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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード55-7
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国分尼寺魔導高等学校 2-B教室――
追試対象の達也・蘭子・イチカの三人に、仮契約させたロディから試験範囲の教科書及び参考書の内容を【ロード】させ、強制的に脳に焼き付けた。
その効果を見る為に、睦美が用意した問題を解かせた所、出来が芳しくなかったようだ。
原因に心当たりがある静流が、その理由を説明し始めた。
「みんなは今回の試験範囲だけじゃなくって、 それ以前の内容、 少なくとも物理が始まった高1から『学習』しないと理解出来ないんじゃないかと思うんです」
それを聞いた二人は、大きく頷いた。
「成程な。 腑に落ちたよ静流!」
「そうか。 それで記憶が歯抜けになっているのか……」
「え? ナニ? よくわかんないよぉ……」
イチカだけはまだわかっていないようだ。
睦美は今のやり取りを見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「概ね正解だ。 回答を見る限り、 最近新しく覚えた事柄は正解している。 しかし、 単純な計算問題が絡んだ途端、 不正解となるものが多い……何故だかわかるか?」
そう言って睦美は三人を見渡した。
達也と蘭子が、顎に手をやりながら睦美に聞いた。
「根本的な所が理解できていないって事ッスか?」
「1年からの積み重ねがあっての『学習』という事か?」
「左様。 チートにも基礎が必須なのだよ」
睦美はある事が気になり、達也たちに確認した。
「物理は数学と密接な関係にある。 時にお前たちは、 数学は赤ではなかったのだな?」
「ギリでしたがね。 ガキの頃そろばんやってたから、暗算は得意な方なもんで」
「カネに置き換えて考えると、不思議にわかるもんもあるんだよな……」
意外にも数学は何とか赤点を免れた二人だった。
「成程。 と言う事は、 一応数字に対する拒絶反応はないのだな? 篠崎以外は」ギロ
「ひいっ!?」
睦美がイチカを睨みつけると、イチカはびくっと肩をこわばらせた。
この時点でイチカが数学も赤点だった事が静流たちにバレた。
睦美は少し考えたあと、ロディに聞いた。
「ふむ。 ロディ殿、『学習』の幅を広げたいのだが、 いかがなものかな?」
「それは構いませんが、【ロード】する情報量が多いと脳に負担がかかりますので、 少しずつ時間をかけないといけません」
「追試まであと三日。 さて、 どうしたものかな……」
そう言って考え込んでしまった睦美に、静流が提案した。
「睦美先輩、 ロディに【分身】を作ってもらって、 各自で『睡眠学習』したらどうでしょう?」
「む? そんな事が出来るのかい? ロディ殿?」
「勿論、 可能です」
それを聞いた睦美は、各自の学習プランを即座に立案した。
「達也クンと蘭子クンには、中学生レベルの全教科と赤点対象科目を1年から叩き込む」
「ははぁ~」
達也たちは最早、睦美に全面的に従うしかなかった。
「そして……篠崎! お前はさらに、小学生レベルの『算数』を追加だ!」
「うぇぇ? 小学生ですかぁ?」
イチカの顔が歪み、涙目になっている。
「異論は認めない! 寝ているだけで頭が良くなるのだ。 文句はないだろう?」
「は、はい……わかりました」シュン
観念したイチカは、肩を落としてうなだれた。
達也がある事に気付き、静流に聞いた。
「おい静流、 今の話だと分身のロディ様をお持ち帰り出来るって事か?」
「うん? そうだけど?」
静流の答えを聞き、達也は急に興奮しだした。
「って事は、 アンナ様をウチにお招きして、昼夜を共に過ごすって事か?」
「何ぃぃ? 自分が希望した奴に変身してくれるのか?」
「ホント? うわぁい! やったぁ!」
達也がそう言うと、蘭子やイチカまで興奮しだした。
「睦美先輩、 あんな事言ってますけど?」
「ふむ。 自分達が置かれている状況を全く理解していないようだな……」
浮かれている三人を見て、静流と睦美は溜息をついた。
「変身はなし。 但し、 イイ点を採った暁には報酬として変身を許可する、 と言うのはどうだろう?」
「成程! それで行きましょう! イイよねみんな!」
静流は三人に賛成を促した。
「わかった。 それで手を打とう!」
「アタイも……それで構わないぜ」
「うんわかった! 頑張る!」
