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45【グロッサム目線2⠀】
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おかしい。あんなに俺に甘えて、好きだ好きだと言っていたのに、急に冷たくなった。
いや、きっと気のせいだ。テスト前でイライラしているだけだ。
そう言い聞かせるが、不安と苛立ちはきえなかった。
急いで追いかけた。
「待てよ。それならデートしようぜ」
「それならいいわよ」
急に機嫌が良くなり、俺に鞄を渡してきた。
「アムル、あのさ・・・」
横にいるはずの恋人に声をかけ、ため息が出た。
さっきまで隣にいたから話かけたのに、もういない。後ろの方でショーウインドーに飾られている何かを見ている。
男の次は、買い物の方を俺よりも優先する。
勉強も大事だが、アムルと2人きりで会えると嬉しかったのに、自分勝手に動き、殆ど俺の話は聞かず好き勝手なことばかりしている。
暫く様子を見ていたが、店に入っていった。
信じられない。
俺が見ていたから良かったものの、気づかなければはぐれてしまっているんだ。
こんな事ルミナとは1度もなかった。ルミナはいつも俺の側から離れずついてきた。足が遅かったから俺の方が何度も待つ羽目になり、イライラしたが、それなりについてきた。
俺の行きたいところに文句を言わず着いてきた。
今考えれば、ルミナは自分から主張はしなかった。
ショーウィンドウで何かに気になるものがあっても、寄りたい、とも、見たい、とも、言わなかった。
それが当然だ。
女が自分の好みの物で着飾るとは、他の男の目を引きたいからだ。俺の気に入るものだけを着ていればいいんだ。
だが、アムルは逆だ。
自分の好みを主張し、それをまた、美しく着こなしていた。
しかし、その分他の男が寄ってくる。
俺が恋人なんだ。
そう、俺が婚約者になるんだ。
その俺を蔑ろにするとは、女としてなってない。ここはひとつ言っておかないといけない。
そう思い、アムルの入った店に入った。
帽子屋だった。
ガラステーブルに幾つものの帽子が並び、それを被り鏡で確認しながら店員と楽しく喋っていた。
「アムル」
「あ、グロッサム。どう?似合う?」
赤い羽と小さな宝石がちりばめられ、派手な物だったが、確かに似合っていた。
くるくると回りながら、色っぽく微笑む。
「似合うけど、少し派手じゃないか?こっちの方にしたらどうだ?」
青い、丸い形の落ち着いた帽子を指さした。
「ふふっ。やあね、趣味悪いわよ。それおばさんがよく被っている形だわ。本気で言っていないわよね」
馬鹿にしながら、店員と一緒にくすくすと笑った。
嫌な気分になる。
ルミナなら、そんな事絶対に言わない。
「そんな派手な帽子いつ被るんだ。学園の登校時に使えないだろ?」
「バカねえ。学園の登校時に被る訳ないでしょ。これは、お出かけの時に被るのよ」
「別に俺はそんな派手な帽子いらないけどな」
「あら、わかっているわ。グロッサムと出掛ける時じゃないわ。お父様と出掛ける時よ」
嘘だ。
父親と昼間に出掛けるとこなどアムルにはない。これがルミナなら、わかる。
家族ととても仲がいい。
「たまには俺がプレゼントするよ」
「買えないわよ、グロッサムには」
はっきりと分かる揶揄の声で、笑った。
「どういう意味だ!?」
はあ、と大袈裟にため息をつかれ、はい、と俺に帽子と一緒に値札を見せた。
「!!」
「買える?買えるなら買って欲しいけど・・・。その顔ではやはり無理という事ね」
だから、言ったのに。無駄な意地見せて恥ずかしいだけだわ、と聞こえるように店員にコソコソと喋りかけていた。
「これ、貰うわ。支払いはプリライ伯爵家に回してね。あと、他にも見たいから見せて貰える?出来たらもう少しいいものがいいわ」
そういうと次々と見始め、俺の事などそっちのけだった。
こんな事初めてだ。と言うよりもこれはデートなのか!?
だんだん腹が立ってきた。
「おい、アムル。今度にしろよ!今日はデートだろ!!」
「何よ・・・」
怒鳴る俺に、明らかに面倒臭そうにため息をつき、店員と話し出した。
「じゃあまた来るから、用意しといて下さる?まだ、高いのでもいいから、私に似合う素敵なものをね。ええ、大丈夫よ。プレゼントして戴くから」
プレゼント?
誰から?
