《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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ルーアン

42(2/2)

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リシャールは再びおれの手を取ると指にその指輪を滑れせてきた。

見ると指輪には抽象的にデザインされた動物が彫り込まれていて、綺麗に磨かれた表面がかがり火の炎の光を受けキラリと光った。

「俺のもほら、一緒だ。お前、アンバーのウルフ瞳だろ? だからこれは狼でお前、俺はこの獅子だ。」

そう言うと自分の指に着けたものを嬉しそうな顔をして見せてくれる。

「揃いだ。」
「・・・これ、作らせたって、いつの間に? 」
「クリスマスにお前に送ろうと思って、ここに持ってくるように頼んでおいた。」
「今日の為に・・・用意してくれてたんだ。ありがとう。すっごく嬉しい。」

見つめる指輪には独特の文様型に狼と獅子の肢体を模ったもので、細かく手の混んだ物だ。
見入っていると、リシャールがすこし体を屈め顔を近づけてくると、おれの手を自らのおでこに付ける。
冷たいおでこがおれの熱でじわじわと暖かさを取り戻してゆくのが分かる。
小さく深呼吸する音がして、暖かな眼差しが降りてきた。

「ジャン。愛してる。コレは誓いの証だ。この指輪に誓って、俺はお前を裏切るような事はもうしない。だからお前も、俺の側から離れないと誓ってくれないか? 」

見上げるリシャールの顔が目がくらむほどかっこよくて、直視出来そうもないけれど、目を逸らしたくなかった。

どんな現実でも、受け止めていく。

「・・・うん。おれは、どんなことがあっても、リシャールの側に居るって、誓う。それで・・・。」

見つめるリシャールはその言葉に目を少し見開き、言葉を待ってくれている。
きちんと言葉にして貰った想いに、答えたい。
それには少しだけ勇気が必要だった。

「お、おれも、あ、愛し・・・てる・・・。」

リシャールは破顔すると、おでこに当てたおれの手ごと指輪に口づけして、今度は自分の指輪をおれの口元に持ってくる。
おれはリシャールがしたように彼の指輪に口づけする。

二人だけの誓いだ。

嬉しくてリシャールを見上げると、そのまま頭を引き寄せられ、しっかりと抱きしめられた。

「ままならねぇくだらねぇ世界だけどさ。一緒に行こうぜ。お前となら、どこまでも飛べそうな気がするんだ。」

耳元で低く発せられる音は脳を震わせ、心臓を揺らす。
脳裏に浮かぶのは跳躍する獣。
巨体を軽々と翻し、荒野の岸壁を力強く蹴りつけ飛ぶその獣は、獲物を噛み砕き振り回し、その足元に転がる幾多もの死屍を踏みつけ、積み重ね、いずれその頂点に君臨する。
見るものを威圧し圧倒しながら、沈みゆく夕日を浴び、赤く黄金に輝く鬣を揺らす。
それは、一頭の獅子。

誰が為に、何が為に、彼がそれを成さねばならぬかは判らない。
ただ。ひとつ分かることは。
その姿を目に焼き付ける為に。
それを見届ける為に。
黄金に輝く、この獅子と共に行くのだ。






第一幕 完


ーーーあとがきーーー

この42話で【ページ的には44部分】を
《第一幕》
「テンプレ移転した世界で全裸から目指す騎士ライフ」
として完結とさせていただきます。
※(R18の0.5話有ります。詳細は、近況ボードにて)

《第二幕》
「テンプレ転移した世界でロマンスに目指す騎士ライフ」
https://ncode.syosetu.com/n9684il/
(プロフィールの他サイトの所から飛べます)
小説家になろう さんで毎週1話更新での連載中です。(遅筆ですいません。今現在3話目)

全裸編スタートから約3年後を想定しての続きです。カペー家の新王と取巻きの彼らとの絡みも、もう少し多くなりそうです。
しかしなにぶん遅筆ゆえ、週一更新もギリギリの状況です。すいません。

という事で、第一幕と第二幕と区切って第一幕を完結としました。【実は第三幕も構想があったりするけど資料が膨大すぎるし戦闘ばかりで手付かずです。】

第一幕、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
お気に入り、しおり、エール、付けていただいて本当に感謝しております。
うれしいです。

では第二幕でまたお会い出来ますよう願っております。





ぽむぽむ





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