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命令

二ー32 14歳 2/2

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最近はリシャールの側近ということで、おれも憧れの対象になっているらしい。
数年前の様に愛妾と揶揄される事はなくなったが、その代わり側近としての力量を試され戦場での戦いぶりも話題にされる。
ルーの領域までは程遠いが、そこそこは腕も上がったつもりだ。

不意にパンプローナでのジェーン様を思い出し、笑いがこぼれる。
それを不敵な笑みに感じたらしく、目の前の少年がピリリと緊張するのがわかる。

「い、いかがでしょうか! 」

威勢の良い気概が心地よい。
ジェーン様の時のようにならない様に、全力で。

「いいよ。おいで。」

今度はちゃんと不敵な笑みを浮かべたつもりだが、少年達の顔がみるみる赤くなっていくので、おそらく成功したのだと思う。




少年たちの相手を終え、汗を流して城に戻ると、門兵からつい先ほどロベールが帰還したとの旨を聞く。
いそいで執務室に向かうと、ロベールとウィルとディーターと真剣な顔で話し込んでいた。

「ロベール待ってたよ!」

声をかけると着の身着のまま報告に着たらしいロベールが疲れた表情の中、笑みを浮かべて振り返る。

「おう。ジャン。済まないな。しっかりオレの仕事引き受けてもらって。ついでに今日は見習い達の世話だったらしいな。ずいぶん興奮した顔で演習を終えた見習い達が話してたらしいじゃないか。ジャン殿すげぇって。」
「やめてよ。からかってんでしょ。」
「そうでもないさ。争奪戦が起きそうな勢いらしいぞ。お前の従騎士になりたいってな。」
「なんだよそれ。もっと上狙えよ。しょぼい事言ってんなあいつら。」
「はっはっは。確かに。騎士になるならもっと目指すところがあるか。はっはっは。」

なんだか無理に明るく振る舞っているようなロベールに違和感を感じるが、とりあえず近況が知りたい。

「なんの話してたの? 」
「ああ・・・。フィリップ様の話だよ。久々にあったフィリップ様の成長が目まぐるしっくてな。ジェフロア様もしっかりと大人になられて、三人で並んでいたら見栄えが良すぎたよって話をしていたんだよ。」
「ああ。三人って、もう一人は前リシャールが絡んでしまった子だよね。確かきれいな子だって話だったよね。」

そう言うと、ウィルとディーターが目に見えて慌てている。
ロベールも焦りを隠せない様子を見ると、なんだか不穏な気持ちになってくる。

「そ、そうなんだよ。なんかやたらきれいな少年なんだ。ほら、有名なローマのアンティノウス・・・。」
「知らないよ。」
「あー。そうか。知らないよな! 」
「で?」
「あ。ああ。それで・・・立派に成長されてましたって、話を・・・。」

なにかある。
直感的に感じ取り、ロベールの目を覗き込むようにしながら睨みつける。

「リシャールとその子との間で何かあったの?」

間近に見るロベールは珍しく青い顔をして冷や汗を流していた。


ーーーーーあとがきーーーーー

ぐぬぬ。ピュルテジュネ家とカペー家のこの難しい関係性を文章に落とせる気がしません。
読みにくいでしょうが、才のなさゆえ申し訳ありません。

そして再び波乱の様相であります。
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