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暦の上ではもう春だというのに、遠くに見える山肌は、まだ分厚い雪化粧で塗り固められていた。隠れ里の田畑や家々も雪に埋もれがちで、桜の木々は未だ蕾すらつけていない。
そんな冬の景観を座敷の中から眺めつつ、雪音は祖父の前に座した。
齢十八を迎えた浅霧雪音は、冬の妖精のごとき輝きを放っていた。
降り積もったばかりの雪よりも白い髪。氷のように透き通る珠の肌。瞼に嵌る瞳は異国の秘宝、蒼玉を彷彿とさせる鮮やかさで、頬と唇は珊瑚のような淡い赤色だ。
儚げな顔立ちとは裏腹に、躰の方はいやに肉感的だった。
布地の少ない装束から覗く豊満な谷間、むっちりとした太もも。すらりと伸びた四肢はしなやかで、こんな躰に絡みつかれたら、さぞ心地よいであろうことが容易に想像できた。
「差し向けた下忍どもが、全員返り討ちにあってのぉ」
蓄えた白髭をしげしげと撫でながら、祖父が溜め息を吐く。真っ白な息が消える頃には、雪音はすでに仕事が振られると悟っており、祖父を真っ直ぐに見据えていた。
「そういうわけじゃ、雪音。此度の任務、おぬしに預ける」
「心得ましてございます、おじじさま」
ぴんと伸びた背筋を折って、雪音は祖父に伏す。
雪音は、とある雪国に隠れ住む忍者、くノ一だ。
この里に住む者は“冬の部族”と呼ばれ、みな例外なく忍者となって世の中に暗躍する。ある者は名だたる大名に仕えて武勲を上げ、ある者は諜報活動や暗殺を生業として生きていた。
「此度の任務は、リンド領の領主暗殺でございましたね」
雪音が確認すると、祖父は重々しく頷いた。
冬の部族が使役している白ガラスが、リンド領に住まう貧民からの手紙を携えて戻ってきたのは、もう十日も前の話になる。
手紙には、「育てた作物の九割が税として徴収され、飢えに喘ぎ、犬畜生の肉を食べる者が出る始末。どうか我ら民を苦しめる領主を亡き者にしてくださいますよう、お願い申し上げる」という旨と涙の跡が認めてあった。
統治者の悪政に堪えかねた民たちの、粛清を望む切ない声。
よくある依頼であり、特段しくじるような内容ではないのだが、どういうわけか、差し向けた数人の下忍たちは任務に失敗して戻ってきた。
この事態を不思議に思った雪音は、祖父に詳しい事情を尋ねることにした。
「リンド領の主は、豚のように肥えた醜い身体で、潰したカエルのように醜い顔で、武人としての才もないと伝え聞いておりますが……そのような者を相手に、遅れを取ったのですか?」
「どうにものぉ……リンドの領主は、同業者を用心棒として雇っておるらしくてのぉ」
祖父の溜め息がいっそう深くなる。
同業者、すなわち、忍者。
この列島には、冬の部族以外にもいくつか忍者の派閥が存在する。普段はお互い干渉もせず深いかかわりも持たないが、仕事の上でかち合うことはそう珍しいことではない。
そして今回の任務は運悪く、相当な手練れが敵に回ってしまったようだった。
「下忍とはいえ、わしが手塩にかけて育てた忍びたちじゃ。それが獲物に近づくことはおろか、瞬時に返り討ちとは。あいやいや、悔しいのぅ」
祖父は嘆いてばかりいるが、雪音としてはさっさと任務の話を詰めたかった。貧困に窮する力無き民を、逸早く救うためにも。
「私がリンド領の城内に女中として潜入し、領主に取り入って、隙を見て殺す。それでようございますね、おじじさま」
「うむうむ。おぬしなら、忍者の目を欺いて領主に近づくのもお手の物じゃろうて。それにおぬしの躰は、男を骨抜きするのに誂え向きじゃからのぅ」
言いながら、祖父は親縁の者を見るにはいささか不適切な目で、雪音の全身を舐った。
「ほんにたわわに育ったのぉ、雪音。どれ、じぃじが柔らかさの方も確かめて──」
──スパァァンッッ
祖父の言葉は、雪音の痛烈な平手打ちで遮られた。
「それがっ、実の孫娘に向かって言うようなことですか! このスケベじじい!!」
雪音は眉根をきりりと吊り上げ叫ぶ。
任務で色仕掛けを使うこともあるし、この躰がそういった色事に向いているのは雪音も重々承知している。
しかし、雪音自身は純に過ぎるきらいがあり、あまり自分の躰を好きになれないでいた。
「おおぅ、つれないのぅ、つれないのぅ! もちっとじぃじとスキンシップしてくれんかぁ~」
尚も躰に縋ろうとする祖父を袖にして、雪音はすっくと立ちあがった。
「すぐ出立いたします! 吉報をお待ちくだされ!」
果たして雪音は、ここ冬の部族の隠れ里から遠く離れた、リンド領へと旅立っていった。
※:
雪音がリンド領に来てから、二十日ばかりが経過しようとしている。
任務は怖いぐらい順調で、雪音は城内に潜り込み女中として働きだしてから、ものの数日で領主から目をかけられるようになった。信を得られるよう、女中としての仕事は徹底してこなしていたし、愛想も振りまいていたのだから、当然の結果ともいえる。
それとなく領主が雇ったという忍者を捜してもみたが、やはり腕が立つとあってか見つからなかった。しかし相手からの接触もないのだから、雪音の正体も露見していないということだ。ならば忍者の方は放っておいても問題なかろうと、雪音は領主から声をかけられるときを待った。
そして今宵、雪音は薄絹一枚で閨に来るよう告げられた。ここまでくれば、任務は終わったも同然である。
しかしここで油断するような雪音ではない。表向きには純朴な娘を装ったまま、領主を殺す手段を秘かに携えて闇夜に馳せ参じた。
領主の寝床は、提灯の淡い光に当てられ橙色に染まり上がっている。
雪音は、羽毛が存分に敷き詰められているだろう寝具の盛り上がりを確認してから、寝室の隅々を見やった。領主を殺してからの逃げ道は、あの窓で十分だろう。たとえこの寝所が天守閣の上階に位置していようとも、くノ一の障害にはなり得ない。
提灯の明かりに、雪音の肢体が照らし出された。
張りのある豊かな乳房と臀部が、薄絹を押し上げている。薄絹を纏っているとはいえ、雪音の白い肌が透けて見えるため、裸身でいることよりもかえって厭らしさを際立たせていた。
男なら無条件でむしゃぶりつきたくなるような、まこと天晴れとしかいいようのない見事な艶態。実際、武芸にしか興味のなかった堅物侍も、神職に身を捧げた聖人君子も、この躰の虜にしてきた。
だが、今回はこの躰を使う必要はなさそうだった。
領主は、雪音が夜具に上がり込んでも身動ぎすらしなかった。どうやら領主は、雪音が来るのを待ちきれず眠りに落ちてしまったらしい。
雪音は髪を結っていた簪をスッと抜き取った。その切っ先は鋭く、急所を突けば致命傷になることは明白だ。
(覚悟ッ!!)
掛布をめくり、頸椎を一突きにしようとしたその瞬間。
雪音が掛布に触れる直前で勢いよく捲れ上がり、男が飛び出してきた。
「待ってたぜ」
雪音は、何が起こったのかわからなかった。
夜具に寝そべっていた人物からは、殺気もそれに類する気配も、なにも感じなかったのに。気づいたときには簪を叩き落とされ、筋骨隆々の腕に抱きすくめられていた。
領主は頭が薄く、絶えずぎとぎとに脂ぎっていて、ぶよぶよのガマガエルのように醜く肥えた男だ。
だが、雪音を捕らえたのは領主とは真逆の男だった。
雪音を抱く腕を皮切りに、首、肩、胸、腿。男を構成する肉体の部位ひとつひとつが巨きく、太く逞しい。濃紺色の忍び装束では、覆い隠しきれないほどに。
赤みがかった茶髪を後ろに流しており、距離も相まって、男の顔つきがはっきりと見て取れた。
彫りが深く、顎はがっしりとしていて精悍そのものだが、無邪気な笑みにはまだ薄っすらと幼さが残っており、年齢は二十歳を過ぎたか過ぎないかといった具合である。
なにより印象的なのが、瞳だ。橙とも茶色とも違う、不思議な煌めきを映す榛色の目──。
逢うのは初めてだが、この男には覚えがある。
「は……榛迅牙……“春の部族”の……」
雪音がその名を口走ると、男はにぃっと笑った。
「光栄だね、俺をご存じとは」
当然だ。忍者界隈で、この男を知らぬ者はいない。
榛迅牙。
冬の部族とは比較にならぬほど大勢の忍者を抱える、春の部族の次期頭領と名高い男だ。並みの忍者が十人で束になって斬りかかっても、かすり傷ひとつ付けられないというのは有名な話で、武勇伝を上げていたらキリがない。
領主の雇ったという忍者が、迅牙だったとは。下忍たちが返り討ちにあうわけだ。
「おのれ、謀ったな!」
雪音は絶叫しながら身を捩ったが、拘束は微塵も緩まなかった。それがいっそう腹立たしく、雪音はギリリと奥歯を噛み締める。
迅牙ほどの手練れが、雪音の正体に気づかぬ道理がない。そもそも雪音がくノ一だと気づき、領主の寝首を搔きにくるとわかっていたからこそ、夜具の中で待ち構えていたのだろう。
つまり、雪音は迅牙に泳がされていたのだ。
「いやいや、あんたがくノ一だって気づいたのは、ほんの二、三日前のことだよ。見事な変装術だった。あんた、この間の奴らと違ってかなり優秀みたいだな」
迅牙は楽しげに褒めそやすが、こうして雪音を難なく捉えているのだから嫌味にしか聞こえない。
「それに、改めて近くで見ると……あんたすげー別嬪だ。くノ一だって教えてやったのに、バカ領主が一夜を共にするんだって駄々をこねるわけだよ。俺も……ムラムラしてきた」
「ふ、ふざけたことを……ひあっ♡」
首筋に舌を這わされて、雪音は思わず柔らかい声を零してしまった。舐め上げられた箇所に、ぞくぞくと痺れるような微かな快感が走る。
雪音が甘く切ない痙攣に戸惑っている間にも、迅牙は無遠慮に肌を蹂躙してきた。唇で鎖骨、項を掠め、耳朶を食み、耳の付け根にちゅっ、ちゅっ、と吸い付いては弄んでいる。
「やっ……あっ……♡ や、やめ……♡」
嬌声が止まらない。
おかしい。任務で男と睦む際、意図的に喘ぐことはあれど、喘がされることなんて一度たりともなかった。それなのに、迅牙の口と舌で撫でられるたびに声が漏れ、腰も勝手に揺れ動いてしまう。
「ずいぶんと気持ち良さそうだな、とろっとろに蕩けた声で鳴いて。こんなドえろい体なのに、感じやすいとか……房中術は苦手か?」
すぐ耳元で、迅牙が甘やかすように囁いた。それすらも心地よく雪音の淫欲をくすぐるが、いまの暴言は聞き捨てならない。
房中術、すなわち男を虜にする性技。
冗談ではない。いくら自身の体つきに不満を抱いているとはいえ、両親から与えられた躰と培った房中術で、幾人もの男たちを落としてきたのだ。
それなのに、躰のみならず実績をも嗤われては、冬の部族くノ一の名が廃る。
雪音は色んな思いを募り募らせ、顔を熱くしながら牙を剥いた。
「ふ……不快極まる!!」
雪音の鋭い歯牙が、迅牙の太い首に食い込んだ。
ところが。
「可愛い牙だな」
迅牙はまったく堪えることなく、雪音を強引に引き剥がして放り投げた。
艶めかしい乙女の肢体が、夜具に沈む。
雪音はこう見えて、負けん気が強い。やられっぱなしは我慢ならないし、なにより迅牙は討つべき敵。ここで仕留められないまでも、致命傷は負わせてみせると意気込んで、先ほど叩き落とされた簪を掴んで迅牙の喉元目掛けて飛びかかった。
いや、飛びかかろうとした。
「……えっ」
雪音は再び、夜具の上に落ちた。その先にちょうど迅牙の足があり、頭を垂れて屈服しているような体勢になっている。しかし雪音には、そんな無様な恰好を気にしている余裕はなかった。
躰が思うように動かない。両手をついてなんとか躰を起こすことはできたが、立ち上がって戦うことなど到底できそうになかった。
全身が、千手観音に優しく撫で回されているような甘い痺れに包まれている。まるで、骨という骨をドロドロに溶かす毒に侵されたかのようだった。
(ど、毒を盛られた……!? い、いつの間に……? なんの毒だ、さほど強い毒ではなさそうだけど……)
──ぐにぃっ♡
毒で弱り始めた雪音の柔らかい頬に、なにか硬いものが押し当てられた。
幾度となく、色事を用いて任務をこなしてきた雪音だ。直視しなくとも、いま頬にぐりぐり♡ と押し付けられているものが、男の──迅牙の魔羅であることはすぐにわかった。
「俺が房中術の手解きをしてやろうか?」
挑発された雪音が、キッと迅牙を睨めつける。目を細めて雪音を睥睨する迅牙は、実に憎たらしかった。
だが雪音は、迅牙の挑発をあえて受けることにした。毒に侵されつつあるこの躰では、正攻法で挑んでも返り討ちにあうのは自明の理。
ならば、持てる性技で迅牙を落とし、油断しきったところを仕留めるのが上等というものだ。
(その余裕面を、快楽に溺れきった阿呆面に変え、そのまま殺してくれる!)
