29 / 84
トーナメント
16(1/2)
しおりを挟む
12日間行事尽くしのクリスマスはリシャールの兄であるアンリを主賓とした祝宴で無事終わり、お祭りが終わったわびしさと共に、のんびりとした日々が帰ってきた。
主賓客として招かれたアンリは祝宴の前日にやってきて、長期滞在するらしく1月の仕事始めの時期もまだ2階の主寝室の主となっている。
父親と喧嘩中だとかで、自国に帰る気は毛頭ないらしく、共のウィリアムと諸国を旅する計画を立てているらしい。
主賓客として招かれたアンリは金髪碧眼の美しい青年で、絵にかいたような王子様だった。
しかし、それだけの印象だった。
リシャールのように人を惹きつける何かがあるかといえばそうでもない気がするのは、贔屓目なのかもしれない。
王子としては、可もなく不可もなく、ピュルテジュネ家の第一王位継承者である、それだけらしい。
というのはポールの見解だ。
彼も贔屓目がひどいからあまり参考にならない気がする。
ただ、その第一王位継承者であるから、父親の領地を引き継ぐことは決まっているが、それは父親が死んでからのことであり、彼には今治める国はないのが現状らしい。
リシャールのように統治者としての技量を試す機会もなければ、責任も与えられるとこのないただの王子となれば、可もなく不可もないと言われるのも仕方がないことのような気もする。
そんな王子付の騎士はうってかわって名声名高い騎士だった。
その名をウィリアムといい、騎士ならば知らぬ者はいないほどの人物である。
この世界に来て一年足らずのおれですら聞いたことがある。
彼は厳ついイケメンのオジ様で、リシャールほどではないが背も体も大きいが、印象が優しい人物で、王子アンリと騎士ウィリアムが並んでいるだけで、まるでロマンス物語の主人公が現実に舞い降りてきた様だと、城の女性たちは毎日華やいでいた。
ウィリアムは女性だけではなく男性にも人気だった。
それはそうだ。
騎士の中の騎士と言われる人物で、逸話が片田舎まで聞こえるほどの人物だ。
アンリとの旅の後は武者修行に出るつもりだと言っていた。
武者修行の話を聞いた男どもは皆目を輝かせて「オレも共として連れて行ってください!」と口々に頼み込み終いには「稽古をつけて下さい。」と言い出し、城ではウィリアムによる合同稽古が繰り広げられた。
そんな中、騎士たちの熱気に押され簡易の馬上槍試合が催される事になった。
馬上槍試合とは以前剣の指導をしてもらったペトロスから聞いたトーナメントのことだ。
100洗練魔ウィリアムの参加が決まっており、城内は愚か城下までも大騒ぎになっていた。
が、おれはリシャールの一言で、参加は見送ることになった。
「お前にはまだ早い。今回は辞めておけ。」
一緒に朝食をしているときにその話題になり、リシャールの一言に、同席していたアンリとウィリアムは気まずい顔をしている。
リシャールはそんなことには気が付かず、早々に食事を終えると先に席を立った。
城主だけでなく、公爵でもあるリシャールはやはり仕事が多いのだろう。
戦を控えているのもあって、毎日沢山の人達と会議をしたり、何処かに赴いたり忙しそうにしている。
だが、こうして毎日朝と夜とで顔を合わす時間を無理やり作ってくれているのが、言葉が少ない彼の思い遣りだと分かるので、あまり寂しい気持ちにはならなかった。
おれ自身も剣の稽古など自分を磨く事に忙しくしているからもあるだろう。
そりゃ多少は落ち込むけど。
わかってはいる。
トーナメントとなれば乗馬する必要も出てくるしおれとポチの相性は最高でも訓練不足なのは否めない。
剣の稽古もウィリアムよりもリシャールに付けてもらいたいところだが、それもまだ実現できていない。
そんな少し沈んだ気持ちがバレないように愛想笑いでやり過ごして退室したが、流石にポールには気づかれたようで追いかけるようにして部屋から出てきた。
「ジャン。今日買い物に出る予定なんだけど、お前も来いよ。お前の鎧、体に合うように直してもらおうぜ。随分だぶついた奴着てるだろ?」
そう言うと肩に手を回し体重をかけてくる。
ポールの気配りにはいつも助けられる。
こういう日は確かに外出したほうが気が晴れるかもしれない。
「あ。うん。そうなんだよね。無駄が多い分重いんだよね。直せる直したいな。ポチも軽いほうが動きやすいだろうし。」
「よし。決まりだな。じゃ、半時後に門の前な!」
主賓客として招かれたアンリは祝宴の前日にやってきて、長期滞在するらしく1月の仕事始めの時期もまだ2階の主寝室の主となっている。
父親と喧嘩中だとかで、自国に帰る気は毛頭ないらしく、共のウィリアムと諸国を旅する計画を立てているらしい。
主賓客として招かれたアンリは金髪碧眼の美しい青年で、絵にかいたような王子様だった。
