《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

文字の大きさ
上 下
78 / 84
リヨンス

40(1/2)

しおりを挟む
外からにぎやかな声が聞こえてくる。
木戸の隙間から太陽の光が差し込み、ベットに線を描いている。
久しぶりのベットは寝心地がよく、寝すぎたようだ。
気だるい体を引きずるようにして広いベットを這い、端っこでクシャクシャになった服を取ると座ったままでモソモソと着替える。

昨夜、一緒に居たはずのリシャールはおれを置いてどこに行ったのだろうか。
部屋は外の賑やかさと相対して暗く寂しく感じられる。
せっかく久しぶりに再開して、一夜を共にしたのなら、朝目覚めるまで側に居てくれてらいいのに。
先に目覚めて、何処かに行かねばならぬなら、起こしてくれたらよかった。

今まで離れていた反動か、寂しさが込み上げ、潤む目をゴシゴシと手でこする。
駄目だ。こんな事で泣くなんて。
誰かを好きになるという事は、自分の弱さに気が付かされる事なのだろうか。
互いの気持ちが通じ会えた事への喜びから、一転してこんな些細な事で寂しさを感じるとは思わなかった。
前はどこかで自分を抑えていたのかもしれない。
自分は愛妾であって、恋人ではない。
そう言い聞かせていた。
恋人へと昇華した今、朝の挨拶を交わすという小さな事でも喜びに感じたかった。
恋人という形への幻想かもしれない。

・・・いや、そもそも恋人なのか?
そう言えば明確に言われた気がしない。
側に居れとは言われたけど・・・。
いや、でも、お前意外とはヤラないっていうのはそういう意味だよね?

昨日のリシャールの言葉を思い出し、いたたまれない気持ちで再びベットにダイブし、ゴロゴロと転がり回る。ニヤける顔を両手で抑えて見るが、どうやっても口角が上がってしまうし、終いには気持ちの悪い声で笑がこぼれだしてしまう。
そうして一通り喜びを噛み締め終わると、顔をペチンと叩き気持ちを入れ替える。
外にはきっとポール達が居るのだろう。
デレデレした顔をしているとすぐにからかわれてしまう。

外では相変わらず大きな笑い声や話し声が聞こえていて、窓に手をかけると木戸をゆっくりと開けた。
冷たいけれど気持ちの良い風が火照る顔に気持ちがいい。
見下ろす庭には、数人の大人が今しがた帰ってきた様子で何やら作業をしていた。
その陣頭指揮をしているのはポールだ。

「ポール。なにしてるのー? 」
「おぉ。ジャン! ホントに居たな。」
「うん。ただいま! 」

その声を聞いて他の数人がこちらを見上げると嬉しそうに手を振ってくる。

「うぉー。ジャン。 おかえり!  」
「心配かけやがって! どこに行ってたんだよ! 」
「1人で帰ってきたのかー? 」

屈強な男たちが嬉しそうに手を振る姿はなんともいえず微笑ましい。
嬉しくなって手を振り返していると、口々に叫ぶ彼らの1人の頭を殴りながら、ポールが怒鳴る。

「うるせぇな。お前ら。早く作業しろよ。おい! ジャン! 高みの見物してねぇで降りてこい! 」
「・・・はーぃ。」

庭に出ると早速仲間たちから手厚い歓迎を受け、もみくちゃにされながらやっとポールの所にたどり着く。

「おはよー。なんでここに居るの判ったの? 」
「おはようじゃねぇよ。もう昼だ。なんだお前、リシャールと話してないのか? 」
「え? あー。・・・まぁ、話したのは話したけど・・・。」

昨夜の事を聞かれ顔が熱くなるのを誤魔化しながら、モゴモゴと答えているとせっかちのポールが舌打ちをする。

「っち。野暮な事聞いちまったか。まぁいい。昨日の狩り中にな、リシャールが突然 ”ラトロアの様子がおかしい。ひょっとしたらジャンかもしれない” って言うんだよ。んで突然 ”俺は帰る。後は頼んだ。” っつって帰っちまうからまさかとは思ったが・・・。リシャール含め動物の勘はすげぇな。」
「そっか。ラトロアとポチ仲が良いもんね。ポチがおれと会って喜んで騒いでるのを感づいたのかな。」
「まぁ、距離的にもそんなに離れてはなかったからな。それにしても・・・。しばらく合わないうちに背が伸びたか? 」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム
BL
異世界でチート能力が欲しい。ついでに恋人も。そんなお願いをしたら、ドラゴンに生まれ変わりました。 卵から孵してくれた王子様に恋をして、いろいろ頑張るちびドラゴンの話。(途中から人型になります) 第三王子×ドラゴン 溺愛になる予定…です。

処理中です...