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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-6

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保養施設 ロビー ラウンジ――

 エントランスでチェックインしたあと、部屋決めに少し揉めているので、中のラウンジで休憩を取る事にした静流たち。
 そこではメルクが質問攻めにあっていた。

「あの『ブラックボックス』を解析したんスか?」ハァハァ

 ココナの部隊『カラミティ・ロージーズ』のメカニック担当である大江万里が、メルクに興奮気味に質問している。

「何とかな。 その為にはメルクとリアを再び【同化】しなきゃならんかったがのう」
「直前の点検では何も無かったッス。 ひょっとしてサプライズを狙ったんスか?」
「ホッホッホ。 済まんかったな 驚いたじゃろう?」

 そんなメルクに、万里は親指を立てた。 

「はい! 最高のクリストマスプレゼントッス!」グッ!

 次に仏頂面の姉たちがメルクに質問をぶつけた。

「髪の色が桃色なのは何で? もしかして同族?」
「アンドロイドに親戚はいなかったと思うけど……」

 薫子の問いに、静流はツッコミを入れた。

「コヤツのマスターであるイガラシ・カズマの生態認証の関係じゃろうな」
「それって、壱号機のベースだったMTのOSに登録されていた人?」
「そうじゃな。 あの機体の本当のマスターじゃ」

 そんなやり取りをしていると、静流の首元で休止状態であったオシリスが不可視化を解いた。

「ちょっとアンタ! ホントにメルクリアなの!?」
「何じゃオシリスか。 見ての通りじゃ♪」

 そう言ってメルクは、桃色のサラサラヘアーを跳ね上げ、流し目でオシリスを見た。

「きぃーっ! 何なのもう! 羨まし過ぎ! ブラムちゃん! アンタは何も感じないわけ?」
 
 オシリスは悔しがり、隣で巨大パフェを頬張っているブラムに話題を振った。

「どうじゃブラム? 見よ! この煽情的な肢体を……うりうり♡」

 メルクは数種類のポーズを取り、ブラムを挑発した。

「んむ? イイんじゃない? 良かったねメルク。 シャクシャク……」

 パフェを食べる手を止めたブラムは、メルクをチラ見すると直ぐにパフェの方に集中した。

「花よりダンゴとはこの事か。 ふんっ、つまらんのう……」

 全くと言っていい程関心の無いブラムに、メルクは口をとんがらせて拗ねた。
 すると横から、色んな角度でメルクを舐めるように凝視する者が現れた。

「イイ。 イイやん! 最高や!」
「おおカナメ! お主ならわかってくれると思うとった!」

 カナメはメルクの手を取り、感触を確かめた。

「むほぉ! このスベスベもち肌感! オレが開発した『偽装肉体』をはるかに上回る触感やなぁ」
「カナメ、 乙女の肉体とは脱皮したてのドラゴンより脆弱なのだな?」
「そりゃそうやろ! 普通、 乙女が食われる事は先ず無いやろからな」
 
 カナメはメルクの手に頬ズリしながら、緩んだ顔でメルクに聞いた。 

「そんでメルクはん、 その体の使い道って『南極ZX号』のようなもんと違うか?」
「何じゃその例えは?」
「戦闘で受けるストレスを癒し、生存本能を回復させるんや。 そのカラダでな♡」 

 カナメはそう言って、メルクの二の腕を突っついた。

「まぁ言わんとしている事はわかる。 概ねそんな所だ」

 カナメはメルクの身体がダッチワイフ的な運用を目的としている事をいち早く見抜いたのだ。
 肯定的なメルクに、カナメは狂喜乱舞した。

「むっほぉ~っ!! 気に入った! お前さんのカラダを隅々まで調べたいんやが?」
「そのうちな。 とりあえずは温泉とアルコールじゃ。 早く連れて行け!」

 部屋割が決まったらしく、アマンダが部屋割の紙を持って来た。

「ふぅ。 やっとこさ決まったわ……」
「どれ? 見せて見せて!」

 アマンダから部屋割りの紙をひったくるように持って行ったのは、双子の工藤姉妹だった。

「フムフム。 今回は人数が多いから大部屋にされたんだね?」
「ま、 こんなもんかぁ……」

 二人の間に忍がひょこっと割り込んだ。

「静流の部屋はドコ? 教えて」

 そんな忍にツッコんだのは、ヨーコだった。

「忍さん? まさか夜這いとか考えてます?」
「何ですって!? そんなのアタシが許さない!」

 ヨーコの指摘に、薫子が反応した。

「そんなワケ……あるかも」
「「あるんかい!」」

 ヨーコと薫子は、忍に全力でツッコミを入れた。

「おいおい忍! 面倒事は御免だぜ?」

 隅っこで動向を伺っていた薫が、からかい半分に言った。

「薫は黙ってて」
「そうよ! 兄さんにはわからない、 女の闘いなの!」
「おおコワ。 静流、お前も大変だな?」
「そんな他人事みたいに……」
「ま、 何とかなるだろうよ。 俺たちがいるしな」

