44 / 71
使者
二ー23 シチリアの使者1 1/2
しおりを挟む
サンチョはおそらくリーダーであろう最初にエムレと名乗った男を先頭に1団を引き連れて城門へと入るとまずは鎧や武器をあずけてもらう。
揃いの武装をほどいた彼らはヨーロッパ風の者や、アラブ系のゆったりとした服を着た騎士見習いの様な少年もいれば、エムレなどは着物の様な形の上着のアジア系だったりと、多種多様だ。
エムレはアジア系の服を着ているが、どちらかと言うと西アジア系で、きりりと引き締まった体に小さな頭が乗り、日に焼けた肌に情熱的な目をたたえ、口ひげが顔の甘さを抑えワイルドに見せている。
要はイケメンだ。
彼らを大広間に案内しおわり、ベランジェールを呼びに行こうと部屋から出ると、ベランジェールが廊下を走ってきた。
「シチリアの使いの方が来られたのでしょう? ジョーン様はいらっしゃらなかったの? 」
急くように聞くベランジェールをなだめるようにしながら説明する。
「先触れのようだよ。女性は居なかったから。」
それを聞くとベランジェールはがっかりとその場にしゃがみこんだが、すぐに姫の顔になると、穏やかに微笑む。
おれの手を取りエスコートさせながら、数名の家臣と共に大広間に入っていく。
広間ではサンチョが所在無げに1団の横に立ち、案内役の家臣の様にしており、ダニエルは同じ様に側に控えながら楽しそうに、にやにやとしている。
その光景に少し首をかしげつつも、ベランジェールは一段高い壇上に設けられた椅子の前に立った。
「ようこそいらっしゃいました。 王は遠方へと出かけており不在でおりますので、私、ナバラ王が娘ベランジェールがご挨拶いたします事をお許しください。そして・・・そこに居りますのが、兄サンチョでございます。 」
ベランジェールがシチリアの1団の隣に立つ大きな男を紹介する。
それを聞いてエムレが「えぇぇ!? 」と大声を上げ、すぐに隣に立つサンチョに片膝を着き頭を深々と下げた。
それに習い1団が礼をとる。
「も、申し訳ございません。ナバラのサンチョ王子と気が付かず、無礼な態度を取りましたこと、お許しください。」
エムレが焦ったように謝るその後ろで、騎士見習いの少年が肩を揺らして笑っている。
「くっくっくっ。 」
我慢出来なくなったのか、少年は声を出して笑い始めた。
「あっはっはっは。相変わらずだね、サンチョ様は。 案内を買って出たは良いけど、大方自分の身分を明かすタイミングをのがして困っていたんだろ? あなたは人を騙すような人ではないからね。 」
少年そう言いながら、申し訳なさそうな顔のサンチョの側に寄る。
騎士見習い風情の行動に場内は剣呑な空気に包まれるが、少年は鈍感なのか、肝が座っているのかわからない雰囲気でニコニコと笑いながらサンチョの背に手を当て軽く押す。
サンチョは何やら気がついた雰囲気で周囲に手を出すなと合図をすると、されるがまま壇上へと登っていった。
少年はニッコリとサンチョに笑いかけ、段下でゆっくりとターバンを取った。
布からこぼれ落ちるようにきれいな金色の髪がふわりと肩に落ち、可愛らしい小さな口といたずらそうな緑色の瞳が楽しそうな表情を作る。
「私は騙すつもりでいたけれどね。ベランジェール。 久しぶり。 」
ベレンガリアは小さく悲鳴を上げると、止めるまもなくその少年に飛びついた。
「ジョーン様!! 」
そうベランジェールに呼ばれ、彼女をしっかりと抱きとめるとその人物は驚く場内の者達に軽くウィンクをする。
「ジョーン様ぁ?? 」
広間は騒然とし、この小さな騙し合いに誰もがドキモを抜かれた。
ナバラの者は眼の前の光景に驚き、シチリアの者はサンチョへの無礼への申し訳なさか、ジョーンの行動への申し訳なさか、きっと、両方だろう。
深く頭を下げている。
その混乱する空気を切ったのはやはりジョーンだった。
彼女はベランジェールを抱きしめたまま、ダニエルをひたと見据えると、リシャール顔負けの覇気を出している。
「やぁ。ダニエル・・・。君とこのナバラで会おうとは思いもしなかったよ。・・・彼女には、何も、していないだろうな? 」
ダニエルはヘビに睨まれたかのように動かない。
揃いの武装をほどいた彼らはヨーロッパ風の者や、アラブ系のゆったりとした服を着た騎士見習いの様な少年もいれば、エムレなどは着物の様な形の上着のアジア系だったりと、多種多様だ。