雪音はそう意気込んで、迅牙が纏う下衣の中心を割り開いた。
「おっ♡」
迅牙の嬉しそうな声と共に、ビンッッ♡ という音が聞こえた気がした。
下衣から飛び出してきた陰茎は、重力に逆らうようにそそり勃っている。
(え……お、おっきい……)
雪音は、ほんの少しだけたじろいだ。
目の前に立ちはだかる肉棒は、これまで下してきたどの男のモノよりも巨きく、太く逞しい。形も大したもので、エラが大きく張り出していて、先端の亀頭は赤黒く、竿の部分にはいくつもの血管が浮き出ている。
まさしく迅牙その人を具現化した、立派な魔羅だ。
おまけに汗で蒸れていたのか、解放した瞬間から熱気と雄の臭いが漂いだして、雪音の鼻腔を通って脳を痺れさす。
あまりにも仰々しい剛直を前に雪音が固まっていると、頭上から押し殺したような笑い声が降ってきた。
「どうしたらいいかわからない? 舐めてみな。咥えてもいいが、歯は立てるなよ」
そんなことは迅牙に言われるまでもなく心得ていると、雪音は半ば苛立ちながら魔羅の先っぽにちゅっと口づけた。それに気を良くしたのか、鈴口から先走りの汁がドッと溢れ出てきた。
滴り落ちる肉汁を、雪音は舌を伸ばして掬い取る。そのまま雁首をなぞり、竿の血管をなぞると、迅牙の肉棒がびくりと跳ねて、一回りほど大きくなった。まだ完全に勃起しきっていなかったとは、なんと恐ろしい魔羅なのか。
先端からとめどなく溢れる我慢汁が舐め取りきれなくなってきたので、雪音は思い切って亀頭を咥えこんだ。
「……んっ♡ んぐっ……♡♡」
しかし、亀頭だけで口の中が占拠されてしまい、舌の置き所がない。苦しさで唾液が大量に分泌される中、舌が居場所を求めて逃げ惑う。それが偶発的に、はち切れんばかりの亀頭とカリ首を舐め回すことになってしまった。
「おぉっ……♡ これはなかなか……♡」
迅牙から漏れ出た声は、わずかに上擦っていた。雪音が上目遣いで迅牙の顔を見やると、まだまだ余裕があるのか、にぃっと笑みを浮かべて見つめ返してくる。
だが、息は乱れ、額には珠のような汗が滲んでいた。このまま口淫を続けていれば、迅牙が果てるのも時間の問題だろう。
雪音は、短期決着を仕掛けることにした。ずっと迅牙に主導権を握らせておくのは、なんとも癇に障る。はやくその自信に満ち満ちた顔を、情けない面に変えてやりたい。
そしてなによりも──。
(あ……顎が外れる……)
迅牙の他に類をみない凶悪な肉棒を咥え続けていては、こちらの身が保たないと判断した。一度口から離せばいいものを、これまで数多の男を落としてきたくノ一としての矜持が、それを良しとしなかった。
雪音は口を限界まで窄め、頭を激しく前後させた。咥内で迅牙をめいっぱい扱くと、先端が喉に突き刺さる。嘔吐きそうになるのを堪えながら、雪音はぱんぱんに膨れ上がった陰嚢からすべての精液を搾り尽くしてやろうと、必死に食らいついていた。
じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ ちゅぽちゅぽちゅぽちゅぽっ♡♡
「あー……♡♡ 出る出るっ、イクっっ♡♡」
迅牙の全身が、ぶるりと震えた。そうかと思えば、両手で雪音の頭を掴み自らの腰を思いっきり打ち付けて──盛大に弾けた。
びゅうううううううううう────ッッ♡♡♡ びゅーッッ♡ びゅーッッ♡ びゅるるっっっ♡♡
亀頭はびゅっくんびゅっくん跳ね回りながら、雪音の喉奥を目掛けて惜しみなく精液を注いでいく。
「んぐっっ♡♡ んぷっ……♡ んんんッッ……♡♡」
もう雪音の咥内に留めておけないぐらい精を吐き出されたというのに、迅牙はまだ解放してくれない。雪音の頭を固定したまま、筋肉の収縮だけでなおも精子を送り出してくる。
びゅくっっ♡ びゅくっっ♡ びゅるるるっっ……♡♡ びゅっ♡ びゅっ♡ びゅっ……♡♡♡
(こ、この男、どれだけ出す気なの……!)
精液という精液を搾り尽くそうと思ってはいたが、この量は想像の遥か彼方だ。
ついに堪えきれなくなって、雪音は肉棒を咥えたまま精液を飲み下す。
飲み切れない分が口の端から零れ落ちた頃、ようやく迅牙が腰を引いた。
支えを失った雪音は、そのまま力無く敷布の上に倒れ込んだ。精液を出し尽くした男ほど、無力なものはない。
精液を出し尽くした男ほど、無力なものはない。いまこそ迅牙を仕留める千載一遇の機会なのに、雪音は一向に起き上がれないでいた。毒が回りきったのか、躰がどうしようもなく熱くなって、腹の下がじゅくじゅくと疼く。
(か……躰が動かない……頭もふわふわして……どうして……?)
瞳を潤ませ肩で息をする雪音を、例の憎たらしい笑みを浮かべた迅牙が覗き込んできた。
「躰がまともに動かないんだろう? あんた、“埋毒者”って聞いたことあるかい? 体内に毒を持っていたり、毒を精製したりできる忍者のことを」
口ぶりからして、迅牙はその埋毒者なのだろう。雪音も噂には聞いたことがあるが、遭遇するのはこれが初めてだった。
「俺は体液すべてが毒っていう、埋毒者の中でもかなり特殊な部類でね。で……毒の効果の方も面白いもんでよ。男が浴びる分にはそのまま猛毒なんだが、女に対しては……」
説明する傍ら、迅牙は雪音を抱き起こした。敷布の上に胡坐をかき、そこに雪音をちょこんと乗せて──唇に吸い付いた。
「んっ……んっ、ふっ……むぅ……♡」
ちゅっ♡ れろれろっ♡ ちゅ、ちゅぅ……♡♡
雪音の口内が、肉厚の舌で荒々しく蹂躙されていく。歯列や頬肉の内側に唾液を塗りつけるように激しく、けれども丁寧に。
すると、ますます雪音から力が抜け落ちて、後には身を焦がすような熱と、骨を震わすような甘い甘い疼きだけが残った。
「ぁ……♡ はぁん……♡♡」
「どうだい、天にも昇る心地だろう」
薄く笑う迅牙の口端に、雪音と繋がる銀の糸が垂れる。
「俺の毒は、女が触れると強力な媚薬になるんだ」
媚薬になる毒、体液、と聞かされ、雪音はぼんやりした頭で、迅牙に出くわしてからのことを振り返ってみた。
一番最初は、首筋を舐め上げられた。次に鎖骨、項に耳朶。迅牙の首に噛みついた際、血を飲んでしまったかもしれない。
決定打は、精液だ。しこたま吐き出されて、飲まされた。
「性衝動が抑えられなくなって、感度が天井知らずに上がっていって……あんた、いまに死ぬほど気持ちよくなれるよ。こんなふうに」
迅牙は、薄絹に覆われた雪音の両乳首を、中指の腹で軽く転がした。
こすっ……♡ こすっ……♡ すりすりすりすり……♡♡
「ひぁっ……♡ んっ♡ あっ♡ ああっ……♡ や、やめろっ……んあっ♡ ああぁんっ……♡♡」
くりくりっ♡ さすさすさすさす……♡ こすこすっ♡ こりこりこりこりっ♡♡ もにゅんっもにゅんっ♡♡
背後から乳首の表面だけをしつこく擦られ、乳房まで揉み込まれた雪音が、高く鳴く。迅牙が示した通り、極々弱く胸を愛撫されているだけなのに、乳首はおろか下腹部からも快感の電流が駆け上がってきて、こめかみが甘い痺れに揺さぶられている。
「ふあぁっ♡ やだぁっ……♡♡ はなせっ、離せっ……! あんっ♡ やぁんっ……♡♡」
「まあまあ、そう言わずに。房中術が苦手かなんて聞いて悪かった。あんたの口淫は絶品だよ。ここは、俺の性技も披露しなくちゃ不公平だよな?」
迅牙は嬉々として愛撫を続行した。雪音の髪を梳いて白い項に吸い付きながら、左右の乳首を摘まんで擦り合わせる。時折、思い出したかのように乳輪をなぞっては、また乳首を摘まんで攻め立てた。
ちゅ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ くにくにっ♡ くにゅくにゅくにゅくにゅ……♡♡ すりすりすり……♡♡ くりくりくり……♡♡
「あんっ♡ あっ♡ あッ♡ あぁっ……♡♡ あっ、いやっ……♡ だめっ……♡ んああぁっ♡♡」
雪音の声は高さに加え、柔らかく甘いものに変わっていった。さらさらとした薄絹ごと擦られているせいで、いやに感じてしまう。快楽地獄から逃れようと身を捩っても、迅牙の手は乳房に吸い付くように這わさったまま、離れない。
「気持ちいいんだ? もう声どころか、顔もトロットロだもんな♡ 腰もこんなにくねらせて……あんた最高にヤラしいよ♡」
迅牙にからかわれて、雪音の躰が羞恥で更に熱くなる。本当に、どこまでもいけ好かない男だ。
「きっ……気持ちよくなんかっ……んあぁっ♡」
咎めるように乳首をきゅむっ♡ と摘ままれて、雪音は肩を激しく痙攣させる。感じていないと棘を込めて否定しても、声はすぐさま柔らかいものに変じてしまう。
「そうかい、俺の房中術は落第点か。乳首をこんなビンビンに勃ててるから、てっきり感じてくれてるんだと思ってたよ。それじゃあ、あんたの躰で修行させてもらおうかな」
迅牙は喉で笑って、雪音を敷布に押し倒した。ほとんど衣類としての役割を果たしていない薄絹を取り払って、ぴんっ♡ と上向く桃色の乳首に食らいつく。
こりこりこりこりっ♡ れるれるれるれる♡♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅぅ、ちゅぅぅぅっ♡ ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷっっ♡♡
「ひぁぁっ……♡ あぁっ♡♡ あぁんッ……♡♡ やめてっ……♡♡ んっ♡ ひっ♡ やあぁっ……♡♡ だめっ、だめっ……♡♡ こんなのっ、気がおかしくなるっ……♡♡」
十分に湿った舌に──媚薬塗れの舌に実りを転がされ、舐め回され、雪音はびくんびくん♡ と俎板の鯉よろしく全身を跳ねさせた。雪音が激しく腰をくねらせる度、質の良い敷布に深い皺が寄っていく。
迅牙は両方の乳首を丹念にしゃぶりつくすと、口を離して上体を起こした。けれども、雪音の躰を太い腿でがっちりと挟んで跨ったまま、退こうとはしない。
てらてらに濡れそぼった雪音の乳首に、迅牙の指が添えられた。
雪音がぴくんっ♡ と震えるのも気にせず、迅牙は唾液を擦り込むように、乳首にくるくると円を描き始めた。
媚薬を更に上塗りされた雪音は、もう無理やり与えられる快感を黙って受け入れるしかなかった。
「あっ♡♡ あんっ♡ あぁんっ……♡♡ そんなっ、しつこくッ……乳首ばっかりぃ……♡♡ ふあぁっ♡♡ やんッ……♡ あんっ♡♡ ああっ……♡♡」
すりすりすり……♡♡ ぴんぴんぴんぴんッッ♡♡ かりかりかりかり……♡♡
すっかり勃ちきった乳首が、迅牙の気まぐれで弾かれ、掻かれ続け、雪音の腰が自ずと浮き上がる。胸部を執拗に愛撫されているだけなのに、信じがたいことに果てが迫ってきていた。
冬の部族頭領の孫娘が、数多の男を房事で葬ってきたくノ一が、こんな一方的に翻弄されるなんて、悔しい!