しかし、それだけの印象だった。
リシャールのように人を惹きつける何かがあるかといえばそうでもない気がするのは、贔屓目なのかもしれない。
王子としては、可もなく不可もなく、ピュルテジュネ家の第一王位継承者である、それだけらしい。
というのはポールの見解だ。
彼も贔屓目がひどいからあまり参考にならない気がする。
ただ、その第一王位継承者であるから、父親の領地を引き継ぐことは決まっているが、それは父親が死んでからのことであり、彼には今治める国はないのが現状らしい。
リシャールのように統治者としての技量を試す機会もなければ、責任も与えられるとこのないただの王子となれば、可もなく不可もないと言われるのも仕方がないことのような気もする。
そんな王子付の騎士はうってかわって名声名高い騎士だった。
その名をウィリアムといい、騎士ならば知らぬ者はいないほどの人物である。
この世界に来て一年足らずのおれですら聞いたことがある。
彼は厳ついイケメンのオジ様で、リシャールほどではないが背も体も大きいが、印象が優しい人物で、王子アンリと騎士ウィリアムが並んでいるだけで、まるでロマンス物語の主人公が現実に舞い降りてきた様だと、城の女性たちは毎日華やいでいた。
ウィリアムは女性だけではなく男性にも人気だった。
それはそうだ。
騎士の中の騎士と言われる人物で、逸話が片田舎まで聞こえるほどの人物だ。
アンリとの旅の後は武者修行に出るつもりだと言っていた。
武者修行の話を聞いた男どもは皆目を輝かせて「オレも共として連れて行ってください!」と口々に頼み込み終いには「稽古をつけて下さい。」と言い出し、城ではウィリアムによる合同稽古が繰り広げられた。
そんな中、騎士たちの熱気に押され簡易の馬上槍試合が催される事になった。
馬上槍試合とは以前剣の指導をしてもらったペトロスから聞いたトーナメントのことだ。
100洗練魔ウィリアムの参加が決まっており、城内は愚か城下までも大騒ぎになっていた。
が、おれはリシャールの一言で、参加は見送ることになった。
「お前にはまだ早い。今回は辞めておけ。」
一緒に朝食をしているときにその話題になり、リシャールの一言に、同席していたアンリとウィリアムは気まずい顔をしている。
リシャールはそんなことには気が付かず、早々に食事を終えると先に席を立った。
城主だけでなく、公爵でもあるリシャールはやはり仕事が多いのだろう。
戦を控えているのもあって、毎日沢山の人達と会議をしたり、何処かに赴いたり忙しそうにしている。
だが、こうして毎日朝と夜とで顔を合わす時間を無理やり作ってくれているのが、言葉が少ない彼の思い遣りだと分かるので、あまり寂しい気持ちにはならなかった。
おれ自身も剣の稽古など自分を磨く事に忙しくしているからもあるだろう。
そりゃ多少は落ち込むけど。
わかってはいる。
トーナメントとなれば乗馬する必要も出てくるしおれとポチの相性は最高でも訓練不足なのは否めない。
剣の稽古もウィリアムよりもリシャールに付けてもらいたいところだが、それもまだ実現できていない。
そんな少し沈んだ気持ちがバレないように愛想笑いでやり過ごして退室したが、流石にポールには気づかれたようで追いかけるようにして部屋から出てきた。
「ジャン。今日買い物に出る予定なんだけど、お前も来いよ。お前の鎧、体に合うように直してもらおうぜ。随分だぶついた奴着てるだろ?」
そう言うと肩に手を回し体重をかけてくる。
ポールの気配りにはいつも助けられる。
こういう日は確かに外出したほうが気が晴れるかもしれない。
「あ。うん。そうなんだよね。無駄が多い分重いんだよね。直せる直したいな。ポチも軽いほうが動きやすいだろうし。」
「よし。決まりだな。じゃ、半時後に門の前な!」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました
あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。
完結済みです。
7回BL大賞エントリーします。
表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない
ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。
元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。
無口俺様攻め×美形世話好き
*マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま
他サイトも転載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる