《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

文字の大きさ
上 下
71 / 84
回想

36(2/2)

しおりを挟む

次の日、戴冠式は盛大に執り行われた。
二日酔いと青アザの双方の腫れた顔で式に参加したリシャールは、夜も連日で催された宴には参加せず、部屋でふて寝した。
招待客たちがランスをあとにする中、リシャールは自堕落に城内を徘徊しながら過ごし、ポールとジェフロアにガミガミと叱られながらも、一向に聞いた様子もなくその日も庭をブラブラとしている。
次はピュルテジュネ王の元にゆく予定なのだが、リシャールの気が乗らないようだった。

「先日はそのー。悪かったな。ちょっと悪酔いしちまって。」

リシャールは、ジェフロア、それにフィリップ、そして先日彼が絡んでしまった少年に出会い、バツが悪そうに話しかけた。
ジェフロアは笑いながら背を伸ばしてリシャールの肩にぶら下がるようにして肩を組む。
彼らは比較的一緒に過ごす時間が多かったせいか、他の兄弟たちよりも仲が良かった。

「リシャールも反省するんだな。」
「おぃ。ジェフ。そりゃねぇだろ。俺だって悪いと思ったら謝るくらいするぞ。」
「俺の記憶の中では、今回が初めてだな。」

リシャールはジェフロアの頭をガシリと捕え、脇に抱え込むとガシガシとかき回し、横ではフィリップがニコニコしている。

「確かにそうかもね。僕も見た覚えが無いよ。ははは。」
「っち。まぁ。良いけどよ。・・・お前も、悪かったな。」

リシャールはジェフロアを開放すると、後ろに控えていた少年に声をかける。
話しかけられた彼は、遠慮がちに会釈をした。

「彼は、クリストフと言うんだ。僕の親友だ。もちろん、ジェフロアもね。」

フィリップはそう言いながら、クリストフの肩に手をかけ自分とジェフロアの間に招き入れる。
ジェフロアが嬉しそうにクリストフの肩を抱くと、クリストフはジェフロアの髪を丁寧に直してやりながら、3人で顔を合わせクスクスと笑っている。

「ふん。お前ら楽しそうだな。まぁフィリップも王になったことだし。大変だろうが、頑張れよ。」

そう言うとリシャールはさっさと城に向かって歩き始める。
リシャールに歩みを合わせようとするジェフロアだが、足の長いリシャールは進むのが速く、少し小走りに追いかけた。

「なんだよ。リシャール。他人事みたいだな。俺は行かないけど、クリスマスは父上の所にいくんだろ? 」
「あぁ。まぁな。・・・胸糞わりぃあの女もいんのかなぁ。」

後ろからのんびりと付いて歩いてきていたフィリップが少し大きな声で答える。

「アデル姉さんはアンジェで静養しているマグリット姉さんの所に行くって言ってましたよ。マグリット姉さん、子どもを亡くして随分落ち込んでいるからって、色々準備して。つい先日に出かけましたよ。」
「・・・そっか・・・あいつらのは・・・仲いいって言うのかな? 」

リシャールは立ち止まると、フィリップに聞いているのか、独り言なのか判らない様子でボソリと言った。
フィリップは尋ねられたと判断したようで、少し首をかしげながらリシャールの顔を見上げる。

「? 仲、良さそうでしたよね・・・? 」
「はぁー。女ってのは、わかんねぇな。まぁ。うるせぇのがいねぇなら気楽でいいね。ルーアンに行きがてら狩りに行くとするかな。」
「え。リシャール。リヨンスに行くの? いいな。俺も行きたいけど・・・。今回はやめとこうかな。」
「ああ。お前ら子どもはおままごとでもしてろよ。」

しっし、と虫を払うかの様な仕草しながら再びリシャールは大股で歩き始めた。

「ははは。リシャールの酔い方見てると、大人とは思えなかったけどね。・・・怪我には気をつけて。」

その言葉を受けて、リシャールは大きな口を開けて豪快に笑いながら振り返るとフィリップを一瞥する。

「おぃおぃ。そりゃ、襲撃の予告か? はっはっは。まぁせいぜい背後から襲われないように気をつけとくよ。」
「リシャール!! なんて言い草だよ! 俺たちお前の背後なんか狙わねだろ! なに言ってんだよ! 」

ジェフロアが本気で怒った様子で怒鳴っている。
それを軽く受け流し、歩きながら振り返ることなく後ろに手を上げる。

「あぁ。そうだな。わりぃな。・・・じゃ、ジェフも元気でな。」

次の日の朝、リシャールはフィリップ王に挨拶をすると、ルーアンからリヨンスへと向かった。











ーーーあとがきーーー

リヨンスは正式には「LYONS LA FORET」で旧名はサン.ドニ.アン.リヨン。森の中に街があるそうです。日本ではちょっと想像つかないので、行ってみたい場所のひとつです。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...