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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-17

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ベラドンナの間――

 忍は静流を探して、各部屋を探していた。

「ここは? いるワケないか……」

 部屋には澪、萌、みのり、レヴィがトランプで遊んでいた。
 澪がドア付近でキョロキョロしている忍に気付いた。

「静流クン? 来てないわよ?」
「静流様の居場所ですか? コッチが聞きたいですよぉ……」

 澪が溜息混じりにそう言うと、萌は口をとんがらせてぼやいた。

「そう言えば宴会って、 何時からでしたっけ?」
「今回もビンゴやるんですかね? レアものの静流様グッズ、 楽しみですぅ♡」
「レヴィ先輩!? ビンゴって何です? アタシ参加してないですぅ」

 レヴィとみのりがわいのわいのやっているのを見て、忍は溜息をついた。

「ココにもいないとなると……あそこか?」



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 レクリエーションルーム――

 ビーチやジャグジーで遊び倒した者たちは、昼食の後、レクリエーションルームに行っていた。
 レクリエーションルームには定番の卓球台を始め、マッサージチェアやカジノまである。
 カジノのバカラコーナーには、達也、薫、リナ、雪乃、蘭子、ヤス子、ナギサがいた。

「おいバンカー、早くめくれよ!」
「おう。 バンカー側は……『5』と……」

 蘭子に促され、達也が二枚目のカードを少しずつめくる。

 バカラとは、ディーラーが『バンカー』と『プレイヤー』に配った二枚のカードの合計が『9』に近い方が勝利するというシンプルなルールである。
 二枚のカードの合計が10以上の場合は一の位が有効となり、条件次第で3枚目のカードを引く事が出来る。
 通常はカードのやり取りは全てディーラーが行うが、場を盛り上げる為に『絞り』という形式を採用する所がある。
 それぞれの高額ベット者にその権利が与えられ、配られたカードを縦横で少しずつめくっていく。

「……『3』で『8』!!」

「おっ!? おいちょか? おいズラ! そっちは?」

 出た目に満足げのリナは、雪乃にドヤ顔で迫った。

「待って、 今やるから……プレイヤー側は、『2』と……」

 雪乃はリナに急かされ、二枚目のカードを少しずつめくる。

「これは……『7』! よっしゃあ!『9』! かぶよかぶ!!」 
「はぁ? んなワケあるか!」
「きゃあ~♡ お姉様素敵ぃ~♡」
「私たちの勝ちよぉー♪ ホ-ッホッホッホ」

 雪乃は勝ち誇り、共に賭けたナギサと勝利を分かち合っていた。
 リナは悔しそうにテーブルを叩いた。

「チッ、 もう一回勝負だ! ヤス! 次はお前が絞れ!」
「アネキ……いったん休んでクールダウンしましょうぜ?」
「俺、 次から雪乃お姉さまに付こうかな……」
「裏切んのかコラ? てめぇ!」

 いつの間にか、リナと雪乃の戦いになっていた。
 そんなやりとりを見ながら、薫は面白がっていた。

「プゥーッ! おめぇら最高! クックック」

 大笑いしている薫の前のチップは、いつの間にか山盛りになっていた。

「お強いですね? 素敵です♡」ポー

 ディーラーの女性が、仕事を忘れて薫をトロンとした目で見つめていた。

「おいディーラー! 次のカード配れよ!」
「はっ! し、 失礼致しましたっ……」

 山盛りのチップを横目に、達也が薫に耳打ちした。

「アニキ、 何か必勝法とかあるんスか?」
「んなもんねぇよ! しいて言えば……気まぐれだな♪」

 薫はそう言って白い歯を見せて笑った。 
 その後ろで、何やら呟いている者がいた。

「静流は?……ココにもいない……」

 カジノコーナーをキョロキョロしている忍の姿があった。



              ◆ ◆ ◆ ◆



ゼフィランサスの間――

 目ぼしい部屋を探し尽くした忍が、最後に辿り着いた部屋は、男性専用の部屋だった。

「普通に考えれば真っ先に思い付くよな……私、 バカ?」

 忍にとって、鍵を開ける事は息をするレベルに近かった。
 いとも簡単に解錠し、そろりそろりと部屋の中に入る忍。

「誰もいない……ん? 静流?」

 一見誰もいないかと思われたが、寝室にあるベッドの一つが使用中だった。
 忍は音を立てないように近づき、そおっと掛け布団をめくった。

「スゥ、 スゥ……むにゃ」

 布団を頭まで被って寝ていたのは、予想通り静流だった。

「……いた。 間違いない」

 忍は嬉しそうにベッドに潜り込んだ。
 熟睡している静流に、忍は顔を近づけて匂いを嗅いでいた。

「はぁ。 イイ匂い……もう我慢出来ない!」

 忍は誘惑に負け、静流に抱き付いた。

「見つけた。 しずるぅ~♡」むぎゅう
「う、 うぅ~ん……」

 抱き付かれて目が覚めた静流は、予想だにしない行動に出た。

「うわぁい♡ 忍ちゃぁーん♡」むぎゅう

 なんと、静流が自ら忍に抱き付いてきたのだ。
 通常はこの場合、抵抗するか、逆に無抵抗を貫いて成すがままになっている筈なのだが。

「忍ちゃん、 忍ちゃん……」スリスリ
「え? うそっ!? あひっ」

 静流は忍の浴衣をはだけて顔をうずめ、胸の感触をスポーツブラ越しに感じている。 
 いつもとは逆に、忍が静流にされるがままになっていた。
 胸元に頬を寄せていた静流が、忍の顔を上目遣いで見た。

「忍ちゃん、 もう少しこのままでいたい……ダメ?」
「全然ダメじゃない。 静流の好きにしてぇ……あふぅ」
「忍ちゃぁん♡」

 静流が胸元からへその方に顔をずらした。

「ココか? どや? ココがエエんかぁ?」
「そう。 もっと下、 もっと私をイジってぇ~♡」

 急に静流が関西地区のスケベなオッサン風の口調に変わった。

「あひっ……静流が……私をこんなに求めてる……嬉しいぃ♡」
「ココやな? すぐにヒィヒィ言わしたるわ」

 ゆっくりと静流の顔が忍のデリケートゾーンに接近した。

「めーっけたぁ♡」

 忍の興奮度はついに臨界点に達した。   

「うぎょ!? わきゃあぁぁん♡♡」ビクゥ 

 忍の身体がくの字に曲がって痙攣すると、そのまま気絶してしまった。
 暫く忍の身体に重なっていた静流は、むくっと起き上がった。

「う、うぅ~ん……あれ? 忍ちゃん?」

 だるそうに後頭部を掻いた静流は、隣で両目がハートマークになって気絶している忍を見ながら呟いた。

「もう……いつからココで寝てたんだろう? 油断も隙もあったもんじゃないな……」

 静流は軽く伸びをして、浴衣の乱れを直した。

「はぁーあ。 ちょっと寝たお陰か体が軽くなったかも。 さぁて、 露天風呂にでも入るか……」
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