三人の方向性が決まり、睦美が立案した学習プランをロディに渡した。
「ここまでカバー出来れば、学年末まで何とかなるだろう」
そこで静流が待ったをかけた。
「睦美先輩、いっその事他の教科も『学習』しておけばイイのでは?」
「ふむ。 そうだな、 しかし……」
静流のように長期に渡って行った『睡眠学習』とは違い、短期間では脳に与える負担が大きい。
その事を伝えようとした時、達也たちから断って来た。
「それは勘弁してくれよ……あの感覚、気持ち悪くてよぉ……」
「確かに。 やるんならもう少し慣れてからで頼むわ……」
「アタシは……出来るだけ詰め込みたい、 かな?」
一番成績が悪いイチカは、この隙に遅れを取り戻そうと企んでいるようだ。
「ロディ殿、 基本メニューはこれで、オプションは各自相談して決める事としようか?」
「はい。 承知しました。 では【分身】します」シュン
そう言うとロディは、いとも簡単に分身を作り出した。
分身したロディは、手のひらサイズの子供の豹だった。
三体の分身が、それぞれの主人に飛びついた。
「うぉ? ネコ? じゃないのか?」
「うわぁ、ちっちゃ……」
「カ、 カワイイ~」
イチカが子ロディを撫でながら子ロディに聞いた。
「ねぇねぇ、キミは何が好きなの? ミルク?」
「エサは必要ありません」
「ゲッ!? 可愛くない……」
子ロディの口調は親ロディそのものだった。
「この子からこのダンディボイス、 ギャップがスゴいな」
「もうちょっと何とかなんないのか? 気になってしょうがない」
二人からもクレームが付いたので、ロディが音質を調整した。
「じゃあ、 こんな感じでどうかニゃ♪」
調整した声は、どこかで聞いたような声だった。
「うんうん。 この方がイイな」
「バッチリ! 違和感なし!」
「この声、ロコ助に似てるな……」
蘭子はそれに気づいたようだ。
静流が吹き出しながらロディにツッコミを入れた。
「フフ。 だったら最初からロコ助をコピーすればよかったんじゃないの?」
「確かに。 おっしゃる通りです」
声も決まり、それぞれのカバンから顔を出している子ロディ。
それを見た親ロディは、改めて三人に告げた。
「それでは皆様、『学習』についてはこの子たちに全てお任せ下さい」
「「「はぁーい!」」」
話がまとまった所で、睦美が静流に言った。
「一応報告しておくが、静流キュンは文句ナシの満点だったぞ?」
「「「うぇ~!?」」」
睦美の報告に、追試組の三人は驚愕の表情を浮かべた。
追試対象の達也・蘭子・イチカの三人に、仮契約させたロディから試験範囲の教科書及び参考書の内容を【ロード】させ、強制的に脳に焼き付けた。
その効果を見る為に、睦美が用意した問題を解かせた所、出来が芳しくなかったようだ。
原因に心当たりがある静流が、その理由を説明し始めた。
「みんなは今回の試験範囲だけじゃなくって、 それ以前の内容、 少なくとも物理が始まった高1から『学習』しないと理解出来ないんじゃないかと思うんです」
それを聞いた二人は、大きく頷いた。
「成程な。 腑に落ちたよ静流!」
「そうか。 それで記憶が歯抜けになっているのか……」
「え? ナニ? よくわかんないよぉ……」
イチカだけはまだわかっていないようだ。
睦美は今のやり取りを見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「概ね正解だ。 回答を見る限り、 最近新しく覚えた事柄は正解している。 しかし、 単純な計算問題が絡んだ途端、 不正解となるものが多い……何故だかわかるか?」
そう言って睦美は三人を見渡した。
達也と蘭子が、顎に手をやりながら睦美に聞いた。
「根本的な所が理解できていないって事ッスか?」
「1年からの積み重ねがあっての『学習』という事か?」
「左様。 チートにも基礎が必須なのだよ」
睦美はある事が気になり、達也たちに確認した。
「物理は数学と密接な関係にある。 時にお前たちは、 数学は赤ではなかったのだな?」
「ギリでしたがね。 ガキの頃そろばんやってたから、暗算は得意な方なもんで」
「カネに置き換えて考えると、不思議にわかるもんもあるんだよな……」
意外にも数学は何とか赤点を免れた二人だった。
「成程。 と言う事は、 一応数字に対する拒絶反応はないのだな? 篠崎以外は」ギロ
「ひいっ!?」
睦美がイチカを睨みつけると、イチカはびくっと肩をこわばらせた。
この時点でイチカが数学も赤点だった事が静流たちにバレた。
睦美は少し考えたあと、ロディに聞いた。
「ふむ。 ロディ殿、『学習』の幅を広げたいのだが、 いかがなものかな?」
