《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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ルーアン

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「そう言えば、マグリットだが。」

思わずその名にビクリ、と、してしまった。
なんとなく反応してはいけない雰囲気を察したつもりだが、意識すればするほど鼓動が早くなる。

王は顎に手を当てながらさまようように視線を動かすと、リシャールをひたと見つめる。

「子を宿していたようだが、駄目だったらしいな。」

その視線を受けるリシャールは、そのまま王を射抜くような勢いで見つめ返す。
この時、父と子の視線が初めて合ったように感じられた。

「そう、でしたか。お子を授かったとは聞き及んでおりましたが、それは残念な事です。」
「ほう。知らぬのか。アンリが留守の間に産気付いて、アデルが急ぎ向かって出産に立ち会おうとしたらしいのだが・・・。わしは孫をこの手に抱くことが出来きなかった。」
「兄上も忙しく放浪しておいでだが、また機会も訪れましょう。」
「っふ。機会のぅ。アンリに子を授ける才能があるとは、思わなかったがなぁ。」
「私もまだまだ結婚は先延ばしにしたいゆえ、兄上に父上の望みは託しましょう。」

王はリシャールが口にした結婚という言葉にややびっくりした顔をすると、直ぐに豪快な笑い声を立てると椅子から立ち上がった。

「まぁ、若いうちに楽しんでおけ。結婚なんて、ろくなもんじゃない。お前は自由にしておれば良い。」
「はい。」
「明日の宴をぜひ楽しんで参れ。」

そう言い残すと王は、短めのコートを揺らしながら部屋から出ていった。
扉が静かに閉まるまで礼を取っていたリシャールは佇まいを正すと、鋭い眼光をそのまま宰相に視線を向ける。
宰相はそんな視線にも気後れせずに、作り笑いのまま話しかける。

「では、本日は客間でお過ごしください。案内いたします。」
「いや、案内はいらぬ。第二寝室だろう? 」
「はい。恐れ入ります。」

リシャールは勝手知ったる城という様子で、謁見の間から出ようと扉近くま大股で歩くと、見送る宰相を振り返り問うた。

「お前も結婚はろくなもんじゃないと、思うか? 」
「そうですね、一概に言い切れるものでもございませんが。幸せな暮らしをしている方もいらっしゃいますから。まぁ、人それぞれかと。」
「そうか。俺も結婚をしたほうが良いと思うか? 父上も暗に孫が欲しいとおっしゃっている様だが。」
「ほっほっほ。リシャール殿もその様な事をお考えになるようになられましたか。いやいや。成長されましたなぁ。」
「婚約者はいるのだがなぁ。」
「・・・左様でございますなぁ。まぁ、リシャール殿はまだお若い。お父上の言う通り、妻に囚われず楽しめると思えば、それはそれで宜しいのではないでしょうか。」

リシャールは宰相の言葉に顔を歪めると吐き捨てるようにして話す。

「ふん。まあよい。アデルはここには? 」
「・・・マグリット様のお傍に居たいという事で、この度のクリスマスの宮廷には出席されません。」
「今後もアレを俺に近づけるな。」
「はい。心得ました。」

宰相の答えも聞く気が無いのだろう、リシャールは開け放たれた扉からすでに出てしまい、おれは急いでリシャールを追いかける。

こんないたたまれない空気の中、明日の宮廷に出席しなければいけないと思うと少し気が滅入った。
前を大股で歩くリシャールの背中を見つめると、なにやら寂しい気持ちに襲われる。
自分が思い描いていた父と子の関係という物とは全く無縁な世界なのだろう。
この時代では、血すら信頼する所以の無い存在なのか。
むしろ血族のほうが関係を歪に捻じ曲げ、難解にしてしまうのだろうか。
自分たち庶民とは一線を画す存在である王家とは、こうも安寧と言う場所が無い環境だとは思わなかった。
ならば、自分がリシャールの安寧の地とならねばならない。


ーお前が居ないと、息も出来なくなりそうなんだ。

そう言ったリシャールの言葉を思い出し、もう一度心に刻んだ。









ーーーあとがきーーー

ピュルテジュネ王、出ました。
この人は本当に統治力的にもすごい人ですが、女関係がゲスでクズです。【作者の捏造】
アデルの前【1年くらい被る】に居た愛人は森の中に迷路みたいな城作って妻にバレない様に囲っておきながら、26歳で死なしています。病死らしいのですが、そんな場所に囲っておいて、若い女に現を抜かしているらしいなんて噂を聞けばおそらく病むでしょうよ。
酷い男です。【ほぼ私の勝手な想像ですが。】





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