気をやるまいと歯を食いしばったが、それも無駄な抵抗に過ぎず──。
「いっ……♡ ああッッ♡♡ あぁんっっっ♡♡ ぁぁあ────♡♡♡♡」
びくびくっ♡ びくびくっ♡ びくんびくんっ♡♡
少し強めに乳首を抓られた瞬間、雪音の頭の中で、いくつもの特大花火が打ち上がった。まだ触られてもいない膣が、勝手にぱくぱく♡♡ と蠢いて、止まらない。
その肉ビラの動きは実に淫らで艶めかしく、強烈に雄を惹きつける。
くりっ♡ くりっ……♡ ちゅぷんっ♡
迅牙は雪音の真っ赤に充血した陰核を二、三度撫で回すと、くぷぷぷぷ……と音を鳴らしながら陰唇を割って指を差し込んだ。
「はぁんっ、やぁんっ……♡♡」
果てたばかりなのに、再び快感に呼び起こされて、雪音は堪らず甘い声を上げた。
そこにすかさず、迅牙が指をくっと折り曲げ、追い打ちをかけてくる。
「えらい濡れようだな。俺の指にぎゅうぎゅう絡みついて……気持ちよくなってくれたみたいで、嬉しいよ」
「く……くどいっ、私は、お前ごときの技で気を違えたりするものか……あぁんっ……♡♡」
内外から蜜芽をぐりぐり♡ と刺激されて、雪音は白い肢体を敷布に泳がせた。
雪音のこの媚態を見て、誰がその主張を信じようか。青い瞳は溶けて潤み、頬には赤みがさして息も上がっているというのに。なにより、膣に納めた迅牙の指を搾り上げるような吸い付きは、雪音が女としての悦びを受けた証に他ならない。
そんなことはもう、迅牙もわかっていように。
「そうかい。どうやら、房中術の手解きを受けなきゃならないのは俺の方みたいだな」
あくまでも素知らぬふりを貫いて、迅牙は肉襞全体をなぞるように指を旋回させた。
最初はゆっくり、徐々に速く、またゆっくりと、絶妙な緩急をつけて雪音の中を攻め立てる。ぎちぎちに締め付けてくる柔らかい膣肉を無理やりほぐすように、指を二本、三本と増やし、引いては押し戻し、戻しては引き抜いてを繰り返す。
それでは飽き足らないのか、迅牙はぷっくりと膨れ上がった雪音の蕾にちゅ♡ と吸い付いた。先ほど乳首に施したように、下に唾液をたっぷり含ませ転がしながら、上唇と下唇で挟んで軽く押しつぶしている。
ちゅこっ♡ ちゅこっ♡ ちゅこっ♡♡ ぬぷんぬぷんっ♡♡ ちゅぷちゅぷっ♡♡ ちゅぷちゅぷちゅぷっ……♡♡♡ れろれろれろっ♡♡♡ ぢゅっ♡ ちゅくちゅくちゅく……♡♡♡
「ひあぁっ♡♡ ひぅんっっ♡♡ やめっ♡♡ んひっ……♡ ひんッッ♡♡♡ ひっ♡ いっ♡ んん───ッッッ♡♡♡」
ぴくんぴくんっ♡ びくびくッッ♡ びくびくッッ♡♡ びくんびくんっっ♡♡
ぞりぞりと容赦なく女の性感帯を擦られて、雪音は迅牙の頭を両手で抑えつけながら、二度目の絶頂を迎えた。自分を支える背骨がぐずぐずに溶けて、全身が抗いがたい陶酔感に浸されていく。
立て続けに果てへと連れて行かれ、雪音は潤んだ瞳から涙をぽろぽろと零した。それは、これまで快感を浴びせられて自然に落ちた涙でもあるし、房中術で二度も負かされたという屈辱から流れた涙でもあった。
「及第点ぐらいはもらえるかい?」
迅牙の顔は、にやけきっている。
雪音はきゅっと唇を噛み締め、迅牙から思いきり顔を背けた。
しかしそんな些細な反発はなんの意味を成さないと、すぐさま思い知らされることとなった。
ずしり、と。
下腹になにか重いものの乗る感触で、雪音の視線はそちらに奪われた。
雪音が口淫で吸い出したにもかかわず、先ほどにも増して重く、大きく屹立している迅牙の肉魔羅。
それは雪音の臍下辺りに置かれており、貫かれたら膣を難なく埋め尽くすであろうことは明らかだった。
軽く引き攣っているむっちりとした太ももを持ち上げられて、女陰が外気に晒される。まったくの無防備となった蜜壺に陰茎の先端が這わされ、ぐちゅり♡ という卑猥な音が閨の壁に跳ね返った。
迅牙は雪音の太ももを掴んだまま、じりじりと腰を沈めてくる。
「あ……♡ だめっ、い……入れないでっ……♡ そんなおっきい魔羅、は、入らない……♡ あっ♡ ぉっ……♡♡」
雪音はぶるりと身震いする。それは、このあとすぐに長大な肉棒に凌辱されることへの恐怖と、ある種の期待から引き起こされた震えだった。
「いやいや、あんたにとっては取るに足らぬような粗末なモンだろ? こんな俺でも女をヨがせられるよう、よろしくご教授頼むぜっ……♡」
ずぷぷぷぷっっ……♡♡♡
非常に緩慢な速度で、迅牙の陰茎が膣内に押し入ってきた。すべての肉襞がめくり上がって、雪音の弱いところを余すことなく摩擦する。
「────はおぉっ……♡♡♡ おぉっ♡ ぉぉおっ……♡♡♡」
ぴくんっ♡ ぴくんぴくんっ……♡♡
快感が血流に乗って一気に躰を駆け巡り、雪音は抗う術なく達した。肌が粟立つのと同時に、絶頂がぞわぞわと全身を蝕む。
雪音は白い喉元を迅牙に晒し、小刻みに震えていた。荒い呼吸に合わせて、たわわに実った乳房が艶めかしく上下する。下半身は左右に揺れて陰唇はひくついて魔羅を食み、これもまた淫らで妖しい魅力を放っていた。
「うぉっ、きつくてとろっとろ……♡ わかっちゃいたけど、ミミズ千匹に俵締め……♡♡ くそっ♡ ちんぽ持ってかれる♡♡ 早漏になっちまう♡♡♡ こんな綺麗な顔してるくせに、あんたなんつーえぐいまんこつけてんだよッ……♡♡♡」
迅牙は低く呻いて、雪音が動かぬよう腰をがっちりと掴んで固定した。自らも膣の入り口付近に留まって、決して動こうとはしない。
それでも膣内は苛烈に蠕動を繰り返しており、淫襞を迅牙の魔羅に絡め、精を吐き出させようと上下に扱いては圧搾を続けている。
「あー……だめだ、我慢できねぇ……♡」
迅牙は宣告と共に、無慈悲な律動を開始した。
ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんッッッ♡♡♡♡♡
「んぇえっ♡♡ あっ♡ あッ♡♡ あ"んっっ♡♡♡ うぅ、動かないでっ♡ 動いちゃだめぇ……♡♡ おねがっ……♡♡ あぁぁっ────♡♡」
細かく速く繰り出される乱れ突きに、雪音は堪らずやめるよう求めた。蕩かされる地点を狂暴な亀頭で何度も行き来されて、緩やかなアクメが止まらない。
間もなくして、迅牙の魔羅が膨れ上がる感覚が襲ってきた。
雪音にはわかる。
これは、男の銃身が暴発する予兆だ。
「あ"んッッ♡♡ だめぇっ♡♡ らめぇっ……♡♡♡ 膨らまないでっ、出しちゃだめっ……♡♡♡ もう、私のおまんこに気持ち良くなる精液出さないでっ……♡♡♡赤子っ……赤子ができちゃうっ……♡♡♡」
雪音は蕩けながらも切に訴えた。これ以上精液を──媚薬を追加されたら、もう正気を保っていられないだろう。それに、膣内射精などされたことがない。普段であれば、魔羅を膣で受け止めはしても、男が果てる前に息の根を止めている。
だがいまは、それが叶わない。何度となく媚薬を塗りたくられて、飲まされて。
雪音の躰はもう、快感を味わう以外のことは許されていなかった。
「はっ……気持ち良かったのか?」
迅牙は、半ば確信を得ているようだった。腰の律動もそのままに、目を細めて雪音を見つめている。その赤く色づいた可愛らしい唇から、真実を告げてくれと促すように。
「ほら、言って。俺の房中術は、俺のちんぽは気持ちいいかい?」
口調は優しいかもしれないが、迅牙の繰り出す抽挿は相変わらず過激だ。
それでいて乳房をやわやわと揉み、乳首を指でぴんぴんっ♡ と弾いてくるものだから、雪音の虚勢ももはや限界だった。
「ああぁっ……♡♡ きもちいぃっ、きもちいいのっ……♡♡ もうずっとイッてるのっっ♡♡ あなたの手も口も、お魔羅さまもッ……♡♡ ぜんぶきもちいいっ♡♡♡ ひぁッ♡ あっ♡ あ"んっっ♡♡」
雪音はついに陥落した。己の気持ちに素直になったせいなのか、感度が一段階上がった気すらする。膣をぎゅぅぅぅっ♡♡ と窄めて、雪音は身も心も快楽に堕ちたことを迅牙の巨根に知らしめた。
「……っあー、すっげぇ……♡♡ 出るっ、出すぞっ♡♡ あんたの極上まんこ、もっとトロトロにしてやるッッ♡♡♡」
ずちゅずちゅずちゅずちゅッッ♡♡ ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんッッッ♡♡♡ パンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
迅牙の腰つきが、これ以上ないまでに加速した。雪音の弱いところを的確に攻めるというよりは、ただただ精を吐き出したいという男の本能を剥き出しにした獣の腰遣いだった。
そんな男本位のまぐわいなのに、雪音はもう何度目になるかもわからぬ絶頂を迎えようとしている。
「あ"あぁんッッ♡♡ らめらめぇっっ♡♡ もうきもちよくしないでぇっっ……♡♡♡ もうわたしの負けでいいからぁ……♡ あっ♡ あっ♡ いっちゃうっ♡♡ やめへっ♡♡ もういじめないでぇ……♡♡ あひんッッ♡♡♡ いくぅぅぅぅぅ────ッッ♡♡♡♡♡」
びくびくっ♡♡ びくびくっっ♡♡ びくびくびくっっ♡♡♡ ビクンッビクンッッ♡♡♡
「……っ、締め付けえっぐ……♡ ぅぐっ、出る出るッッ……♡♡ イクぞッッ……♡♡♡」
ビュ────ッッ♡♡♡ ビュ────ッッ♡♡♡ びゅるっっ♡♡ びゅるるっ♡♡ ビュッ♡ ビュッ♡
雪音が果てるのと同時に、迅牙も果てた。
先ほど吐き出したのと同等の、いや、それ以上の量の精液を雪音の膣内に注いで、それでも腰はゆるゆると前後して止まらない。
「っん♡ おぉっ……♡♡ アクメまんこ、俺のちんぽにちゅうちゅう吸い付いてる♡ もっと注いで欲しいんだ? いいよ。あんたが壊れるぐらい、媚薬漬けにしてやる……♡」
迅牙の隠しようもない色気と嗜虐心に当てられ、雪音はぶるりと震え上がった。この期に及んでこの男は、まだ雪音を蹂躙するつもりなのだ。
恐るべき絶倫、恐るべき残虐性。
「やっ、やらぁ……♡♡ こわさないでっ……♡♡ お魔羅さま、こわいよぉ……♡♡♡ んぁっ……はぁんっ……♡♡♡」
すでに雪音は、度重なる媚薬の投与によって快楽の奈落に引きずれこまれ、躰をびくびく♡ びくびく♡ と跳ねさせるばかりだ。
しかし、優秀なくノ一の成せる一念だろうか。
雪音はぷるぷると震える身を捩って、四つん這いになった。そのままの態勢で、快楽に蝕まれていうことをきいてくれない躰に鞭を打ち、迅牙から逃れようと懸命に床を這う。
迅牙に敵わないことは、もう痛いほどに思い知った。もはや雪音に残された手段は、この閨から生きて脱出し、冬の部族の隠れ里に帰ることのみ。
だが当然、雪音の逃亡を迅牙が見逃すはずもなく──。
ぱっっっちゅんっっ♡♡♡♡♡
「あひんッッッ♡♡♡♡♡」
雪音が窓枠に手をかけたところで無情にも腰をがっちりと掴まれ、思いっきり引き戻された。雪音の桃尻を迎え入れるようにして、迅牙の肉杭が再び蜜壺を穿つ。
強烈な一撃だった。快楽地獄から這い上がったところを、再び容赦なく叩き落とすような衝撃に、振り絞ったなけなしの力も雲散して雪音の脳は過剰な快感で焼き切れた。
「んお"っ……♡ おっ♡ おぉっ♡♡ ぉっ……♡♡ おぉんっっ……♡♡♡ だっ……だれかたしゅけてぇ……♡♡♡」
「いやいや、恐れ入った。あれだけ俺の精液を受け止めておいて、まだ抵抗できるとはな。あんた、大した気概だ、よっ、と……♡」
ぬぷぬぷぬぷぬぷ……♡♡♡♡♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡♡ ぬろぉっ……ぬろぉ~~~っっ……♡♡♡ ずっっっっぷんっっっっ♡♡♡♡♡
