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リヨンス
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「ペラン。見て見て! 塔みたいなの見える。リヨンスあれかな! 」
早朝、ルーアンを出発して、5時間ほど歩いている。
ピュルテジュネ家のお気に入りの狩り場へ向かう道ということで、整えられた道を歩くのはさほど大変ではないのだが、リヨンの森、と言う地名なだけありブナの木が永遠と並び、どこを見ても同じ様な景色で距離感がわからなくなる。そんな状況から、少し開けた空に塔が見えた時は少し感動を覚えた。
「ああ。お前はなんでも新鮮でいいな。オレは昨日此処を歩いたばっかりだ。」
ルーアンの宿屋でペランに出会い、リシャールの話を食事とお酒と引き換えに聞いていたのが昨夜。
しかし、話も中程で寝てしまったペランを自分の部屋に連れて上がり、ペラン同様旅で疲れているはずなのだが、目を瞑るとリシャールの顔が浮かび、眠れず朝を迎えた。
半分眠っているペランを連れて、眠っているルーを叩き起こして別れを告げ、そのまま出発した。
眠れなくても妙にテンションの高い自分がおかしい。
興奮してペラン話の途中に質問攻めしてしっまったりで、なかなか話が進まなかったが、太陽が真上に上がり、リヨンスに付くであろう頃合いに「ふぅ。」とペランがため息を付いて、話を締めくくる。
「そんで、オレはお前を探すためにルーアンに行ったという事だな。・・・ルーアンに居た記憶がほぼ無いけどな。」
「おれだってルーアンについたばっかりだったよ。まぁ。ペランよりは速く着いてたけど。」
ルーアンは大きな都市だけあり、目を引くものがいっぱいあった。
とりあえず、宿屋に付いて荷物をおいて飯を食って・・・、などと言っていたら結局どこも見る事もできず出発したのだ。
「・・・ジャン。オレ、腹減った。飯食おう。まっすぐリヨンス城行こう。」
「食べすぎじゃない? 昨日もほとんどペランが飯、平らげたじゃん。」
「えー。オレなんか全然覚えてねぇんだけど。安心して飲みすぎたんだろうな。」
「おれのおごりだったのに。忘れたからって無いことにはさせないからな! ってか、リシャールは狩りに行ってるんだろ? この辺にいたりする? 」
「まぁ。だいたい狩り場は決まってるし、野営張る場所も見当は着くけど・・・。でもなぁー。そうだ。お前の事待ってるヤツも居るし。探すの大変だから一旦城に帰ろうぜ。」
リヨンスは森の中を切り取ったような小さな丘を城壁で囲んだ街だった。
小ぶりなリヨンス城が真ん中で街を見下ろし、城の中に入ると随従数人に歓喜で迎えられた。
そのメンバーの中で、一番喜んでくれた者がいた。
ブルルルっと嘶くと、前足をタシタシと交互に上げて首を振って待っている。
「ポチィィィィ! ごめぇぇぇん! 置いていって! おれも会いたかった! 」
かわいいポチは抱きしめると顔をスリスリと擦り付けてくる。
温かい体温を感じながら厩舎でゆったりと手入れをしているといつの間にか日が暮れていた。
いっそ此処で眠ってしまおうかとは思ったが、長旅で色々汚れている自分に気がついた。
「ポチ。おれ臭くない? 」
キョトンとした目をして撫でる手に鼻先を押し当てて来るだけで、ポチからは答えはないが、その仕草だけで癒やされる。
「また、明日な。おやすみ。」
嘶くポチに手を振りながら、城に入ると、ペランが大きな笑い声が聞こえる。
ペランは酒を飲むと声がでかくなるから、どこにいるか見当が付きやすい。
声のする方に行ってみると、暖炉のある広間で仲間たちと酒を呑んでいた。
「ジャン! お前も飲むか? 」
上機嫌のペランは今宵もちゃんと酔っ払いだ。
「おれ、飯食って寝るわ。どこの部屋行ったら良い? 体拭きたいし、できれば湯浴みが出来たらいいんだけど、此処って出来る? 」
「おぃおぃ。綺麗好きなジャン様は健在だなぁ。」
「リシャール様の部屋なら暖炉があるから、其処で湯浴みが出来るだろ。ジャンなら部屋で寝てるのリシャール様に見つかっても蹴られねぇだろし。」
「いや、あの人今、信じられないくらい機嫌悪いから、さすがのジャンでも蹴られるんじゃね?」
「蹴られはしなくとも掘られるんじゃねぇか? 」
「そりゃ、違いねぇ」
がっはっはと下品に笑いながら話しかけてくる男たちに適当に返事をしながら食堂に行き、食事をかきこむと、兵士用に用意されている新しいシャツとズボンを持ち、一番広い部屋の目星をつけて階段を登る。
だいたい城のつくりはどこもに通っているし、暖炉のある部屋は煙突を作らなければならない為、必然的に限られていく。
