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使者

二ー25 シチリアの使者3

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 演習所を後にしたおれたちも食事を取るべく、城に戻る準備をする。
ベランジェールが気を効かせて用意してくれていたハーブの沢山入った水桶の周りを数名の騎士たちと共に取り囲み、たわいのない話をしながら体を清める。

最近、全裸を見られるという以前は呪いと命名していた減少がなくなったと思う。
裸を見られたから云々という状況でもなくなって意識をしなくなったのかもしれない。
兵士同士では裸の付き合いなど日常過ぎて、むしろ下手に意識するほうがなんか変な空気になると言ってもいい。
銭湯に入ってタオルで体を隠さなくなった程度の感覚だ。
今思えば何をあんなに気にしていたのだろうと、疑問にさえ思ってくるぐらいだ。
下世話でリアルな情事の話をしてくる騎士達との会話に慣れてしまったと言ったほうが良いのかもしれない。
はっきり言って、この手の会話は距離を縮めるには一番だったりするし、おれの話は必然的にリシャールとの情事の話になるので恐れ多いという事で聞かれないので恥ずかしさもない。
そして、今も、その手の会話を嬉々として話す、経験豊かなダニエルの話で話題はもちきりだったりもする。
美しい見た目に経験豊富なこの色男に視線が注がれる事が多く、おそらくダニエルと一夜を共にしたいと願う者も男女共に数多いるようだが、当人のダニエルは、あまり乗り気ではないらしい。
それだけに、サンチョの恋が実る可能性を考えてしまう。
恋が実ったからといって、それが良い事なのかと言われると、なんとも言えない複雑な心境になるのだが、だがしかし、それよりも、最重要事項が待ち受けている。
ベランジェールの告白の手伝いという任務だ。

一般的に来客のおりは広間にてテーブルを囲んで食事をする事の多いのはどこに行っても同じで、ナバラでも食事の広げられた大きなテーブルを眺めながらシチリアの騎士たちと集まり、食前酒を飲みながら主賓のジョーンの来るのを待つ。

程なく、部屋の扉が開く音と共に会場はシンと静まり返った。

揃いのドレスを着た二人の妖精のような美しい姫達に目を奪われたからだ。
二人は手を取り合って華やかな芳香と共に軽く礼を取る。
惚けてその姿を眺めているサンチョにダニエルの肘が合図を送り、エスコートに向かうとジョーンがにこやかに微笑みそれを受ける。
シチリアの騎士エムレにエスコートされたベランジェールが着席し、サンチョの号令で会食が始まる。
今回は私的な訪問ということで、おれたちも同席を許され、和やかな雰囲気で会話もはずんだ。

特にエムレは明るく社交的で、冗談を交えながらシチリアの国の話を聞かせてくれた。
ナバラより遥か南に位置するメディテレニアンという海に囲まれた温暖な地域にあるシチリア王国は、建国50年弱とまだ年若い国だという。
血の気の多い荒々しい海の男達に、気の強い女達は陽気で美しく、多種多様な民族が暮らしている。
信仰する宗教が違えども共に暮らせる新しい国で、自分はアルメニア人だが、ヘブライもムスリムも友人であると、エムレは力強く話す。
そんな国に現れたジョーンの美しく気高いその姿は、自由の象徴であり希望なのだと、エレムが瞳をキラキラとさせている。
それは、もはや崇拝の眼差しだ。

「エムレはいつもこうなんだ。大袈裟困るよ。」

ジョーンがはにかみながら発言すると隣に座っていたベランジェールが声を上げる

「大袈裟ではありませんわ。本当にジョーン様は眩しい程輝いてらして、それでいて目を逸らせぬ魅力があります。民達の希望となるのは至極当然の事です。」

ベランジェールも瞳を輝かせている。


ーーーーーあとがきーーーー

シチリア王国、まだ設定不足です。すいません。
でも想定外登場エムレ。
ラテン系イケメンは作者の好きなタイプであります。

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