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ウィンザー
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穏やかな顔に一瞬影がさし、コクリと、うなずかれた。
そしてすぐに元の穏やかな顔に戻り、今度は反対側の先生に視線がむけられる。
「ヒューバード。よくいらしてくださいました。ラナルフ・デ・グランビルにはウィンチェスターで大変お世話になったのよ。彼がいなかったらどんな酷い生活になったことか。本当に感謝しているの。そんな彼から優秀な甥っ子の話を聞いて早速来てもらったのよ。ヒューバード。確か、リシャールと同じ21歳だったかしら? 」
その言葉に驚く。
先生は確かに少し老け顔なのかなと思っていたが、リシャールと同じ年齢だったのか。
「はい。21歳でございます。道中、ルー殿とジャン殿からリシャール様のお話を伺いました。立派な王子と同じ歳に生まれ、光栄でございます。」
「ええ。私の自慢の息子ですのよ。もう随分と会ってないけれど、今年のクリスマスには会わせていただけるらしいから、今からとても楽しみにしているのよ。あなたも、ご両親が帰りを待っていらっしゃるのではないですか? 」
「はい。首尾よく勉学の旅から帰国出来ましたので、後は両親や学費を援助してくださった叔父に恩返しをする予定でございます。」
「それは頼もしいわね。ラナルフをしっかり助けてやてくださいね。なにかあれば私を頼りなさい。できる限り力になるでしょう。」
「は。ありがとうございます。」
先生が深々と頭を下げたところで、宰相が「では。」と区切る。
「皆様方は、今宵ささやかですが宴を催しますゆえ、お越しください。それまでは各御人、王妃との談話の時間を設けております。まずはルー殿とジャン殿は隣室で控えていただきますゆえ、こちらにどうぞ。」
宰相に連れられて大広間を出る。
先生は王妃とそのまま談話という流れのようだ。
廊下を歩き隣の部屋と思しき部屋を通り過ぎる。
隣室といっていたが、階段を登った3階に連れて行かれる。
重い扉が開かれ、入った部屋には窓はない。
しかし、ろうそくと暖炉の火が部屋とかけられた布を照らし暖かい雰囲気を醸し出していた。
部屋には椅子と丸いテーブルが中央に置かれ、その上にはエールとコップが用意されている。
その後ろで扉が重い音を鳴らしながら閉じられた。
「るる、ルー、お、おれたち何かやらかした? これって閉じ込められたんじゃない? 」
「・・・お前、扉を開けてみろ。」
開かないかもと思いながらもドキドキしながら重い扉を押して見ると、ゆっくりと扉が開き、外の衛兵と目が合う。
衛兵はニコリと笑うと「なんでもお申し付けください。」と言ってくれた。
「ち、違うのかな?」
焦りながら、椅子に座ってエールを飲むルーに近づくと、わずかに肩が揺れている。
「ルー! 笑ってる! 分かってるなら説明してよ! 」
「くっくっく。あぁ。悪い。お前があんまりにもビビってるから、つい。くっくっく。」
「何だよ。人が悪いな! 早く教えろって! 」
ドカリと椅子に座り、自分のコップにエールを注ぐと、いつまでも肩を揺らすルーを睨みつける。
「内密な話しをする部屋だろう。おそらく王妃も今回のリシャールとマグリット様の件を知っているのだろう。この様子なら、王都に近づかずとも、ある程度わかるかもしれないな。さすがピュルテジュネ家王妃だな。」
「そっか。内緒話か。王妃様はなんでも知ってそうだもんね。」
それで、さっきはおれの顔を見てうなずいたのか。
・・・なんで?
