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その後、イヌヤ様の模擬店に寄ると、先程の事を知らないイヌヤ様が無邪気に話しかけてくれる事にとてもほっとした。
お菓子を買い終わると、イヌヤ様も御一緒に他の模擬店を周りませんか、とシャイ様とアトラスが言うものだから、イヌヤ様は喜んでついてきた。
本当なら、模擬店の当番は決まってるのだから、離れちゃダメなのだけれど、どうもあまり当番は得意では無いようだ。
だって、
「ごめんなさいね。殿下とアトラス様にどうしてもと言われたから、席を外すわ」
と、全然残念そうに見えなくて、私達は笑ってしまった。
ちなみにドレース様は学園祭の役員だという事で、忙しいとのことだった。
「ルミナ、喉乾いただろ?」
相も変わらず、アトラスが私のお茶を冷ましてくれている。
「まあね」
あれだけ喚いて、あれだけ泣いたら喉が乾くのは、当たり前。
「でも、スッキリしましたわ。お話を聞いて最低な方々ですわね!」
「残念です。私も見たかったです」
つまんないです、と残念そうにイヌヤ様に言われて苦笑いしか出ない。
いやあ、あんな所見せるなんで恥ずかしいよ。
「それでいつ頃婚約するのですか?」
爆弾発言をシャイ様がにこやかに落としてきた。
一気に何故か私を皆が見た。
「・・・えーと・・・?」
横に座るアトラスを見ると、アトラスも意外だったようで顔が真っ赤になり、私を見た。
目が合い、なんだか恥ずかしくて下を向いてしまった。
さすがに私も気づいている。
アトラスが私を好きなのだ、と。
あれだけ、激甘で攻める言葉を言われたり、睦事のような事をされて、トドメに紋章が入ったドレスを貰っていた。
ドレスの事を説明した時点で、お父様もお母様もお兄様も、真剣な顔になった。
お兄様達は、
マジか、と言葉をなくし、それからはアトラスと婚約したらどうだ、と言わなくなった。
冗談で済まされる状況ではなくなった。
そんな中、今回の学園祭の招待状。
私は何も知らずに喜んだけど、それを家族に言うと、
本気だな。
と、お父様の呟きに、皆がほっとした様子になった。
そこで初めて知った。
異性が招待状を送るのは、婚約者か、これから婚約者になる人、だと。
でも、アトラスは何も言わない。
ただ側にいて、優しく甘やかしてくれる。
それがとても心地いい。
私の気持ちを最優先して、押し付けたくないんだろうな。
ずっと側にいるよ、とか
大切なルミナだから、とか
さっきの、身動き出来ないように、とか
言うくせに、最後まで言わない。
そういえば、
好き、
と言ってもらったことがない。
アトラスの事だから、言って重荷になりたくない、と思っているのかもしれない。
ふふっ。
仕方ないなあ。
いい所を私に残してくれているんだね。だったら、その優しさを頂くわ。
「待っているんですけど、中々言ってくれないんです」
恥ずかしかったが、しっかりと言葉にし、アトラスに微笑んだ。
「・・・え・・・?」
アトラスが、驚き私を見た。
見たことも無い驚いた顔だ。
「おやおや」
「あらあら」
「お兄様ったら」
そんな声が聞こえ、皆が穏やかに微笑んでくれた。
「・・・失態ですね」
アトラスが真っ赤な顔で、そんなことを真剣にいうから、皆が、勿論私も、大爆笑だった。
アトラスらしいよ。
夕方ドレース様と合流したら、
狡いです!!私も参加したかったです!!
とこっちも拗ねられて、何故かデアーヌ様が得意げに詳細を話してくれた。
その後楽しく話をし、他の模擬店や催し物を見て回った。
お菓子を買い終わると、イヌヤ様も御一緒に他の模擬店を周りませんか、とシャイ様とアトラスが言うものだから、イヌヤ様は喜んでついてきた。
本当なら、模擬店の当番は決まってるのだから、離れちゃダメなのだけれど、どうもあまり当番は得意では無いようだ。
だって、
「ごめんなさいね。殿下とアトラス様にどうしてもと言われたから、席を外すわ」
と、全然残念そうに見えなくて、私達は笑ってしまった。
ちなみにドレース様は学園祭の役員だという事で、忙しいとのことだった。
「ルミナ、喉乾いただろ?」
相も変わらず、アトラスが私のお茶を冷ましてくれている。
「まあね」
あれだけ喚いて、あれだけ泣いたら喉が乾くのは、当たり前。
「でも、スッキリしましたわ。お話を聞いて最低な方々ですわね!」
「残念です。私も見たかったです」
つまんないです、と残念そうにイヌヤ様に言われて苦笑いしか出ない。
いやあ、あんな所見せるなんで恥ずかしいよ。
「それでいつ頃婚約するのですか?」
爆弾発言をシャイ様がにこやかに落としてきた。
一気に何故か私を皆が見た。
「・・・えーと・・・?」
横に座るアトラスを見ると、アトラスも意外だったようで顔が真っ赤になり、私を見た。
目が合い、なんだか恥ずかしくて下を向いてしまった。
さすがに私も気づいている。
アトラスが私を好きなのだ、と。
あれだけ、激甘で攻める言葉を言われたり、睦事のような事をされて、トドメに紋章が入ったドレスを貰っていた。
ドレスの事を説明した時点で、お父様もお母様もお兄様も、真剣な顔になった。
お兄様達は、
マジか、と言葉をなくし、それからはアトラスと婚約したらどうだ、と言わなくなった。
冗談で済まされる状況ではなくなった。
そんな中、今回の学園祭の招待状。
私は何も知らずに喜んだけど、それを家族に言うと、
本気だな。
と、お父様の呟きに、皆がほっとした様子になった。
そこで初めて知った。
異性が招待状を送るのは、婚約者か、これから婚約者になる人、だと。
でも、アトラスは何も言わない。
ただ側にいて、優しく甘やかしてくれる。
それがとても心地いい。
私の気持ちを最優先して、押し付けたくないんだろうな。
ずっと側にいるよ、とか
大切なルミナだから、とか
さっきの、身動き出来ないように、とか
言うくせに、最後まで言わない。
そういえば、
好き、
と言ってもらったことがない。
アトラスの事だから、言って重荷になりたくない、と思っているのかもしれない。
ふふっ。
仕方ないなあ。
いい所を私に残してくれているんだね。だったら、その優しさを頂くわ。
「待っているんですけど、中々言ってくれないんです」
恥ずかしかったが、しっかりと言葉にし、アトラスに微笑んだ。
「・・・え・・・?」
アトラスが、驚き私を見た。
見たことも無い驚いた顔だ。
「おやおや」
「あらあら」
「お兄様ったら」
そんな声が聞こえ、皆が穏やかに微笑んでくれた。
「・・・失態ですね」
アトラスが真っ赤な顔で、そんなことを真剣にいうから、皆が、勿論私も、大爆笑だった。
アトラスらしいよ。
夕方ドレース様と合流したら、
狡いです!!私も参加したかったです!!
とこっちも拗ねられて、何故かデアーヌ様が得意げに詳細を話してくれた。
その後楽しく話をし、他の模擬店や催し物を見て回った。
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