俺ではないのは確かだ。
そう言うとさっさと1人で店を出ていった。
「おい、待てよ!!」
急いで追いかけて出ると、待ってはいたが俺が側に行くと軽く背中を叩き、腹立だたしく小声で言った。
「恥ずかしいことしないで!お金もないくせに口出ししないでよ。黙ってたってればいいのよ。行くわよ!」
「おい。まてよ!」
俺に目もくれずさっさと歩き、当然かのように今度は違う喫茶店入った。
入るとすぐに男達がアムルを見つけ声をかけてきた。
「俺を誘ってくれたら良かったのに」
「おい、僕だよ」
「あらあら、ごめんなさいね。次は誘うわ」
「どうせなら俺達と座らないか?奢るよ」
「うふふ、どうしようかなあ」
「まてよ!俺と来てるんだろ!!」
「何だよこいつ。何様のつもりだ?」
「待ってよ。今日はこの人なの。構ってあげないとうるさいのよね」
「子供だな」
こいつらの方が何なのだ!!明らかに俺と一緒に入ってきたのを見ていたのに、無視してアムルに声をかけた。
アムルもアムルだ。
何故無視しないんだ!!
「こっちですって。早く」
「・・・ああ」
席に座ると、アムルは他の男に手を振り、微笑んだりした。
「なあ」
「何?」
「前々から疑問に思っていたが、ルミナは本当に色んな男達と遊んでいたのか?」
これではアムルの方が酷いような気がする。
「そんな事私言ってないわよ」
はあ!?泣きながら言ってきただろ!!
待て、落ち着け。ここは店の中だ。
1呼吸した。
「いや、言ったじゃないか。アムルの友人も言っていだろ?」
「え?ああ、そうだったかしら?そう言えば、もう1人の幼なじみと仲がいいと言っていたわね。それじゃない?」
「そんな事初めてだ聞いたぞ。幼なじみ、と言うのは昔からいるのは知っているが、そんな仲ではなかったはずだ」
「もう、うるさいわね。何?そんな事気になるの?そんなにルミナが良ければ戻れば。私、気分悪いわ。帰るわ」
「え?ちょっとまてよ!」
さっさと帰ってしまった。
何なんだ、あれは。
どういう事だ?自分が言ったんだ。
そう言えば、とふと思い出す。ルミナがよくアムルから嫌がせを受けている、と誰からか聞いたような気がする。
女同士の勝手な思い込みだろう、と思っていたがそうじゃないのだろうか?
いや、きっと気のせいだ。テスト前でイライラしているだけだ。
そう言い聞かせるが、不安と苛立ちはきえなかった。
急いで追いかけた。
「待てよ。それならデートしようぜ」
「それならいいわよ」
急に機嫌が良くなり、俺に鞄を渡してきた。
「アムル、あのさ・・・」
横にいるはずの恋人に声をかけ、ため息が出た。
さっきまで隣にいたから話かけたのに、もういない。後ろの方でショーウインドーに飾られている何かを見ている。
男の次は、買い物の方を俺よりも優先する。
勉強も大事だが、アムルと2人きりで会えると嬉しかったのに、自分勝手に動き、殆ど俺の話は聞かず好き勝手なことばかりしている。
暫く様子を見ていたが、店に入っていった。
信じられない。
俺が見ていたから良かったものの、気づかなければはぐれてしまっているんだ。
こんな事ルミナとは1度もなかった。ルミナはいつも俺の側から離れずついてきた。足が遅かったから俺の方が何度も待つ羽目になり、イライラしたが、それなりについてきた。
俺の行きたいところに文句を言わず着いてきた。
今考えれば、ルミナは自分から主張はしなかった。
ショーウィンドウで何かに気になるものがあっても、寄りたい、とも、見たい、とも、言わなかった。
それが当然だ。
女が自分の好みの物で着飾るとは、他の男の目を引きたいからだ。俺の気に入るものだけを着ていればいいんだ。
だが、アムルは逆だ。
自分の好みを主張し、それをまた、美しく着こなしていた。
しかし、その分他の男が寄ってくる。
俺が恋人なんだ。
そう、俺が婚約者になるんだ。
その俺を蔑ろにするとは、女としてなってない。ここはひとつ言っておかないといけない。
そう思い、アムルの入った店に入った。
帽子屋だった。
ガラステーブルに幾つものの帽子が並び、それを被り鏡で確認しながら店員と楽しく喋っていた。
「アムル」
「あ、グロッサム。どう?似合う?」
赤い羽と小さな宝石がちりばめられ、派手な物だったが、確かに似合っていた。
くるくると回りながら、色っぽく微笑む。
