《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

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トーナメント

19(2/2)※流血表現あり

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「いいご身分ですねぇ。鎧もつけないでフラフラと。不用心じゃないですか? 」
「オレ達がどう危険なのか、教えて差し上げますよ。」

下品な声で笑い声を立てながら、ジリジリと近づいてくる。

確かに、本当に不用心だ。
そんな自分にも腹を立てながら、とりあえず啖呵を切ってみる。

「は! 笑わせるんじゃねぇよ。お前らに教えてもらうことなんてねぇよ。お抱え騎士の指導、受けてみたいんだろう?」

そう言うと、ファイティングポーズを取り、先頭にいる男の腹をめがけて拳を振るう。
だが、これはフェイントだ。
リシャールに体術も少し教わっていたのが思いの外早く役立ちそうだ。
すかさず腹をかがめる相手の顎に横殴りでカウンターを決める。
予期せぬパンチに男が一人倒れる。
残り2人。

威嚇しながら睨みつけるが、意表を突かれた表情をするものの、丸腰が相手である。
一人が頭に血が昇った顔で笑いながら剣を抜くと刀先を喉元に向けてくる。
動きを制された拍子にもう一人が怒号を吐きながら背後に周り腕を固められる。

まぁ。そうだよね。
でも、出来る限りは抵抗する。
言いなりなんてなってたまるか。

口につばをためて目の前の男に吐きつけた。

「この野郎!」

怒号と共に剣の柄頭で腹を殴ろうとする男に、後ろの男の体を支えにして手首目がけて蹴りを食らわすと、剣が遠くに吹っ飛ぶ。
蹴られた手首を抑えながら舌打ちする男はすぐ横で伸びて倒れている男に悪態を付き蹴りを入れた。
失神した男が意識を取り戻す。

これで3人に戻った。
内心冷や汗をかきながら、抵抗は続ける。
意識を取り戻した男がフラフラとしながら剣を向けてくる。
その横で蹴られた手首を抑えながら甲高い笑い声を上げている男の目は瞳孔が開き切っている。

「はっは! ヤルじゃないか。」
「うるせぇよ。耳障りな甲高い声出しやがって。女かよ!」

ガツンと顔に衝撃が当たる。
口の中が血の味がした。
何度か顔に衝撃があり、腹にも一発くらった所で、隣に異変を感じた。

見ると剣を突きつけていたはずの男が腹に剣を突き刺し隣の壁に刺さっている。

「な!!お前だれ・・・」

背中の男が叫ぶとともに、羽交い締めにされていた腕が緩む。
その瞬間、目の前の男が後ろの方向に大きく引かれたと思うと、サーコートから剣先が出てくる。
虚空を見つめる様にして男の口から血が流れ、崩れ落ちるとともに赤く染まった剣がキラリと目の前を舞う。
その刹那、耳元で「ひゅー」っと空気が抜ける様な音と共に顔に何かがビシャリと飛び散ってきた。

「無事か。」

低い声に問われた。
声の方を見ると白い肌に黒い長い髪の男が絶命しているであろう男の衣服で剣を拭っている。

「・・・あ。あぁ・・・。」

鼓動がうるさくてよく聞き取れなかったけど、安否を問われたのだと思う。
その声の主は、見知った顔だった。
武器屋で会った、あの人だ。
全身黒い鎧を身に着けているので、白い顔が余計に白く見えた。

「・・・あの。おれ・・・。」

目の前の男はキョトンとした顔で言葉を待っている。
その顔を見ていると、なんだか安心してきたのか涙が溢れてきて、足がガクガクと震えて膝から崩れ落ち、へたり込んだ。

「また、会ったな。」

そう言うと男が体を支えて立たせてくれる。
起き上がる時に、顔から涙と共に赤い何かが滴り落ちてきた。
拭き取りたいのに手が震えて余計に顔に塗りたくってしまう。
目の前の壁には血飛沫が飛び散り、床に転がる男の周りには血溜まりができていた。
その血溜まりを踏みながら、路地裏を抜けた。

その後はあまり覚えていない。
ポールの大声が聞こえて、あの黒い髪の人を「ルー」と呼んでいた。
そういえば、リシャールが「ルー」って人は、全身黒色なんだって、言っていた。
それを思い出して、少しだけ笑えた。





ーーーあとがきーーー

今回は血が流れました。
そして、ジャンは泣き虫君ですね。





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