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「シャイ様、ルミナ御義姉様ですわ。私の大事な方ですのよ。あ、お兄様にもとっても、ですけどね」
いつもの柔らかく可愛い声で、私を紹介してくれた。
「初めてお目にかかります。ルミナ・オルフェと申します」
「初めまして、と言うにはあなたの事はランレイから色々聞いていますよ。話の通り可愛らしい方ですね」
呼び捨てか。結構仲良いんだな。
にっこりと微笑みながら、有難い言葉に恥ずかしかった。
こんな間近で見た事がなかったが、シャイ様は少しふくよかでとても、穏やかな顔をしていた。
綺麗目の少し鋭い顔つきのランレイとはとてもお似合いに見えた。
「宜しかったらご一緒にお茶でも如何ですか?」
「これから少し模擬店を見に行く約束になっています。その後でもよろしいですか?」
シャイ様が誘って下さったのをアトラスが丁寧に答えてくれた。
「だったら私達も御一緒したいわ。ルミナ御義姉様宜しい?」
屈託なく聞いてくるランレイに、戸惑い直ぐに返事が出来ずに、アトラスを見た。
「シャイ様の事は気になさらなくても宜しいですわよ。私が行きたい所について来て下さいます」
私の表情でわかったのだろうが、そのあまりに気さくな物言いに驚いたが、シャイ様は全く機嫌を悪くすること無く微笑みながら、ランレイを見た。
「その通りです。ランレイが行きたいところに私はついて行きますの気になさらないで下さい」
ああ、と微笑ましく思った。
その物腰と、雰囲気が包み込むような温かさを感じた。シャイ様はランレイの事が好きなのだ、と。
「我が妹ながら、自由気ままで困るな。シャイ様が甘やかすからですよ」
「それは、お互い様ではありませんか?アトラス様の今のその様子に正直私は驚いていますよ」
何故かシャイ様が笑いながら私を見た。
「そう返されますか。では、お言葉に甘えましょうか。私達は、そこのケーキ販売している模擬店に寄るつもりなのです。そのあとはイヌヤ嬢の模擬店に行く予定です。外国から手に入れた小麦粉で作っているようです」
「あら、そんなものがあったの?」
「ルミナが見つけたんだ」
「それは行ってみないといけませんわね。イヌヤ様の模擬店には私達も寄る予定だったの。確かクッキーだったわね。お茶にちょうどいいわ。じゃあやはり、私達もご一緒しましょうよ。宜しいでしょ?」
「勿論だよ」
優しく笑むシャイ様を見ながら、やっぱりお似合いだな、と微笑ましかった。
だって、宜しいでしょ?だよ。宜しいですか?では無いもの。
不思議な感じだった。ここにいる人達は私が関わるべき人達でないのに、とても自然に溶け合い、私の存在が当たり前に受け入れられている。
なんだか、不思議だ。
「ルミナ」
いつもの優しい微笑みでアトラスが手を私に差し伸べてきた。
「迷子にならないわよ」
「私が繋ぎたいんだ」
私の右手を優しく包むと、そのまま手を繋いだ。
アトラスの手は大きさも硬さも私の手とは違うけれど、温かくて安心する。
「私も繋ぎたいわ。ずるいわお兄様」
そう言うと、私の腕に絡みついた。
その子供の我儘みたいなランレイの行動に、皆は笑い、アトラスとシャイ様は肩を竦めた。
「さあ、行きましょう御義姉様」
左手はアトラスと手を繋ぎ、右腕にはランレイの腕があり、とても穏やかな気持ちになった。
「皆様お揃いの所申し訳ありません」
そんな時、不意に背後から緊張気味の男性の声が聞こえた。
いつもの柔らかく可愛い声で、私を紹介してくれた。
「初めてお目にかかります。ルミナ・オルフェと申します」
「初めまして、と言うにはあなたの事はランレイから色々聞いていますよ。話の通り可愛らしい方ですね」
呼び捨てか。結構仲良いんだな。
にっこりと微笑みながら、有難い言葉に恥ずかしかった。
こんな間近で見た事がなかったが、シャイ様は少しふくよかでとても、穏やかな顔をしていた。
綺麗目の少し鋭い顔つきのランレイとはとてもお似合いに見えた。
「宜しかったらご一緒にお茶でも如何ですか?」
「これから少し模擬店を見に行く約束になっています。その後でもよろしいですか?」
シャイ様が誘って下さったのをアトラスが丁寧に答えてくれた。
「だったら私達も御一緒したいわ。ルミナ御義姉様宜しい?」
屈託なく聞いてくるランレイに、戸惑い直ぐに返事が出来ずに、アトラスを見た。
「シャイ様の事は気になさらなくても宜しいですわよ。私が行きたい所について来て下さいます」
私の表情でわかったのだろうが、そのあまりに気さくな物言いに驚いたが、シャイ様は全く機嫌を悪くすること無く微笑みながら、ランレイを見た。
「その通りです。ランレイが行きたいところに私はついて行きますの気になさらないで下さい」
ああ、と微笑ましく思った。
その物腰と、雰囲気が包み込むような温かさを感じた。シャイ様はランレイの事が好きなのだ、と。
「我が妹ながら、自由気ままで困るな。シャイ様が甘やかすからですよ」
「それは、お互い様ではありませんか?アトラス様の今のその様子に正直私は驚いていますよ」
何故かシャイ様が笑いながら私を見た。
「そう返されますか。では、お言葉に甘えましょうか。私達は、そこのケーキ販売している模擬店に寄るつもりなのです。そのあとはイヌヤ嬢の模擬店に行く予定です。外国から手に入れた小麦粉で作っているようです」
「あら、そんなものがあったの?」
「ルミナが見つけたんだ」
「それは行ってみないといけませんわね。イヌヤ様の模擬店には私達も寄る予定だったの。確かクッキーだったわね。お茶にちょうどいいわ。じゃあやはり、私達もご一緒しましょうよ。宜しいでしょ?」
「勿論だよ」
優しく笑むシャイ様を見ながら、やっぱりお似合いだな、と微笑ましかった。
だって、宜しいでしょ?だよ。宜しいですか?では無いもの。
不思議な感じだった。ここにいる人達は私が関わるべき人達でないのに、とても自然に溶け合い、私の存在が当たり前に受け入れられている。
なんだか、不思議だ。
「ルミナ」
いつもの優しい微笑みでアトラスが手を私に差し伸べてきた。
「迷子にならないわよ」
「私が繋ぎたいんだ」
私の右手を優しく包むと、そのまま手を繋いだ。
アトラスの手は大きさも硬さも私の手とは違うけれど、温かくて安心する。
「私も繋ぎたいわ。ずるいわお兄様」
そう言うと、私の腕に絡みついた。
その子供の我儘みたいなランレイの行動に、皆は笑い、アトラスとシャイ様は肩を竦めた。
「さあ、行きましょう御義姉様」
左手はアトラスと手を繋ぎ、右腕にはランレイの腕があり、とても穏やかな気持ちになった。
「皆様お揃いの所申し訳ありません」
そんな時、不意に背後から緊張気味の男性の声が聞こえた。
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