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ロマンス
二ー17 ロマンス1 2/2
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連れて行かれたのは、大きな扉の部屋。
中に入ると室内は大きな棚が並び、数え切れないほどの本が並べられている。
「さぁ。ジャン殿。ここは私達兄妹の秘密基地なの。大切なものはこの部屋のこの机の下の・・・。」
ベランジェールは部屋の奥の大きくどっしりとした執務テーブルの下に潜りこんだと思うと、ひょっこりと顔を出す。
「この箱の中! 見てください! ジョーン様からのお手紙! 」
キラキラとした顔で重装な木箱を開くと、幾つかの筒状に丸められた手紙を見せてくれる。
「それでね、これが今日届いた手紙でしてね、ジョーン様、本当に会いに来てくださるそうなの! シチリアを出立します。ですって! 」
手紙に綴られている文字は女性らしく柔らかだが、文面は無骨な武人風で、そのアンバランスな所が、今まで想像出来なかったジョーン様という人物の姿をぼんやりと形作らせてくれる。
ベランジェールは今日来たばかりの手紙を大切そうに胸に懐き、喜びを溢れ出しながらくるくるとスカートを揺らし回っている。
ダニエル曰く、お荷物として置いていかれてから、このナバラ兄妹と過ごす時間は楽しく、さみしいと思う日は少なかった。
サンチョにはおすすめの本を聞いたり、乗馬を教わったり、ベランジェールとは意外と話が合うことが多く、こうして心を開いてくれている様子に、なんだか嬉しくなってくる。
「ジョーン様とは、いつ出会われたのですか? 」
その言葉にピタリとベランジェールの動きが止まる。
しまった。距離を縮めすぎたか? いくらリシャールの幼なじみとは言え、一国の姫に失礼だったかも知れない。
そう思ったのも束の間、ベランジェールの顔が間近に近づき、両手をギュッと握ってきた。
「ジャン殿! もしやこれは、恋バナ的な、ロマンスな話題ですわよね! 」
「え? あ。ま、まぁ。っっん? そ、そうなんですか? 」
「私、実は仲の良いお友達がいませんの。だから、こういうロマンスなお話ってすっごく憧れていたんです。城の者たちの、ロマンスなお話をしていたりするのを聞いたりはするのだけど、私の恋の相手がジョーン様だけに、誰にも話す事が出来なくって。」
「えぇぇ? 」
「ジャン殿は、リシャール様の恋人でいらっしゃるのだし、ピュルテジュネ兄妹を好きな者同士で、仲良くいたしましょう。」
ベランジェールは嬉しそうに握った両手をぶんぶんと振りながら、早口で言うと、「では、」と真剣な眼差しで見つめてくる。
「私から、恋バナ始めますわね!」
ーーーーーあとがきーーーーー
中世において、手紙は羊皮紙が中心だったようです。
パピルス*¹という紙のような物は古代のエジプト、ローマ時代から存在したらしいのですが、ローマの衰退と共にその仕様は稀になり、変わって中国から伝わった紙が徐々に広がり、ちょうどジョーンがシチリアに居た頃、製紙技術はシチリア王国建国のちょっと前からあったのではないかと考えられているみたいなので、紙が使用されていたのではないかと考察しています。
*¹パピルス(ウィキ参照)
https://fr.wikipedia.org/wiki/Papyrus_(papier)#Histoire_des_papyrus
中に入ると室内は大きな棚が並び、数え切れないほどの本が並べられている。
「さぁ。ジャン殿。ここは私達兄妹の秘密基地なの。大切なものはこの部屋のこの机の下の・・・。」
ベランジェールは部屋の奥の大きくどっしりとした執務テーブルの下に潜りこんだと思うと、ひょっこりと顔を出す。
「この箱の中! 見てください! ジョーン様からのお手紙! 」
キラキラとした顔で重装な木箱を開くと、幾つかの筒状に丸められた手紙を見せてくれる。
「それでね、これが今日届いた手紙でしてね、ジョーン様、本当に会いに来てくださるそうなの! シチリアを出立します。ですって! 」
手紙に綴られている文字は女性らしく柔らかだが、文面は無骨な武人風で、そのアンバランスな所が、今まで想像出来なかったジョーン様という人物の姿をぼんやりと形作らせてくれる。
ベランジェールは今日来たばかりの手紙を大切そうに胸に懐き、喜びを溢れ出しながらくるくるとスカートを揺らし回っている。
ダニエル曰く、お荷物として置いていかれてから、このナバラ兄妹と過ごす時間は楽しく、さみしいと思う日は少なかった。
サンチョにはおすすめの本を聞いたり、乗馬を教わったり、ベランジェールとは意外と話が合うことが多く、こうして心を開いてくれている様子に、なんだか嬉しくなってくる。
「ジョーン様とは、いつ出会われたのですか? 」
その言葉にピタリとベランジェールの動きが止まる。
しまった。距離を縮めすぎたか? いくらリシャールの幼なじみとは言え、一国の姫に失礼だったかも知れない。
そう思ったのも束の間、ベランジェールの顔が間近に近づき、両手をギュッと握ってきた。
「ジャン殿! もしやこれは、恋バナ的な、ロマンスな話題ですわよね! 」
「え? あ。ま、まぁ。っっん? そ、そうなんですか? 」
「私、実は仲の良いお友達がいませんの。だから、こういうロマンスなお話ってすっごく憧れていたんです。城の者たちの、ロマンスなお話をしていたりするのを聞いたりはするのだけど、私の恋の相手がジョーン様だけに、誰にも話す事が出来なくって。」
「えぇぇ? 」
「ジャン殿は、リシャール様の恋人でいらっしゃるのだし、ピュルテジュネ兄妹を好きな者同士で、仲良くいたしましょう。」
ベランジェールは嬉しそうに握った両手をぶんぶんと振りながら、早口で言うと、「では、」と真剣な眼差しで見つめてくる。
「私から、恋バナ始めますわね!」
ーーーーーあとがきーーーーー
中世において、手紙は羊皮紙が中心だったようです。
パピルス*¹という紙のような物は古代のエジプト、ローマ時代から存在したらしいのですが、ローマの衰退と共にその仕様は稀になり、変わって中国から伝わった紙が徐々に広がり、ちょうどジョーンがシチリアに居た頃、製紙技術はシチリア王国建国のちょっと前からあったのではないかと考えられているみたいなので、紙が使用されていたのではないかと考察しています。
*¹パピルス(ウィキ参照)
https://fr.wikipedia.org/wiki/Papyrus_(papier)#Histoire_des_papyrus
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