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5050【ファルジーヌside⠀前世】
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「あの卑しい女と汚らしい店にわざわざ行かれたのですか!?」
放課後、教室の隅々に響き渡るほどのヒステリックな声でカレンは、俺に泣きそうな表情を向け入ってきた。
また、だ。
「落ち着け、カレン」
席を立ち側に寄る。
「何故ですか!?あのような怪しき出生の女と私がどちらが大切なのですか!?」
「比べるものじゃない。カレン落ち着いてくれ」
肩に手を置ことうした時、その手は跳ね除けられた。
「あの女に騙されているのです!ファルジーヌ様は気高き王族なのです!私こそが相応しいのです。即刻排除すべきです!!」
「違う」
お願いだ。話を聞いて欲しい。
「もう騙されるのはおやめ下さい!!」
違う。違うんだ。
「いいか、カレンよく聞いてくれ」
「あの、カレン様。私が無理に誘ったんです。私が、全部悪いんです」
不意に背後からオランヌが現れ、申し訳なさそうに言った。
その瞬間カレンの表情がまるで般若のように恐ろしい形相になった。
「そうよ!!あなたが現れてから全てがおかしくなった!!」
そう言って、カレンは、持っていた鞄を振りかざした。
「カレン。それは駄目だ!!」
だが、遅かった。
「うっ」
思い切りオランヌになげつけ、頬に鞄がぶつかりよろけ倒れた。
「オランヌ、大丈夫か?」
その口元に血が滲んでいた。
「ほら!その女が大事なのですわ!知性も教養も全くない顔だけの下品な女ですわ!!」
オランヌが口元を押さえ、カタカタと震え始めた。
やめてくれ、カレン。
「見てお分かりでしょ!?よけれるのに、ワザと当たったのですわ!!」
血走った眼で、大騒ぎする声は誰もを呼ぶ笛にしかならない。
周りが集まりだし、醜悪な表情をカレンに向けた。
それを感じとり、より顔を歪めた。
「何処までも邪魔ばかりするのですね!!ファルジーヌ様だけでなく、このように他の方々まで魅了し心を惑わすなど悪女ですわ!!」
「カレンもう辞めてくれ。オランヌは怪我をしている。早く治療をさせてやりたい」
もう、見たくない。
「何故その女ばかりを庇うのですか!?」
カレンの側に寄れば泣きそうな表情で1歩下がった。
「少し話をしよう」
「嫌でございます!!その女の事ばかり言うのでしょう!?」
憎しみの鋭い眼差しがオランヌに向けられる。
また、オランヌの話しだと勘違いしている。
俺は一度もオランヌの話しをした事もないし、するつもりは無いのに、何故分かってくれないんだ。
唇を噛み締め、カレンは踵を返して教室を出て行った。
その姿を追うものはいなかった。
「オランヌ、大丈夫か?すぐに医務室に行こう」
「うん。ありがとう」
腕に絡みつきながら立ち上がったかと思うと、手を繋ごうとしたから避けた。
馴れ馴れしいオランヌが正直苦手だ。人懐こく、元気な姿は見ていて気持ちいいが、そこに人と人の関わり合いには一線があって常識だと思ってしまう。
「でも、カレン様に誤解されてしまって、ファルジーヌ様には嫌な思いをさせちゃったね」
残念そうにオランヌが肩を落とした。
「何故、いつもこうなってしまうのか不思議だ」
医務室に向かって歩き出した。
「だよねぇ。私ちゃんと言ったんだよ。ファルジーヌ様がカレン様をお店に連れて行ってもいいか確認する為に、お試し、的な感じで行ったんだよ、とね。でも、カレン様ったら勝手に誤解するんだから」
「そうか。そう言ってくれていたのなら、もう一度俺からカレンに言ってみる」
「うーん。あの感情が激しくなってる状況はムリかもしんないなぁ。それよりも、デフィ様に頼んでみようよ。兄妹ならきっといい説明してくれるんじゃない?」
「それはいい考えだな。じゃあ俺から言っておこう」
「私が言っておくよ。今ね、貴族の事を色々教えて貰ってて、これから会う約束になってるの。だから、私が頼んでおくね。私がちゃんと説明できなかった責任もあるから」
「そうか。それなら頼んだ」
「うん。任せといて。ちゃーんと、カレン様の気持ちを動かすように一緒に考えるからね」
にっこりと微笑むオランヌに俺は頼む事にした。
だが、一向にカレンの状況は変わらなかった。益々悪くなり、周りからも牽制され悪女とし囁かれるようになった。
日に日にオランヌへの風当たりが厳しくなり、俺も庇う事が出来なくなっていた。
俺の知らないところで突っかかり、騒ぎが起き、それを誰かが知らせに来て、駆けつけるが、既に遅き場面ばかりになっていた。
先日のチャリティーバザーもそうだ。
何故こうなってしまったのだろうか。
カレンの言うように、オランヌが現れてからすれ違うようになった。
それまでは、冷静沈着の淑女と呼ばれた彼女が、変貌した。
美しく可憐だった姿が、今は嫉妬と憎悪に満ちたものへ変わってしまっていた。
カレン。
俺は、どうしたらいい?
