませんよ。これも人工的なアレです」

 ふむふむと納得したのか、やっと私の横に来て並んで歩く。ふ~、後ろ確認しながら歩くとか… 本当に物珍しいんだろうな。しばらく店内を練り歩いたら目的地に着いた。

「ここです。パジャマは今着てもらってるのでいいとして… シャツとパンツ、靴下、下着ってとこかな? 好きな色とかありますか?」

 と、商品を見ながら声をかけるが返答がない。

「あれ? クリストファーさん? はぁ… また?」

 辺りを見回すと、少し離れた所で夜のお姉さん達に絡まれていた。ナンパされてるじゃん。もう!

「~しかし、婦女子がこんな格好を。膝が見えているぞ? それより今夜は夜会か何かか?」

「夜会とかウケるんだけど。どこのセレブだよ。てかお兄さん今から遊ぼうよ」

「いや、私は買い物をしに来たのだ。あなた達は家に帰ったほうがいいぞ? もう夜も遅い。従者はいないのか?」

「はぁ全然遅くないし? てかまだ十時だし、夜はこれからじゃん? ねぇ~遊ぼうよ~」

 お姉さん達は腕を絡ませ、何気にペタペタと腕を触りまくっている。す、すげぇ。って、入りずらいな… どうするか。

「おぉ! ユーリ殿、こちらのお嬢様達にお誘い頂いたんだが… すまない。私は連れがいるのでこれで失礼する」

 と、全く悪気なくあっさりお姉さま達を置いて、ニコニコと私の元へ帰って来た。

「何あのブス。全然釣り合ってないじゃん。行こっ」

 あまりにサラッと帰ってしまったクリスにムカついたのか、お姉様方は私を睨んでから、まぁまぁ聞こえる音量で毒づいてからどこかへ消えていった。つらい。

「クリストファーさん、あなたはとても顔面がいいので気をつけて下さいね。その辺りは私はあんまり役に立たないので。次、お姉さんに絡まれても助けられませんよ?」

「顔面? 顔か… しかし、先ほどのお嬢様達は『お酒を飲みたいな、どこか知らない?』と声をかけてきたんだ。なので『私は買い物をしにきた客だ』と答えたら、色々話し込んでしまったのだ… 始めは店員と間違えただけだと思ったのだが。いや、しかし、女性からあのように堂々と… こちらの女性は積極的と言うか何というか…」

 と、満更でもないクリストファーさん。ほっぺが少しだけ赤い。はいはい、よかったですね初ナンパ。

「文化の違いですかね。では次も自分であしらって下さいね。それより服ですよ。数日なので、私が適当に選んじゃっていいですか?」

「あぁ、お任せする」

 テンションMAXプラス初ナンパで上機嫌のクリストファーさんは、イケメン具合がさらに上がっている。ニコニコと笑顔を見せると、近くにいる女子が『うっ』『眼福』と黄色い声をダダ盛らせていた。
 しかし、ドンキなホーテでも素材がいいので、クリストファーさんは何でも似合う。ブ~、イケメンってずるい。って事で、これとこれとこれ、はい次だ。

「次は歯ブラシとか生活雑貨を買って、食料も買って帰りましょう。クリストファーさんはお酒飲みますか?」

「いや… しかし…」

「別に遠慮しなくていいですよ。お酒ぐらい」

「嗜む程度には好きだ」

「そ、そうですか」

 やっば。『(お酒が)好き』って微笑まれるだけで心臓がバクバクする。顔がいいってすごいな。破壊力が半端ない。

「どうした? 顔が赤いぞ?」

「クリストファーさんの顔が良過ぎて… 結構、その顔のせいで誤解されがちなのかな? イケメンっていいのか悪いのか… とにかくあんまり愛想を振り撒かないように。これじゃ~女子ホイホイじゃん」

「よくわからんが… 善処しよう」

 気を取り直して、買い物の続きを。

 歯ブラシコーナーではなぜかクリストファーさんはまた興奮して、展示されている電動歯ブラシに魅入っていた。歯を綺麗にする習慣が不思議なようだ。ついでに歯磨き粉にもはしゃいでいた。いろんな味があるからね。意味はわからないが、パッケージが面白いと言っていた。

 そんなこんなで、このお店になぜか二時間も滞在し、その間、女子について回られ、スマホで動画を撮られ、私は… 『ブス』と何度もディスられた。早よ帰りたい。ぐすん。

「いや~男子がいると荷物運びが楽だわ~。ありがとう、クリス」

「ほとんどが私の物なんだ。気にするなユーリ。しかし、こんな夜更けにあんなにも街が明るいとは… それに綺麗な建物がいっぱいだった。あの馬がいない馬車も… また行きたいな」

「そうだね。明日また行こっか」
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