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二ー2 プロローグ2 2/2

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「バカ。あれは元々は毒殺の予防だ。」

確かに、クリスマスの宮廷などを開くときは近隣の民衆、農夫から商人から沢山の人が城に溢れる。
王を毒殺しようとする刺客が居てもおかしくはない。
 その話を聞いて、背中がゾクリとした。
リシャールを暗殺しようとする人間が居るだろう、という事に気が付かされたのだ。

 乾杯の儀式の真意は毒殺防止だが、目の前のロベールがそんな事をするわけもなく、ただ単純に、おれたちの無事帰還を派手に祝福してくれていると、解釈できる。
元々騎士とは豪快な人間が多い。やはり、毒殺防止よりも、ただその豪快なスタイルがかっこいいからやっているだけなんだという方が腹にはすっと落ちてくる。

 そんな疲れた腹におかみさんの手作りのエールが染み渡る。
無事、帰って来れたのだ。

 一息つくと、床で遊び始めたフィリップの積み木をいくつか拝借し机に並べ、陣形を形どると、サントンジュで発生した反乱での鎮圧の経緯を説明を始める。

 ことの発端は数ヶ月前、ここ、リシャールの治めるアクテヌ公国内、ボルドーを含むガスコーニュ地方での一部の反乱から始まった。
反乱軍の小さな陽動の後、しばらく静観していたかと思うと、何故かリシャールの兄アンリと、カペー家で世話になっている弟ジェフロアが援軍の要請に答えたらしい、という噂が流れはじめた。
その噂を根拠に、多くの諸侯から声があがる。
彼らは5年前ピュルテジュネ王に反旗を翻したアンリとリシャールに同調した報復として、王の指示を受けたリシャールから攻撃され、城壁を取り壊されるという制裁を受け裏切られた気持ちが大きく、強い恨みを持つのも安易に想像できた。
 こうして始まったガスコーニュの反乱は地方貴族だけに留まらずり、大規模になりつつあった。
早期にこの反乱を鎮圧する必要にせめられたリシャールは大胆な策を打つことにしたのだ。
 リシャールは、ガスコーニュ地方と接するサントンジュ地方への出兵を急いだのだ。

 サントンジュには難攻不落と有名なタイユブル要塞があった。
三方を崖で囲まれた天然の要塞で、唯一口の開いた場所には三重にも城壁が巡らされている。
反乱軍はそのタイユブルをおそらく拠点とするだろう、と踏んだのだ。
 リシャールはまず要塞の周囲の農場と土地を制圧すると、それを無慈悲にも派手に焼き払い、城を守る者達への増援と退路を断った。

「なるほどな。補給を断つのは戦術としては王道だな。しかし、それが出来たのは地の理をわかっているからだ。」
「地の利? どういう事? 」
「5年前のピュルテジュネ王に反抗したときの話になるのだが、1度タイユブルに籠城したことがあるんだ。」
「え?? そうなの? 」
「ああ。その時の経験も役立ってはいるとは思うが。備蓄を城壁外にも置いてあったのではなかったか? 農地が広がり、人口が増えていたからな。それを城に持ち込む前、おそらく敵が想定するより早く戦闘態勢に入れたんだろうと・・・。しかし、焼き払うのはやり過ぎではないか? いくら農作業前とはいえ、家も備蓄も失えば領民は困る。領民あっての領地だ。」
「うん。それがリシャールの不思議な力なんだよね。 領民の人たちに、ここではない土地を用意するって、宣言たんだ。」
「・・・ほぉ・・・。」

ロベールは机に身を乗り出すようにすると、興味深そうに相槌を打った。



ーーーーーあとがきーーーー

ロベールは177㎝なので、ジャンは180㎝くらいにはなりました。オオキクナッタネ

*1  乾杯の儀式は限りなくフィクションに近い様です。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Trinquer
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