迅牙の凶悪な魔羅が、なおも雪音の膣奥へと押し入ってくる。先ほどにも増して肉襞を亀頭と雁首で力強く、ゆっくりめくり上げながら、迅牙は雪音の子宮口にとうとう辿り着いた。その小さな入り口に鈴口を合わせ、二、三回ほど細かく口づけると、なにを思ったのか陰茎をずるぅっ……と引き抜いてから、一気に突き戻してきた。
凝縮した快感の塊を子宮の奥まで撃ち込まれた雪音は、窓枠を掴んだまま躰を沈め、ただただ喘ぐ。
「お"んっっ♡♡ ぉほっっ♡♡♡ ぉぉお"っっ……♡♡♡ 奥ッ、おぐぅぅ……♡♡♡ んおぉッ……♡♡♡ お魔羅さま、奥まで入ってぅぅっっ……♡♡♡ あっ♡ あっ♡ はぁんっっ♡♡」
「……っ♡ おいおい、あんた、数の子天井まで持ってんのか……♡♡ しかも俺のを根元までギッチリ咥えられるとか、どんだけ贅沢なまんこなんだよ……♡♡」
迅牙は感嘆と法悦の息を漏らし、雪音の両腰を持って己の方へ引きつけながら、腰をぐりぐりと押し付ける。柔尻と子宮口、その間近に構えるザラザラした箇所の感触に、迅牙はしばし酔い痴れているようだった。
張り出した肉棒の先端に子宮口を執拗に撫で回されて、雪音は迅牙に呼応するかのように腰をくねらせた。
「やぁんっ……♡♡♡ ぐりぐりしないでっ♡ 極太お魔羅さま抜いてぇっ……♡♡♡ んんっ……♡ あぁっ……はぁっ……♡♡」
「ああーっ……♡ イキっぱなしまんこ、堪んねぇ……♡ また精子上がってきた……♡ 次はあんたの一番奥に出してやるからな……♡」
ぱっちゅんっ♡ ぱっちゅん♡ ぱっちゅんっっ♡♡ ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅッッ♡♡ パンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
迅牙は低く呻いて、一心不乱に魔羅の抽挿を繰り返す。
「ひんッッ♡♡♡ やらやらっ♡ やめへぇっ……♡ ぁあんッ♡♡ 知らなかったのぉ……♡♡♡ こんなに強いお魔羅さまがあるなんて、知らなかったのぉっっ♡♡ ゆるしてぇッッ♡♡♡ これ以上きもちよくなったら、しんじゃうぅぅ……♡♡♡ あぁんっっ♡♡ じゅこじゅこしゅごぉいっ……♡♡♡」
一突きごとに速くなっていく攻め立てに、雪音はくノ一の矜持も忘れて喘ぐ。ほんの少し前までは、自分に落とせない男などいないと思い上がっていたのに。
それがいまはどうだ。逞しすぎる雄の魔羅に雌の急所を立て続けに攻められて、全身を快感に蕩けさせているではないか。
ぬろぉぉっ……♡ ぱちゅんッ♡ ずろろろろろぉ~~……♡ ぱっっっっちゅんッ♡♡♡
「……んっ♡ あっ♡ ぁあっ♡♡ あッ♡ そこらめぇっ……♡ そこっ♡ 雁首でゆっくりなぞっちゃらめっ……♡♡ ふあぁっ……♡♡ きもちいいっ、きもちいいっっ……♡♡」
雪音の願いが聞き入れられた──のかどうかは定からぬところだが、迅牙が腰の速度を落とした。しかし完全に腰の律動を止める気もなければ、雪音の膣内から退出する気もないようだ。
亀の歩みのようなじれったい速度で襞を荒らされて、雪音は微弱な絶頂に呑まれ続けている。
そんな緩慢な抽挿を保ったまま、迅牙が雪音の背に覆いかぶさってきた。結合部はおろか、柔らかな臀部が迅牙の鼠径部に、華奢な背中が分厚い胸板に押しつぶされて、雪音はついに呼吸すらままならなくなった。
「……なぁ。あんた、冬の部族のくノ一なんだろう?」
上擦り、熱い吐息の混じった迅牙の声が、雪音の耳を掠める。雪音は話に耳を傾けてはいるがまともな返事ができず、なんとか目線だけを迅牙に向けた。
「春の部族には、“冬の部族の女を娶れば、向こう百年、一族の子孫繁栄・無病息災が約束される”っていう面白い伝承があってな。つまり、あんたは俺にとって縁起物なんだよ」
伝承、縁起物。言葉の意味は理解できても、快楽に溺れる雪音には迅牙の意図するところがわからない。
「嫁に来てくれよ。あんたのこと、大切にするからさ」
迅牙に甘く囁かれながら項に口を落とされて、雪音は思わず承諾しそうになっていた。
いまさっき出逢ったばかりなのに、お互いのことなどまだ何も知らないのに。
迅牙の申し出は、雪音が愛しいなどという誠実な想いから放たれたものではなく、あくまで一族の繁栄を見越してのものだ。
そんな自分本位の求婚など、受けられるものか。
「おっ……お嫁さんなんてっ……ひゃんっっ♡♡♡」
もちろん断ろうとした雪音であったが、その返事は迅牙の強い一突きで黙らされてしまった。それ以後も、返事は“応”しか許さないとでも言いたげに、迅牙は何度も何度も重い一撃を雪音の子宮口に見舞う。
ぬろろろぉぉぉっ……♡ ばちゅんッッ♡ ばっちゅんッ♡♡ ばっちゅんッッ♡♡♡
「あっ♡ あんっっ♡ んお"ぉっっ♡♡ あお"ぉっ……♡♡ やめへっ♡♡ お魔羅さま叩きつけないでっ♡♡ この極太お魔羅さまのお嫁さんになりたくなっちゃうからぁ……♡♡♡」
男を篭絡するはずの雪音が、いまではすっかり男根の虜になっていた。こんな肉欲に塗れた、人の道に悖る婚姻を受け入れるわけにはいかないのに、抗えない。あと少しなにかが違えば、もう戻ってこられないところまで堕ちてしまうであろう予感が、ひしひしと雪音を襲った。
「おう、なってくれ♡ あんた、バカ領主の首を取りに来たんだろ? あんたが嫁になってくれるなら、俺は任務を放棄するよ。なんなら、俺が領主を始末したっていい」
迅牙に提案されたところで、雪音はようやく思い出した。ここにはそもそもリンド領主の暗殺依頼を受けてやってきたのだと。
もう迅牙と戦うだけの力も気力も残っていない。いや、戦う意志すらなかった。
このままただ迅牙の慰み者になるぐらいなら、嫁入りして任務を全うするのも悪くないのではないか。
そんな雪音の考えを肯定するかのように、迅牙は子宮口を重点的に叩き始めた。この奥で子種を粛々と受け止め、嫁としての本分を果たしてくれないかと急かして迫る。
とんっ♡ とんっ♡ ゴッ♡ ゴツッッ♡♡♡ こつんこつんこつんっ……♡♡ トントントントントントンッッ……♡♡♡
「はやく。俺のものになるって言え」
「ふあぁっ♡♡ な……なりましゅぅ……♡ あっ……♡ あなたのおよめさんにっ、なりますっ……♡♡♡ あんッ♡ あっ♡ あ"っ♡ あぁんっっ♡♡♡」
雪音が完全に堕ちたことに気を良くしたのか、迅牙は激しく腰を振りたくりだした。魔羅が限界一杯まで膨張していく。玉袋で煮え滾る精子を解き放たんと、竿がびくびくと痙攣しては雪音の膣を圧迫する。
「ん"あっ♡ んん"っ♡♡ らめぇらめぇっ……♡♡ いくぅ……いぐぅっ♡♡♡」
「……あんた、名前は?」
射精寸前になって、迅牙はたったいま思いついたかのように雪音の名を尋ねてきた。雪音を娶ろうというのに、名前を聞いていなかったことにをいまになって思い出したのだろう。
淫欲に蕩ける雪音は、いまや迅牙の言われるがままに快感を受け入れ、応じることしかできないでいる。
「ゅ……ゆきね……あさぎり、ゆきね……まっしろい雪に、音で、雪音……はぉぉっっ♡♡♡」
「あぁ……あんた、冬の部族頭領の孫娘だったのか。道理で……」
なにか得心がいったのか、迅牙は独り言ちて喉で笑う。
あとはもう、無遠慮に突き崩すだけだった。
パンパンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
「……っあー、イクッ……♡ 一番濃いの出るッ♡ イクイクイクッッ……♡♡ おらっ、孕めッ♡ 孕めッッ♡♡♡」
びゅ────ッッ♡♡♡ びゅ────ッッッッ♡♡♡ どびゅっっ♡♡ びゅくびゅくびゅくっ♡♡♡ びゅるるるるっ♡♡ ビュッ……♡ ビュッ……♡ ぴゅっ……♡♡♡
「あぁんッッ♡♡♡ ひっ……♡ お"ぉんッッ……♡♡♡ お"ッ♡♡ ぉ────~~……っっ♡♡♡」
雪音は盛大に弾けトんで、今度こそ気をやった。
まったく、この男の精力は底なしか。三度目の射精にして子宮を満たし尽くすには過多の精子を吐き出し、迅牙はようやく自ら雪音の中から退出していった。
陰茎を引き抜かれる際に、雁首で弱いところを擦り上げられても、媚薬に浸された躰は勝手に疼いて引き攣るばかりで、雪音の意志では指ひとつとして動かせなかった。
意識が、遠のいていく。
視界が暗転していく中で、雪音は迅牙の声を聞いた気がした。
「……ぁっ、はぁっ……ははっ、雪音か。あんたにぴったりの、いい名だな」
それからリンド領にガマガエルのような頭部が転がったと雪音が知るのは、三日も後になってからだった。
※:
遠くの方から聞こえてくる鶯の鳴き声で、雪音は目を覚ました。
躰を起こすと、掛布がぱさりと落ちた。よくよく見てみれば、雪音は素肌に男物の寝間着を一枚羽織っているだけの状態だった。この姿で、どこぞの部屋に寝かしつけられていたらしい。
冬の部族の里にある、自分の部屋ではない。領主を暗殺すべく侵入した閨でもない。まったく見覚えのない、質素だが広い部屋だ。
再度鶯が鳴いて、雪音の視線はそちらに流れた。
開け放たれた襖から、眩いばかりの桜の木々が見える。桜の他にも、赤、黄色、紫と、実に様々な色の花々が咲き誇っていた。
冬の部族の里では絶対に見られぬであろう、穏やかで長閑な春の光景。
「……きれい」
雪音が思わずそう呟いて庭の景観に目を奪われていると、どこぞからサァっと風が吹き抜けてきた。
「お気に召してくれたかい?」
いつの間にか、迅牙がすぐ傍に立っていた。出逢ったときと同じく、小憎らしい笑みを浮かべて。
見下ろしてくる迅牙の顔を目の当たりにして、雪音はすべてを悟った。
ここが春の部族の領域であること、自分が迅牙に抱き潰されたあと、ここに連れてこられたことを。
そして、迅牙の嫁になると承諾してしまったことも思い出した。
雪音は逃げ出そうとしたが躰がいうことを聞いてくれず、よろけて敷布に手をついた。
「無理はしない方がいいぜ。まだ毒が抜けきってないからさ」
迅牙は笑いながら、雪音の目線にまで腰を屈めて言った。
毒──つまりは、媚薬。
そう言われれば、どことなくまだ躰が熱い気がして、雪音は迅牙をキッと睨みつけた。毒を盛った張本人が、なにをいけしゃあしゃあと抜かしているのかと、怒りを込めて。
「そう邪険にしないでくれよ。あんたはこれから、この春の部族の里で暮らしていくんだぞ、俺の嫁として」
「あ……あんな、口約束……んっ♡」
雪音の反発は、迅牙の唇に絡め取られて跡形もなく消え去った。そのままの勢いで押し倒されて、迅牙の手が寝巻の隙間から忍び込んできた。
乳房を揉みしだかれ、舌を挿し込まれ、唾液を含まされ──躰が甘い痺れに支配されていく。
「んあぁっ……♡ ま、また……♡ あぁんっ♡ こんな日の高いうちからっ……♡♡」
「逃がさねえよ。やっと見つけた、理想的な嫁さんなんだからな」
迅牙は、雪音が初めて出逢う真剣な面持ちを見せたあと、忍び装束を脱ぎ捨てた。
春の庭に、春告げ鳥の鳴き声に紛れて女の嬌声が鳴り響く。
雪解けのときは、近い。
そんな冬の景観を座敷の中から眺めつつ、雪音は祖父の前に座した。
齢十八を迎えた浅霧雪音は、冬の妖精のごとき輝きを放っていた。
降り積もったばかりの雪よりも白い髪。氷のように透き通る珠の肌。瞼に嵌る瞳は異国の秘宝、蒼玉を彷彿とさせる鮮やかさで、頬と唇は珊瑚のような淡い赤色だ。
儚げな顔立ちとは裏腹に、躰の方はいやに肉感的だった。
布地の少ない装束から覗く豊満な谷間、むっちりとした太もも。すらりと伸びた四肢はしなやかで、こんな躰に絡みつかれたら、さぞ心地よいであろうことが容易に想像できた。
「差し向けた下忍どもが、全員返り討ちにあってのぉ」