重い扉を開くと、思ったとおり暖炉のある、広いベットの設えられた部屋だった。
早朝、ルーアンを出発して、5時間ほど歩いている。
ピュルテジュネ家のお気に入りの狩り場へ向かう道ということで、整えられた道を歩くのはさほど大変ではないのだが、リヨンの森、と言う地名なだけありブナの木が永遠と並び、どこを見ても同じ様な景色で距離感がわからなくなる。そんな状況から、少し開けた空に塔が見えた時は少し感動を覚えた。
「ああ。お前はなんでも新鮮でいいな。オレは昨日此処を歩いたばっかりだ。」
ルーアンの宿屋でペランに出会い、リシャールの話を食事とお酒と引き換えに聞いていたのが昨夜。
しかし、話も中程で寝てしまったペランを自分の部屋に連れて上がり、ペラン同様旅で疲れているはずなのだが、目を瞑るとリシャールの顔が浮かび、眠れず朝を迎えた。
半分眠っているペランを連れて、眠っているルーを叩き起こして別れを告げ、そのまま出発した。
眠れなくても妙にテンションの高い自分がおかしい。
興奮してペラン話の途中に質問攻めしてしっまったりで、なかなか話が進まなかったが、太陽が真上に上がり、リヨンスに付くであろう頃合いに「ふぅ。」とペランがため息を付いて、話を締めくくる。
「そんで、オレはお前を探すためにルーアンに行ったという事だな。・・・ルーアンに居た記憶がほぼ無いけどな。」
「おれだってルーアンについたばっかりだったよ。まぁ。ペランよりは速く着いてたけど。」
ルーアンは大きな都市だけあり、目を引くものがいっぱいあった。
とりあえず、宿屋に付いて荷物をおいて飯を食って・・・、などと言っていたら結局どこも見る事もできず出発したのだ。
「・・・ジャン。オレ、腹減った。飯食おう。まっすぐリヨンス城行こう。」
「食べすぎじゃない? 昨日もほとんどペランが飯、平らげたじゃん。」
「えー。オレなんか全然覚えてねぇんだけど。安心して飲みすぎたんだろうな。」
「おれのおごりだったのに。忘れたからって無いことにはさせないからな! ってか、リシャールは狩りに行ってるんだろ? この辺にいたりする? 」
「まぁ。だいたい狩り場は決まってるし、野営張る場所も見当は着くけど・・・。でもなぁー。そうだ。お前の事待ってるヤツも居るし。探すの大変だから一旦城に帰ろうぜ。」
リヨンスは森の中を切り取ったような小さな丘を城壁で囲んだ街だった。
小ぶりなリヨンス城が真ん中で街を見下ろし、城の中に入ると随従数人に歓喜で迎えられた。
そのメンバーの中で、一番喜んでくれた者がいた。
ブルルルっと嘶くと、前足をタシタシと交互に上げて首を振って待っている。
「ポチィィィィ! ごめぇぇぇん! 置いていって! おれも会いたかった! 」
かわいいポチは抱きしめると顔をスリスリと擦り付けてくる。
温かい体温を感じながら厩舎でゆったりと手入れをしているといつの間にか日が暮れていた。
いっそ此処で眠ってしまおうかとは思ったが、長旅で色々汚れている自分に気がついた。
「ポチ。おれ臭くない? 」
キョトンとした目をして撫でる手に鼻先を押し当てて来るだけで、ポチからは答えはないが、その仕草だけで癒やされる。
「また、明日な。おやすみ。」
嘶くポチに手を振りながら、城に入ると、ペランが大きな笑い声が聞こえる。
ペランは酒を飲むと声がでかくなるから、どこにいるか見当が付きやすい。
声のする方に行ってみると、暖炉のある広間で仲間たちと酒を呑んでいた。
「ジャン! お前も飲むか? 」
上機嫌のペランは今宵もちゃんと酔っ払いだ。
「おれ、飯食って寝るわ。どこの部屋行ったら良い? 体拭きたいし、できれば湯浴みが出来たらいいんだけど、此処って出来る? 」
「おぃおぃ。綺麗好きなジャン様は健在だなぁ。」
「リシャール様の部屋なら暖炉があるから、其処で湯浴みが出来るだろ。ジャンなら部屋で寝てるのリシャール様に見つかっても蹴られねぇだろし。」
「いや、あの人今、信じられないくらい機嫌悪いから、さすがのジャンでも蹴られるんじゃね?」
「蹴られはしなくとも掘られるんじゃねぇか? 」
「そりゃ、違いねぇ」
がっはっはと下品に笑いながら話しかけてくる男たちに適当に返事をしながら食堂に行き、食事をかきこむと、兵士用に用意されている新しいシャツとズボンを持ち、一番広い部屋の目星をつけて階段を登る。
だいたい城のつくりはどこもに通っているし、暖炉のある部屋は煙突を作らなければならない為、必然的に限られていく。
重い扉を開くと、思ったとおり暖炉のある、広いベットの設えられた部屋だった。
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