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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード50-11

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桃魔術研究会 第二部室 睦美のオフィス兼カナメのラボ――

 『コミマケ』のスケジュールについて、睦美から説明を受ける静流たち。

「では御覧頂こう。これだ!」バシッ

 睦美は静流の前にA4のコピー用紙を勢いよく置いた。

「えー、どれどれ? うわぁ……」

 静流は自分の前にあるコピー用紙を見て、驚きと呆れが混じった声を漏らした。 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



            五十嵐静流殿 日程表


               ◎1日目

       AM6:00  起床
         7:00  朝食
         8:45  登校
         9:00  膜張到着、メイク、衣装確認

        10:00~ 頒布開始 
               (随時マスコミ対応)
        11:00~ サラ・リーマン先生とご回遊
        12:00  昼食

      PM13:00~ ポケクリバトル 団体戦予選開始
        14:00~ 団体戦決勝 
        14:30  30分休憩
        15:00~『PJT S4』始動
        16:30 頒布終了、片付け後、撤収



               ◎2日目

       AM6:00  起床
         7:00  朝食
         8:45  登校
         9:00  膜張到着、メイク、衣装確認

        10:00~ 頒布開始 
               (随時マスコミ対応)
        10:30~ ポケクリバトル 個人戦予選開始       
        11:30~ 個人戦決勝       
        12:00  昼食

      PM13:00~ 『PJT S4』始動
        15:00~ 30分休憩
        15:30~ 『PJT S4』再開
        16:30  頒布終了、片付け後、撤収
        17:00  収支報告



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 静流の両脇を、達也と蘭子が身を乗り出してコピー用紙を見ている。

「うわ、起床時間まで載ってる……」
「期間中はブラム氏に、第一部室と膜張とを【簡易ゲート】で接続するので、移動時間は心配しなくてイイ」
「それはそれは。至れり尽くせりですね……」

 達也がある事に気付いた。

「ん? ココの時間ってつまり、サラちゃんとデートって事か?」
「何ィ!? お静! どう言うこったそりゃあ!?」

 両脇から同時に責められ、気まずそうな顔の静流。

「そう言えば忘れてた……『あの絵』の件で、一緒に回る約束、してたんだっけ……」

 『国尼祭』で出品した静流の『自画像』を提供する際に、一緒にコミマケを見て回る事を約束していた事を思い出した静流。

「サラ先生がな、打合せの度に念を押して来るのだよ。しつこいくらいにね……」
「うわぁ、責任重大だ……」

 そう言って頭を抱えた静流。

「待てよ? サラちゃんが来るって事は……?」
「残念だがヨーコ君たちは、今回は遠慮するとの事だ」
「な、何ですとぉ?……アンナ様ぁ……うぅ」

 一瞬目を輝かせた達也だったが、それ以上テンションは上がらなかった。

「私が当日の大まかなスケジュールを伝え、あまり構ってやれない旨を説明しておいたのだ」 
「あのヨーコが? やけにあっさりと引いたな……」
「彼女たちなりに、気を遣っているのだろうよ」

 静流はヨーコが簡単に引き下がるとは思わなかったが、それどころでは無かった為、一旦頭の隅っこに置いた。

「睦美先輩、『S4』についての具体的な活動について、説明お願いします」
「それそれ、その『S4』とやらが気になるんですが、何をやらかすんです?」

 達也たちにとっては、『S4』の件は初耳だった。

「わかった。先ずは概要から説明しよう」

 睦美は、達也たちの為に概要から説明した。
 プロジェクト『S4』とは、

 ・シズムの兄である井川ユズルが静流にコスプレをする。
 ・他に【化装術】が使える薫子、ブラム、ロディを招き、それぞれ静流にコスプレをする。
 ・その結果、四人の静流が公式に降臨することとなり、その際のグループ名を『S4』とする。

「成程ね。静流を四人用意するとは、考えましたね?」 
「お静が4人!? 素性がバレたりしないのか?」
「その為に井川ユズルをダシに使うんだ。『コミマケ』での静流キュンの立場は、あくまでも『二次元』でなくてはならないのでね」
「って言う事は、『コミマケ』に参加している時は、常にユズルでなきゃいけないんですね?」
「肯定だ。ウチはミフネと契約し、井川兄妹を二日間雇っている事になる。白黒ミサは当然ボランティアだがな。クックック」
「ムっちゃん、えげつないなぁ……」

 すかさずツッコミを入れるカナメ。

「それで、四人の僕をガン首揃えて、何をさせようと?」
「ユーザーたちに、『癒し』を提供するのだ!」
「癒し、ですか?」
「システムはこうだ」

 ユーザーが『癒し』を得るには、下記の条件を満たす必要がある。

 ・『薄い本』購入時に『クーポン券』を入手する。
 ・クーポン券には点数があり、その点数に見合った『癒し』が提供される。
 ・『薄い本』一冊につき100ポイントのクーポン券が配布される。

 ポイント毎の『癒し』については、

 ・100ポイント   寸劇鑑賞(睡眠カプセル使用。3分) 
 ・300ポイント以上 上記に加え握手、写真撮影、リクエストボイス等

 「そのシステムだと、3冊買うのがマストって事になるな」
 「生身の人間には触れたくないと言う者もいるから、それはわからんよ」

 睦美は説明を続けた。

「四人の静流キュンには、それぞれのキャラに扮してもらい、オーダーシートの内容で誰に担当してもらうかを決める」
「四人の内訳は?」
「今考えているキャラはこんな所だな」
  
 ・作品の七割を占める、オーソドックスな『受け』の静流。
 ・希少な『攻め』である『シズルー大尉』
 ・オールマイティーな『シズベール』
 ・男の娘キャラの『シズミ』

「最後の『シズミ』は、どう言うポジションなのですか?」
「女の子みたいな男の子と言うシチュで、主にショタ系にウケるキャラだね。意外と需要、あるんだぞ? 私もシズミちゃんと薫子お姉様の絡みを想像するとだな……ムフゥ」
「わ、わかりましたから、それ以上言わないでイイです」

 顔を赤くして、ニヤけている睦美の言葉を遮った静流。

「あとは予備として、ダッシュ7だろうね。 アレもリクエストが多いだろうから」
「ふぅ、さいですか……」

 静流は溜息をつき、肝心な事を聞いた。

「オーダーシートの内容って、無茶な事、書かれたりしません?」
「常識を逸脱するものは却下させるさ。ちゃんと担当を付けて審査させるから、安心してくれたまえ」
「担当って、どなたがやるんです?」
「予定は白黒ミサがやる事になっている」
「白黒ミサ先輩か……大丈夫かなぁ?」
「問題無いさ。キツめのオーダーは静流キュンには回さないから」
「ほんっとに、お願いしますね?」
「ああ、約束する」

 眉間にしわを寄せ、静流は念を押した。
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