宝環戦士メダリオン ~変身ヒロインに対するえっちな展開が終わらない、ただひとつの原因~

蟹江ビタコ

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第二章

25、それはきっと、天国のような地獄

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 ミラの催促おねだりは、まるで幼子のようにつたない。

「おねがいします……もっと、美影みかげくんの精子、ください……」

 それなのに、この乱れよう、魔性ぶり。
 清らかさと厭らしさ。矛盾するはずのふたつの性質を、見事に調和させたミラの誘惑。これを前に引き下がる男など、いるはずがない。もし存在したとすれば、それは男にあらず。次代に己の遺伝子を伝える資格のない、ただの腰抜けだ。

 セルジュはミラの左脚に跨り、右脚を持ち上げて、膣の奥へと腰を押し進めていった。いわゆる松葉崩しの体位になったふたりは、寸分の隙間もなく密着する。
 その瞬間、ミラの膣内が再び活発に動き出した。肉棒の再訪を歓迎するかのように、肉襞は激しく蠕動ぜんどうし、子宮口は亀頭に吸い付いたまま離れない。

「……っう、ぅ……はっ、はぁっ……」

 魂ごと精液を吐き出しそうになるも、セルジュはなんとかギリギリのところでえきった。ミラの抱き心地に不満はないが、そう何度も挿入しただけで射精していては、男の沽券プライドに関わる。暴発だけは回避したいと、セルジュはしばし動くのを止め、ミラの最奥で留まった。

「……っあぁ、ふかぃ……ふぁっ……ぁあん……」

 ミラが実に気持ち良さそうに喘ぎ、腰をくねらせた。自らの感じる箇所スポットを探り当てるように、男の象徴をその秘所へと導くように。しなやかで滑らかな肢体は、白い蛇にも似て美しく、それでいてどうしようもなく淫らだった。

「んんっ……いやぁ……美影くん、うごいて……? いじわるしないで……」

 ミラはそう訴えるが、セルジュは決して意地が悪いわけではない。ただ、またすぐに吐精するような情けない様を、ミラに晒してしまうのが嫌なだけで。
 しかしセルジュは、打ち捨てられた仔犬のようなミラの目に見つめられて、あっさり陥落した。

 腰をゆっくりと引き、ゆっくりと押す。
 巨大な亀の歩みにも似た鈍重な律動で、ミラの聖域を隅から隅まで行き来する。すぐ果てるような強烈な快感はないが、陰茎全体はぞわぞわと粟立つような気持ち良さに包まれていた。
 若干の余裕も出てきた。セルジュは緩慢な速度を持続させたまま、ミラをじっくりと観察する。
 
「あっ……あっ……あっ、んっ……んぁっ……あッ、美影く、んっ……んぁっ……!」
 
 少しずつ角度を変えて抜き挿しし、膣壁のある一点を擦ったとき、ミラが高く鳴いて身悶えた。それと連動して、肉襞がきゅうきゅうと甘めにすぼまり、そこが気持ち良い場所なのだと懸命に伝えてくる。その素直な反応が、セルジュは嬉しくて堪らなかった。
 だが、ほんのりと温かくなったセルジュの胸に、再び暗雲が去来する。

「……保刈ほかり性行為こういうことをするのは、俺が初めてじゃないな……?」

 あまりに無粋な問いなのはわかっていたが、セルジュは聞かずにいられなかった。できることなら否定してほしい。自分に貫かれるまでは、純潔の乙女であったのだと、そういってほしい。
 そんな身勝手な期待を抱くセルジュであったが。
 ミラは、悲しげに眉をひそめて、セルジュから顔を背けた。

 その反応だけで充分だった。
 セルジュの陰茎が怒張で膨れ上がる。ミミズ腫れのようにビキビキと浮き出た血管の数々が、怒りの度合いを示していた。あまりにも肥大化しすぎて、ミラの中が狭く感じられる。

「……っあ、美影くんの、おっきくなってる……ふあぁっ……」

「……くそっ」

 セルジュはタカが外れたのか、気が狂ったかのように腰を前後し始めた。先ほど見つけたミラの弱いところただ一点を、執拗に狙う苛烈な攻め立て。ぱちゅんぱちゅんと、肉と肉のぶつかる卑猥な音が保健室に木霊する。

