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旅立ち
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街道は旅人や商人の様な人たちが増え、近付くほどに道は補整された石畳になり大きくなった。そこを往く人の波に流れ城壁の中に入る。
ついたころには日も暮れかけていたが、街は驚くほど明るく大きかった。道沿いには店が立ち並び、多くの商品が店頭に並べてあるものや、食堂の様な様相の店ではテーブルが石畳の道にもせり出し、客が大きな声で飲みながら話している。
様々な店に気を取られながら先をゆっくトマに後れを取らぬよう歩いていると、トマが振り返る。
「あれがサン タンドレ教会だ。」
指さす先には立派な教会が立っていた。
近づけば飾り気のないシンプルな石作りだが、目を引くほど美しい。
惚けてみていると目の前のトマが立ち止まる。
「今夜の宿はここにするか?口を聞いてやってもいいが。」
教会に泊まると勉強にはなるのだが、流石にここでお世話になるのは気後れする。
そう言うとトマは
「そうか。では、また会える日もあるだろう。元気で。何か困れば来なさい。」
と言い残しさっさと門の中に入っていった。
別れの言葉は交わしたが、もう少しお礼とか言う隙を作ってくれてもいいのにと、苦笑いしながら美しい教会を眺めていた。
日の暮れた街の様々な店先の光にぼんやりと照らされた教会の窓の木戸は閉じられ、中からの光は見えないが聖堂はさぞ美しいのだろう。
どこかから見えないかな。
教会の塀の周りを少しうろうろしていると、目の前に塀の上からずっしりとした重量の物が落ちてきた。
近付いてみると、硬い鞘に入れられた中振りの剣だ。ひらってみるとトマから貰った自分の剣より幾分か重く、柄にはきれいな装飾がしてある。
一目でわかる。良いヤツだ。
「あっぶな。こんな鉄の塊が落ちてきて、ぶつかったらひとたまりもないじゃないか。ってか、なんで降ってきた?」
思わず声に出して呟いていると、上から声がする。
「すまぬ。人がいたか。怪我はないか?」
驚いていると、次いでフードを被った大男が塀の上から飛び降りてくる。
「えぇぇぇ?」
「急いでいる。悪いが、来い。」
舞い降りてきた大男に強く腕を掴まれ、引きずられるように街の喧騒の方へと連れていかれる。
先ほど落ちてきた剣はそのまま持ってきてしまっていたが、恐らく彼の物なのだろう。
もしかしたら盗みを疑われて警察にでも突き出されるのだろうか。
いや、でも怪我はないか?と言っていたし、前を急ぎ足で歩くこの男に怒っている雰囲気はない。
むしろ陽気?
口笛を吹いている様子からして、どちらかというと機嫌がよさそうだ。
そのまま男は腕をつかんだまま歩き続け、街の中心街から少し離れた小奇麗な2階建ての一軒の店に入る。
男の行きつけの店らしく、店主が気前よく声をかけてきた。
「ああ。来たな。いらっしゃい。聞いてるぜ、今回は思ったより長かったな。随分絞られたか!」
「まったく、堪ったもんじゃないぜ。絞られすぎてもうしょんべんも出ねーよ。適当に飯を頼む。肉多めでな。」
そう言うと男は奥の人気の少ない席を選びやっと腕を離した。
どかり と椅子に座るとフードを脱ぐ。
中から少し赤めの金髪が顔に流れ落ち、鋭い瞳がこちらを捉える。
「悪いな。お前。金持ってる?」
「ええ?あ。す、少しくらいなら。」
迫力に縮み上がる。カツアゲだ。
「ああ。よかった。荷物置いてきちまったから、今手持ちがないんだよ。お前の抱えてる剣だけで精一杯だよ。金はあとで返すから。一泊出来るくらい持ってんの?」
「は、はい。まぁ。」
「そっ。まぁ座れよ。」
そう言うと店主が持ってきた食事を奪うように掴むと食べ始めた。
ーーーあとがきーーー
やっと物語が動きだします!
ついたころには日も暮れかけていたが、街は驚くほど明るく大きかった。道沿いには店が立ち並び、多くの商品が店頭に並べてあるものや、食堂の様な様相の店ではテーブルが石畳の道にもせり出し、客が大きな声で飲みながら話している。
様々な店に気を取られながら先をゆっくトマに後れを取らぬよう歩いていると、トマが振り返る。
「あれがサン タンドレ教会だ。」
指さす先には立派な教会が立っていた。
近づけば飾り気のないシンプルな石作りだが、目を引くほど美しい。
惚けてみていると目の前のトマが立ち止まる。
「今夜の宿はここにするか?口を聞いてやってもいいが。」
教会に泊まると勉強にはなるのだが、流石にここでお世話になるのは気後れする。
そう言うとトマは
「そうか。では、また会える日もあるだろう。元気で。何か困れば来なさい。」
と言い残しさっさと門の中に入っていった。
別れの言葉は交わしたが、もう少しお礼とか言う隙を作ってくれてもいいのにと、苦笑いしながら美しい教会を眺めていた。
日の暮れた街の様々な店先の光にぼんやりと照らされた教会の窓の木戸は閉じられ、中からの光は見えないが聖堂はさぞ美しいのだろう。
どこかから見えないかな。
教会の塀の周りを少しうろうろしていると、目の前に塀の上からずっしりとした重量の物が落ちてきた。
近付いてみると、硬い鞘に入れられた中振りの剣だ。ひらってみるとトマから貰った自分の剣より幾分か重く、柄にはきれいな装飾がしてある。
一目でわかる。良いヤツだ。
「あっぶな。こんな鉄の塊が落ちてきて、ぶつかったらひとたまりもないじゃないか。ってか、なんで降ってきた?」
思わず声に出して呟いていると、上から声がする。
「すまぬ。人がいたか。怪我はないか?」
驚いていると、次いでフードを被った大男が塀の上から飛び降りてくる。
「えぇぇぇ?」
「急いでいる。悪いが、来い。」
舞い降りてきた大男に強く腕を掴まれ、引きずられるように街の喧騒の方へと連れていかれる。
先ほど落ちてきた剣はそのまま持ってきてしまっていたが、恐らく彼の物なのだろう。
もしかしたら盗みを疑われて警察にでも突き出されるのだろうか。
いや、でも怪我はないか?と言っていたし、前を急ぎ足で歩くこの男に怒っている雰囲気はない。
むしろ陽気?
口笛を吹いている様子からして、どちらかというと機嫌がよさそうだ。
そのまま男は腕をつかんだまま歩き続け、街の中心街から少し離れた小奇麗な2階建ての一軒の店に入る。
男の行きつけの店らしく、店主が気前よく声をかけてきた。
「ああ。来たな。いらっしゃい。聞いてるぜ、今回は思ったより長かったな。随分絞られたか!」
「まったく、堪ったもんじゃないぜ。絞られすぎてもうしょんべんも出ねーよ。適当に飯を頼む。肉多めでな。」
そう言うと男は奥の人気の少ない席を選びやっと腕を離した。
どかり と椅子に座るとフードを脱ぐ。
中から少し赤めの金髪が顔に流れ落ち、鋭い瞳がこちらを捉える。
「悪いな。お前。金持ってる?」
「ええ?あ。す、少しくらいなら。」
迫力に縮み上がる。カツアゲだ。
「ああ。よかった。荷物置いてきちまったから、今手持ちがないんだよ。お前の抱えてる剣だけで精一杯だよ。金はあとで返すから。一泊出来るくらい持ってんの?」
「は、はい。まぁ。」
「そっ。まぁ座れよ。」
そう言うと店主が持ってきた食事を奪うように掴むと食べ始めた。
ーーーあとがきーーー
やっと物語が動きだします!
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