首をかしげながら、一時考えてみるが、一向に理由が思いつかない。
「そう言えば、ルー。王妃様との会話すごかったね! あんなに喋れるなら普段でもあんなふうに喋ればいいのに。そうしたらもっとファンが増えるんだろうなぁ。」
「あんなの演技に決まってるだろう。」
「えぇ? 即興であんなのできるの? 」
「ポールに特訓してもらった。」
「・・・それを遺憾無く発揮できるポテンシャルに驚くよ。」
「ポールは王妃とも親しいからな。大体どんな事言われるか想像がつくんだよ。想定外の事はなかった。」
「あー。そう言えば、ポールって外ではリシャールに敬語で話してるもんね。ひょっとして親戚なの? 」
「そうだな。遠い親戚ってところか。ポールは王妃の叔父さんに当たる、アンティッキオ候レイモンド伯の次男坊で、小さい頃からリシャールの遊び相手として一緒に育てられたんだ。」
なるほど。
それであんなふうに兄弟のように仲が良いくせに、どことなく上下関係がある雰囲気なのか。
ーーーあとがきーーー
ピュルテジュネ家王妃エレノア登場です。
エレノアと叔父のレイモンド伯 [ポールのお父さん]はとても仲良しで
エレノアの前の夫ルイとの離婚 [エレノアはバツイチ] の原因の要因の1つでもあったようです。
因みにピュルテジュネ王は11歳年下でエレノアは姐さん女房です
そしてすぐに元の穏やかな顔に戻り、今度は反対側の先生に視線がむけられる。
「ヒューバード。よくいらしてくださいました。ラナルフ・デ・グランビルにはウィンチェスターで大変お世話になったのよ。彼がいなかったらどんな酷い生活になったことか。本当に感謝しているの。そんな彼から優秀な甥っ子の話を聞いて早速来てもらったのよ。ヒューバード。確か、リシャールと同じ21歳だったかしら? 」
その言葉に驚く。
先生は確かに少し老け顔なのかなと思っていたが、リシャールと同じ年齢だったのか。
「はい。21歳でございます。道中、ルー殿とジャン殿からリシャール様のお話を伺いました。立派な王子と同じ歳に生まれ、光栄でございます。」
「ええ。私の自慢の息子ですのよ。もう随分と会ってないけれど、今年のクリスマスには会わせていただけるらしいから、今からとても楽しみにしているのよ。あなたも、ご両親が帰りを待っていらっしゃるのではないですか? 」
「はい。首尾よく勉学の旅から帰国出来ましたので、後は両親や学費を援助してくださった叔父に恩返しをする予定でございます。」
「それは頼もしいわね。ラナルフをしっかり助けてやてくださいね。なにかあれば私を頼りなさい。できる限り力になるでしょう。」
「は。ありがとうございます。」
先生が深々と頭を下げたところで、宰相が「では。」と区切る。
「皆様方は、今宵ささやかですが宴を催しますゆえ、お越しください。それまでは各御人、王妃との談話の時間を設けております。まずはルー殿とジャン殿は隣室で控えていただきますゆえ、こちらにどうぞ。」
宰相に連れられて大広間を出る。
先生は王妃とそのまま談話という流れのようだ。
廊下を歩き隣の部屋と思しき部屋を通り過ぎる。
隣室といっていたが、階段を登った3階に連れて行かれる。
重い扉が開かれ、入った部屋には窓はない。
しかし、ろうそくと暖炉の火が部屋とかけられた布を照らし暖かい雰囲気を醸し出していた。
部屋には椅子と丸いテーブルが中央に置かれ、その上にはエールとコップが用意されている。
その後ろで扉が重い音を鳴らしながら閉じられた。
「るる、ルー、お、おれたち何かやらかした? これって閉じ込められたんじゃない? 」
「・・・お前、扉を開けてみろ。」
開かないかもと思いながらもドキドキしながら重い扉を押して見ると、ゆっくりと扉が開き、外の衛兵と目が合う。
衛兵はニコリと笑うと「なんでもお申し付けください。」と言ってくれた。
「ち、違うのかな?」
焦りながら、椅子に座ってエールを飲むルーに近づくと、わずかに肩が揺れている。
「ルー! 笑ってる! 分かってるなら説明してよ! 」
「くっくっく。あぁ。悪い。お前があんまりにもビビってるから、つい。くっくっく。」
「何だよ。人が悪いな! 早く教えろって! 」
ドカリと椅子に座り、自分のコップにエールを注ぐと、いつまでも肩を揺らすルーを睨みつける。
「内密な話しをする部屋だろう。おそらく王妃も今回のリシャールとマグリット様の件を知っているのだろう。この様子なら、王都に近づかずとも、ある程度わかるかもしれないな。さすがピュルテジュネ家王妃だな。」
「そっか。内緒話か。王妃様はなんでも知ってそうだもんね。」
それで、さっきはおれの顔を見てうなずいたのか。
・・・なんで?
首をかしげながら、一時考えてみるが、一向に理由が思いつかない。
「そう言えば、ルー。王妃様との会話すごかったね! あんなに喋れるなら普段でもあんなふうに喋ればいいのに。そうしたらもっとファンが増えるんだろうなぁ。」
「あんなの演技に決まってるだろう。」
「えぇ? 即興であんなのできるの? 」
「ポールに特訓してもらった。」
「・・・それを遺憾無く発揮できるポテンシャルに驚くよ。」
「ポールは王妃とも親しいからな。大体どんな事言われるか想像がつくんだよ。想定外の事はなかった。」
「あー。そう言えば、ポールって外ではリシャールに敬語で話してるもんね。ひょっとして親戚なの? 」
「そうだな。遠い親戚ってところか。ポールは王妃の叔父さんに当たる、アンティッキオ候レイモンド伯の次男坊で、小さい頃からリシャールの遊び相手として一緒に育てられたんだ。」
なるほど。
それであんなふうに兄弟のように仲が良いくせに、どことなく上下関係がある雰囲気なのか。
ーーーあとがきーーー
ピュルテジュネ家王妃エレノア登場です。
エレノアと叔父のレイモンド伯 [ポールのお父さん]はとても仲良しで
エレノアの前の夫ルイとの離婚 [エレノアはバツイチ] の原因の要因の1つでもあったようです。
因みにピュルテジュネ王は11歳年下でエレノアは姐さん女房です
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