蓄えた白髭をしげしげと撫でながら、祖父が溜め息を吐く。真っ白な息が消える頃には、雪音はすでに仕事が振られると悟っており、祖父を真っ直ぐに見据えていた。
「そういうわけじゃ、雪音。此度の任務、おぬしに預ける」
「心得ましてございます、おじじさま」
ぴんと伸びた背筋を折って、雪音は祖父に伏す。
雪音は、とある雪国に隠れ住む忍者、くノ一だ。
この里に住む者は“冬の部族”と呼ばれ、みな例外なく忍者となって世の中に暗躍する。ある者は名だたる大名に仕えて武勲を上げ、ある者は諜報活動や暗殺を生業として生きていた。
「此度の任務は、リンド領の領主暗殺でございましたね」
雪音が確認すると、祖父は重々しく頷いた。
冬の部族が使役している白ガラスが、リンド領に住まう貧民からの手紙を携えて戻ってきたのは、もう十日も前の話になる。
手紙には、「育てた作物の九割が税として徴収され、飢えに喘ぎ、犬畜生の肉を食べる者が出る始末。どうか我ら民を苦しめる領主を亡き者にしてくださいますよう、お願い申し上げる」という旨と涙の跡が認めてあった。
統治者の悪政に堪えかねた民たちの、粛清を望む切ない声。
よくある依頼であり、特段しくじるような内容ではないのだが、どういうわけか、差し向けた数人の下忍たちは任務に失敗して戻ってきた。
この事態を不思議に思った雪音は、祖父に詳しい事情を尋ねることにした。
「リンド領の主は、豚のように肥えた醜い身体で、潰したカエルのように醜い顔で、武人としての才もないと伝え聞いておりますが……そのような者を相手に、遅れを取ったのですか?」
「どうにものぉ……リンドの領主は、同業者を用心棒として雇っておるらしくてのぉ」
祖父の溜め息がいっそう深くなる。
同業者、すなわち、忍者。
この列島には、冬の部族以外にもいくつか忍者の派閥が存在する。普段はお互い干渉もせず深いかかわりも持たないが、仕事の上でかち合うことはそう珍しいことではない。
そして今回の任務は運悪く、相当な手練れが敵に回ってしまったようだった。
「下忍とはいえ、わしが手塩にかけて育てた忍びたちじゃ。それが獲物に近づくことはおろか、瞬時に返り討ちとは。あいやいや、悔しいのぅ」
祖父は嘆いてばかりいるが、雪音としてはさっさと任務の話を詰めたかった。貧困に窮する力無き民を、逸早く救うためにも。
「私がリンド領の城内に女中として潜入し、領主に取り入って、隙を見て殺す。それでようございますね、おじじさま」
「うむうむ。おぬしなら、忍者の目を欺いて領主に近づくのもお手の物じゃろうて。それにおぬしの躰は、男を骨抜きするのに誂え向きじゃからのぅ」
言いながら、祖父は親縁の者を見るにはいささか不適切な目で、雪音の全身を舐った。
「ほんにたわわに育ったのぉ、雪音。どれ、じぃじが柔らかさの方も確かめて──」
──スパァァンッッ
祖父の言葉は、雪音の痛烈な平手打ちで遮られた。
「それがっ、実の孫娘に向かって言うようなことですか! このスケベじじい!!」
雪音は眉根をきりりと吊り上げ叫ぶ。
任務で色仕掛けを使うこともあるし、この躰がそういった色事に向いているのは雪音も重々承知している。
しかし、雪音自身は純に過ぎるきらいがあり、あまり自分の躰を好きになれないでいた。
「おおぅ、つれないのぅ、つれないのぅ! もちっとじぃじとスキンシップしてくれんかぁ~」
尚も躰に縋ろうとする祖父を袖にして、雪音はすっくと立ちあがった。
「すぐ出立いたします! 吉報をお待ちくだされ!」
果たして雪音は、ここ冬の部族の隠れ里から遠く離れた、リンド領へと旅立っていった。
※:
雪音がリンド領に来てから、二十日ばかりが経過しようとしている。
任務は怖いぐらい順調で、雪音は城内に潜り込み女中として働きだしてから、ものの数日で領主から目をかけられるようになった。信を得られるよう、女中としての仕事は徹底してこなしていたし、愛想も振りまいていたのだから、当然の結果ともいえる。
それとなく領主が雇ったという忍者を捜してもみたが、やはり腕が立つとあってか見つからなかった。しかし相手からの接触もないのだから、雪音の正体も露見していないということだ。ならば忍者の方は放っておいても問題なかろうと、雪音は領主から声をかけられるときを待った。
そして今宵、雪音は薄絹一枚で閨に来るよう告げられた。ここまでくれば、任務は終わったも同然である。
しかしここで油断するような雪音ではない。表向きには純朴な娘を装ったまま、領主を殺す手段を秘かに携えて闇夜に馳せ参じた。
領主の寝床は、提灯の淡い光に当てられ橙色に染まり上がっている。
雪音は、羽毛が存分に敷き詰められているだろう寝具の盛り上がりを確認してから、寝室の隅々を見やった。領主を殺してからの逃げ道は、あの窓で十分だろう。たとえこの寝所が天守閣の上階に位置していようとも、くノ一の障害にはなり得ない。
提灯の明かりに、雪音の肢体が照らし出された。
張りのある豊かな乳房と臀部が、薄絹を押し上げている。薄絹を纏っているとはいえ、雪音の白い肌が透けて見えるため、裸身でいることよりもかえって厭らしさを際立たせていた。
男なら無条件でむしゃぶりつきたくなるような、まこと天晴れとしかいいようのない見事な艶態。実際、武芸にしか興味のなかった堅物侍も、神職に身を捧げた聖人君子も、この躰の虜にしてきた。
だが、今回はこの躰を使う必要はなさそうだった。
領主は、雪音が夜具に上がり込んでも身動ぎすらしなかった。どうやら領主は、雪音が来るのを待ちきれず眠りに落ちてしまったらしい。
雪音は髪を結っていた簪をスッと抜き取った。その切っ先は鋭く、急所を突けば致命傷になることは明白だ。
(覚悟ッ!!)
掛布をめくり、頸椎を一突きにしようとしたその瞬間。
雪音が掛布に触れる直前で勢いよく捲れ上がり、男が飛び出してきた。
「待ってたぜ」
雪音は、何が起こったのかわからなかった。
夜具に寝そべっていた人物からは、殺気もそれに類する気配も、なにも感じなかったのに。気づいたときには簪を叩き落とされ、筋骨隆々の腕に抱きすくめられていた。
領主は頭が薄く、絶えずぎとぎとに脂ぎっていて、ぶよぶよのガマガエルのように醜く肥えた男だ。
だが、雪音を捕らえたのは領主とは真逆の男だった。
雪音を抱く腕を皮切りに、首、肩、胸、腿。男を構成する肉体の部位ひとつひとつが巨きく、太く逞しい。濃紺色の忍び装束では、覆い隠しきれないほどに。
赤みがかった茶髪を後ろに流しており、距離も相まって、男の顔つきがはっきりと見て取れた。
彫りが深く、顎はがっしりとしていて精悍そのものだが、無邪気な笑みにはまだ薄っすらと幼さが残っており、年齢は二十歳を過ぎたか過ぎないかといった具合である。
なにより印象的なのが、瞳だ。橙とも茶色とも違う、不思議な煌めきを映す榛色の目──。
逢うのは初めてだが、この男には覚えがある。
「は……榛迅牙……“春の部族”の……」
雪音がその名を口走ると、男はにぃっと笑った。
「光栄だね、俺をご存じとは」
当然だ。忍者界隈で、この男を知らぬ者はいない。
榛迅牙。
冬の部族とは比較にならぬほど大勢の忍者を抱える、春の部族の次期頭領と名高い男だ。並みの忍者が十人で束になって斬りかかっても、かすり傷ひとつ付けられないというのは有名な話で、武勇伝を上げていたらキリがない。
領主の雇ったという忍者が、迅牙だったとは。下忍たちが返り討ちにあうわけだ。
「おのれ、謀ったな!」
雪音は絶叫しながら身を捩ったが、拘束は微塵も緩まなかった。それがいっそう腹立たしく、雪音はギリリと奥歯を噛み締める。
迅牙ほどの手練れが、雪音の正体に気づかぬ道理がない。そもそも雪音がくノ一だと気づき、領主の寝首を搔きにくるとわかっていたからこそ、夜具の中で待ち構えていたのだろう。
つまり、雪音は迅牙に泳がされていたのだ。
「いやいや、あんたがくノ一だって気づいたのは、ほんの二、三日前のことだよ。見事な変装術だった。あんた、この間の奴らと違ってかなり優秀みたいだな」
迅牙は楽しげに褒めそやすが、こうして雪音を難なく捉えているのだから嫌味にしか聞こえない。
「それに、改めて近くで見ると……あんたすげー別嬪だ。くノ一だって教えてやったのに、バカ領主が一夜を共にするんだって駄々をこねるわけだよ。俺も……ムラムラしてきた」
「ふ、ふざけたことを……ひあっ♡」
首筋に舌を這わされて、雪音は思わず柔らかい声を零してしまった。舐め上げられた箇所に、ぞくぞくと痺れるような微かな快感が走る。
雪音が甘く切ない痙攣に戸惑っている間にも、迅牙は無遠慮に肌を蹂躙してきた。唇で鎖骨、項を掠め、耳朶を食み、耳の付け根にちゅっ、ちゅっ、と吸い付いては弄んでいる。
「やっ……あっ……♡ や、やめ……♡」
嬌声が止まらない。
おかしい。任務で男と睦む際、意図的に喘ぐことはあれど、喘がされることなんて一度たりともなかった。それなのに、迅牙の口と舌で撫でられるたびに声が漏れ、腰も勝手に揺れ動いてしまう。
「ずいぶんと気持ち良さそうだな、とろっとろに蕩けた声で鳴いて。こんなドえろい体なのに、感じやすいとか……房中術は苦手か?」
すぐ耳元で、迅牙が甘やかすように囁いた。それすらも心地よく雪音の淫欲をくすぐるが、いまの暴言は聞き捨てならない。
房中術、すなわち男を虜にする性技。
冗談ではない。いくら自身の体つきに不満を抱いているとはいえ、両親から与えられた躰と培った房中術で、幾人もの男たちを落としてきたのだ。
それなのに、躰のみならず実績をも嗤われては、冬の部族くノ一の名が廃る。
雪音は色んな思いを募り募らせ、顔を熱くしながら牙を剥いた。
「ふ……不快極まる!!」
雪音の鋭い歯牙が、迅牙の太い首に食い込んだ。
ところが。
「可愛い牙だな」
迅牙はまったく堪えることなく、雪音を強引に引き剥がして放り投げた。
艶めかしい乙女の肢体が、夜具に沈む。
雪音はこう見えて、負けん気が強い。やられっぱなしは我慢ならないし、なにより迅牙は討つべき敵。ここで仕留められないまでも、致命傷は負わせてみせると意気込んで、先ほど叩き落とされた簪を掴んで迅牙の喉元目掛けて飛びかかった。
いや、飛びかかろうとした。
「……えっ」
雪音は再び、夜具の上に落ちた。その先にちょうど迅牙の足があり、頭を垂れて屈服しているような体勢になっている。しかし雪音には、そんな無様な恰好を気にしている余裕はなかった。
躰が思うように動かない。両手をついてなんとか躰を起こすことはできたが、立ち上がって戦うことなど到底できそうになかった。
全身が、千手観音に優しく撫で回されているような甘い痺れに包まれている。まるで、骨という骨をドロドロに溶かす毒に侵されたかのようだった。
(ど、毒を盛られた……!? い、いつの間に……? なんの毒だ、さほど強い毒ではなさそうだけど……)
──ぐにぃっ♡
毒で弱り始めた雪音の柔らかい頬に、なにか硬いものが押し当てられた。
幾度となく、色事を用いて任務をこなしてきた雪音だ。直視しなくとも、いま頬にぐりぐり♡ と押し付けられているものが、男の──迅牙の魔羅であることはすぐにわかった。
「俺が房中術の手解きをしてやろうか?」
挑発された雪音が、キッと迅牙を睨めつける。目を細めて雪音を睥睨する迅牙は、実に憎たらしかった。
だが雪音は、迅牙の挑発をあえて受けることにした。毒に侵されつつあるこの躰では、正攻法で挑んでも返り討ちにあうのは自明の理。
ならば、持てる性技で迅牙を落とし、油断しきったところを仕留めるのが上等というものだ。
(その余裕面を、快楽に溺れきった阿呆面に変え、そのまま殺してくれる!)
