76 / 84
リヨンス
39(1/2)
しおりを挟む
深く、唇を重ね・・・ていた。
途中まで。
それは横からのものすごい圧力によって阻止された。
ポチが俺とリシャールの間にグイグイと鼻を突っ込んでくる。
リシャールがポチの鼻を手で抑えてグイグイと押すがポチも負けじとグイグイと来る。
「てめぇ! この野郎! 顔を突っ込んでくるな・・・。」
徐々に開いていく二人の間にポチが悠然と居場所を確保し始めた。
「ぷっ。あはは。あははははは。」
たまらず笑ってしまうと、ポチの顔を両手で抑えているリシャールも笑い出す。
「はっ。はっはっは!! クソプチこの野郎。今日は許してやるけど、次はねぇからなぁ! 」
ポチはブルルルと嘶くと、俺の胸に鼻を当ててくるので、思い切り撫でてやる。
撫でながら先程のリシャールの言葉を反芻する。
「・・・ずっと、おれがリシャールの側にいていいって事は、赤ん坊はリシャールの子どもとして育てるってことで良いの? 」
「ああ。すぐに認めるっていうのは難しいらしい。ポールの話では4・5歳位になったら正確に歳が分かりづらくなるだろうから、そのあたりで認知したら良いって話しになってる。」
「・・・もう、決まってたんだ。おれ、先走ってバカみたいじゃん・・・。」
ポチを挟んだ反対側からリシャールの手が伸びてきて、頭をガシガシと撫でた。
「おれの血を分けた子だったらそれごと愛してくれるんだろ?」
ニヤニヤとした顔でリシャール口を開く。
懐かしい手触りに、もっと触れて欲しくなるのを我慢しながら小さな声でつぶやき、続けて質問した。
「・・・リシャールは、言ってくれないのかよ? ・・・まぁ、いいけど。・・・マグリット様はどうしたの? 」
「あー。・・・マグリット殿は城に来た日にそのまま帰った。どこに向かったのかは聞いてないが・・・。」
「そっか・・・。えっと・・・そう言えば、リシャールが教会に閉じ込めたって話する時のルーが、すごく楽しそうだったよ。」
なんとなく気まずい。そう思い、話題を変えるつもりだったのに、思ったほど変えることが出来なかった。
「あぁ・・・。アイツらああいう時は喜々としてるからな・・・。脱走できなかったらどうなっていたことか。」
「まぁ。でもアレが無ければおれたち出会ってないし・・・。」
「・・・あん時は悪かったな・・・。なんか、無理やりヤッちまった感じになって・・・。」
「!! おれは、全然!! 無理やりだとか、思ってないし・・・。おれもその気になってたし・・・。」
「俺、セックスしたいだけの男みたいな感じになってっけど・・・。そんなんじゃなくって、でも、まぁあん時は、そんな感じだったけど・・・今は、お前だけっていうか・・・。教会から脱走した時の話も、その話題になる度に、話さなきゃダメだよなって、思ってたんだけど、なんか、言い出せなくって。」
「・・・え? おれだけ・・・?」
「うん。お前に、言わなきゃいけないのに・・・こんなになってからじゃ、遅いよなぁ。」
「あ、いや、そっちじゃなくって・・・。その、そういう気持ちになるのは今は、おれだけって・・・言った? 」
リシャールは少し首をかしげ不可解そうな顔をしたけれど、なんのことかを理解すると、キリッとした顔をした。
「あぁ。 セックスするのはお前じゃなきゃ、駄目だ。お前以外は嫌だ。」
「・・・そそそ、そうなんだ・・・。あ、ありがとう? 」
「っち。カッコ悪りぃな。お前に会えたらこうしようとか、トルバドールらしいロマンチックな言葉とか、一杯考えてたのに、全部忘れちまって・・・。結局こんな低俗なセリフしか出てこねぇんだもんな。」
リシャールは舌打ちすると不満げな顔で独りごちっている。
言われた内容は確かに最低なのだが、不思議と心が解けてゆくような感覚になる。
ふつふつと温かいものが込み上がってきて、笑が溢れる。
「ふふふ。確かに低俗な上に、最低で最悪でデリカシー皆無だけど・・・」
「そこまで言うことねぇだろぉよ・・・。」
「おれ、そんなリシャールがやっぱり好きだ。」
見つめたリシャールの顔が少し真顔になったかと思うと、くるりと背中を向ける。
ポチの隣、調度リシャールが振り返った後ろで寝ている彼の愛馬ラトロアを撫で始めた。
え?
え?
照れてる?あのリシャールが照れてる?
厚顔無恥で不遜を体現したようなリシャールが?
