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ダクスへ
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元気なリシャールは荷物は持てないが、歩く事には支障はないようで、二人はサクサクと旅の工程を進めていった。
ポールから聞いた話では、リシャールは疲労が溜まると眠りが深くなり、中々目が覚めなくなるらしいので、視察中は怪我の事もあるのでセックスは禁止と言われていた。
が。
「そんな約束してない。俺は。アイツが1人で言ってるだけだ。ってか、アイツ居ねぇんだからいいじゃねぇか。」
「いや。リシャール骨折れてんじゃん。」
「お前が上で動いてくれりゃ出来んだろがよ。」
「っな!や、やだよ!・・・それにおれ、外でヤルの何かやだ。」
「バカだなお前。声出し放題だそ。」
「・・・バカはお前だ・・・」
「お。ちょっとは考えたろ。ジャン。お前。え?? どうなんだ?? 」
野営中の会話である。
ダクスへの道には村は少なく、荒野が続いていた。
湿気が多く、火を焚いてもすぐに消える。
下弦の月明かりの中、炎の恩恵を得られず木の幹に二人で身を寄せるようにしてもたれているのだが、リシャールは相変わらず元気だ。
「なんでそんなに溜まってんの? 思春期かよ。思春期のおれに言われるのってよっぽどだぞ。」
「違うって。お前、俺が今までどこで禁欲の生活を強いられていたと思うよ?」
「教会でしょ? そういえば、なんで教会にいたの? 騎士の仕事?」
「あぁ。それはなぁ。俺の妹、ショーンって言うんだけど、シチリアに嫁に行くことになったんだよ。」
「教会関係ないじゃん。」
「バカ。こっから始まんだよ。」
「フゥン。妹って幾つなの?」
「7つ下だから12歳だな。」
「え?」
「ん?」
「ふ、普通なの? それ。その年で結婚するの?」
「あぁ、みんなそんなだろ? まぁ、そんでシチリアまで送ってきたわけよ。」
シチリアまでは航路だったらしく、何回か船に乗ったことはあるが、シチリアの海はそれは綺麗だったそうで、その時作った歌だと、リシャールが軽く口ずさみ始めた。
紫紺の荒野に響く詩は不思議と、シチリアの蒼穹の元、輝く海原を走る航を想像させた。
優しいメロディーに触発され、手元に手繰り寄せたリュートを急いではじく。
顔はうっすら確認できる程度だが、小さなしぐさの合図をもとに二人で奏でる音楽はまるで肌を合わせる時の様に気持ちがいい。
「あそこはいい。お前にも見せてぇなぁ。」
「おれ、そういえば海見た事ないかも。」
「海はいいぞ。そんで、船もいい。俺は船が好きだ。」
教会から逃げてきた話のはずだったのだが、その後も船旅の話が面白過ぎて話が盛り上がり、結局聞かずじまいになってしまった。
「・・・なぁ。ほんとにやんねぇの?」
「・・・やんないよ。しつこいな。早く寝ろよ。」
次の日も同じ様に歩き一夜を明かしたあくる日の午後、あたたかな日差しの中背後から走り来る馬の姿が見えた。
ポールだ。
その後ろには数人の姿が見える。
皆それぞれ武装しており、一見物々しい。
蹄の音と共に明瞭なポールの言葉が馬上から降りてくる。
「何だ。思いのほか順調に進んでるな。」
「おう。誰かさんが言いつけ守るからビンビンに元気だぜ。」
「ジャン。でかした。こいつの動物並みの性欲を止めるとは。お前良い追従になりそうだな。」
「それだけで?」
ポールのほめ言葉に思わずあきれてしまう。
だが、待てよ?
追従という事は、リシャール=騎士。
騎士の追従になれるという事ではないか?
ーーーあとがきーーー
リシャールはやっぱりネコ科のライオンかな。
※年齢変更(2024.07.14)
ポールから聞いた話では、リシャールは疲労が溜まると眠りが深くなり、中々目が覚めなくなるらしいので、視察中は怪我の事もあるのでセックスは禁止と言われていた。
が。
「そんな約束してない。俺は。アイツが1人で言ってるだけだ。ってか、アイツ居ねぇんだからいいじゃねぇか。」
「いや。リシャール骨折れてんじゃん。」
「お前が上で動いてくれりゃ出来んだろがよ。」
「っな!や、やだよ!・・・それにおれ、外でヤルの何かやだ。」
「バカだなお前。声出し放題だそ。」
「・・・バカはお前だ・・・」
「お。ちょっとは考えたろ。ジャン。お前。え?? どうなんだ?? 」
野営中の会話である。
ダクスへの道には村は少なく、荒野が続いていた。
湿気が多く、火を焚いてもすぐに消える。
下弦の月明かりの中、炎の恩恵を得られず木の幹に二人で身を寄せるようにしてもたれているのだが、リシャールは相変わらず元気だ。
「なんでそんなに溜まってんの? 思春期かよ。思春期のおれに言われるのってよっぽどだぞ。」
「違うって。お前、俺が今までどこで禁欲の生活を強いられていたと思うよ?」
「教会でしょ? そういえば、なんで教会にいたの? 騎士の仕事?」
「あぁ。それはなぁ。俺の妹、ショーンって言うんだけど、シチリアに嫁に行くことになったんだよ。」
「教会関係ないじゃん。」
「バカ。こっから始まんだよ。」
「フゥン。妹って幾つなの?」
「7つ下だから12歳だな。」
「え?」
「ん?」
「ふ、普通なの? それ。その年で結婚するの?」
「あぁ、みんなそんなだろ? まぁ、そんでシチリアまで送ってきたわけよ。」
シチリアまでは航路だったらしく、何回か船に乗ったことはあるが、シチリアの海はそれは綺麗だったそうで、その時作った歌だと、リシャールが軽く口ずさみ始めた。
紫紺の荒野に響く詩は不思議と、シチリアの蒼穹の元、輝く海原を走る航を想像させた。
優しいメロディーに触発され、手元に手繰り寄せたリュートを急いではじく。
顔はうっすら確認できる程度だが、小さなしぐさの合図をもとに二人で奏でる音楽はまるで肌を合わせる時の様に気持ちがいい。
「あそこはいい。お前にも見せてぇなぁ。」
「おれ、そういえば海見た事ないかも。」
「海はいいぞ。そんで、船もいい。俺は船が好きだ。」
教会から逃げてきた話のはずだったのだが、その後も船旅の話が面白過ぎて話が盛り上がり、結局聞かずじまいになってしまった。
「・・・なぁ。ほんとにやんねぇの?」
「・・・やんないよ。しつこいな。早く寝ろよ。」
次の日も同じ様に歩き一夜を明かしたあくる日の午後、あたたかな日差しの中背後から走り来る馬の姿が見えた。
ポールだ。
その後ろには数人の姿が見える。
皆それぞれ武装しており、一見物々しい。
蹄の音と共に明瞭なポールの言葉が馬上から降りてくる。
「何だ。思いのほか順調に進んでるな。」
「おう。誰かさんが言いつけ守るからビンビンに元気だぜ。」
「ジャン。でかした。こいつの動物並みの性欲を止めるとは。お前良い追従になりそうだな。」
「それだけで?」
ポールのほめ言葉に思わずあきれてしまう。
だが、待てよ?
追従という事は、リシャール=騎士。
騎士の追従になれるという事ではないか?
ーーーあとがきーーー
リシャールはやっぱりネコ科のライオンかな。
※年齢変更(2024.07.14)
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