「んあっっ、そん、なっ、いきなりっ、はげしっ……あっ、あっ、あんっ! ま、待っ、て……そこだめっ……! イッちゃ……イッちゃうっ、美影くん、ああ────!!」

 ミラが盛大にトぶ様を見下ろしつつ、セルジュはフーッフーッと息を荒くし、なおも抽挿運動ピストンを続けた。それも、白濁した粘液を吐き出しながら。
 出せども出せども、止まらない。精子は憤怒の結晶と化して、無尽蔵に生まれてはセルジュの太い肉管から放出されていく。それとは逆に、陰茎からは快感信号が光の速さで脳に送られていった。
 昇天しては怒りで現実に引き戻され、その激昂をミラに吐き出しては高みに昇っていく。
 まるで、天国という名の地獄に落とされた気分だった。

「……お前が、こんなやつだとは思わなかった」

 セルジュの怒れる声に、落胆の色が見え隠れしている。
 ミラは、清楚で、慎ましく、優しい。セルジュが好ましいと思っていたミラの人物像は、単なる思い込みか妄想だったのだろうか。
 すでに男の味を知っていて、いまも快楽をひたすら貪ろうとしているなんて、ひどい裏切りだ。

「ち、ちがうのっ……あぁんっ……わたし、昔から、えっちなこと、たくさんされてきたけど……ひぐっ……」

 顔を両手で覆い隠しているミラの嬌声に、涙声が混じっていることに気づき、セルジュの心がにわかにざわつき始めた。

「美影くんに、こんなことさせてっ……んんっ……なんの説得力がないのも、わかってるけどっ……初めてだって、ついこの間、無理やり襲われて……ひぅっ……」

 ミラの言葉尻が弱くなっていくにつれ、セルジュの抽挿も自然と速度が落ちて緩やかになっていく。

 セルジュは白い手を取った。明るみになったミラは、涙に濡れている。その不逞の輩に襲われたことが、よほど悔しく、辛かったのだろう。
 これまでセルジュが貫いてきた女の中にも、こんな風に悔しさから泣き暮れる者はいた。そのときは、なんとも思わなかったのに。ミラの涙を見ていると、胸が掻き毟られているかのように痛む。

 セルジュはミラの頬を伝う涙を指で掬うと、手をそのまま下降させて、柔らかな乳房にそっと触れた。白とピンクの境目をゆっくりとなぞり、張り詰めた乳首をスリスリと指先で擦る。ミラをなじっていたのとは正反対の、優しい愛撫だった。

「……ひあぁっ、あっ……美影くん……?」

 ミラもセルジュの変わりように戸惑っているものの、気持ち良さそうに身を捩らせている。セルジュは抽挿も愛撫もそのままに、ミラに覆いかぶさった。そして耳元に口を寄せて、囁く。

「いいよ、好きなだけ気持ちよくなって」

 途端、ミラの膣が捩じれるように締まった。まるで肉棒が咀嚼そしゃくされているかのような感覚に、セルジュの陰嚢もキュッと引き締まる。

「……俺は、えろい保刈も、嫌いじゃない……」

 セルジュの怒りは、胸に込み上げてくる切ない思いにかき消され、いつしかミラに対する庇護欲に変化していた。
 いまはとにかく、心行くまでミラに気持ち良くなってほしい。処女を奪われた際の忌まわしい記憶が、笑い話になるくらいの快楽を味わってほしい。
 自分でもわけがわからないが、セルジュはミラを慈しみたい想いで胸がいっぱいだった。

 セルジュが胸の内を明かしたせいだろうか。ミラの声が、先ほどにも増して甘くまろやかになった。肉棒で突けば、指や唇、舌で愛撫すれば、ミラから過剰なぐらいの反応が返ってくる。

