《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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トーナメント

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12日間行事尽くしのクリスマスはリシャールの兄であるアンリを主賓とした祝宴で無事終わり、お祭りが終わったわびしさと共に、のんびりとした日々が帰ってきた。
主賓客として招かれたアンリは祝宴の前日にやってきて、長期滞在するらしく1月の仕事始めの時期もまだ2階の主寝室の主となっている。
父親と喧嘩中だとかで、自国に帰る気は毛頭ないらしく、共のウィリアムと諸国を旅する計画を立てているらしい。

主賓客として招かれたアンリは金髪碧眼の美しい青年で、絵にかいたような王子様だった。
しかし、それだけの印象だった。
リシャールのように人を惹きつける何かがあるかといえばそうでもない気がするのは、贔屓目なのかもしれない。
王子としては、可もなく不可もなく、ピュルテジュネ家の第一王位継承者である、それだけらしい。
というのはポールの見解だ。
彼も贔屓目がひどいからあまり参考にならない気がする。
ただ、その第一王位継承者であるから、父親の領地を引き継ぐことは決まっているが、それは父親が死んでからのことであり、彼には今治める国はないのが現状らしい。
リシャールのように統治者としての技量を試す機会もなければ、責任も与えられるとこのないただの王子となれば、可もなく不可もないと言われるのも仕方がないことのような気もする。

そんな王子付の騎士はうってかわって名声名高い騎士だった。
その名をウィリアムといい、騎士ならば知らぬ者はいないほどの人物である。
この世界に来て一年足らずのおれですら聞いたことがある。
彼は厳ついイケメンのオジ様で、リシャールほどではないが背も体も大きいが、印象が優しい人物で、王子アンリと騎士ウィリアムが並んでいるだけで、まるでロマンス物語の主人公が現実に舞い降りてきた様だと、城の女性たちは毎日華やいでいた。
ウィリアムは女性だけではなく男性にも人気だった。
それはそうだ。
騎士の中の騎士と言われる人物で、逸話が片田舎まで聞こえるほどの人物だ。
アンリとの旅の後は武者修行に出るつもりだと言っていた。
武者修行の話を聞いた男どもは皆目を輝かせて「オレも共として連れて行ってください!」と口々に頼み込み終いには「稽古をつけて下さい。」と言い出し、城ではウィリアムによる合同稽古が繰り広げられた。
そんな中、騎士たちの熱気に押され簡易の馬上槍試合が催される事になった。
馬上槍試合とは以前剣の指導をしてもらったペトロスから聞いたトーナメントのことだ。
100洗練魔ウィリアムの参加が決まっており、城内は愚か城下までも大騒ぎになっていた。
が、おれはリシャールの一言で、参加は見送ることになった。

「お前にはまだ早い。今回は辞めておけ。」

一緒に朝食をしているときにその話題になり、リシャールの一言に、同席していたアンリとウィリアムは気まずい顔をしている。
リシャールはそんなことには気が付かず、早々に食事を終えると先に席を立った。

城主だけでなく、公爵でもあるリシャールはやはり仕事が多いのだろう。
戦を控えているのもあって、毎日沢山の人達と会議をしたり、何処かに赴いたり忙しそうにしている。
だが、こうして毎日朝と夜とで顔を合わす時間を無理やり作ってくれているのが、言葉が少ない彼の思い遣りだと分かるので、あまり寂しい気持ちにはならなかった。
おれ自身も剣の稽古など自分を磨く事に忙しくしているからもあるだろう。
そりゃ多少は落ち込むけど。
わかってはいる。
トーナメントとなれば乗馬する必要も出てくるしおれとポチの相性は最高でも訓練不足なのは否めない。
剣の稽古もウィリアムよりもリシャールに付けてもらいたいところだが、それもまだ実現できていない。

そんな少し沈んだ気持ちがバレないように愛想笑いでやり過ごして退室したが、流石にポールには気づかれたようで追いかけるようにして部屋から出てきた。

「ジャン。今日買い物に出る予定なんだけど、お前も来いよ。お前の鎧、体に合うように直してもらおうぜ。随分だぶついた奴着てるだろ?」

そう言うと肩に手を回し体重をかけてくる。
ポールの気配りにはいつも助けられる。
こういう日は確かに外出したほうが気が晴れるかもしれない。

「あ。うん。そうなんだよね。無駄が多い分重いんだよね。直せる直したいな。ポチも軽いほうが動きやすいだろうし。」
「よし。決まりだな。じゃ、半時後に門の前な!」

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