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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード56-67
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インベントリ内 特設会場
ジンの記者会見形式の座談会が始まり、『エルフの里』がジンの芸能活動を許可する条件として、里からのミッションを受ける事だったと説明した。
その流れでジンには、相手のステータスを可視化出来るスキルを持っている事がわかった。
「ジン様には全てお見通し!?……あぁ見ないでぇ♡……でも見てぇ♡」
「どっちなの? 確かに諜報活動向きのスキルですね」チャ
ムムがモジモジしだすと、ニニがツッコミを入れた。
ざわつく傍聴者たちに、ジンは一人にターゲットを絞って言い放った。
「こんなスキル、 別に珍しいものじゃないでしょ? キミの方がよっぽどレアだと思うなぁ……柳生睦美クン?」
突然名指しされた睦美はピクっと反応し、少し冷静さを欠いていた。
「うっ……確かに。 【真贋】はまだ自分以外ではお目にかかった事はありませんからね……」
ジンにスラスラと言い当てられた睦美は、動揺しながらもジンのスキルが本当だと認めた。
今まで黙って聞いていた薫が、感心しながら呟いた。
「フム。 確かにそう言うスキル持ちとバトルした事あったな……そん時は【隠蔽】を使って騙したけどなっ♪」
「フン。 薫のステータスを見ようなんて、 随分愚かな事をしたものね」
「そいつは俺のフェイクを真に受けて墓穴掘ってたぜ♪」
「ざまぁ! 流石だぜアニキ!」
笑いながら親指を立てた薫を褒めちぎるリナたち。
「戦闘は物理攻撃だけじゃない。 情報も時には圧倒的な勝利条件たりえるんだ」
ジンは優しい眼差しで薫に言った。
「薫……お前はボクなんかよりもっと理不尽なミッションをこなしていたんだね?」
「そうかもしんねぇな……」
薫たちもまた、現在『流刑ドーム』に勾留されている身であり、ある時期謎の組織から無理難題を押し付けられていた。
「その代償として、 お前にはかけがえのない仲間が出来た。 良かったな」
「フッ、 まぁな」
ジンは薫の両腕に張り付いているリナと雪乃、その横にいる薫子と忍をゆっくりと見つめ、大きく頷いた。
「これからも、 薫の事を頼んだよ? 『カオルーズ・エンジェル』たち♪」グッ
ジンはそう言って4人に親指を立て、白い歯を見せた。
「頼まれたッス! 大アニキ!」フンッ
「ご安心下さいっ! 私が全身全霊・一意専心・不惜身命で万里一空・勇往邁進いたしますゆえ!」フンッ
両脇の二人が興奮気味にジンに向かって親指を立てた。
「しょうがないわね。 頼まれてあげる」
「私は静流を護る。 薫はそのついで」
少し照れている薫子と忍は、口をとんがらせてそっけない態度をとった。
そこでモモが会話に割り込んで来た。
「朔也兄様? 冒険譚はその位で、 そろそろこの状況になった経緯を話して下さい」
「そうだったね。 じゃあ話すよ……」
モモに促され、和やかだったジンの顔が少し険しくなった。
「難易度の高いミッションもそれなりにこなせる様になったある日、 ボクは招集で里に帰ったんだ……」
ジンは長机に両肘を突き、顔の前で手を組んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
会議室 ジン回想――
窓にブラインドが掛かっている六畳ほどの部屋。
窓際に机と椅子があり、中央にはテーブルと三人掛けのソファーが対である、いわゆる『社長室』のような配置である。
ダーク系のスーツに長い黒髪の精悍な顔つきの女性は、机に両肘を突き顔の前で手を組んでいる。
「急に招集なんて困るよ。 撮影のミーティング抜けるの大変なんだからね?」
明らかに不機嫌な朔也は、自分の担当官である綾瀬ハルヒに悪たれをついた。
そんな態度に、ハルヒは机をどんと叩き、激昂した。
「そんなもん知るか! お前、『仕事』を選べるような立場じゃないの、 わかってるのか?」
「ちぇーっ……」
そう言って口をとんがらせる朔也は、まだあどけなさが残っている感じだった。
興奮が多少収まったハルヒは、気を取り直して自慢げに朔也に言った。
「喜べ! お前にとっておきのミッションがあるんだ!」フンッ
「はいはい。 浮気調査ですか? それとも大統領暗殺?」
ドヤ顔のハルヒに、朔也はまた悪たれをついた。
「ふざけるな! そんな下賤なものではない。 もっと崇高なミッションだ」
ハルヒはまたブチ切れするかと思いきや、今度は何とか堪えたようだ。
「何なの? 崇高なミッションて……」
「聞いて驚けよ? それはな……おっと、その前に――」
ハルヒは何かを思い出し、机に上にドサッと何かを乱暴に置いた。
「は? 何これ?」
「ある筋から頼まれてな。 ざっと780人分はあるか……」
ハルヒが出したのは、うず高く積まれたサイン色紙だった。
「冗談じゃない! それにボクは基本サインは――」
「これがリストだ。 生写真も付けろよ? 本人確認とかうるさいんだ♪」
朔也が言い終わる前に、ハルヒはリストを押し付け、部屋を出て行こうとした。
「こんなふざけたミッションでボクを呼んだの? 嘘だろ?」
朔也がそんなハルヒに問いただすと、ハルヒは自慢げに答えた。
「当り前だ! それが終わったら地下の格納庫に来い。 お前に見せたいものがある」
そう言ってハルヒは、鼻歌混じりに部屋を出て行ってしまった。
数秒間呆気に取られていた朔也だったが、目の前の色紙を見て大きく溜息をついた。
朔也は怒りに任せ、手にしていたA4サイズのリストを机に叩きつけた。
「はぁ……何なんだよもう!」バンッ
その時、ドアが開いて一人の女性が部屋に入って来た。
「あのぉ……綾瀬さんに言われて来たんですけどぉ……って、 あ、 アナタ様は!?」
申し訳なさそうに入って来た女性は、朔也の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。
朔也は怒りに歪んだ顔を必死に戻し、その女性に営業スマイルを見せた。
「みっともない所を見せちゃったね? 今の、 見なかった事にしてくれるかなぁ?」パチッ
「きゃっふぅぅ~ん♡♡♡」
朔也のウィンクを浴び、女性はエビぞりになった。
ジンの記者会見形式の座談会が始まり、『エルフの里』がジンの芸能活動を許可する条件として、里からのミッションを受ける事だったと説明した。
その流れでジンには、相手のステータスを可視化出来るスキルを持っている事がわかった。
「ジン様には全てお見通し!?……あぁ見ないでぇ♡……でも見てぇ♡」
「どっちなの? 確かに諜報活動向きのスキルですね」チャ
ムムがモジモジしだすと、ニニがツッコミを入れた。
ざわつく傍聴者たちに、ジンは一人にターゲットを絞って言い放った。
「こんなスキル、 別に珍しいものじゃないでしょ? キミの方がよっぽどレアだと思うなぁ……柳生睦美クン?」
突然名指しされた睦美はピクっと反応し、少し冷静さを欠いていた。
「うっ……確かに。 【真贋】はまだ自分以外ではお目にかかった事はありませんからね……」
ジンにスラスラと言い当てられた睦美は、動揺しながらもジンのスキルが本当だと認めた。
今まで黙って聞いていた薫が、感心しながら呟いた。
「フム。 確かにそう言うスキル持ちとバトルした事あったな……そん時は【隠蔽】を使って騙したけどなっ♪」
「フン。 薫のステータスを見ようなんて、 随分愚かな事をしたものね」
「そいつは俺のフェイクを真に受けて墓穴掘ってたぜ♪」
「ざまぁ! 流石だぜアニキ!」
笑いながら親指を立てた薫を褒めちぎるリナたち。
「戦闘は物理攻撃だけじゃない。 情報も時には圧倒的な勝利条件たりえるんだ」
ジンは優しい眼差しで薫に言った。
「薫……お前はボクなんかよりもっと理不尽なミッションをこなしていたんだね?」
「そうかもしんねぇな……」
薫たちもまた、現在『流刑ドーム』に勾留されている身であり、ある時期謎の組織から無理難題を押し付けられていた。
「その代償として、 お前にはかけがえのない仲間が出来た。 良かったな」
「フッ、 まぁな」
ジンは薫の両腕に張り付いているリナと雪乃、その横にいる薫子と忍をゆっくりと見つめ、大きく頷いた。