どうしたら、俺の愛するカレンに戻ってくれるんだ。
放課後、教室の隅々に響き渡るほどのヒステリックな声でカレンは、俺に泣きそうな表情を向け入ってきた。
また、だ。
「落ち着け、カレン」
席を立ち側に寄る。
「何故ですか!?あのような怪しき出生の女と私がどちらが大切なのですか!?」
「比べるものじゃない。カレン落ち着いてくれ」
肩に手を置ことうした時、その手は跳ね除けられた。
「あの女に騙されているのです!ファルジーヌ様は気高き王族なのです!私こそが相応しいのです。即刻排除すべきです!!」
「違う」
お願いだ。話を聞いて欲しい。
「もう騙されるのはおやめ下さい!!」
違う。違うんだ。
「いいか、カレンよく聞いてくれ」
「あの、カレン様。私が無理に誘ったんです。私が、全部悪いんです」
不意に背後からオランヌが現れ、申し訳なさそうに言った。
その瞬間カレンの表情がまるで般若のように恐ろしい形相になった。
「そうよ!!あなたが現れてから全てがおかしくなった!!」
そう言って、カレンは、持っていた鞄を振りかざした。
「カレン。それは駄目だ!!」
だが、遅かった。
「うっ」
思い切りオランヌになげつけ、頬に鞄がぶつかりよろけ倒れた。
「オランヌ、大丈夫か?」
その口元に血が滲んでいた。
「ほら!その女が大事なのですわ!知性も教養も全くない顔だけの下品な女ですわ!!」
オランヌが口元を押さえ、カタカタと震え始めた。
やめてくれ、カレン。
「見てお分かりでしょ!?よけれるのに、ワザと当たったのですわ!!」
血走った眼で、大騒ぎする声は誰もを呼ぶ笛にしかならない。
周りが集まりだし、醜悪な表情をカレンに向けた。
それを感じとり、より顔を歪めた。
「何処までも邪魔ばかりするのですね!!ファルジーヌ様だけでなく、このように他の方々まで魅了し心を惑わすなど悪女ですわ!!」
「カレンもう辞めてくれ。オランヌは怪我をしている。早く治療をさせてやりたい」
もう、見たくない。
「何故その女ばかりを庇うのですか!?」
カレンの側に寄れば泣きそうな表情で1歩下がった。
「少し話をしよう」
「嫌でございます!!その女の事ばかり言うのでしょう!?」
憎しみの鋭い眼差しがオランヌに向けられる。
また、オランヌの話しだと勘違いしている。
俺は一度もオランヌの話しをした事もないし、するつもりは無いのに、何故分かってくれないんだ。
唇を噛み締め、カレンは踵を返して教室を出て行った。
その姿を追うものはいなかった。
「オランヌ、大丈夫か?すぐに医務室に行こう」
「うん。ありがとう」
腕に絡みつきながら立ち上がったかと思うと、手を繋ごうとしたから避けた。
馴れ馴れしいオランヌが正直苦手だ。人懐こく、元気な姿は見ていて気持ちいいが、そこに人と人の関わり合いには一線があって常識だと思ってしまう。
「でも、カレン様に誤解されてしまって、ファルジーヌ様には嫌な思いをさせちゃったね」
残念そうにオランヌが肩を落とした。
「何故、いつもこうなってしまうのか不思議だ」
医務室に向かって歩き出した。
「だよねぇ。私ちゃんと言ったんだよ。ファルジーヌ様がカレン様をお店に連れて行ってもいいか確認する為に、お試し、的な感じで行ったんだよ、とね。でも、カレン様ったら勝手に誤解するんだから」
「そうか。そう言ってくれていたのなら、もう一度俺からカレンに言ってみる」
「うーん。あの感情が激しくなってる状況はムリかもしんないなぁ。それよりも、デフィ様に頼んでみようよ。兄妹ならきっといい説明してくれるんじゃない?」
「それはいい考えだな。じゃあ俺から言っておこう」
「私が言っておくよ。今ね、貴族の事を色々教えて貰ってて、これから会う約束になってるの。だから、私が頼んでおくね。私がちゃんと説明できなかった責任もあるから」
「そうか。それなら頼んだ」
「うん。任せといて。ちゃーんと、カレン様の気持ちを動かすように一緒に考えるからね」
にっこりと微笑むオランヌに俺は頼む事にした。
だが、一向にカレンの状況は変わらなかった。益々悪くなり、周りからも牽制され悪女とし囁かれるようになった。
日に日にオランヌへの風当たりが厳しくなり、俺も庇う事が出来なくなっていた。
俺の知らないところで突っかかり、騒ぎが起き、それを誰かが知らせに来て、駆けつけるが、既に遅き場面ばかりになっていた。
先日のチャリティーバザーもそうだ。
何故こうなってしまったのだろうか。
カレンの言うように、オランヌが現れてからすれ違うようになった。
それまでは、冷静沈着の淑女と呼ばれた彼女が、変貌した。
美しく可憐だった姿が、今は嫉妬と憎悪に満ちたものへ変わってしまっていた。
カレン。
俺は、どうしたらいい?
どうしたら、俺の愛するカレンに戻ってくれるんだ。
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