 薫が静流の肩をポンと叩いた。 

「チッ、 思わぬ障害……ぐぬぬ」

 そんな薫たちに、忍は舌打ちした。

「おめぇら、 ほんっとガキだな……」
「イベントの時くらい、 好きにさせとけばイイじゃない」

 リナがため息混じりに言うと、雪乃は無関心気味に言った。
 静流は安堵しながら達也に言った。

「でも助かるよ。今回は男部屋があるから」
「夏は無かったのか?」
「うん。 前は真琴と美千留が一緒の部屋だったから……」
「成程ね。 身内同然だから無難だしな……」

 美千留はともかく、真琴まで安全パイ扱いする達也。

「美千留ちゃん! 何で誘ってくれなかったのぉ?」
「あの時はゲストだったから、呼べる立場じゃなかったの!」

 カナ子が羨ましがっているのを、美千留はうっとおしそうにあしらった。
 みんながやいのやいのやっていると、アマンダは溜息混じりに言った。

「宿泊費並びに宴会の飲み代がタダなんだから、 贅沢言わないの!」

 前回の慰安旅行の時、静流に渡されたVIPカードを使用したのだろう。
 その代わり、静流が『ひと働き』してもらう条件付きではあるが。
 ちなみに部屋割りは、


ゼフィランサスの間 男4名

 ・五十嵐 静流
 ・五十嵐 薫
 ・土屋 達也
 ・ジルベール・ハクトー


マンドレイクの間 女9名

 ・アマンダ・キサラギ
 ・ニナ・イシカワ
 ・リリィ・有坂 
 ・レベッカ・フレンズ
 ・竜崎 ココナ
 ・村上 夏樹
 ・植木 瞳
 ・谷井 蛍
 ・大江 万里


ベラドンナの間 女9名

 ・榊原 郁
 ・村雨 佳乃
 ・永井 澪
 ・朝霧 萌
 ・工藤 美紀
 ・工藤 真紀
 ・白木 みのり
 ・宗方 ジェニー
 ・藤堂 ルリ


ジギタリスの間 女7名

 ・柳生 睦美
 ・東雲 楓花
 ・立川 要
 ・黒瀬 ミサ
 ・白井 ミサ
 ・板倉 こずえ
 ・早乙女 素子
 

ダチュラの間 女9名
 
 ・仁科 真琴 
 ・井川 シズム
 ・伊藤 朋子
 ・篠崎 イチカ
 ・加賀谷 蘭子
 ・片山 左京
 ・兵藤ヤス子
 ・五十嵐 美千留
 ・上條 カナ子


グロリオサの間 女9名

 ・五十嵐 モモ 
 ・木ノ実 ネネ
 ・日吉 ムム
 ・ニニ・フジサワ
 ・カチュア・キサラギ
 ・ヨーコ・C・ミナトノ
 ・アンナ・ミラーズ
 ・ナギサ・キャタピラ
 ・サラ・リーマン


コルチカムの間 女9名

 ・五十嵐 薫子
 ・篠田 サブリナ
 ・葛城 雪乃
 ・黒田 忍
 ・鳴海ショウコ
 ・荒井由真
 ・小松右京
 ・ブラム
 ・メルクリア

 といった具合であった。
 リリィがある事に気付き、仁奈に聞いた。  

「部屋の名前、 毒のある花の名前ばっかよね?」
「危険人物が泊まるからって事かしら?」
「さぁね。 さ、鍵を配るわよっ」

 アマンダが各部屋の鍵を持ち、一同に言った。

「みんな! 各部屋のリーダーが鍵の管理をする事。 イイわね?」

「「「了解!!」」」

 それぞれのリーダーがアマンダから鍵を受け取った。

「これより18:30時の宴会まで自由時間とします。 では解散!」 


「「「イェーイ!!」」」
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