エムレはアジア系の服を着ているが、どちらかと言うと西アジア系で、きりりと引き締まった体に小さな頭が乗り、日に焼けた肌に情熱的な目をたたえ、口ひげが顔の甘さを抑えワイルドに見せている。
要はイケメンだ。
彼らを大広間に案内しおわり、ベランジェールを呼びに行こうと部屋から出ると、ベランジェールが廊下を走ってきた。
「シチリアの使いの方が来られたのでしょう? ジョーン様はいらっしゃらなかったの? 」
急くように聞くベランジェールをなだめるようにしながら説明する。
「先触れのようだよ。女性は居なかったから。」
それを聞くとベランジェールはがっかりとその場にしゃがみこんだが、すぐに姫の顔になると、穏やかに微笑む。
おれの手を取りエスコートさせながら、数名の家臣と共に大広間に入っていく。
広間ではサンチョが所在無げに1団の横に立ち、案内役の家臣の様にしており、ダニエルは同じ様に側に控えながら楽しそうに、にやにやとしている。
その光景に少し首をかしげつつも、ベランジェールは一段高い壇上に設けられた椅子の前に立った。
「ようこそいらっしゃいました。 王は遠方へと出かけており不在でおりますので、私、ナバラ王が娘ベランジェールがご挨拶いたします事をお許しください。そして・・・そこに居りますのが、兄サンチョでございます。 」
ベランジェールがシチリアの1団の隣に立つ大きな男を紹介する。
それを聞いてエムレが「えぇぇ!? 」と大声を上げ、すぐに隣に立つサンチョに片膝を着き頭を深々と下げた。
それに習い1団が礼をとる。
「も、申し訳ございません。ナバラのサンチョ王子と気が付かず、無礼な態度を取りましたこと、お許しください。」
エムレが焦ったように謝るその後ろで、騎士見習いの少年が肩を揺らして笑っている。
「くっくっくっ。 」
我慢出来なくなったのか、少年は声を出して笑い始めた。
「あっはっはっは。相変わらずだね、サンチョ様は。 案内を買って出たは良いけど、大方自分の身分を明かすタイミングをのがして困っていたんだろ? あなたは人を騙すような人ではないからね。 」
少年そう言いながら、申し訳なさそうな顔のサンチョの側に寄る。
騎士見習い風情の行動に場内は剣呑な空気に包まれるが、少年は鈍感なのか、肝が座っているのかわからない雰囲気でニコニコと笑いながらサンチョの背に手を当て軽く押す。
サンチョは何やら気がついた雰囲気で周囲に手を出すなと合図をすると、されるがまま壇上へと登っていった。
少年はニッコリとサンチョに笑いかけ、段下でゆっくりとターバンを取った。
布からこぼれ落ちるようにきれいな金色の髪がふわりと肩に落ち、可愛らしい小さな口といたずらそうな緑色の瞳が楽しそうな表情を作る。
「私は騙すつもりでいたけれどね。ベランジェール。 久しぶり。 」
ベレンガリアは小さく悲鳴を上げると、止めるまもなくその少年に飛びついた。
「ジョーン様!! 」
そうベランジェールに呼ばれ、彼女をしっかりと抱きとめるとその人物は驚く場内の者達に軽くウィンクをする。
「ジョーン様ぁ?? 」
広間は騒然とし、この小さな騙し合いに誰もがドキモを抜かれた。
ナバラの者は眼の前の光景に驚き、シチリアの者はサンチョへの無礼への申し訳なさか、ジョーンの行動への申し訳なさか、きっと、両方だろう。
深く頭を下げている。
その混乱する空気を切ったのはやはりジョーンだった。
彼女はベランジェールを抱きしめたまま、ダニエルをひたと見据えると、リシャール顔負けの覇気を出している。
「やぁ。ダニエル・・・。君とこのナバラで会おうとは思いもしなかったよ。・・・彼女には、何も、していないだろうな? 」
ダニエルはヘビに睨まれたかのように動かない。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

龍神様の神使
石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。
しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。
そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。
※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。


真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる