《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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はじまり

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 言われるがまま身を清めているとペトロスが来る。

「ちゃんと裏側も洗えよ。」

 と神聖な雰囲気をぶち壊す発言をしてどこかに行く。

 この時期の水は冷たいのに。

 と、縮み上がりながら身を清める。
 白い膝下まである衣に身を包み細いベルトを締め、隣にある教会に行くと、ペトロスが入口で待っていた。

「ちゃんと洗ったか?」
 イタズラっぽく笑いながら息子にでも言うような彼の言葉に笑いつつも不覚にも涙が出そうになった。
 思えば息子のように可愛がってくれていたのだろう。熱心に剣の指導も農作業の指導もしてもらった。
 今回の激励会も彼が皆に声を掛けてくれたと聞いた。
 じんわりと胸が熱くなった。

 彼に促され祭壇の前に行く。
 祭壇はいつもは開かれてあるカーテンが閉められていて、その白い麻で出来た2重のカーテン中に入ると、中には神父と神父の友人であるトマが待機していた。
 小さな祭壇は数本の蠟燭の明かりを麻のカーテンが反射し、幻想的な雰囲気を漂わせている。

 言われるがままに儀式が始まる。
 神父の前に跪き両手を差し出す。
 そうして神父の息子となる誓いを立てる。

 これには心が踊った。これから父と呼んでいいのだろうか。と気持ちを昂らせていた。
 すると神父が、私の手を包んだかと思うと、顔がそのまま近づき、そうして接吻。

 あー。
 そうだろうな。挨拶でほっぺにしてたもんな。
 それもなんとか回避していたんだけどな。
 ···キスされちゃったよ。
 イヤ。全然。気にしないけどね。
 ファーストキスとか。
 この際。
 ええ。儀式ですものネ···。

 そんなことを考えていると祭壇に飾ってあった刀を掲げられる。

「お前の父であるピエールが、ジャンを騎士に叙任する」

 その言葉の後に神父の拳が、突然胸を打つ。

 神聖な儀式の中で打たれると思っていなかったので、驚いて神父を見ると、打った反動でよろめいて転びそうになったところをペトロスに支えられている。
 神父は少し照れ笑いしたあと、真顔に戻ると言葉を続ける。

「この痛みが今日という日を記憶させる。さあ、お前はもう立派な騎士となった。」

 そう言うと神父は今度はしっかりした足取りで近づいてくると、私を立たせると、先ほど掲げた剣を渡してくる。

「それは、トマの使っていた剣だ。そして、この鎖帷子も。」

 後ろに控えていたトマがパーカーのような鎖でできた鎧を渡してくれた。
 その下には白地の布に赤い十字のマークの入ったポンチョのような服もあった。

「それから、これも。」

 神父が革の袋に入ったリュートを渡してくれる。
 この1年仕事と剣の稽古の合間に神父に教えてもらったリュートは自分ではかなり弾けるようになったと思うほどにはなったが、まだまだ神父の様には弾けない。

「剣も、鎧も、リュートまで。持って行ってよろしいのですか?」
「ああ。剣も鎧もトーナメントで戦うことになれば、勝者に取られてしまうからな。」

 笑いながらペトロスが言う。

「トーナメント?」
「まぁ出ればわかるさ。お前さん、なかなかの腕だから、馬も狙えるかもしれないぞ。」
「無理をするなよ?トーナメントは、怪我だけならまだしも命を落とす者も少なくないのだからな。」

 ペトロスの言葉に神父が補うように付け足すと、ポンと肩を叩かれた。

「リュートは、私はもういいのだよ。歌うこともないし。これがあるとお前を思い出してさみしくなるから、持って行ってくれ。さあ、儀式は終わりだ。明日に備えて眠るといい。私はサンと、ペトロスともう少し飲むことにするから先に帰っていなさい。」

 神父にそんなことを言われると寂しさがこみ上げてくる。
 トボトボと家に帰り、布団にもぐりこむ。

 あんな神父の寂しそうな顔を見て、ましてや、あんな儀式を施してもらって、寝付けるわけないじゃないか。

 っと思っていたが、目を覚ましてみれば、もう日も上り、ミサの時間になっていた。







接吻しましたね。
 でもコレは誓いの証でラブのアレでは無いのでノーカン(主人公談)です。
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