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ボルドー城
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大広間にポールの大声が響き渡る。
「おい。お前ら。王からのお許しが出たぞ。今日はお前たちとの宴会と決まった。酒と食料を持て。」
いつの間にやら大広間には人が集まり始めており、大広間の入り口にはリシャールの姿が見える。
ここ2日ほど飛び回る様に忙しくしているらしく、久々に顔を見た気がする。
彼は畏怖堂々とといった雰囲気で中央にやって来ると、大きな声でまるで雄たけびの様に叫ぶ。
「今日がお前たちのクリスマスだ。皆、飲んで騒げ!」
その声の合図とともに歓声が起き、どこからかリュートの音が流れ始める。
いつ準備されたのか、食事と飲み物が運び込まれ、至る所で祝杯が挙げられる。
そのさなか、立派な服を着たリシャールが にやり と笑いながらこちらにやって来る。
相変わらず不敵な笑みだが、かえってその表情に安心する。
恰好は違えど、変わらない。
そう。
今自分も道化師の様な恰好をしている。
けれど、先日誓ったばかりだ。
リシャールの騎士になると。
この王に仕えると。
サンタンドレ教会で、ボルドーまで連れてきてくれたトマの見守ってくれている中、王たる風格のリシャールの前に跪き、両手を合わせて身を捧げた手を彼の手で包まれながら、誓ったのだ。
『我、我が主君に従属する者となり、生命と身体にかけて我が主君に忠誠の誓いを全うすることを、信仰をかけて誓う。』
信仰とは程遠い生活からこの世界に入りこんだが、荘厳な神聖な空気のかな、発する言葉と共に今まで持っていなかった神に誓うという信仰が芽生えた瞬間だった。
リシャールのあたたかな手がとんがり帽子を奪うと、頭を撫でる。
笑うとくしゃりと柔らかい表情に変わるリシャールは、今は王には見えない。
数日会ってないだけなのにもうずいぶん離れていたかの様な気持ちになる。
「なんだか、久しぶりだね。リシャール」
「おう。城の奴らにも秘密で今日の宴会進めてたからな。皆喜んでるな。」
頭にのせられた手を握ると、大きな手で更に包み込むように握り返してくる。
「ジャンのおかげで最高の祝杯が出来た。お前、歌上手いんだな。すげぇな。びっくりしたよ。」
「何だ。最初から聞いてたんだ。えへへ。そうかな。なんか、恥ずかしいよ。面と向かってほめられると。」
照れて笑っていると、ポールがやってきて体当たりしてくる。
そしてワインをリシャールに手渡しながら豪快に笑っている。
「オレもびっくりしたよ。からかってやろうと思ったのに。うまい事隠してやがったな。ジャン。」
「ファーストフットとしては最高の人選だったな。今回は俺が主宰する始めてのクリスマスだ。ジャンが居てくれてよかったよ。当日は主賓を驚かしてやろう。まぁ。俺の兄貴だけどな。」
リシャールはそう言いながら、豪奢な造りの主賓席の椅子にドカリと座る。
長い足を組み片手にワインの入ったカップを持っているその姿は、良い恰好をしているせいで心臓が止まりそうになるほどかっこいい。
そんな彼に褒められると天に舞うほど嬉しくて、ほころぶ顔を俯いて隠すのが精いっぱいだ。
「え。アンリ様が来るのか。じゃぁひょっとして・・・。」
驚いた声で、正気に戻る。
アンリ?とは俺の兄貴というセリフから拾われたものだよな。
「ああ。ウィリアムも来る。」
「まじかぁ! ルーにも言っておかないといけないな。オレ、ちょっとルーの所行ってくるわ!」
そう言うと、相変わらずのポールは疾風のごとく消えてゆく。
「さっきポールが言ってたアンリって、前に話してくれたお兄さんの事でしょう? ウィリアム?」
「ああ。アンリの剣の指南役で騎士の中の騎士と言われてる男だ。ルーが珍しく心酔してるんだ。あの、不愛想がな。くっくっく」
ルーとは、指輪をくれた時に話してくれた人物だ。
話は聞くのにいまだに姿を見た事はない。
黒ずくめで、不愛想で群れない性格らしいが、ポールの様子からすると二人は仲がよさそうだ。
「じゃ、ルーもクリスマスの祝賀会は来るのかな。」
「どうかな。それはそれで面白いな。カケしようぜ。俺は来る方にカケる。お前は来ない方にカケるだろ?」
「え。おれも早く会ってみたいから来る方にカケたいんだけど。」
「何だよ。それじゃカケにならないだろ。お前は来ない方にカケろよ。」
「やだよ。そもそもおれカケられる物持ってないもん。」
「あー。じゃぁさ。俺が勝ったら今度外で誘っても断んなよ。」
「は?やだよ。まだ根に持ってんの? 外はヤダって言ってんじゃん。カケにすんなよ。ってかまたかよ。セクハラ親父め。」
「セクハラ親父? ってなんだ? 」
