《第一幕》テンプレ転移した世界で全裸から目指す騎士ライフ

ぽむぽむ

文字の大きさ
上 下
34 / 84
トーナメント

18(2/2)

しおりを挟む
 聞き返しながら、リシャールの顔を見ると、少し恥ずかしそうな表情をしている。
途端に握られた手がじんじんして、血が脈打っているのが耳の近くまで響いてくるように どく、どく、と鳴る。

「あー。何ていうのかな。お前の歌っていうか、声っていうか。仕草もそうだけど。ずっと視界に入れて、聞いていたいんだよな。耳に気持ちよくて、嫌なこと忘れられるっていうか・・・。だからどこに行くにしても、お前が一緒じゃないと、俺は困る。」

そう言うとリシャールの唇がそっとおれの手に触れる。
手から伝わる柔らかな唇の熱にそのまま頭の中まで侵されそうになる。しかし、それを阻止したのは、先日浴びせられた冷たい言葉。
『あいつは愛妾だ。上手く取り入ったようだが、すぐに飽きられて捨てられるさ。』
実際、そうだと自分でも思っている。
共に風呂に入り、寝所も二人っきり。
愛妾だと言われて否定するほうがおかしい。
だけど。

「お、おれも、リシャールのそばに居たい。だから。強くなりたい! 戦場でもどこでも連れて行ってもらえるように、必要にしてもらえるくらいには、強くなりたいんだ! もちろん、歌ももっと歌えるようになりたいけど、とりあえず、目の前の戦に連れて・・・・! 」

勢い余って上体を起こして叫んでしまい、片手で支えられていた体がバランスを崩し、リシャールの背中からべしゃりと、崩れ落ちた。
気合とは裏腹に、足にも腹にも力が入らず、情けなくも地面に突っ伏したまま、腕だけが威勢を保っている。

「・・・連れて行ってくらさい・・・。」
「はっはっはっは! どこの誰だか知らねぇけど、しこたましごかれたな。俺の手合わせもキツイぞ。大丈夫か?」
「・・・うん。よろしく、お願いします。」

リシャールの背中に再び背負われながら、手合わせの約束をする。
此処の所ずっと思い描いていた事が実現した事もあるが、先程のリシャールの言葉を頭の中で何度も再生しては、顔がニヤニヤとにやけてしまう。
必要としてもらえる事が何より嬉しい。

大きな肩に頬を乗せるようにして、リシャールの横顔を眺めながら、ついでにお願いしてみる。

「おれ、初めて出会ったときにリシャールに歌ってもらった詩、教えてもらいたいんだ。」
「ああ、ダニエルの曲だろ? そういや、お前弟子にしてくれって言ってたもんな。」
「落ち着いたらでいいんだ。まずは目の前の事、クリアしたいから。それが終わってからでいいからさ。剣技も詩も、もっと色々教えて欲しい。」
「ああ。いいぜ。なんでも教えてやるよ。そうだな。今日から始めるか。」

そう言うとリシャールの横顔が不敵に笑った。

「え、今日から?おれ、こんなだけど、出来る?」
「ああ。お前はなんにもしなくていいぞ。俺がヤッてやるから。」

リシャールがおもむろにケツをモミモミと揉みしだいてくる。

「!!!」
「肉体的に疲れたときに勃ったりするだろ? あれ、抜いてもらうと気持ちいいんだぜ。知らねぇだろ。」
「エロいことかよ!!」
「お前、何でも教えてほしいって言ってたじゃねぇか。風呂も用意しといてもらってるからさ。」
「ちょ、無理だよ! 今日はおれ、無理だよ! マジで動けないし!」
「大丈夫大丈夫、入れないから。入れたとしても、先っぽだけ。な?」
「いや、それ、絶対ヤル奴のセリフじゃねぇかよ!」
「ヤラないヤラない。ほんとほんと。そうと決まれば善は急げだな!」

リシャールは半ば走る様にステップを踏みながら城に向かう。
その彼の背中で上下に揺れながら、前途に不安を抱えるのであった。









ーーーあとがきーーー


おんぶは五感や筋肉への刺激を与え、その刺激に神経細胞同士が結合し脳の発達へとつながるそうです。
ジャンもまだまだ成長期ですので。ええ。このあとの刺激もしっかりと脳を発達させることになるでしょう

※読んでなくても内容的に全然大丈夫なR18閑話18.5があります。本編に影響の無い範囲です。興味ある方はテンプレ(割愛)騎士 番外編集をご覧下さい。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

モノマニア

田原摩耶
BL
非王道/受けにはデロ甘な鬼の堅物真面目眼鏡風紀委員長×攻めの前では猫被ってるデレデレ他にはスーパードライな元ヤン総長トラウマ持ちチャラ男固定CP寄りのがっつり肉体的総受け

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

処理中です...