宝環戦士メダリオン ~変身ヒロインに対するえっちな展開が終わらない、ただひとつの原因~

蟹江ビタコ

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第二章

34、深い海、波と砂のその間に

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「こんな……エロいことするためだけに作られたようなものを着ておいて、なにが大丈夫なんだ」

 激昂しているのか、清十郎せいじゅうろうは眉間に深い皺を寄せ、目の前で横たわるしとやかであでやかなミラの媚態をジッと睨みつけている。

 普段においても少し素っ気ないと感じる清十郎の瞳が、いまは獰猛な肉食動物を彷彿させるほど鋭く、恐ろしい。
 ミラがまな板の鯉のように白い肉体をぷるぷると震わせていると、清十郎の左手がすっと伸びてきた。
 
 浅黒い手が、余剰の肉を寄せながらミラの下乳を揉み込む。豊満な乳房を包んでいたブラジャーは自然とずり上がり、ぷっくりと膨れたサーモンピンク色の乳首が、瞬く間に露となった。
 それは、生まれたての稚魚にも似ていた。身を守る鱗もなく無防備に大海で揺らぐ様は、肉食魚からすれば、さぞ美味しそうに見えたことだろう。
 そして、案の定。清十郎が食らいついた。

 唇でちゅっちゅっと細かに吸い付きながら、舌で味わうように転がしてくる。殺さぬよう歯で甘く嚙みながら、もう一匹の仔魚こざかなを指先で摘まんで、コリコリと撫で回している。

 まさに、捕食者が|か弱く愛らしい獲物をもてあそんでいるかのようだ。

「あッ、やんっ……あっ、あっ……!」

 官能的に食い荒らされているというのに、胸の辺りからまた快感が広がってきて、ミラは堪らず甘い息を吐き出してしまう。

「もっ、やめてっ……あんっ、あぁっ……美影みかげくん……」

「こんなに乳首をたせて」

 清十郎はミラの切ない呼びかけが耳に入っていないのか、咎めるような口調と共に乳首をなお苛め続ける。

 一方で、視線をミラの下腹部に移し、右手をショーツに伸ばしていた。ミラの腰で結ばれた紐を摘み、慎重に引っ張りほどいていく。
 はらり、と。
 薄布が剥がれ落ち、隠されていた秘宝が暴かれてしまった。

 桃色に染まった貝のような陰唇が、とろりとした愛液を垂れ流しながら、ぱくぱくとひくついている。

「こんなに濡らしておいて……!」

 柔らかい身のうごめきに誘われたのか、清十郎が僅かな隙間から中指と薬指を挿し込んできた。
 入り口を少し過ぎた浅いところを指の腹で擦られて、ミラの腰に甘美な痺れが走る。

「あっ、やっ……!」

 堪らず腰をくねらせて快感を逃がそうとするも、清十郎がそれを許してくれない。
 清十郎は、陰唇よりも鮮やかに色づいた真珠のような陰核を、親指で押し潰した。そのまま小刻みに擦って刺激を与えながら、挿し込んだ二本の指を膣内の奥へと滑らせる。
 
「ひぅッ、やっ……やだぁっ……! またっ、またイッちゃ……みかげくっ、やめてっ……あぁっ……あぁぁっ──……」

 性感帯を余すことなく愛でられ、ミラの嬌声がどんどん高く細くなっていった。
 その間も、清十郎の愛撫は止まらない。むしろ苛烈さを増して、ミラを快感の海へと追いやっていく。

「ああぁっ……だめっ……ひっ、イく、ぅ、うぅぅ────……!」

 ミラはからだが、びくんびくんと痙攣を起こして跳ね上がった。
 それでもミラの肉襞は、未だ快感を求めるように収縮している。清十郎の指をぎゅうぎゅうと締め付ける圧で、愛液がぴゅっぴゅっと潮を吹いた。

(……ぅ、あぁっ……もう、おかしくなる……)

 間違いなく性的絶頂オーガズムに達したのに。まだ足りない、まだ気持ち良くなりたいという欲求が心の奥底からとめどなく溢れて止まらない。
 わかっている。この喉の渇きにも似た性欲は、精液を注いでもらうまで治まることがないのだと。

 清十郎もそれを承知しているのか、ミラから指を引き抜いて、それに代わるものを──指の代替品にしては一回りも二回りも大きく太いものを、ズボンの中から取り出した。
 赤黒く、竿も血管もはち切れんばかりに膨張し、いまにも爆発してしまいそうな肉棒。尿道口から涎をだらりと垂らし、びくんびくんと上向きに跳ねる、ミラが思い浮かべていたものよりもずっとずっと狂暴で逞しい、雄の象徴。

「……俺を避けて、俺じゃない誰かに、精液を強請ねだるつもりだったのか」

 凶悪な陰茎とは裏腹に、清十郎は苦しそうな、哀しそうな面持ちをしていた。
 蜜口に亀頭を押し当てられて子宮がきゅうきゅうと反応したが、ミラは清十郎の顔から目を背けることができないでいる。
 
保刈ほかり

 清十郎の艶を帯びた低く切ない声が、ミラを呼ぶ。清十郎の憂いに惑う熱い瞳が、はやく答えろと促してくる。
 ミラは、胸が張り裂けそうだった。

(わ……私、今日一日、なにしてたっけ……)

 心臓が、うるさいぐらいに鳴り響いている。

(えっちな気分だったから、無意識のうちにこんな下着を選んだ……?)

 息が苦しい。

(精子くださいって、誰かを誘うために……?)