雪音はそう意気込んで、迅牙が纏う下衣の中心を割り開いた。
「おっ♡」
迅牙の嬉しそうな声と共に、ビンッッ♡ という音が聞こえた気がした。
下衣から飛び出してきた陰茎は、重力に逆らうようにそそり勃っている。
(え……お、おっきい……)
雪音は、ほんの少しだけたじろいだ。
目の前に立ちはだかる肉棒は、これまで下してきたどの男のモノよりも巨きく、太く逞しい。形も大したもので、エラが大きく張り出していて、先端の亀頭は赤黒く、竿の部分にはいくつもの血管が浮き出ている。
まさしく迅牙その人を具現化した、立派な魔羅だ。
おまけに汗で蒸れていたのか、解放した瞬間から熱気と雄の臭いが漂いだして、雪音の鼻腔を通って脳を痺れさす。
あまりにも仰々しい剛直を前に雪音が固まっていると、頭上から押し殺したような笑い声が降ってきた。
「どうしたらいいかわからない? 舐めてみな。咥えてもいいが、歯は立てるなよ」
そんなことは迅牙に言われるまでもなく心得ていると、雪音は半ば苛立ちながら魔羅の先っぽにちゅっと口づけた。それに気を良くしたのか、鈴口から先走りの汁がドッと溢れ出てきた。
滴り落ちる肉汁を、雪音は舌を伸ばして掬い取る。そのまま雁首をなぞり、竿の血管をなぞると、迅牙の肉棒がびくりと跳ねて、一回りほど大きくなった。まだ完全に勃起しきっていなかったとは、なんと恐ろしい魔羅なのか。
先端からとめどなく溢れる我慢汁が舐め取りきれなくなってきたので、雪音は思い切って亀頭を咥えこんだ。
「……んっ♡ んぐっ……♡♡」
しかし、亀頭だけで口の中が占拠されてしまい、舌の置き所がない。苦しさで唾液が大量に分泌される中、舌が居場所を求めて逃げ惑う。それが偶発的に、はち切れんばかりの亀頭とカリ首を舐め回すことになってしまった。
「おぉっ……♡ これはなかなか……♡」
迅牙から漏れ出た声は、わずかに上擦っていた。雪音が上目遣いで迅牙の顔を見やると、まだまだ余裕があるのか、にぃっと笑みを浮かべて見つめ返してくる。
だが、息は乱れ、額には珠のような汗が滲んでいた。このまま口淫を続けていれば、迅牙が果てるのも時間の問題だろう。
雪音は、短期決着を仕掛けることにした。ずっと迅牙に主導権を握らせておくのは、なんとも癇に障る。はやくその自信に満ち満ちた顔を、情けない面に変えてやりたい。
そしてなによりも──。
(あ……顎が外れる……)
迅牙の他に類をみない凶悪な肉棒を咥え続けていては、こちらの身が保たないと判断した。一度口から離せばいいものを、これまで数多の男を落としてきたくノ一としての矜持が、それを良しとしなかった。
雪音は口を限界まで窄め、頭を激しく前後させた。咥内で迅牙をめいっぱい扱くと、先端が喉に突き刺さる。嘔吐きそうになるのを堪えながら、雪音はぱんぱんに膨れ上がった陰嚢からすべての精液を搾り尽くしてやろうと、必死に食らいついていた。
じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ じゅぷっ♡ ちゅぽちゅぽちゅぽちゅぽっ♡♡
「あー……♡♡ 出る出るっ、イクっっ♡♡」
迅牙の全身が、ぶるりと震えた。そうかと思えば、両手で雪音の頭を掴み自らの腰を思いっきり打ち付けて──盛大に弾けた。
びゅうううううううううう────ッッ♡♡♡ びゅーッッ♡ びゅーッッ♡ びゅるるっっっ♡♡
亀頭はびゅっくんびゅっくん跳ね回りながら、雪音の喉奥を目掛けて惜しみなく精液を注いでいく。
「んぐっっ♡♡ んぷっ……♡ んんんッッ……♡♡」
もう雪音の咥内に留めておけないぐらい精を吐き出されたというのに、迅牙はまだ解放してくれない。雪音の頭を固定したまま、筋肉の収縮だけでなおも精子を送り出してくる。
びゅくっっ♡ びゅくっっ♡ びゅるるるっっ……♡♡ びゅっ♡ びゅっ♡ びゅっ……♡♡♡
(こ、この男、どれだけ出す気なの……!)
精液という精液を搾り尽くそうと思ってはいたが、この量は想像の遥か彼方だ。
ついに堪えきれなくなって、雪音は肉棒を咥えたまま精液を飲み下す。
飲み切れない分が口の端から零れ落ちた頃、ようやく迅牙が腰を引いた。
支えを失った雪音は、そのまま力無く敷布の上に倒れ込んだ。精液を出し尽くした男ほど、無力なものはない。
精液を出し尽くした男ほど、無力なものはない。いまこそ迅牙を仕留める千載一遇の機会なのに、雪音は一向に起き上がれないでいた。毒が回りきったのか、躰がどうしようもなく熱くなって、腹の下がじゅくじゅくと疼く。
(か……躰が動かない……頭もふわふわして……どうして……?)
瞳を潤ませ肩で息をする雪音を、例の憎たらしい笑みを浮かべた迅牙が覗き込んできた。
「躰がまともに動かないんだろう? あんた、“埋毒者”って聞いたことあるかい? 体内に毒を持っていたり、毒を精製したりできる忍者のことを」
口ぶりからして、迅牙はその埋毒者なのだろう。雪音も噂には聞いたことがあるが、遭遇するのはこれが初めてだった。
「俺は体液すべてが毒っていう、埋毒者の中でもかなり特殊な部類でね。で……毒の効果の方も面白いもんでよ。男が浴びる分にはそのまま猛毒なんだが、女に対しては……」
説明する傍ら、迅牙は雪音を抱き起こした。敷布の上に胡坐をかき、そこに雪音をちょこんと乗せて──唇に吸い付いた。
「んっ……んっ、ふっ……むぅ……♡」
ちゅっ♡ れろれろっ♡ ちゅ、ちゅぅ……♡♡
雪音の口内が、肉厚の舌で荒々しく蹂躙されていく。歯列や頬肉の内側に唾液を塗りつけるように激しく、けれども丁寧に。
すると、ますます雪音から力が抜け落ちて、後には身を焦がすような熱と、骨を震わすような甘い甘い疼きだけが残った。
「ぁ……♡ はぁん……♡♡」
「どうだい、天にも昇る心地だろう」
薄く笑う迅牙の口端に、雪音と繋がる銀の糸が垂れる。
「俺の毒は、女が触れると強力な媚薬になるんだ」
媚薬になる毒、体液、と聞かされ、雪音はぼんやりした頭で、迅牙に出くわしてからのことを振り返ってみた。
一番最初は、首筋を舐め上げられた。次に鎖骨、項に耳朶。迅牙の首に噛みついた際、血を飲んでしまったかもしれない。
決定打は、精液だ。しこたま吐き出されて、飲まされた。
「性衝動が抑えられなくなって、感度が天井知らずに上がっていって……あんた、いまに死ぬほど気持ちよくなれるよ。こんなふうに」
迅牙は、薄絹に覆われた雪音の両乳首を、中指の腹で軽く転がした。
こすっ……♡ こすっ……♡ すりすりすりすり……♡♡
「ひぁっ……♡ んっ♡ あっ♡ ああっ……♡ や、やめろっ……んあっ♡ ああぁんっ……♡♡」
くりくりっ♡ さすさすさすさす……♡ こすこすっ♡ こりこりこりこりっ♡♡ もにゅんっもにゅんっ♡♡
背後から乳首の表面だけをしつこく擦られ、乳房まで揉み込まれた雪音が、高く鳴く。迅牙が示した通り、極々弱く胸を愛撫されているだけなのに、乳首はおろか下腹部からも快感の電流が駆け上がってきて、こめかみが甘い痺れに揺さぶられている。
「ふあぁっ♡ やだぁっ……♡♡ はなせっ、離せっ……! あんっ♡ やぁんっ……♡♡」
「まあまあ、そう言わずに。房中術が苦手かなんて聞いて悪かった。あんたの口淫は絶品だよ。ここは、俺の性技も披露しなくちゃ不公平だよな?」
迅牙は嬉々として愛撫を続行した。雪音の髪を梳いて白い項に吸い付きながら、左右の乳首を摘まんで擦り合わせる。時折、思い出したかのように乳輪をなぞっては、また乳首を摘まんで攻め立てた。
ちゅ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ くにくにっ♡ くにゅくにゅくにゅくにゅ……♡♡ すりすりすり……♡♡ くりくりくり……♡♡
「あんっ♡ あっ♡ あッ♡ あぁっ……♡♡ あっ、いやっ……♡ だめっ……♡ んああぁっ♡♡」
雪音の声は高さに加え、柔らかく甘いものに変わっていった。さらさらとした薄絹ごと擦られているせいで、いやに感じてしまう。快楽地獄から逃れようと身を捩っても、迅牙の手は乳房に吸い付くように這わさったまま、離れない。
「気持ちいいんだ? もう声どころか、顔もトロットロだもんな♡ 腰もこんなにくねらせて……あんた最高にヤラしいよ♡」
迅牙にからかわれて、雪音の躰が羞恥で更に熱くなる。本当に、どこまでもいけ好かない男だ。
「きっ……気持ちよくなんかっ……んあぁっ♡」
咎めるように乳首をきゅむっ♡ と摘ままれて、雪音は肩を激しく痙攣させる。感じていないと棘を込めて否定しても、声はすぐさま柔らかいものに変じてしまう。
「そうかい、俺の房中術は落第点か。乳首をこんなビンビンに勃ててるから、てっきり感じてくれてるんだと思ってたよ。それじゃあ、あんたの躰で修行させてもらおうかな」
迅牙は喉で笑って、雪音を敷布に押し倒した。ほとんど衣類としての役割を果たしていない薄絹を取り払って、ぴんっ♡ と上向く桃色の乳首に食らいつく。
こりこりこりこりっ♡ れるれるれるれる♡♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅぅ、ちゅぅぅぅっ♡ ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷっっ♡♡
「ひぁぁっ……♡ あぁっ♡♡ あぁんッ……♡♡ やめてっ……♡♡ んっ♡ ひっ♡ やあぁっ……♡♡ だめっ、だめっ……♡♡ こんなのっ、気がおかしくなるっ……♡♡」
十分に湿った舌に──媚薬塗れの舌に実りを転がされ、舐め回され、雪音はびくんびくん♡ と俎板の鯉よろしく全身を跳ねさせた。雪音が激しく腰をくねらせる度、質の良い敷布に深い皺が寄っていく。
迅牙は両方の乳首を丹念にしゃぶりつくすと、口を離して上体を起こした。けれども、雪音の躰を太い腿でがっちりと挟んで跨ったまま、退こうとはしない。
てらてらに濡れそぼった雪音の乳首に、迅牙の指が添えられた。
雪音がぴくんっ♡ と震えるのも気にせず、迅牙は唾液を擦り込むように、乳首にくるくると円を描き始めた。
媚薬を更に上塗りされた雪音は、もう無理やり与えられる快感を黙って受け入れるしかなかった。
「あっ♡♡ あんっ♡ あぁんっ……♡♡ そんなっ、しつこくッ……乳首ばっかりぃ……♡♡ ふあぁっ♡♡ やんッ……♡ あんっ♡♡ ああっ……♡♡」
すりすりすり……♡♡ ぴんぴんぴんぴんッッ♡♡ かりかりかりかり……♡♡
すっかり勃ちきった乳首が、迅牙の気まぐれで弾かれ、掻かれ続け、雪音の腰が自ずと浮き上がる。胸部を執拗に愛撫されているだけなのに、信じがたいことに果てが迫ってきていた。
冬の部族頭領の孫娘が、数多の男を房事で葬ってきたくノ一が、こんな一方的に翻弄されるなんて、悔しい!