「それは構いませんが、【ロード】する情報量が多いと脳に負担がかかりますので、 少しずつ時間をかけないといけません」
「追試まであと三日。 さて、 どうしたものかな……」
そう言って考え込んでしまった睦美に、静流が提案した。
「睦美先輩、 ロディに【分身】を作ってもらって、 各自で『睡眠学習』したらどうでしょう?」
「む? そんな事が出来るのかい? ロディ殿?」
「勿論、 可能です」
それを聞いた睦美は、各自の学習プランを即座に立案した。
「達也クンと蘭子クンには、中学生レベルの全教科と赤点対象科目を1年から叩き込む」
「ははぁ~」
達也たちは最早、睦美に全面的に従うしかなかった。
「そして……篠崎! お前はさらに、小学生レベルの『算数』を追加だ!」
「うぇぇ? 小学生ですかぁ?」
イチカの顔が歪み、涙目になっている。
「異論は認めない! 寝ているだけで頭が良くなるのだ。 文句はないだろう?」
「は、はい……わかりました」シュン
観念したイチカは、肩を落としてうなだれた。
達也がある事に気付き、静流に聞いた。
「おい静流、 今の話だと分身のロディ様をお持ち帰り出来るって事か?」
「うん? そうだけど?」
静流の答えを聞き、達也は急に興奮しだした。
「って事は、 アンナ様をウチにお招きして、昼夜を共に過ごすって事か?」
「何ぃぃ? 自分が希望した奴に変身してくれるのか?」
「ホント? うわぁい! やったぁ!」
達也がそう言うと、蘭子やイチカまで興奮しだした。
「睦美先輩、 あんな事言ってますけど?」
「ふむ。 自分達が置かれている状況を全く理解していないようだな……」
浮かれている三人を見て、静流と睦美は溜息をついた。
「変身はなし。 但し、 イイ点を採った暁には報酬として変身を許可する、 と言うのはどうだろう?」
「成程! それで行きましょう! イイよねみんな!」
静流は三人に賛成を促した。
「わかった。 それで手を打とう!」
「アタイも……それで構わないぜ」
「うんわかった! 頑張る!」
三人の方向性が決まり、睦美が立案した学習プランをロディに渡した。
「ここまでカバー出来れば、学年末まで何とかなるだろう」
そこで静流が待ったをかけた。
「睦美先輩、いっその事他の教科も『学習』しておけばイイのでは?」
「ふむ。 そうだな、 しかし……」
静流のように長期に渡って行った『睡眠学習』とは違い、短期間では脳に与える負担が大きい。
その事を伝えようとした時、達也たちから断って来た。
「それは勘弁してくれよ……あの感覚、気持ち悪くてよぉ……」
「確かに。 やるんならもう少し慣れてからで頼むわ……」
「アタシは……出来るだけ詰め込みたい、 かな?」
一番成績が悪いイチカは、この隙に遅れを取り戻そうと企んでいるようだ。
「ロディ殿、 基本メニューはこれで、オプションは各自相談して決める事としようか?」
「はい。 承知しました。 では【分身】します」シュン
そう言うとロディは、いとも簡単に分身を作り出した。
分身したロディは、手のひらサイズの子供の豹だった。
三体の分身が、それぞれの主人に飛びついた。
「うぉ? ネコ? じゃないのか?」
「うわぁ、ちっちゃ……」
「カ、 カワイイ~」
イチカが子ロディを撫でながら子ロディに聞いた。
「ねぇねぇ、キミは何が好きなの? ミルク?」
「エサは必要ありません」
「ゲッ!? 可愛くない……」
子ロディの口調は親ロディそのものだった。
「この子からこのダンディボイス、 ギャップがスゴいな」
「もうちょっと何とかなんないのか? 気になってしょうがない」
二人からもクレームが付いたので、ロディが音質を調整した。
「じゃあ、 こんな感じでどうかニゃ♪」
調整した声は、どこかで聞いたような声だった。
「うんうん。 この方がイイな」
「バッチリ! 違和感なし!」
「この声、ロコ助に似てるな……」
蘭子はそれに気づいたようだ。
静流が吹き出しながらロディにツッコミを入れた。
「フフ。 だったら最初からロコ助をコピーすればよかったんじゃないの?」
「確かに。 おっしゃる通りです」
声も決まり、それぞれのカバンから顔を出している子ロディ。
それを見た親ロディは、改めて三人に告げた。
「それでは皆様、『学習』についてはこの子たちに全てお任せ下さい」
「「「はぁーい!」」」
話がまとまった所で、睦美が静流に言った。
「一応報告しておくが、静流キュンは文句ナシの満点だったぞ?」
「「「うぇ~!?」」」
睦美の報告に、追試組の三人は驚愕の表情を浮かべた。
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