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初恋

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ポカリと開いた穴からコロンと出てきた彼は、小さな足で地面にたっしっと着地すると、自ら飛び込み滑り落ちたてきたその穴を覗き込む。
彼の後を追い、同じように滑り落ちてくるであろう人物は、彼の期待どおり来るだろうか。
そんな一瞬の闇を振り払うのは、目の前を光で満たす様な眩しい笑顔。
続いて高い笑い声が彼の心を沸き立たせる。
思わず抱き止めると、くすぐったそうに体をゆらながら腕の中で何か訴えている。
緩めた腕の中で間近に捉えたキラキラと輝いた瞳は再び細く伸び、愛らしい口が大きく開く。

「もう一度、もう一度行こうよ」

音楽のような音色でそう言うと、小さな手が彼の腕をつかみ、反対側の手は彼の手のひらをキュッと掴んだ。
彼はみるみる熱くなる顔を見られまいとすっくと立ち上がると、小さな手をしっかりと握り、
「今度は一緒に滑らない?」
と誘ってみる。

「やった。早く行こう」

彼は小さな手に引っ張られながら、ずっとこのままこの手を離さずにいられたらいいのに、とそっと願った。

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