気をやるまいと歯を食いしばったが、それも無駄な抵抗に過ぎず──。
「いっ……♡ ああッッ♡♡ あぁんっっっ♡♡ ぁぁあ────♡♡♡♡」
びくびくっ♡ びくびくっ♡ びくんびくんっ♡♡
少し強めに乳首を抓られた瞬間、雪音の頭の中で、いくつもの特大花火が打ち上がった。まだ触られてもいない膣が、勝手にぱくぱく♡♡ と蠢いて、止まらない。
その肉ビラの動きは実に淫らで艶めかしく、強烈に雄を惹きつける。
くりっ♡ くりっ……♡ ちゅぷんっ♡
迅牙は雪音の真っ赤に充血した陰核を二、三度撫で回すと、くぷぷぷぷ……と音を鳴らしながら陰唇を割って指を差し込んだ。
「はぁんっ、やぁんっ……♡♡」
果てたばかりなのに、再び快感に呼び起こされて、雪音は堪らず甘い声を上げた。
そこにすかさず、迅牙が指をくっと折り曲げ、追い打ちをかけてくる。
「えらい濡れようだな。俺の指にぎゅうぎゅう絡みついて……気持ちよくなってくれたみたいで、嬉しいよ」
「く……くどいっ、私は、お前ごときの技で気を違えたりするものか……あぁんっ……♡♡」
内外から蜜芽をぐりぐり♡ と刺激されて、雪音は白い肢体を敷布に泳がせた。
雪音のこの媚態を見て、誰がその主張を信じようか。青い瞳は溶けて潤み、頬には赤みがさして息も上がっているというのに。なにより、膣に納めた迅牙の指を搾り上げるような吸い付きは、雪音が女としての悦びを受けた証に他ならない。
そんなことはもう、迅牙もわかっていように。
「そうかい。どうやら、房中術の手解きを受けなきゃならないのは俺の方みたいだな」
あくまでも素知らぬふりを貫いて、迅牙は肉襞全体をなぞるように指を旋回させた。
最初はゆっくり、徐々に速く、またゆっくりと、絶妙な緩急をつけて雪音の中を攻め立てる。ぎちぎちに締め付けてくる柔らかい膣肉を無理やりほぐすように、指を二本、三本と増やし、引いては押し戻し、戻しては引き抜いてを繰り返す。
それでは飽き足らないのか、迅牙はぷっくりと膨れ上がった雪音の蕾にちゅ♡ と吸い付いた。先ほど乳首に施したように、下に唾液をたっぷり含ませ転がしながら、上唇と下唇で挟んで軽く押しつぶしている。
ちゅこっ♡ ちゅこっ♡ ちゅこっ♡♡ ぬぷんぬぷんっ♡♡ ちゅぷちゅぷっ♡♡ ちゅぷちゅぷちゅぷっ……♡♡♡ れろれろれろっ♡♡♡ ぢゅっ♡ ちゅくちゅくちゅく……♡♡♡
「ひあぁっ♡♡ ひぅんっっ♡♡ やめっ♡♡ んひっ……♡ ひんッッ♡♡♡ ひっ♡ いっ♡ んん───ッッッ♡♡♡」
ぴくんぴくんっ♡ びくびくッッ♡ びくびくッッ♡♡ びくんびくんっっ♡♡
ぞりぞりと容赦なく女の性感帯を擦られて、雪音は迅牙の頭を両手で抑えつけながら、二度目の絶頂を迎えた。自分を支える背骨がぐずぐずに溶けて、全身が抗いがたい陶酔感に浸されていく。
立て続けに果てへと連れて行かれ、雪音は潤んだ瞳から涙をぽろぽろと零した。それは、これまで快感を浴びせられて自然に落ちた涙でもあるし、房中術で二度も負かされたという屈辱から流れた涙でもあった。
「及第点ぐらいはもらえるかい?」
迅牙の顔は、にやけきっている。
雪音はきゅっと唇を噛み締め、迅牙から思いきり顔を背けた。
しかしそんな些細な反発はなんの意味を成さないと、すぐさま思い知らされることとなった。
ずしり、と。
下腹になにか重いものの乗る感触で、雪音の視線はそちらに奪われた。
雪音が口淫で吸い出したにもかかわず、先ほどにも増して重く、大きく屹立している迅牙の肉魔羅。
それは雪音の臍下辺りに置かれており、貫かれたら膣を難なく埋め尽くすであろうことは明らかだった。
軽く引き攣っているむっちりとした太ももを持ち上げられて、女陰が外気に晒される。まったくの無防備となった蜜壺に陰茎の先端が這わされ、ぐちゅり♡ という卑猥な音が閨の壁に跳ね返った。
迅牙は雪音の太ももを掴んだまま、じりじりと腰を沈めてくる。
「あ……♡ だめっ、い……入れないでっ……♡ そんなおっきい魔羅、は、入らない……♡ あっ♡ ぉっ……♡♡」
雪音はぶるりと身震いする。それは、このあとすぐに長大な肉棒に凌辱されることへの恐怖と、ある種の期待から引き起こされた震えだった。
「いやいや、あんたにとっては取るに足らぬような粗末なモンだろ? こんな俺でも女をヨがせられるよう、よろしくご教授頼むぜっ……♡」
ずぷぷぷぷっっ……♡♡♡
非常に緩慢な速度で、迅牙の陰茎が膣内に押し入ってきた。すべての肉襞がめくり上がって、雪音の弱いところを余すことなく摩擦する。
「────はおぉっ……♡♡♡ おぉっ♡ ぉぉおっ……♡♡♡」
ぴくんっ♡ ぴくんぴくんっ……♡♡
快感が血流に乗って一気に躰を駆け巡り、雪音は抗う術なく達した。肌が粟立つのと同時に、絶頂がぞわぞわと全身を蝕む。
雪音は白い喉元を迅牙に晒し、小刻みに震えていた。荒い呼吸に合わせて、たわわに実った乳房が艶めかしく上下する。下半身は左右に揺れて陰唇はひくついて魔羅を食み、これもまた淫らで妖しい魅力を放っていた。
「うぉっ、きつくてとろっとろ……♡ わかっちゃいたけど、ミミズ千匹に俵締め……♡♡ くそっ♡ ちんぽ持ってかれる♡♡ 早漏になっちまう♡♡♡ こんな綺麗な顔してるくせに、あんたなんつーえぐいまんこつけてんだよッ……♡♡♡」
迅牙は低く呻いて、雪音が動かぬよう腰をがっちりと掴んで固定した。自らも膣の入り口付近に留まって、決して動こうとはしない。
それでも膣内は苛烈に蠕動を繰り返しており、淫襞を迅牙の魔羅に絡め、精を吐き出させようと上下に扱いては圧搾を続けている。
「あー……だめだ、我慢できねぇ……♡」
迅牙は宣告と共に、無慈悲な律動を開始した。
ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんッッッ♡♡♡♡♡
「んぇえっ♡♡ あっ♡ あッ♡♡ あ"んっっ♡♡♡ うぅ、動かないでっ♡ 動いちゃだめぇ……♡♡ おねがっ……♡♡ あぁぁっ────♡♡」
細かく速く繰り出される乱れ突きに、雪音は堪らずやめるよう求めた。蕩かされる地点を狂暴な亀頭で何度も行き来されて、緩やかなアクメが止まらない。
間もなくして、迅牙の魔羅が膨れ上がる感覚が襲ってきた。
雪音にはわかる。
これは、男の銃身が暴発する予兆だ。
「あ"んッッ♡♡ だめぇっ♡♡ らめぇっ……♡♡♡ 膨らまないでっ、出しちゃだめっ……♡♡♡ もう、私のおまんこに気持ち良くなる精液出さないでっ……♡♡♡赤子っ……赤子ができちゃうっ……♡♡♡」
雪音は蕩けながらも切に訴えた。これ以上精液を──媚薬を追加されたら、もう正気を保っていられないだろう。それに、膣内射精などされたことがない。普段であれば、魔羅を膣で受け止めはしても、男が果てる前に息の根を止めている。
だがいまは、それが叶わない。何度となく媚薬を塗りたくられて、飲まされて。
雪音の躰はもう、快感を味わう以外のことは許されていなかった。
「はっ……気持ち良かったのか?」
迅牙は、半ば確信を得ているようだった。腰の律動もそのままに、目を細めて雪音を見つめている。その赤く色づいた可愛らしい唇から、真実を告げてくれと促すように。
「ほら、言って。俺の房中術は、俺のちんぽは気持ちいいかい?」
口調は優しいかもしれないが、迅牙の繰り出す抽挿は相変わらず過激だ。
それでいて乳房をやわやわと揉み、乳首を指でぴんぴんっ♡ と弾いてくるものだから、雪音の虚勢ももはや限界だった。
「ああぁっ……♡♡ きもちいぃっ、きもちいいのっ……♡♡ もうずっとイッてるのっっ♡♡ あなたの手も口も、お魔羅さまもッ……♡♡ ぜんぶきもちいいっ♡♡♡ ひぁッ♡ あっ♡ あ"んっっ♡♡」
雪音はついに陥落した。己の気持ちに素直になったせいなのか、感度が一段階上がった気すらする。膣をぎゅぅぅぅっ♡♡ と窄めて、雪音は身も心も快楽に堕ちたことを迅牙の巨根に知らしめた。
「……っあー、すっげぇ……♡♡ 出るっ、出すぞっ♡♡ あんたの極上まんこ、もっとトロトロにしてやるッッ♡♡♡」
ずちゅずちゅずちゅずちゅッッ♡♡ ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんッッッ♡♡♡ パンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
迅牙の腰つきが、これ以上ないまでに加速した。雪音の弱いところを的確に攻めるというよりは、ただただ精を吐き出したいという男の本能を剥き出しにした獣の腰遣いだった。
そんな男本位のまぐわいなのに、雪音はもう何度目になるかもわからぬ絶頂を迎えようとしている。
「あ"あぁんッッ♡♡ らめらめぇっっ♡♡ もうきもちよくしないでぇっっ……♡♡♡ もうわたしの負けでいいからぁ……♡ あっ♡ あっ♡ いっちゃうっ♡♡ やめへっ♡♡ もういじめないでぇ……♡♡ あひんッッ♡♡♡ いくぅぅぅぅぅ────ッッ♡♡♡♡♡」
びくびくっ♡♡ びくびくっっ♡♡ びくびくびくっっ♡♡♡ ビクンッビクンッッ♡♡♡
「……っ、締め付けえっぐ……♡ ぅぐっ、出る出るッッ……♡♡ イクぞッッ……♡♡♡」
ビュ────ッッ♡♡♡ ビュ────ッッ♡♡♡ びゅるっっ♡♡ びゅるるっ♡♡ ビュッ♡ ビュッ♡
雪音が果てるのと同時に、迅牙も果てた。
先ほど吐き出したのと同等の、いや、それ以上の量の精液を雪音の膣内に注いで、それでも腰はゆるゆると前後して止まらない。
「っん♡ おぉっ……♡♡ アクメまんこ、俺のちんぽにちゅうちゅう吸い付いてる♡ もっと注いで欲しいんだ? いいよ。あんたが壊れるぐらい、媚薬漬けにしてやる……♡」
迅牙の隠しようもない色気と嗜虐心に当てられ、雪音はぶるりと震え上がった。この期に及んでこの男は、まだ雪音を蹂躙するつもりなのだ。
恐るべき絶倫、恐るべき残虐性。
「やっ、やらぁ……♡♡ こわさないでっ……♡♡ お魔羅さま、こわいよぉ……♡♡♡ んぁっ……はぁんっ……♡♡♡」
すでに雪音は、度重なる媚薬の投与によって快楽の奈落に引きずれこまれ、躰をびくびく♡ びくびく♡ と跳ねさせるばかりだ。
しかし、優秀なくノ一の成せる一念だろうか。
雪音はぷるぷると震える身を捩って、四つん這いになった。そのままの態勢で、快楽に蝕まれていうことをきいてくれない躰に鞭を打ち、迅牙から逃れようと懸命に床を這う。
迅牙に敵わないことは、もう痛いほどに思い知った。もはや雪音に残された手段は、この閨から生きて脱出し、冬の部族の隠れ里に帰ることのみ。
だが当然、雪音の逃亡を迅牙が見逃すはずもなく──。
ぱっっっちゅんっっ♡♡♡♡♡
「あひんッッッ♡♡♡♡♡」
雪音が窓枠に手をかけたところで無情にも腰をがっちりと掴まれ、思いっきり引き戻された。雪音の桃尻を迎え入れるようにして、迅牙の肉杭が再び蜜壺を穿つ。
強烈な一撃だった。快楽地獄から這い上がったところを、再び容赦なく叩き落とすような衝撃に、振り絞ったなけなしの力も雲散して雪音の脳は過剰な快感で焼き切れた。
「んお"っ……♡ おっ♡ おぉっ♡♡ ぉっ……♡♡ おぉんっっ……♡♡♡ だっ……だれかたしゅけてぇ……♡♡♡」
「いやいや、恐れ入った。あれだけ俺の精液を受け止めておいて、まだ抵抗できるとはな。あんた、大した気概だ、よっ、と……♡」
