《第二幕》テンプレ転移した世界でロマンスに目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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パンプローナ

二ー15 レホネオ2 1/2

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「またアイツに見せ場、取られたな。」

リシャールがそうつぶやきながら、広場の幾つかある出入り口の柵の前でポツリと言った。
その言葉を聞いたポールがあっはっはと声を上げて笑っている。

「見せ場? え? 何の話? いつもリシャールはかっこいいぞ? 」

そう言いながらリシャールを見上げる。
セリフの割には不満げな顔では無く、どちらかと言うと嬉しそうだ。

「ふっ。そうだろうとも。」

リシャールは微笑んでおれの肩を抱くと頭をガシガシとかき回した。

良かった。
安堵と共に、自分の足がわずかに震えているのに気がついた。
戦は何度も経験したが、リシャールがピンチになる姿をほとんど見たことがない。
だからだろうか。
いや。
予期せぬ形でリシャールが命を落とす、そんな恐怖を感じたからだ。

誰かがリシャールの死を願っている。

戦場では腹をくくっているところがあるが、日常の中では、何処か他人事の様に感じていたのだ。
どんなにルーやペランが警戒していても、根本的な所で、やはり、平和慣れしていた、ということに気付かさる。
例えば、こうして群衆の中にあっても、矢で射られるということもあり得るのだ。

頭を撫でられながら、リシャールを見つめていると、「ん? 」と首をかしげていたが、歓声に引っ張られるように、リシャールの視線が背後へと動いていく。
そして、いつもより少し威厳のあるトーンで言葉を発する。

「ルー! 良くやった! 」

拍手喝采を浴びながらルーが馬を降りてこちらに歩いて来ていたのだ。
その称賛の対象はムッスとしながらリシャールの胸をドンっと殴る。

「無事かよ。雄牛の角でケツ掘られなくてよかったな。」
「悪かったな。俺は掘る専門だからな。掘られてたまるかよ。」

リシャールは笑いながら、おれの肩を抱いたまま、空いたほうの腕で眼の前のルーの肩を抱き寄せる。
そのせいでおれはバランスを崩し、同じ様にバランスを崩したルーの頭とリシャールが近づけた頭とで、三人仲良く頭突きをするような形だ。
見せ場を取られたと言っていた割には上機嫌なリシャールは、ルーの頭に自らの頭でグリグリと押し付けている。

「痛てぇって! おい。リシャール辞めろ! 」

ルーが珍しく大きな声で主張する。
恥ずかし紛れに嫌がる素振りをしているのがすぐわかっておかしい。
なんだかんだ言ってこの二人は兄弟の様に仲が良いのだ。
じゃれ合う二人を見て、気持ちが少しずつ落ち着いてゆくのが分かる。
ルーが居れば心配などしなくても大丈夫だと、思えてくる。
今度ルーに警護のしかたでも教わろう。

そんな事を考えていると、落ち着きを取り戻していた会場が、再び湧いている。
ちょうど対角の向かい側にある柵が開き、大きな馬に乗ったサンチョが会場に入ったのだ。
灰色がかったの大きな馬は黒いたてがみをきれいに編み込まれ、梳かれた尻尾をフサフサと揺らしている。
その馬に乗馬するサンチョは先程まで着ていたゆったりした服から、ピッタリと体にフィットした鎧を大きな筋肉質な体に装着して、如何にも戦士という凛々しい風貌だ。

「ははは。いつもあんな感じの格好してれば良いんだよ。そうしてればジャンにクマって呼ばれなくて済むのに。」

いつの間にか側に来ていたらしいダニエルが近くの柵の向こうで笑っている。

「言ったろ。だから。アイツもったいねぇんだよ。」

ダニエルの側で、リシャールが柵にもたれ掛かりながらサンチョを眺めている。
おれたちはその側で同じ様にサンチョに視線を注ぐ。

「え。サンチョ王子、独りだよ。まさか一対一でやるの? 」
「ルーが派手に見せつけたからな。ナバラ名物の闘牛で引けを取ったなんてベランジェールが許さないだろう。」
「・・・ベランジェール様って、大人しそうに見えて、結構激しいよね。」
「まあ、ベランジェールって言うより、サンチョ自身も珍しく血をたぎらせてるみたいだけどな。」

サンチョはリシャールのような民衆に対して何か発言をする様子はない。
淡々と広場の中央に行くと、剣を高々と天に突き出す。
すると馬が強く嘶く。
上体を上げ、まるで空に向かって駆け出すかの様に、前足で空中を蹴った。
その馬に乗るサンチョは剣を天に掲げたままで、器用に馬の背に乗っている。
それは、演説などよりよほど説得力があり、それを見る馬を愛する民達は会場全体で波立つかの様に歓声をあげた。
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