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パンプローナ
二ー12 パンプローナ 1/2
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次の日の早朝。
ポールに叩き起こされ、朝靄の中出発となる。
いつもおれの後ろに乗らせろとひと悶着しかけてくるダニエルが、今日はすんなりとペランの馬跨りながら口を尖らせて昨夜の文句を言い始めた。
「おいおい。お前らひどくない? オレの顔みてねぎらいの言葉一つ無いのかよ。お前らオレが何曲歌ったか知ってる? 」
「ペラン一緒に居たじゃん。何曲くらいだった?」
「あー。3曲くらいじゃね? 」
「ちょっと、ジャン! コイツに聞くなよ。ほぼ酔っ払ってたの知ってんでしょ。20曲は歌ってんぞ!!」
「タダで2時間、ワンマンライブだね・・・。うわ。そう考えたらなんかごめん・・・。」
「気づくのおせぇよ。おい。リシャール。これは貸しだからな。」
「なんで俺の貸しになるんだよ。」
リシャールがおれの少し前で愛馬のラトロワの上で彼の首を撫でながらめんどくさそうにが答える。
「お前ら外でイチャついてただろ。知ってんだぞ。」
「別に俺は部屋でもヤッても構わねぇんだけど、ジャンが嫌がっから。」
「はぁ? おれ? だってポールもルーも同じ部屋じゃん! 構うわ! 」
こちらの宿事情、というか基本的に客室は共同ベットなのだ。
富裕層になれば自室が持てるが、山の中の宿ともなれば、個室は無い。
しかも、リシャールが言うように、基本的に貴族達は周りに人間が常に居る状態なので、事情中も人が居ても基本的に気にしない。
が、おれは無理。絶対ヤダ。
「じゃぁ、ジャン。貸し1な。」
「・・・なんか、ダニエルに借り作んのやだな・・・。あ。そう言えば、クマみたいな人居たじゃん。話した?」
「クマ?・・・あぁ。居たけど。それがなんだ? 」
「おれ、あの人にダニエルの事任せたって、言ったんだけど。」
横からリシャールが馬首を並べながら怪訝そうな顔をしておれの顔を覗き込んでくる。
「・・・なんだそりゃ。知り合いだったのかよ。」
「リシャールの後を追いかけようとして店出るときに、クマみたいなでっかい人が入って来て、ちょっとぶつかっちゃったんだけどさ。なんか優しそうだったからダニエルの事を頼んだ。なんだかひつこそうな人居たじゃん? 彼、助けてくれたんじゃない? だから貸し借り無しだな。」
「ぶつかったのに優しそうって、何だよそれ。」
隣でごちゃごちゃ言うリシャールを無視しながら、ニッコリとダニエルに笑いかけると、モゴモゴと何かを言いながらも特に反論がなかった。
貸し借りはチャラという事にしてしまおう。
あの様子だと、彼は本当に困ってた所を助けてくれたのかも知れない。
そうやってたわいのない話をしながらピレーネ山脈をくだり、いくつかの町を横切り、石で舗装された道を進むと、パンプローナの城壁が見えてきた。
太陽が高い位置にきたこともあり、気温が上がってくる。
話によるとパンプローナは盆地の気候で、「1日で四季を感じられる」というくらい気温差があるらしい。
以前ピュルテジュネ王のクリスマス宮廷に招待され行ったルーアンなどと比べ距離で考えても随分南下しているので、暖かい。
街の人々も陽気で何処かから歌が聞こえる、そんな雰囲気の街だった。
ポールに叩き起こされ、朝靄の中出発となる。
いつもおれの後ろに乗らせろとひと悶着しかけてくるダニエルが、今日はすんなりとペランの馬跨りながら口を尖らせて昨夜の文句を言い始めた。
「おいおい。お前らひどくない? オレの顔みてねぎらいの言葉一つ無いのかよ。お前らオレが何曲歌ったか知ってる? 」
「ペラン一緒に居たじゃん。何曲くらいだった?」
「あー。3曲くらいじゃね? 」
「ちょっと、ジャン! コイツに聞くなよ。ほぼ酔っ払ってたの知ってんでしょ。20曲は歌ってんぞ!!」
「タダで2時間、ワンマンライブだね・・・。うわ。そう考えたらなんかごめん・・・。」
「気づくのおせぇよ。おい。リシャール。これは貸しだからな。」
「なんで俺の貸しになるんだよ。」
リシャールがおれの少し前で愛馬のラトロワの上で彼の首を撫でながらめんどくさそうにが答える。
「お前ら外でイチャついてただろ。知ってんだぞ。」
「別に俺は部屋でもヤッても構わねぇんだけど、ジャンが嫌がっから。」
「はぁ? おれ? だってポールもルーも同じ部屋じゃん! 構うわ! 」
こちらの宿事情、というか基本的に客室は共同ベットなのだ。
富裕層になれば自室が持てるが、山の中の宿ともなれば、個室は無い。
しかも、リシャールが言うように、基本的に貴族達は周りに人間が常に居る状態なので、事情中も人が居ても基本的に気にしない。
が、おれは無理。絶対ヤダ。
「じゃぁ、ジャン。貸し1な。」
「・・・なんか、ダニエルに借り作んのやだな・・・。あ。そう言えば、クマみたいな人居たじゃん。話した?」
「クマ?・・・あぁ。居たけど。それがなんだ? 」
「おれ、あの人にダニエルの事任せたって、言ったんだけど。」
横からリシャールが馬首を並べながら怪訝そうな顔をしておれの顔を覗き込んでくる。
「・・・なんだそりゃ。知り合いだったのかよ。」
「リシャールの後を追いかけようとして店出るときに、クマみたいなでっかい人が入って来て、ちょっとぶつかっちゃったんだけどさ。なんか優しそうだったからダニエルの事を頼んだ。なんだかひつこそうな人居たじゃん? 彼、助けてくれたんじゃない? だから貸し借り無しだな。」
「ぶつかったのに優しそうって、何だよそれ。」
隣でごちゃごちゃ言うリシャールを無視しながら、ニッコリとダニエルに笑いかけると、モゴモゴと何かを言いながらも特に反論がなかった。
貸し借りはチャラという事にしてしまおう。
あの様子だと、彼は本当に困ってた所を助けてくれたのかも知れない。
そうやってたわいのない話をしながらピレーネ山脈をくだり、いくつかの町を横切り、石で舗装された道を進むと、パンプローナの城壁が見えてきた。
太陽が高い位置にきたこともあり、気温が上がってくる。
話によるとパンプローナは盆地の気候で、「1日で四季を感じられる」というくらい気温差があるらしい。
以前ピュルテジュネ王のクリスマス宮廷に招待され行ったルーアンなどと比べ距離で考えても随分南下しているので、暖かい。
街の人々も陽気で何処かから歌が聞こえる、そんな雰囲気の街だった。
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