「あっ、ふあぁっ……あぁっ……きもちいぃ……美影くん、のっ、触るとこ……ぜんぶっ、きもちいぃ……! んっ、あっ……」

 その上、こんないじらしいことまで言ってくれるなんて。これで気を良くしない男はいない。もちろん、セルジュもその例に漏れず。

「……保刈、可愛い、可愛い……!」

 セルジュは無我夢中だった。ミラに好きなだけ気持ち良くなれ、などと豪語していたが、天に昇っている回数はセルジュの方が上かもしれない。
 ふたりは何度も体位を変え、何度も互いの肉体を貪りあっていた。それでもまだ足りなかった。セルジュがどれだけミラの中で果てようとも、飽きが来ない。いっそ時が止まって、このまま永遠に繋がっていられたら、どんなに幸福だろうか。

 そう、幸福だ。セルジュはいま、とても幸せだった。いままで通り過ぎてきた女たちはアクアも含めて、みな性欲の処理にはなれど、このような温かい気持ちを生み出しはしなかった。
 女を屈服させ、支配下に置く高揚感とは真逆のなにか。それが幸福を生み出す元になっているのだろう。
 その正体が、あと少しで掴めそうな気がしたとき、ミラが大きく震え上がった。
 
「み、かげくんっ……もっ、だ、めぇ……あっ、んっっ! あたま、おかしくなっちゃうよぉ……! ひぅっ、あッ……!」

「……ん」

 セルジュはミラの限界を悟って、後背位バックから手を回し、ぷるんぷるんと揺れる乳房を揉む。頂の乳首を摘めば、ミラは膣全体を窄めながら、徐々に前のめりになって、ベッドに伏した。セルジュも肉棒が抜けないよう追随し、その華奢で真っ白な肉体に覆いかぶさった。

 たわわな乳房にも負けず劣らずの柔らかい白尻が、陰茎の付け根に当たって痺れる。腰をぐりぐりと押しつければ、ミラがめいっぱい肉棒を締め付けてきた。
 セルジュはいますぐ吐精したい気持ちをぐっと堪え、ミラの耳をみながら掠れ声でなぶる。

「……っ保刈、一番奥に、全部、射精すぞ……!」

 ミラは突っ伏したまま声を押し殺して、こくこくと頷くだけだった。
 それを快諾と受け取り、セルジュは一気に起き上がって身体を反らした。突き出した腰に、鷲掴んだミラの柔尻が密着する。
 そして、ミラの子宮口ポルチオただ一点を目掛けて、抽挿を繰り返した。
 コリコリとした感触が精の吐き出し口に当たる度、セルジュの視界がチカチカと点滅する。

「……ぁっ……────ッッ!!」

 ミラは、声もないまま果ててしまった。膣が激しく痙攣し、収縮している。
 あとを追って、セルジュも子宮口に男根の先端を押し付け、トんだ。

「……ぐっ、保刈……!!」

 もう何回目になるかもわからぬ射精なのに、勢いは今日随一だったのではないだろうか。ビュ──ッッという、途切れることのない射精は、セルジュに長く快感を齎した。
 陶酔を肉体に残したままセルジュが陰茎を抜くと、ミラの蜜口からドロリと精液が垂れてきて、なんとも厭らしい。

 セルジュは、ぐったりとしているミラの頬を優しく撫でた。求められたとはいえ、ずいぶんと無理を強いてしまったようにも思う。申し訳なさを感じる一方で、無防備な姿を自分に晒すミラを前に、なにか安らぎのようなものも込み上げてきて、セルジュは知らずのうちに微笑んでいた。

「……んっ……」

 くぐもった声を発すると共に、ミラがのそりと起き上がる。

「……大丈夫か?」

 セルジュが声をかけると、ミラはしばらくぼーっとしていたのだが、次第に目を見開いて青褪めていった。
 小さな唇が、ぶるぶると震えている。

「……わ、私、なんてことを……ご、ごめんなさい、ごめんなさい……!」

 ミラは傍らに置いてあった自分のブレザーを乱暴に掴むと、それを着ることなく抱えて保健室を飛び出して行ってしまった。
 思ってもみなかった反応に、セルジュは呆気に取られて固まる。

 そして、重大なことを思い出した。

 ミラに、妊娠促進剤を飲ませていたことを。

 この夢のように幸せな情交は、薬の力によって作られた幻に過ぎなかったことを、セルジュはたったいま、思い知った。
 
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