 わからない。ミラにはもう、なにも考えられない。

 ミラが答えられないのを、清十郎は肯定と捉えたようだった。

「……ふざけるな」

 清十郎は整った顔を鬼の形相に変貌させると、ミラの膝裏を掴んで直角に押し上げた。
 剥き出しとなった乙女の蜜口に、男の怒張が這わされ、そして。
 慈悲もなく、一気に押し込まれてしまった。

「っあ────」

 悦びを求める淫らな襞を容赦なく擦り上げられて、ミラは三度目の絶頂に至った。
 膣内が限界まで窄まり、亀頭、竿、根元をぴたりと覆う。快感を与えられた肉襞の一粒一粒は、精子も出して欲しいと主張するかのように、清十郎に纏わりついてしごく。

 そんな凄まじい蠕動ぜんどうをものともしていないのか、清十郎は一心不乱に腰を打ち続けていた。

「この数日間、俺がどんな心地で過ごしていたと思っているんだ」
「やっぱりお前に嫌われたんじゃないかって、不安で」
「今日だって、他の連中が保刈ほかりのことをエロいだの色っぽいだの言う度、気が気じゃなかった!」

 雁首を膣口まで引いては、そこからまた一気に奥まで突き崩す、清十郎のはげしい攻め立て。

 猛り狂った凶器に何度となく蹂躙じゅうりんされて、ミラは満ち引きを繰り返す絶頂の波に成すすべなく吞み込まれていった。
 頭の中に次々と湧き立つ快感の泡が、ぱちんぱちんと弾けて脳に波紋を起こす。

 果てても果てても、果てがこない。
 このままでは、本当に溺れ死んでしまう。

「み、かげくっ……美影くんっ、イくっ、イくの止まらない……死んじゃうっ……ひんじゃぅよぉ……! やめてぇ……もう気持ちよくしないでっ……! んあぁっ、やあぁ……」

「絶対に、誰にも渡さない。保刈は、俺のだ。俺の、俺の……!」

 清十郎は、譫言のようにミラへの執着を呟くばかりで、壊れたおもちゃのように抽送運動を繰り返している。

 快楽で満たされ沈みゆくミラには、もうわけがわからなかった。

 ──ミラのことが好きなわけではない。清十郎は、そう明言していたように思う。
 それなのになぜ、清十郎はこんなにも執拗に自分を求めてくるのだろうか。

 答えを見つけ出そうにも、陰茎で突かれるごとに思考がばらけて雲散していく。ミラにはもう、ただただ乱暴に与えられる快楽を受け入れ、怒り狂って凌辱の限りを尽くす暴君を眺める他なかった。
 そんな目くるめく奔流ほんりゅうの中で、ミラは幻を垣間見た。

 清十郎の顔は、紛うことなくメスに種付けしようとしているオスそのものなのに、どこか幼い影がちらついている。
 いまにも泣き出してしまいそうな、幼い子供の影。それは、どうしようもなく胸を締め付けられる痛ましい姿だった。

「み、みかげ、くん、美影くんっ……あぁっ……」

 気がつけばミラは。
 快楽に溺れながらも、幼い幻影を纏う清十郎を必死に抱きしめていた。

「あっ、んっ、あんっっ……美影くん、だけ、なのっ……えっちしたいって思ったの……美影くんだけ……」

 絶えず寄せ返す快楽に翻弄されながら、ミラは懸命に言葉を紡ぐ。
 これは、清十郎に伝えるべき言葉ではないのかもしれない。それでもミラは、ありのままの気持ちを無我夢中で叫んだ。

「……ひぅっ……やぁぁっ、あんッ、あっ……だ……誰でもいいだなんて、思ってない……美影くん以外の人とだなんて、やだぁ……!」

「……保刈!!」

 突如、清十郎は荒々しい腰つきもそのままに、ミラの唇に食らいついた。

 張り詰めた陰茎が、子宮の扉を激しく叩く。
 もっと奥まで受け入れて欲しい、ふたりの魂が溶けてひとつになるまで深く繋がりたいと、せっつくように。あるいは、清十郎を蔑ろにした罪に対する罰だと、責めるように。
 
 ミラは、未だ判然としない清十郎の思いを受け入れ、差し込まれる舌に舌をぎこちなく絡めた。
 清十郎と触れ合うすべての箇所が、どうしようもなく気持ちいい。

「んっ、ふぅっ……ふあぁっ……」

 また果てが迫ってきていた。それも、これまでにない凄まじい快感の波を伴って。
 次はもう、戻ってこられないかもしれない。ほんの一瞬、海の藻屑となって消える恐怖に駆られたミラは、清十郎をいっそう強く抱きしめた。

「あぁぁっ……あぁっっ、たすけっ……たすけてっ、みかげくっ……! ふぁっ……あぁ────」

 ぱちん、と。
 ミラは飛沫を散らしながら、爆ぜた。海の深い深いところまで墜ちて、肉体を、意識を拡散させていく。

 そんな散り散りになりゆくミラを繋ぎ止めるように、清十郎はその浅黒い全身で、白い肢体をマットに押し付けた。

「……ぐっ、イ、クッ……射精すぞ、保刈ッ……ナカで、ぜんぶ、受け止めろ……!」

 ビュ──ッ、ビュ──ッという、精液が勢いよく注がれる音が聞こえる。
 子宮に種が満ちるのを感じる。

「保刈、保刈……」

 清十郎の悲しげな呼び声がする中、ミラは静かに目を閉じた。
 
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