《第二幕》テンプレ転移した世界でロマンスに目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

文字の大きさ
上 下
35 / 71
ロマンス

二ー17 ロマンス1 2/2

しおりを挟む
連れて行かれたのは、大きな扉の部屋。
中に入ると室内は大きな棚が並び、数え切れないほどの本が並べられている。

「さぁ。ジャン殿。ここは私達兄妹の秘密基地なの。大切なものはこの部屋のこの机の下の・・・。」

ベランジェールは部屋の奥の大きくどっしりとした執務テーブルの下に潜りこんだと思うと、ひょっこりと顔を出す。

「この箱の中! 見てください! ジョーン様からのお手紙! 」

キラキラとした顔で重装な木箱を開くと、幾つかの筒状に丸められた手紙を見せてくれる。

「それでね、これが今日届いた手紙でしてね、ジョーン様、本当に会いに来てくださるそうなの! シチリアを出立します。ですって! 」

手紙に綴られている文字は女性らしく柔らかだが、文面は無骨な武人風で、そのアンバランスな所が、今まで想像出来なかったジョーン様という人物の姿をぼんやりと形作らせてくれる。

ベランジェールは今日来たばかりの手紙を大切そうに胸に懐き、喜びを溢れ出しながらくるくるとスカートを揺らし回っている。

ダニエル曰く、お荷物として置いていかれてから、このナバラ兄妹と過ごす時間は楽しく、さみしいと思う日は少なかった。
サンチョにはおすすめの本を聞いたり、乗馬を教わったり、ベランジェールとは意外と話が合うことが多く、こうして心を開いてくれている様子に、なんだか嬉しくなってくる。

「ジョーン様とは、いつ出会われたのですか? 」

その言葉にピタリとベランジェールの動きが止まる。

しまった。距離を縮めすぎたか? いくらリシャールの幼なじみとは言え、一国の姫に失礼だったかも知れない。

そう思ったのも束の間、ベランジェールの顔が間近に近づき、両手をギュッと握ってきた。

「ジャン殿! もしやこれは、恋バナ的な、ロマンスな話題ですわよね! 」
「え? あ。ま、まぁ。っっん? そ、そうなんですか? 」
「私、実は仲の良いお友達がいませんの。だから、こういうロマンスなお話ってすっごく憧れていたんです。城の者たちの、ロマンスなお話をしていたりするのを聞いたりはするのだけど、私の恋の相手がジョーン様だけに、誰にも話す事が出来なくって。」
「えぇぇ? 」
「ジャン殿は、リシャール様の恋人でいらっしゃるのだし、ピュルテジュネ兄妹を好きな者同士で、仲良くいたしましょう。」

ベランジェールは嬉しそうに握った両手をぶんぶんと振りながら、早口で言うと、「では、」と真剣な眼差しで見つめてくる。

「私から、恋バナ始めますわね!」




ーーーーーあとがきーーーーー

中世において、手紙は羊皮紙が中心だったようです。
パピルス*¹という紙のような物は古代のエジプト、ローマ時代から存在したらしいのですが、ローマの衰退と共にその仕様は稀になり、変わって中国から伝わった紙が徐々に広がり、ちょうどジョーンがシチリアに居た頃、製紙技術はシチリア王国建国のちょっと前からあったのではないかと考えられているみたいなので、紙が使用されていたのではないかと考察しています。


*¹パピルス(ウィキ参照)
https://fr.wikipedia.org/wiki/Papyrus_(papier)#Histoire_des_papyrus
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

珈琲のお代わりはいかがですか?

古紫汐桜
BL
身長183cm 体重73kg マッチョで顔立ちが野性的だと、女子からもてはやされる熊谷一(はじめ)。 実は男性しか興味が無く、しかも抱かれたい側。そんな一には、密かに思う相手が居る。 毎週土曜日の15時~16時。 窓際の1番奥の席に座る高杉に、1年越しの片想いをしている。 自分より細身で華奢な高杉が、振り向いてくれる筈も無く……。 ただ、拗れた感情を募らせるだけだった。 そんなある日、高杉に近付けるチャンスがあり……。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……

おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?! ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。 凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

処理中です...