興味本位で回り込んで覗いた顔は赤く、手で抑えられた口からは小さなつぶやきが聞こえた。
「・・・うるせぇ・・・」
「くくく、珍しいね、リシャール照れてる。」
「・・・照れてねぇ! 」
「へへへっ。まぁ、そういう事にしてあげるよ。ふふふ。こういうのは慣れてないんでしょ。わかってるって。」
何だか嬉しい気持ちで笑いが止まらなくなり、肘でリシャールを小突きながらニヤニヤしていると、首に腕が回ってきた。
「・・・てめぇ。覚悟は出来てんだろうな・・・。」
途中まで。
それは横からのものすごい圧力によって阻止された。
ポチが俺とリシャールの間にグイグイと鼻を突っ込んでくる。
リシャールがポチの鼻を手で抑えてグイグイと押すがポチも負けじとグイグイと来る。
「てめぇ! この野郎! 顔を突っ込んでくるな・・・。」
徐々に開いていく二人の間にポチが悠然と居場所を確保し始めた。
「ぷっ。あはは。あははははは。」
たまらず笑ってしまうと、ポチの顔を両手で抑えているリシャールも笑い出す。
「はっ。はっはっは!! クソプチこの野郎。今日は許してやるけど、次はねぇからなぁ! 」
ポチはブルルルと嘶くと、俺の胸に鼻を当ててくるので、思い切り撫でてやる。
撫でながら先程のリシャールの言葉を反芻する。
「・・・ずっと、おれがリシャールの側にいていいって事は、赤ん坊はリシャールの子どもとして育てるってことで良いの? 」
「ああ。すぐに認めるっていうのは難しいらしい。ポールの話では4・5歳位になったら正確に歳が分かりづらくなるだろうから、そのあたりで認知したら良いって話しになってる。」
「・・・もう、決まってたんだ。おれ、先走ってバカみたいじゃん・・・。」
ポチを挟んだ反対側からリシャールの手が伸びてきて、頭をガシガシと撫でた。
「おれの血を分けた子だったらそれごと愛してくれるんだろ?」
ニヤニヤとした顔でリシャール口を開く。
懐かしい手触りに、もっと触れて欲しくなるのを我慢しながら小さな声でつぶやき、続けて質問した。
「・・・リシャールは、言ってくれないのかよ? ・・・まぁ、いいけど。・・・マグリット様はどうしたの? 」
「あー。・・・マグリット殿は城に来た日にそのまま帰った。どこに向かったのかは聞いてないが・・・。」
「そっか・・・。えっと・・・そう言えば、リシャールが教会に閉じ込めたって話する時のルーが、すごく楽しそうだったよ。」
なんとなく気まずい。そう思い、話題を変えるつもりだったのに、思ったほど変えることが出来なかった。
「あぁ・・・。アイツらああいう時は喜々としてるからな・・・。脱走できなかったらどうなっていたことか。」
「まぁ。でもアレが無ければおれたち出会ってないし・・・。」
「・・・あん時は悪かったな・・・。なんか、無理やりヤッちまった感じになって・・・。」
「!! おれは、全然!! 無理やりだとか、思ってないし・・・。おれもその気になってたし・・・。」
「俺、セックスしたいだけの男みたいな感じになってっけど・・・。そんなんじゃなくって、でも、まぁあん時は、そんな感じだったけど・・・今は、お前だけっていうか・・・。教会から脱走した時の話も、その話題になる度に、話さなきゃダメだよなって、思ってたんだけど、なんか、言い出せなくって。」
「・・・え? おれだけ・・・?」
「うん。お前に、言わなきゃいけないのに・・・こんなになってからじゃ、遅いよなぁ。」
「あ、いや、そっちじゃなくって・・・。その、そういう気持ちになるのは今は、おれだけって・・・言った? 」
リシャールは少し首をかしげ不可解そうな顔をしたけれど、なんのことかを理解すると、キリッとした顔をした。
「あぁ。 セックスするのはお前じゃなきゃ、駄目だ。お前以外は嫌だ。」
「・・・そそそ、そうなんだ・・・。あ、ありがとう? 」
「っち。カッコ悪りぃな。お前に会えたらこうしようとか、トルバドールらしいロマンチックな言葉とか、一杯考えてたのに、全部忘れちまって・・・。結局こんな低俗なセリフしか出てこねぇんだもんな。」
リシャールは舌打ちすると不満げな顔で独りごちっている。
言われた内容は確かに最低なのだが、不思議と心が解けてゆくような感覚になる。
ふつふつと温かいものが込み上がってきて、笑が溢れる。
「ふふふ。確かに低俗な上に、最低で最悪でデリカシー皆無だけど・・・」
「そこまで言うことねぇだろぉよ・・・。」
「おれ、そんなリシャールがやっぱり好きだ。」
見つめたリシャールの顔が少し真顔になったかと思うと、くるりと背中を向ける。
ポチの隣、調度リシャールが振り返った後ろで寝ている彼の愛馬ラトロアを撫で始めた。
え?
え?
照れてる?あのリシャールが照れてる?
厚顔無恥で不遜を体現したようなリシャールが?
興味本位で回り込んで覗いた顔は赤く、手で抑えられた口からは小さなつぶやきが聞こえた。
「・・・うるせぇ・・・」
「くくく、珍しいね、リシャール照れてる。」
「・・・照れてねぇ! 」
「へへへっ。まぁ、そういう事にしてあげるよ。ふふふ。こういうのは慣れてないんでしょ。わかってるって。」
何だか嬉しい気持ちで笑いが止まらなくなり、肘でリシャールを小突きながらニヤニヤしていると、首に腕が回ってきた。
「・・・てめぇ。覚悟は出来てんだろうな・・・。」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました
あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。
完結済みです。
7回BL大賞エントリーします。
表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない
ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。
元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。
無口俺様攻め×美形世話好き
*マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま
他サイトも転載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる