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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-29

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宴会場『プロメテウス』の間

 アダルトチームはついにジルが『当たり』を引き当てた。

「アダルトチーム、決着が着きました! スタッフの皆さん、 撤収作業お願いします!」

 睦美がそう言うと、数人のスタッフが現れた。
 ある者はジンの身体に付着している海産物を皿に盛りつけ、またある者はジンに浴衣を着せた。

「神父様はあちらの特設席で、 お二人でお楽しみ下さい♪」

 睦美が指した場所は、既にリナと雪乃が二人の薫レプリカαとβに接待させていた。

「アニキィ……もう飲めねぇ」
「おいリナ! 俺の酌じゃ不満か? あぁ!?」
「と、とんでもねぇ……飲む、 飲ませてくれ……ウプ」 

 リナは薫αに無理矢理酒を飲まされ、ほぼ泥酔状態であった。

「熱い……熱いわ薫、 この火照りをアナタの胸で鎮めて下さらない?」
「あ? 何言ってんだお前? 酒が全然減ってねぇじゃねぇか?」
「だって私、 下戸なのよ? アナタも知ってるでしょ?」
「あのなぁ……ポン酒五合飲んでるお前が下戸? 笑わせんなよ?」
「ちいっ……こんな所まで再現する事無いでしょ? んもう……」

 雪乃は薫βにアプローチを仕掛けるが、オリジナル同様に袖にされてむくれている。
 暫しのフリーズから解けた他のアダルト勢は、諦めて自分の席に戻った。

「あぁ……ジン様ぁ……素敵です♡」
「浴衣姿も凛々しいわぁ♡」

 鳴海とジェニーがジンの浴衣姿に見惚れていた。
 浴衣姿で身なりを整えたジンは、いまだに呆けた顔のジルに手を差し出した。

「さぁ、 ボクたちの席に行こうか?」
「へ? うん……おっほぉ」

 ジルの手を取ったジンは、ジルをグイグイと引っ張りながら特設席に向かう。
 その様子を見て、羨望の眼差しの一同。

「うんうん。 やるわね静流。 声まで良くコピーしてる」
「確かに、 こんな感じだったわね……」

 静流が作ったジンの再現度の高さにモモは感心し、ネネは昔の記憶を探っている。 

「神父の奴! きぃ~!! 私のジン様を……許さん!」
「さぁて、 の見直すか……」

 カチュアは悔しがり、ハンカチを引きちぎらんばかりに噛んでいた。
 アマンダは手酌で日本酒をおちょこに注いでいた。
 今までの件を遠目に見ていたヤングチーム。

「フム……って事は、 コッチで『当たり』を引くと、あそこの空いてる『ラブラブ席』でダッシュ7様とイチャイチャ出来るって事ッスか?」 

 ヤス子が顎に手をやり、隅っこにある座卓を指さした。

「その様だな。 こちらも早くこんな茶番は終わらせて、『究極のイチャラブタイム』をゲットするのだ!」ビシッ

 ココナはそう言って、決めポーズを取った。

「さぁ! ヤングチームも佳境に入って来ました!」

 睦美がそう言ってヤングチームをあおった。
 主に残る海産物は、オデコに並んだホタテ、へそ付近の青物、そして股間の伊勢海老の周りに並んでいる海産物群であった。
 
「ツマにも反応したのよね? じゃあこの大葉もアリかしら?」

 澪はそう言って、右わき腹にあったツマを大葉でくるんで醤油皿に盛った。

「…………」

「くぅ~! ダメかぁ……」

 がっくりと肩を落とす澪を横目に、忍が目をギラつかせてどの部分を取るか吟味している。

「隣が珍味だったという事は……このトコブシで勝負!」

 トコブシとは小ぶりのアワビの様な貝である。
 忍はトコブシを皿になっている貝殻もろともひったくった。

「…………」

「コレでもない……おかしい」
 
 忍はトコブシの歯ごたえを楽しみながら、残った部位を観察している。

「ムフフフ……次は、 私ですね? ムフ」

 忍の隣で不気味に笑うのは、次第にあらわになっていくダッシュ7の体を舐めるような視線で見ているルリだった。

「フシュー、 眩し過ぎてどれを選べばよいか……よし! 目を閉じて取りましょう」

 そう言ってルリは、ゆっくりと目を閉じた。

「エロエロアザラク、アノクタラサンミャク……南無三!」

 何やら意味不明の呪文を唱えているルリ。

「見えた! えいっ!!」ビシッ

 ルリが狙いを定めて箸を出した先は、オデコに並んでいるホタテだった。
 すると、次の瞬間ダッシュ7の目がカッと開いた。

『何をする小娘! 悪戯が過ぎるぞ!?』ガバッ!

 ダッシュ7は上半身を起こし、ルリを叱った。

「ふ、 ふぐうぅぅぅ!?」



              ◆ ◆ ◆ ◆



宴会場『ダイダロス』の間

 ラチャナの作戦は順調に進行し、ほとんどの将校は妻が待つ部屋に戻って行った。
 残るは長テーブルに座る三船兄弟と、丸テーブルを連結させたものに式神コンパニオンを六人座らせ、その中央に座っている八郎だった。

「ガハハハ! これでカワイコちゃん部隊はほぼワシの独占じゃな♪」

「「「「うっふぅ~ん♡♡♡」」」

 六人の式神コンパニオンは、八郎にウィンクしてポーズを取った。
 そんな八郎を冷たい視線で見ているのは、三船兄弟であった。

「愚かな……年甲斐も無くはしゃぎおって……」
「ハチロー! キャサリンにチクっちゃうよ?」

 六郎は頭を抱え、ナナは憤慨していた。
 そんな野次はお構いなしに、八郎はある事に気付いた。

「おい、 そう言えばキャリーの奴はドコにおるんだ?」

 八郎は周囲を見回しながら式神に聞いた。

「や、 やだなぁ、 最初に言ったでしょ? アノ部隊は急遽別の招集があって特別便で基地に帰ったって」
「なぬ!? ワシは聞いておらんぞ?」
「そうだったっけ? とにかく、 そう言う事だからキャリーの部隊は来ないから」
「むぅ……おかしい。 ワシの招集を蹴ってまで優先する作戦とは何じゃ?」
「さぁね。 浮気はイケナイ事だって言う、 神様のメッセージかしらね♪」

 難しい顔で考え込んでいる八郎に、式神は嫌味を含んだ笑顔を八郎に向けた。
 少し離れた丸テーブルにいる静流たちは、周りの将校たちが次第にいなくなっていく為、目立ち始めた。

「マズいわね。 予想はしてたケド、ここまで手こずるとは……」
「へぇ。 ヤルじゃねぇかあの爺さん!」

 明らかに動揺し始めたラチャナ。薫はそれを面白がって見ている。

「ラチャナ、面倒な事になる前に手を打っときな」
「仕方ないわね……誰かに餌食になってもらうか……」

 ラチャナが悔しそうな顔でそう言った。
 その時、薫が悪戯を思いついた子供の用にニヤつきながらラチャナに言った。

「おい! あの爺さんを何とかすればイイのか? 面白れぇ、 いっちょやってみるか……」



              ◆ ◆ ◆ ◆



ククルス島 統合軍海上基地 保養施設 駐機場――

 特別にチャーターされた夜間便が、駐機場でフライトの合図を待っている。
 夜間便の中で『キューティー・デビルズ』の隊長、キャリー・フィッシャーマンは物思いにふけっていた。

「ママ? どうしたの?」
「真剣な顔しちゃって、 もしかして今日の作戦の件?」

 隊員たちに聞かれ、キャリーはふと我に返った。

「え? ああ……そう見えた?」

 煮え切らない態度のキャリーに、隊員たちは言った。

「何もしないでギャラも入ったし、 御の字だってママも言ってたじゃん?」
「爺さん連中に付き合わされる事が無くなったから、 アタシらはタナボタだけど」
「どうもイマイチなのよね。 不完全燃焼と言うか何と言うか……」

 隊員たちの言葉を聞き、何やら決心がついたキャリー。 

「よし決めた! アンタたち、 この後特別な用が無い子はアタシに付き合って頂戴! オゴるわ」
「え? 本当なのママ?」
「よく考えたら仕事は終わったんだし、急いで帰る必要もないでしょ?」

 そう言ったキャリーに、隊員たちは難色を示した。

「えぇ? 今日中に帰れるって言うから、 彼氏と会う約束しちゃったよ……」
「アタシは久しぶりに実家に帰るって連絡入れちゃった……」

 そんな隊員たちに、キャリーは微笑みながら言った。

「だから、 用の無い子だけでイイのよ。 折角のチャンス、 一番大事な人と聖夜を迎えなさい」


「「「ママ~!」」」


 隊長の計らいに、隊員たちは感動してうっすら涙を浮かべている。

「で? 用の無い子はアンタたち?」

 キャリーが見渡すと、明らかに浮いている二人の隊員に声をかけた。

「……どうも、 その様ですね、 ママ」
「寂しいもん同士、パァーッとやりましょうよ、 ママ♪」

 隊長に声をかけられたのは、ジョアンヌとカミラだった。
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