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回想
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リシャールの機嫌がすこぶる悪いらしい。
そんな話が街を巡っている。
仕事はこなしているが、普段の10倍は近づき難いオーラを醸し出し、恐ろしさで彼の取り巻き数人しか接触出来ないでいるので、詳細は分からない。
収穫の時期で忙しく、城で働く者たちが少なかったせいもあり何があったのか分からないのだが、街では色々な噂が飛び交った。
一番多い噂が、「愛人と名剣エクスカイバーを同時に家臣に掠め取られたらしい」という噂だった。
それを偶然耳にしてしまったリシャールだったが、「あぁぁ? 」っと恐ろしい顔で言っただけで、否定も何もなかったので、にわかに本当ではないかと、更に噂がひろまった。
「あんたさぁ。いい加減機嫌直してくださいよ。こっちは溜まったもんじゃない。オレたちの仕事倍になってんだからね? あんたが誰も近づけない様なひでぇ顔してっから。」
「あぁぁ? 俺はいつも通りだろ。機嫌悪くねぇ。黙ってろよ。てめぇ。・・・それよりポール。腹減った。飯。」
「はぁぁぁぁ。ペラン。飯だとよ。持ってこさせてくれ。」
ジャンの姿が見えなくなってからは、リシャールは執務室か、格技場にしか出入りしていなかった。
食堂にも行かず、寝食も執務室で行っている。
おかげで業務ははかどり、予定より速くランスに出立できると、ポールは喜んではいるが、城内では他の者も、速くボルドーから出てくれと願っている様子だった。
その理由は、執務が終わると、格技場にゆき、稽古と称した憂さ晴らしに付き合わされるからだった。
その稽古は熾烈を期すので、城に残っていた側近達以外の者たちは日に日に怪我で減ってゆき、残った者たちは死の宣告でも受けるかの気分で順番が回ってくるのを待たなければいけなかったからだ。
噂の名剣エクスカイバーを手に持ち、鬼の形相で打ち込みを繰り返す。
「リ、リシャール様、そんなに打ち込んでは、その、エ、エクスカイバーが傷んでしまうのでは? 」
「本物なわけねぇだろ。こんなもん。」
「えぇぇぇぇぇ? じゃぁ、本当に盗まれた? 」
「めんどくせぇな。盗まれてねぇし、こいつは名剣だが、エクスカイバーじゃねぇ。おら。いくぞ。構えろよ。ってか、いっそ構えてなくてもいくぞ? 」
「ひぃぃぃぃ。」
「受けてみろ。コレがエクスカイバーの威力だ! 」
「えぇぇぇ。どっちなんですかぁぁぁ。」
「あっはっはっはっはー!」
こうして犠牲者が増えていたが、リシャールがようやくランスへと旅立つ日には城内では隠すことなく歓声が上がっていた。
そして、それと同時にジャンを求める声も大きかった。
「迅速にジャンを探しだして、リシャールがルーアンに辿り着くまで連れて来る。」
その目標を立て、捜索班を二手にして探すことになる。
行きの航路をたどる班と、リシャールの日程に合わせてジャンを探すペラン達である。
数週間の行程で早めにランスにたどり着いたリシャールはしばらくカペー家に滞在を余儀なくされるのであった。
そんな話が街を巡っている。
仕事はこなしているが、普段の10倍は近づき難いオーラを醸し出し、恐ろしさで彼の取り巻き数人しか接触出来ないでいるので、詳細は分からない。
収穫の時期で忙しく、城で働く者たちが少なかったせいもあり何があったのか分からないのだが、街では色々な噂が飛び交った。
一番多い噂が、「愛人と名剣エクスカイバーを同時に家臣に掠め取られたらしい」という噂だった。
それを偶然耳にしてしまったリシャールだったが、「あぁぁ? 」っと恐ろしい顔で言っただけで、否定も何もなかったので、にわかに本当ではないかと、更に噂がひろまった。
「あんたさぁ。いい加減機嫌直してくださいよ。こっちは溜まったもんじゃない。オレたちの仕事倍になってんだからね? あんたが誰も近づけない様なひでぇ顔してっから。」
「あぁぁ? 俺はいつも通りだろ。機嫌悪くねぇ。黙ってろよ。てめぇ。・・・それよりポール。腹減った。飯。」
「はぁぁぁぁ。ペラン。飯だとよ。持ってこさせてくれ。」
ジャンの姿が見えなくなってからは、リシャールは執務室か、格技場にしか出入りしていなかった。
食堂にも行かず、寝食も執務室で行っている。
おかげで業務ははかどり、予定より速くランスに出立できると、ポールは喜んではいるが、城内では他の者も、速くボルドーから出てくれと願っている様子だった。
その理由は、執務が終わると、格技場にゆき、稽古と称した憂さ晴らしに付き合わされるからだった。
その稽古は熾烈を期すので、城に残っていた側近達以外の者たちは日に日に怪我で減ってゆき、残った者たちは死の宣告でも受けるかの気分で順番が回ってくるのを待たなければいけなかったからだ。
噂の名剣エクスカイバーを手に持ち、鬼の形相で打ち込みを繰り返す。
「リ、リシャール様、そんなに打ち込んでは、その、エ、エクスカイバーが傷んでしまうのでは? 」
「本物なわけねぇだろ。こんなもん。」
「えぇぇぇぇぇ? じゃぁ、本当に盗まれた? 」
「めんどくせぇな。盗まれてねぇし、こいつは名剣だが、エクスカイバーじゃねぇ。おら。いくぞ。構えろよ。ってか、いっそ構えてなくてもいくぞ? 」
「ひぃぃぃぃ。」
「受けてみろ。コレがエクスカイバーの威力だ! 」
「えぇぇぇ。どっちなんですかぁぁぁ。」
「あっはっはっはっはー!」
こうして犠牲者が増えていたが、リシャールがようやくランスへと旅立つ日には城内では隠すことなく歓声が上がっていた。
そして、それと同時にジャンを求める声も大きかった。
「迅速にジャンを探しだして、リシャールがルーアンに辿り着くまで連れて来る。」
その目標を立て、捜索班を二手にして探すことになる。
行きの航路をたどる班と、リシャールの日程に合わせてジャンを探すペラン達である。
数週間の行程で早めにランスにたどり着いたリシャールはしばらくカペー家に滞在を余儀なくされるのであった。
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