「これからも、 薫の事を頼んだよ? 『カオルーズ・エンジェル』たち♪」グッ
ジンはそう言って4人に親指を立て、白い歯を見せた。
「頼まれたッス! 大アニキ!」フンッ
「ご安心下さいっ! 私が全身全霊・一意専心・不惜身命で万里一空・勇往邁進いたしますゆえ!」フンッ
両脇の二人が興奮気味にジンに向かって親指を立てた。
「しょうがないわね。 頼まれてあげる」
「私は静流を護る。 薫はそのついで」
少し照れている薫子と忍は、口をとんがらせてそっけない態度をとった。
そこでモモが会話に割り込んで来た。
「朔也兄様? 冒険譚はその位で、 そろそろこの状況になった経緯を話して下さい」
「そうだったね。 じゃあ話すよ……」
モモに促され、和やかだったジンの顔が少し険しくなった。
「難易度の高いミッションもそれなりにこなせる様になったある日、 ボクは招集で里に帰ったんだ……」
ジンは長机に両肘を突き、顔の前で手を組んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
会議室 ジン回想――
窓にブラインドが掛かっている六畳ほどの部屋。
窓際に机と椅子があり、中央にはテーブルと三人掛けのソファーが対である、いわゆる『社長室』のような配置である。
ダーク系のスーツに長い黒髪の精悍な顔つきの女性は、机に両肘を突き顔の前で手を組んでいる。
「急に招集なんて困るよ。 撮影のミーティング抜けるの大変なんだからね?」
明らかに不機嫌な朔也は、自分の担当官である綾瀬ハルヒに悪たれをついた。
そんな態度に、ハルヒは机をどんと叩き、激昂した。
「そんなもん知るか! お前、『仕事』を選べるような立場じゃないの、 わかってるのか?」
「ちぇーっ……」
そう言って口をとんがらせる朔也は、まだあどけなさが残っている感じだった。
興奮が多少収まったハルヒは、気を取り直して自慢げに朔也に言った。
「喜べ! お前にとっておきのミッションがあるんだ!」フンッ
「はいはい。 浮気調査ですか? それとも大統領暗殺?」
ドヤ顔のハルヒに、朔也はまた悪たれをついた。
「ふざけるな! そんな下賤なものではない。 もっと崇高なミッションだ」
ハルヒはまたブチ切れするかと思いきや、今度は何とか堪えたようだ。
「何なの? 崇高なミッションて……」
「聞いて驚けよ? それはな……おっと、その前に――」
ハルヒは何かを思い出し、机に上にドサッと何かを乱暴に置いた。
「は? 何これ?」
「ある筋から頼まれてな。 ざっと780人分はあるか……」
ハルヒが出したのは、うず高く積まれたサイン色紙だった。
「冗談じゃない! それにボクは基本サインは――」
「これがリストだ。 生写真も付けろよ? 本人確認とかうるさいんだ♪」
朔也が言い終わる前に、ハルヒはリストを押し付け、部屋を出て行こうとした。
「こんなふざけたミッションでボクを呼んだの? 嘘だろ?」
朔也がそんなハルヒに問いただすと、ハルヒは自慢げに答えた。
「当り前だ! それが終わったら地下の格納庫に来い。 お前に見せたいものがある」
そう言ってハルヒは、鼻歌混じりに部屋を出て行ってしまった。
数秒間呆気に取られていた朔也だったが、目の前の色紙を見て大きく溜息をついた。
朔也は怒りに任せ、手にしていたA4サイズのリストを机に叩きつけた。
「はぁ……何なんだよもう!」バンッ
その時、ドアが開いて一人の女性が部屋に入って来た。
「あのぉ……綾瀬さんに言われて来たんですけどぉ……って、 あ、 アナタ様は!?」
申し訳なさそうに入って来た女性は、朔也の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。
朔也は怒りに歪んだ顔を必死に戻し、その女性に営業スマイルを見せた。
「みっともない所を見せちゃったね? 今の、 見なかった事にしてくれるかなぁ?」パチッ
「きゃっふぅぅ~ん♡♡♡」
朔也のウィンクを浴び、女性はエビぞりになった。
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