「似合うけど、少し派手じゃないか?こっちの方にしたらどうだ?」
青い、丸い形の落ち着いた帽子を指さした。
「ふふっ。やあね、趣味悪いわよ。それおばさんがよく被っている形だわ。本気で言っていないわよね」
馬鹿にしながら、店員と一緒にくすくすと笑った。
嫌な気分になる。
ルミナなら、そんな事絶対に言わない。
「そんな派手な帽子いつ被るんだ。学園の登校時に使えないだろ?」
「バカねえ。学園の登校時に被る訳ないでしょ。これは、お出かけの時に被るのよ」
「別に俺はそんな派手な帽子いらないけどな」
「あら、わかっているわ。グロッサムと出掛ける時じゃないわ。お父様と出掛ける時よ」
嘘だ。
父親と昼間に出掛けるとこなどアムルにはない。これがルミナなら、わかる。
家族ととても仲がいい。
「たまには俺がプレゼントするよ」
「買えないわよ、グロッサムには」
はっきりと分かる揶揄の声で、笑った。
「どういう意味だ!?」
はあ、と大袈裟にため息をつかれ、はい、と俺に帽子と一緒に値札を見せた。
「!!」
「買える?買えるなら買って欲しいけど・・・。その顔ではやはり無理という事ね」
だから、言ったのに。無駄な意地見せて恥ずかしいだけだわ、と聞こえるように店員にコソコソと喋りかけていた。
「これ、貰うわ。支払いはプリライ伯爵家に回してね。あと、他にも見たいから見せて貰える?出来たらもう少しいいものがいいわ」
そういうと次々と見始め、俺の事などそっちのけだった。
こんな事初めてだ。と言うよりもこれはデートなのか!?
だんだん腹が立ってきた。
「おい、アムル。今度にしろよ!今日はデートだろ!!」
「何よ・・・」
怒鳴る俺に、明らかに面倒臭そうにため息をつき、店員と話し出した。
「じゃあまた来るから、用意しといて下さる?まだ、高いのでもいいから、私に似合う素敵なものをね。ええ、大丈夫よ。プレゼントして戴くから」
プレゼント?
誰から?
俺ではないのは確かだ。
そう言うとさっさと1人で店を出ていった。
「おい、待てよ!!」
急いで追いかけて出ると、待ってはいたが俺が側に行くと軽く背中を叩き、腹立だたしく小声で言った。
「恥ずかしいことしないで!お金もないくせに口出ししないでよ。黙ってたってればいいのよ。行くわよ!」
「おい。まてよ!」
俺に目もくれずさっさと歩き、当然かのように今度は違う喫茶店入った。
入るとすぐに男達がアムルを見つけ声をかけてきた。
「俺を誘ってくれたら良かったのに」
「おい、僕だよ」
「あらあら、ごめんなさいね。次は誘うわ」
「どうせなら俺達と座らないか?奢るよ」
「うふふ、どうしようかなあ」
「まてよ!俺と来てるんだろ!!」
「何だよこいつ。何様のつもりだ?」
「待ってよ。今日はこの人なの。構ってあげないとうるさいのよね」
「子供だな」
こいつらの方が何なのだ!!明らかに俺と一緒に入ってきたのを見ていたのに、無視してアムルに声をかけた。
アムルもアムルだ。
何故無視しないんだ!!
「こっちですって。早く」
「・・・ああ」
席に座ると、アムルは他の男に手を振り、微笑んだりした。
「なあ」
「何?」
「前々から疑問に思っていたが、ルミナは本当に色んな男達と遊んでいたのか?」
これではアムルの方が酷いような気がする。
「そんな事私言ってないわよ」
はあ!?泣きながら言ってきただろ!!
待て、落ち着け。ここは店の中だ。
1呼吸した。
「いや、言ったじゃないか。アムルの友人も言っていだろ?」
「え?ああ、そうだったかしら?そう言えば、もう1人の幼なじみと仲がいいと言っていたわね。それじゃない?」
「そんな事初めてだ聞いたぞ。幼なじみ、と言うのは昔からいるのは知っているが、そんな仲ではなかったはずだ」
「もう、うるさいわね。何?そんな事気になるの?そんなにルミナが良ければ戻れば。私、気分悪いわ。帰るわ」
「え?ちょっとまてよ!」
さっさと帰ってしまった。
何なんだ、あれは。
どういう事だ?自分が言ったんだ。
そう言えば、とふと思い出す。ルミナがよくアムルから嫌がせを受けている、と誰からか聞いたような気がする。
女同士の勝手な思い込みだろう、と思っていたがそうじゃないのだろうか?
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