《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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リヨンス

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深く、唇を重ね・・・ていた。
途中まで。
それは横からのものすごい圧力によって阻止された。

ポチが俺とリシャールの間にグイグイと鼻を突っ込んでくる。
リシャールがポチの鼻を手で抑えてグイグイと押すがポチも負けじとグイグイと来る。

「てめぇ! この野郎! 顔を突っ込んでくるな・・・。」

徐々に開いていく二人の間にポチが悠然と居場所を確保し始めた。

「ぷっ。あはは。あははははは。」

たまらず笑ってしまうと、ポチの顔を両手で抑えているリシャールも笑い出す。

「はっ。はっはっは!! クソプチこの野郎。今日は許してやるけど、次はねぇからなぁ! 」

ポチはブルルルと嘶くと、俺の胸に鼻を当ててくるので、思い切り撫でてやる。
撫でながら先程のリシャールの言葉を反芻する。

「・・・ずっと、おれがリシャールの側にいていいって事は、赤ん坊はリシャールの子どもとして育てるってことで良いの? 」
「ああ。すぐに認めるっていうのは難しいらしい。ポールの話では4・5歳位になったら正確に歳が分かりづらくなるだろうから、そのあたりで認知したら良いって話しになってる。」
「・・・もう、決まってたんだ。おれ、先走ってバカみたいじゃん・・・。」

ポチを挟んだ反対側からリシャールの手が伸びてきて、頭をガシガシと撫でた。

「おれの血を分けた子だったらそれごと愛してくれるんだろ?」

ニヤニヤとした顔でリシャール口を開く。
懐かしい手触りに、もっと触れて欲しくなるのを我慢しながら小さな声でつぶやき、続けて質問した。

「・・・リシャールは、言ってくれないのかよ? ・・・まぁ、いいけど。・・・マグリット様はどうしたの? 」
「あー。・・・マグリット殿は城に来た日にそのまま帰った。どこに向かったのかは聞いてないが・・・。」
「そっか・・・。えっと・・・そう言えば、リシャールが教会に閉じ込めたって話する時のルーが、すごく楽しそうだったよ。」

なんとなく気まずい。そう思い、話題を変えるつもりだったのに、思ったほど変えることが出来なかった。

「あぁ・・・。アイツらああいう時は喜々としてるからな・・・。脱走できなかったらどうなっていたことか。」
「まぁ。でもアレが無ければおれたち出会ってないし・・・。」
「・・・あん時は悪かったな・・・。なんか、無理やりヤッちまった感じになって・・・。」
「!! おれは、全然!! 無理やりだとか、思ってないし・・・。おれもその気になってたし・・・。」
「俺、セックスしたいだけの男みたいな感じになってっけど・・・。そんなんじゃなくって、でも、まぁあん時は、そんな感じだったけど・・・今は、お前だけっていうか・・・。教会から脱走した時の話も、その話題になる度に、話さなきゃダメだよなって、思ってたんだけど、なんか、言い出せなくって。」
「・・・え? おれだけ・・・?」
「うん。お前に、言わなきゃいけないのに・・・こんなになってからじゃ、遅いよなぁ。」
「あ、いや、そっちじゃなくって・・・。その、そういう気持ちになるのは今は、おれだけって・・・言った? 」

リシャールは少し首をかしげ不可解そうな顔をしたけれど、なんのことかを理解すると、キリッとした顔をした。

「あぁ。 セックスするのはお前じゃなきゃ、駄目だ。お前以外は嫌だ。」
「・・・そそそ、そうなんだ・・・。あ、ありがとう? 」
「っち。カッコ悪りぃな。お前に会えたらこうしようとか、トルバドールらしいロマンチックな言葉とか、一杯考えてたのに、全部忘れちまって・・・。結局こんな低俗なセリフしか出てこねぇんだもんな。」

リシャールは舌打ちすると不満げな顔で独りごちっている。
言われた内容は確かに最低なのだが、不思議と心が解けてゆくような感覚になる。
ふつふつと温かいものが込み上がってきて、笑が溢れる。

「ふふふ。確かに低俗な上に、最低で最悪でデリカシー皆無だけど・・・」
「そこまで言うことねぇだろぉよ・・・。」
「おれ、そんなリシャールがやっぱり好きだ。」

見つめたリシャールの顔が少し真顔になったかと思うと、くるりと背中を向ける。
ポチの隣、調度リシャールが振り返った後ろで寝ている彼の愛馬ラトロアを撫で始めた。

え?
え?
照れてる?あのリシャールが照れてる?
厚顔無恥で不遜を体現したようなリシャールが?

興味本位で回り込んで覗いた顔は赤く、手で抑えられた口からは小さなつぶやきが聞こえた。

「・・・うるせぇ・・・」
「くくく、珍しいね、リシャール照れてる。」
「・・・照れてねぇ! 」
「へへへっ。まぁ、そういう事にしてあげるよ。ふふふ。こういうのは慣れてないんでしょ。わかってるって。」

何だか嬉しい気持ちで笑いが止まらなくなり、肘でリシャールを小突きながらニヤニヤしていると、首に腕が回ってきた。

「・・・てめぇ。覚悟は出来てんだろうな・・・。」



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