《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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トーナメント

20(2/2)  おまけ付き 1 

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 ルーの出ていった扉をしばらく眺めながら考えていると視線を感じた。
リシャールが怖い顔でこちらを見ている。
怖い顔だが、この顔は誰かに怒っている訳ではないと、おれは知っている。

「リシャール? 」

隣に座っているリシャールの手を触ってみる。

「ジャン。すまないな。一人にすべきじゃなかった。」
「違うんだ。謝らないでよ。丸腰で勝手に抜け出しオレがすべての原因だし。」

自分の身勝手な行動により他の者までも罰を受ける事になる。
先程のコリンヌの言葉が胸にのしかかった。
怖い顔の向き先はおそらくリシャール自分自身なのだ。
おれの身勝手が、リシャールを傷つけてしまったのだ。

いつの間にか部屋には二人だけになっていた。
触ったリシャールの手が暖かい。

もしかしたら、あの時あのままひどいことをされていたら。
この暖かい手に触れることができただろうか。
あの、流れる血が、踏みつけた血溜まりが、自分の物だったら。
あるいは、リシャールの物だったら。

恐怖なのか、安堵なのか。
鼓動が早くなり、息が詰まるようになる。
その様子に気がついたのか、リシャールの腕が優しく肩を包んだ。
頭がそっと彼の胸につくと、トク トク と、静かに鼓動が聞こえた。
その音にリンクするように、自分の鼓動も少しずつ静かになってゆく。

怖かったし痛かった。
口はまだ血の味がするし、殴られた腹もズクズクと痛む。
けれど、そんなものも感じる事なくあっけなく消えていった彼らの命。
だけど。
目の前で消えていった鼓動は、本来ルーではなく、おれが、消さなければいけなかったのだ。
おれが、リシャールの、この暖かい胸の傍に居るために。
これが、リシャールと共に住む世界なのだ。

「リシャール」
「なんだ? 」
「もう、大丈夫だよ。」
「そうか?」
「うん。」
「・・・。」

リシャールも動く気配がないし、おれもずっとこのままでいたい気持ちがあった。
けれど。

「リシャール、そろそろ戻らなきゃやばいんじゃない?」
「お前もそう思う?俺もそうじゃねぇかなーって思ってた。」
「あはは。思ってるなら戻らなきゃ。あと、おれもルーとウィリアム殿の試合見たいな。どっちも最終戦まで残るだろうから。いいかな? 」
「当たり前だ。うちのエースだぞ。ルーは。あと、城から出るなら、ペランを呼んである。アイツと一緒に居てくれ。お前にもプライドは有るだろうが、もう少し実力がつくまでは、一人で行動は避けろ。いいか?」

そういいながら、リシャールはおれを抱きしめたまま離さない。

「うん。おれも今回よくわかったから。もっと実力つけて、リシャール横に立てるようになるよ。それまでは、皆に頼ろうと思う。一人じゃなんにも出来ないから。」
「バカ。俺だって一人じゃなんにもできねぇぞ。今回だって、俺はお前を守れなかった。」

リシャールの力がより強くおれの体を抱きしめた。

「そっか。リシャールも、一人じゃなんにも出来ないんだ。へへ。」
「そうだ。だから、俺達は皆で実力をつけてのし上がって行くんだよ。お前一人じゃねぇ。皆で、だ。」
「うん。」

その言葉は、心の奥に暖かくじんわりと広がって行く。

「なんか、離れがたいな。このままで会場行くか?」
「え? バカなの? おれ、歩けねぇじゃん。」
「このまま抱っこして行くか。」
「え? バカじゃ伝わらなかったのかな? 頭悪いの? 」
「・・・ジャン君、ひどいよ。俺、傷ついちゃう。」

ようやく緩んだ腕をやんわりほどきながら見上げると、いつもの笑顔が広がっている。
何やら胸の奥が締め付けられるような、ある衝動にかられたが、それをぐっと抑え込むと、おれも笑って見せる。
柔らかな唇が降って来て、優しくおでこに触れた。





※※※※※※※※※※おまけ※※※※※※※※※※

リシャール 「あーぁ。しょうがねぇな。行ってやるか。」

ジャン   「うん。行こう。で、ペラン、どこに居るの?」

リシャール 「ああ。隣の部屋かな。いや、玄関かな。あいつどこ居んだろ。」

ジャン   「ええ。探さないといけないのかよ。ぺらーーーーーーん!」

リシャール 「うるせぇな。耳元で大声だすんじゃねぇよ。」

ペラン   「はいはい。ペランですよ。お呼びですかーって。っちょっと! お前らまだイチャイチャタイムじゃねーかよ!」

リシャール 「ペラーン抱っこー。」

ジャン   「抱っこー。」

ペラン   「うわ! ジャンお前酷いな顔パンパンに腫れてるぞ。そいでリシャール怖っ! お前は甘えてくるな。顔が余計怖え! ほら! ジャン、お前は笑ってないでちゃんと冷やせよ。」

リシャール 「なんだよ。俺にもかまえよ。」

ペラン   「とにかくお前は早く会場に行け。ジャンはオレが介抱すっから。」

リシャール 「ヘイヘイわかったよ行きゃいいんだろ。」

ペラン   「お前! リシャール! 行く気無いだろ! ジャンを、離せ!」

リシャール 「ペラン。聞いて驚け。実はジャンと離れようと思うとだな、何か見えぬ力が働いて、この様に引っ付いてしまう・・・」

コリンヌ  「リィーシァャールゥさまぁぁ。」

リシャール 「ヤッベ。コリンヌだ。じゃ、ペラン、ジャンをよろしくな。」









ーーーあとがきーーー

今回はおまけ付き。
ペランはダクスに行ったときのお供の一人です。
人物増えてきたかなぁ。まとめなきゃかなぁ。

※この時代ではお茶teaはありません。ここで書いたお茶とは、ジャンが現代変換しているモノで、ハーブティとかそのたぐいの飲み物でして、井戸水を薬草=ハーブで煎じたモノとかそんなたぐいの民間療法的なアレのイメージです。コリンヌは薬草の知識を持っています。ちなみに、いわゆるteaは17世紀にヨーロッパに持ち込まれます。
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