そう聞いてくるリシャールの顔があまりに間抜けで、思わず吹き出してしまった。
「おい。お前ら。王からのお許しが出たぞ。今日はお前たちとの宴会と決まった。酒と食料を持て。」
いつの間にやら大広間には人が集まり始めており、大広間の入り口にはリシャールの姿が見える。
ここ2日ほど飛び回る様に忙しくしているらしく、久々に顔を見た気がする。
彼は畏怖堂々とといった雰囲気で中央にやって来ると、大きな声でまるで雄たけびの様に叫ぶ。
「今日がお前たちのクリスマスだ。皆、飲んで騒げ!」
その声の合図とともに歓声が起き、どこからかリュートの音が流れ始める。
いつ準備されたのか、食事と飲み物が運び込まれ、至る所で祝杯が挙げられる。
そのさなか、立派な服を着たリシャールが にやり と笑いながらこちらにやって来る。
相変わらず不敵な笑みだが、かえってその表情に安心する。
恰好は違えど、変わらない。
そう。
今自分も道化師の様な恰好をしている。
けれど、先日誓ったばかりだ。
リシャールの騎士になると。
この王に仕えると。
サンタンドレ教会で、ボルドーまで連れてきてくれたトマの見守ってくれている中、王たる風格のリシャールの前に跪き、両手を合わせて身を捧げた手を彼の手で包まれながら、誓ったのだ。
『我、我が主君に従属する者となり、生命と身体にかけて我が主君に忠誠の誓いを全うすることを、信仰をかけて誓う。』
信仰とは程遠い生活からこの世界に入りこんだが、荘厳な神聖な空気のかな、発する言葉と共に今まで持っていなかった神に誓うという信仰が芽生えた瞬間だった。
リシャールのあたたかな手がとんがり帽子を奪うと、頭を撫でる。
笑うとくしゃりと柔らかい表情に変わるリシャールは、今は王には見えない。
数日会ってないだけなのにもうずいぶん離れていたかの様な気持ちになる。
「なんだか、久しぶりだね。リシャール」
「おう。城の奴らにも秘密で今日の宴会進めてたからな。皆喜んでるな。」
頭にのせられた手を握ると、大きな手で更に包み込むように握り返してくる。
「ジャンのおかげで最高の祝杯が出来た。お前、歌上手いんだな。すげぇな。びっくりしたよ。」
「何だ。最初から聞いてたんだ。えへへ。そうかな。なんか、恥ずかしいよ。面と向かってほめられると。」
照れて笑っていると、ポールがやってきて体当たりしてくる。
そしてワインをリシャールに手渡しながら豪快に笑っている。
「オレもびっくりしたよ。からかってやろうと思ったのに。うまい事隠してやがったな。ジャン。」
「ファーストフットとしては最高の人選だったな。今回は俺が主宰する始めてのクリスマスだ。ジャンが居てくれてよかったよ。当日は主賓を驚かしてやろう。まぁ。俺の兄貴だけどな。」
リシャールはそう言いながら、豪奢な造りの主賓席の椅子にドカリと座る。
長い足を組み片手にワインの入ったカップを持っているその姿は、良い恰好をしているせいで心臓が止まりそうになるほどかっこいい。
そんな彼に褒められると天に舞うほど嬉しくて、ほころぶ顔を俯いて隠すのが精いっぱいだ。
「え。アンリ様が来るのか。じゃぁひょっとして・・・。」
驚いた声で、正気に戻る。
アンリ?とは俺の兄貴というセリフから拾われたものだよな。
「ああ。ウィリアムも来る。」
「まじかぁ! ルーにも言っておかないといけないな。オレ、ちょっとルーの所行ってくるわ!」
そう言うと、相変わらずのポールは疾風のごとく消えてゆく。
「さっきポールが言ってたアンリって、前に話してくれたお兄さんの事でしょう? ウィリアム?」
「ああ。アンリの剣の指南役で騎士の中の騎士と言われてる男だ。ルーが珍しく心酔してるんだ。あの、不愛想がな。くっくっく」
ルーとは、指輪をくれた時に話してくれた人物だ。
話は聞くのにいまだに姿を見た事はない。
黒ずくめで、不愛想で群れない性格らしいが、ポールの様子からすると二人は仲がよさそうだ。
「じゃ、ルーもクリスマスの祝賀会は来るのかな。」
「どうかな。それはそれで面白いな。カケしようぜ。俺は来る方にカケる。お前は来ない方にカケるだろ?」
「え。おれも早く会ってみたいから来る方にカケたいんだけど。」
「何だよ。それじゃカケにならないだろ。お前は来ない方にカケろよ。」
「やだよ。そもそもおれカケられる物持ってないもん。」
「あー。じゃぁさ。俺が勝ったら今度外で誘っても断んなよ。」
「は?やだよ。まだ根に持ってんの? 外はヤダって言ってんじゃん。カケにすんなよ。ってかまたかよ。セクハラ親父め。」
「セクハラ親父? ってなんだ? 」
そう聞いてくるリシャールの顔があまりに間抜けで、思わず吹き出してしまった。
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