ぬぷぬぷぬぷぬぷ……♡♡♡♡♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡♡ ぬろぉっ……ぬろぉ~~~っっ……♡♡♡ ずっっっっぷんっっっっ♡♡♡♡♡
迅牙の凶悪な魔羅が、なおも雪音の膣奥へと押し入ってくる。先ほどにも増して肉襞を亀頭と雁首で力強く、ゆっくりめくり上げながら、迅牙は雪音の子宮口にとうとう辿り着いた。その小さな入り口に鈴口を合わせ、二、三回ほど細かく口づけると、なにを思ったのか陰茎をずるぅっ……と引き抜いてから、一気に突き戻してきた。
凝縮した快感の塊を子宮の奥まで撃ち込まれた雪音は、窓枠を掴んだまま躰を沈め、ただただ喘ぐ。
「お"んっっ♡♡ ぉほっっ♡♡♡ ぉぉお"っっ……♡♡♡ 奥ッ、おぐぅぅ……♡♡♡ んおぉッ……♡♡♡ お魔羅さま、奥まで入ってぅぅっっ……♡♡♡ あっ♡ あっ♡ はぁんっっ♡♡」
「……っ♡ おいおい、あんた、数の子天井まで持ってんのか……♡♡ しかも俺のを根元までギッチリ咥えられるとか、どんだけ贅沢なまんこなんだよ……♡♡」
迅牙は感嘆と法悦の息を漏らし、雪音の両腰を持って己の方へ引きつけながら、腰をぐりぐりと押し付ける。柔尻と子宮口、その間近に構えるザラザラした箇所の感触に、迅牙はしばし酔い痴れているようだった。
張り出した肉棒の先端に子宮口を執拗に撫で回されて、雪音は迅牙に呼応するかのように腰をくねらせた。
「やぁんっ……♡♡♡ ぐりぐりしないでっ♡ 極太お魔羅さま抜いてぇっ……♡♡♡ んんっ……♡ あぁっ……はぁっ……♡♡」
「ああーっ……♡ イキっぱなしまんこ、堪んねぇ……♡ また精子上がってきた……♡ 次はあんたの一番奥に出してやるからな……♡」
ぱっちゅんっ♡ ぱっちゅん♡ ぱっちゅんっっ♡♡ ばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅばちゅッッ♡♡ パンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
迅牙は低く呻いて、一心不乱に魔羅の抽挿を繰り返す。
「ひんッッ♡♡♡ やらやらっ♡ やめへぇっ……♡ ぁあんッ♡♡ 知らなかったのぉ……♡♡♡ こんなに強いお魔羅さまがあるなんて、知らなかったのぉっっ♡♡ ゆるしてぇッッ♡♡♡ これ以上きもちよくなったら、しんじゃうぅぅ……♡♡♡ あぁんっっ♡♡ じゅこじゅこしゅごぉいっ……♡♡♡」
一突きごとに速くなっていく攻め立てに、雪音はくノ一の矜持も忘れて喘ぐ。ほんの少し前までは、自分に落とせない男などいないと思い上がっていたのに。
それがいまはどうだ。逞しすぎる雄の魔羅に雌の急所を立て続けに攻められて、全身を快感に蕩けさせているではないか。
ぬろぉぉっ……♡ ぱちゅんッ♡ ずろろろろろぉ~~……♡ ぱっっっっちゅんッ♡♡♡
「……んっ♡ あっ♡ ぁあっ♡♡ あッ♡ そこらめぇっ……♡ そこっ♡ 雁首でゆっくりなぞっちゃらめっ……♡♡ ふあぁっ……♡♡ きもちいいっ、きもちいいっっ……♡♡」
雪音の願いが聞き入れられた──のかどうかは定からぬところだが、迅牙が腰の速度を落とした。しかし完全に腰の律動を止める気もなければ、雪音の膣内から退出する気もないようだ。
亀の歩みのようなじれったい速度で襞を荒らされて、雪音は微弱な絶頂に呑まれ続けている。
そんな緩慢な抽挿を保ったまま、迅牙が雪音の背に覆いかぶさってきた。結合部はおろか、柔らかな臀部が迅牙の鼠径部に、華奢な背中が分厚い胸板に押しつぶされて、雪音はついに呼吸すらままならなくなった。
「……なぁ。あんた、冬の部族のくノ一なんだろう?」
上擦り、熱い吐息の混じった迅牙の声が、雪音の耳を掠める。雪音は話に耳を傾けてはいるがまともな返事ができず、なんとか目線だけを迅牙に向けた。
「春の部族には、“冬の部族の女を娶れば、向こう百年、一族の子孫繁栄・無病息災が約束される”っていう面白い伝承があってな。つまり、あんたは俺にとって縁起物なんだよ」
伝承、縁起物。言葉の意味は理解できても、快楽に溺れる雪音には迅牙の意図するところがわからない。
「嫁に来てくれよ。あんたのこと、大切にするからさ」
迅牙に甘く囁かれながら項に口を落とされて、雪音は思わず承諾しそうになっていた。
いまさっき出逢ったばかりなのに、お互いのことなどまだ何も知らないのに。
迅牙の申し出は、雪音が愛しいなどという誠実な想いから放たれたものではなく、あくまで一族の繁栄を見越してのものだ。
そんな自分本位の求婚など、受けられるものか。
「おっ……お嫁さんなんてっ……ひゃんっっ♡♡♡」
もちろん断ろうとした雪音であったが、その返事は迅牙の強い一突きで黙らされてしまった。それ以後も、返事は“応”しか許さないとでも言いたげに、迅牙は何度も何度も重い一撃を雪音の子宮口に見舞う。
ぬろろろぉぉぉっ……♡ ばちゅんッッ♡ ばっちゅんッ♡♡ ばっちゅんッッ♡♡♡
「あっ♡ あんっっ♡ んお"ぉっっ♡♡ あお"ぉっ……♡♡ やめへっ♡♡ お魔羅さま叩きつけないでっ♡♡ この極太お魔羅さまのお嫁さんになりたくなっちゃうからぁ……♡♡♡」
男を篭絡するはずの雪音が、いまではすっかり男根の虜になっていた。こんな肉欲に塗れた、人の道に悖る婚姻を受け入れるわけにはいかないのに、抗えない。あと少しなにかが違えば、もう戻ってこられないところまで堕ちてしまうであろう予感が、ひしひしと雪音を襲った。
「おう、なってくれ♡ あんた、バカ領主の首を取りに来たんだろ? あんたが嫁になってくれるなら、俺は任務を放棄するよ。なんなら、俺が領主を始末したっていい」
迅牙に提案されたところで、雪音はようやく思い出した。ここにはそもそもリンド領主の暗殺依頼を受けてやってきたのだと。
もう迅牙と戦うだけの力も気力も残っていない。いや、戦う意志すらなかった。
このままただ迅牙の慰み者になるぐらいなら、嫁入りして任務を全うするのも悪くないのではないか。
そんな雪音の考えを肯定するかのように、迅牙は子宮口を重点的に叩き始めた。この奥で子種を粛々と受け止め、嫁としての本分を果たしてくれないかと急かして迫る。
とんっ♡ とんっ♡ ゴッ♡ ゴツッッ♡♡♡ こつんこつんこつんっ……♡♡ トントントントントントンッッ……♡♡♡
「はやく。俺のものになるって言え」
「ふあぁっ♡♡ な……なりましゅぅ……♡ あっ……♡ あなたのおよめさんにっ、なりますっ……♡♡♡ あんッ♡ あっ♡ あ"っ♡ あぁんっっ♡♡♡」
雪音が完全に堕ちたことに気を良くしたのか、迅牙は激しく腰を振りたくりだした。魔羅が限界一杯まで膨張していく。玉袋で煮え滾る精子を解き放たんと、竿がびくびくと痙攣しては雪音の膣を圧迫する。
「ん"あっ♡ んん"っ♡♡ らめぇらめぇっ……♡♡ いくぅ……いぐぅっ♡♡♡」
「……あんた、名前は?」
射精寸前になって、迅牙はたったいま思いついたかのように雪音の名を尋ねてきた。雪音を娶ろうというのに、名前を聞いていなかったことにをいまになって思い出したのだろう。
淫欲に蕩ける雪音は、いまや迅牙の言われるがままに快感を受け入れ、応じることしかできないでいる。
「ゅ……ゆきね……あさぎり、ゆきね……まっしろい雪に、音で、雪音……はぉぉっっ♡♡♡」
「あぁ……あんた、冬の部族頭領の孫娘だったのか。道理で……」
なにか得心がいったのか、迅牙は独り言ちて喉で笑う。
あとはもう、無遠慮に突き崩すだけだった。
パンパンパンパンパンパンパンパンッッッ♡♡♡♡♡
「……っあー、イクッ……♡ 一番濃いの出るッ♡ イクイクイクッッ……♡♡ おらっ、孕めッ♡ 孕めッッ♡♡♡」
びゅ────ッッ♡♡♡ びゅ────ッッッッ♡♡♡ どびゅっっ♡♡ びゅくびゅくびゅくっ♡♡♡ びゅるるるるっ♡♡ ビュッ……♡ ビュッ……♡ ぴゅっ……♡♡♡
「あぁんッッ♡♡♡ ひっ……♡ お"ぉんッッ……♡♡♡ お"ッ♡♡ ぉ────~~……っっ♡♡♡」
雪音は盛大に弾けトんで、今度こそ気をやった。
まったく、この男の精力は底なしか。三度目の射精にして子宮を満たし尽くすには過多の精子を吐き出し、迅牙はようやく自ら雪音の中から退出していった。
陰茎を引き抜かれる際に、雁首で弱いところを擦り上げられても、媚薬に浸された躰は勝手に疼いて引き攣るばかりで、雪音の意志では指ひとつとして動かせなかった。
意識が、遠のいていく。
視界が暗転していく中で、雪音は迅牙の声を聞いた気がした。
「……ぁっ、はぁっ……ははっ、雪音か。あんたにぴったりの、いい名だな」
それからリンド領にガマガエルのような頭部が転がったと雪音が知るのは、三日も後になってからだった。
※:
遠くの方から聞こえてくる鶯の鳴き声で、雪音は目を覚ました。
躰を起こすと、掛布がぱさりと落ちた。よくよく見てみれば、雪音は素肌に男物の寝間着を一枚羽織っているだけの状態だった。この姿で、どこぞの部屋に寝かしつけられていたらしい。
冬の部族の里にある、自分の部屋ではない。領主を暗殺すべく侵入した閨でもない。まったく見覚えのない、質素だが広い部屋だ。
再度鶯が鳴いて、雪音の視線はそちらに流れた。
開け放たれた襖から、眩いばかりの桜の木々が見える。桜の他にも、赤、黄色、紫と、実に様々な色の花々が咲き誇っていた。
冬の部族の里では絶対に見られぬであろう、穏やかで長閑な春の光景。
「……きれい」
雪音が思わずそう呟いて庭の景観に目を奪われていると、どこぞからサァっと風が吹き抜けてきた。
「お気に召してくれたかい?」
いつの間にか、迅牙がすぐ傍に立っていた。出逢ったときと同じく、小憎らしい笑みを浮かべて。
見下ろしてくる迅牙の顔を目の当たりにして、雪音はすべてを悟った。
ここが春の部族の領域であること、自分が迅牙に抱き潰されたあと、ここに連れてこられたことを。
そして、迅牙の嫁になると承諾してしまったことも思い出した。
雪音は逃げ出そうとしたが躰がいうことを聞いてくれず、よろけて敷布に手をついた。
「無理はしない方がいいぜ。まだ毒が抜けきってないからさ」
迅牙は笑いながら、雪音の目線にまで腰を屈めて言った。
毒──つまりは、媚薬。
そう言われれば、どことなくまだ躰が熱い気がして、雪音は迅牙をキッと睨みつけた。毒を盛った張本人が、なにをいけしゃあしゃあと抜かしているのかと、怒りを込めて。
「そう邪険にしないでくれよ。あんたはこれから、この春の部族の里で暮らしていくんだぞ、俺の嫁として」
「あ……あんな、口約束……んっ♡」
雪音の反発は、迅牙の唇に絡め取られて跡形もなく消え去った。そのままの勢いで押し倒されて、迅牙の手が寝巻の隙間から忍び込んできた。
乳房を揉みしだかれ、舌を挿し込まれ、唾液を含まされ──躰が甘い痺れに支配されていく。
「んあぁっ……♡ ま、また……♡ あぁんっ♡ こんな日の高いうちからっ……♡♡」
「逃がさねえよ。やっと見つけた、理想的な嫁さんなんだからな」
迅牙は、雪音が初めて出逢う真剣な面持ちを見せたあと、忍び装束を脱ぎ捨てた。
春の庭に、春告げ鳥の鳴き声に紛れて女の嬌声が鳴り響く。
雪解けのときは、近い。
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