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第5章 夏の終わりのハーモニー

エピソード35-5

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ククルス島 統合軍海上基地 保養施設内 レクリエーションルーム ――

 海で遊び倒した静流たちは、昼食の後、レクリエーションルームに行った。
 ここには定番の卓球台を始め、映画を鑑賞しながら利用出来るマッサージチェアやちょっとしたカジノまである。

「静流様ぁ、私たちと、卓球で勝負しませんかぁ?」

 勝負を挑んで来たのは、双子の工藤姉妹だった。

「イイですよ? 美千留、イイだろ?」
「うん、やる」

 どうも五十嵐兄妹VS工藤姉妹の卓球バトルが始まるらしい。

「だだやるだけじゃあ、燃えませんねえ?」
「そうですねぇ、何か賭けますか?」
「そう来なくちゃ! じゃあ、負けた方が勝った方に『ご奉仕』するって事で」
「ご奉仕の具体的な内容は?」
「勝った方が決めます!」フー、フー

 双子の興奮度は、MAXに達しようとしていた。

「わかりました、後で後悔しても、知りませんよ?」
「静流様、覚悟してくださいね?」



              ◆ ◆ ◆ ◆



 卓球台に五十嵐・工藤両コンビがそれぞれ素振り等の調整を行っている。

「最初から飛ばすわよ。真紀」フー、フー
「わかったわ、美紀」フー、フー

 工藤姉妹の目が血走っている。

「うわぁ、ガチでやるつもりだぞ?」
「大丈夫、しず兄は負けない」

 じゃんけんで勝った美紀は、当然先行をチョイスした。
 審判を少佐がやってくれた。


「では、始め!」
「行きますよ? それ!」
「クッ!」


              ◆ ◆ ◆ ◆


「勝者、工藤姉妹!」

「「うっしゃぁー!!」」フー、フー

 本気モードの工藤姉妹は、容赦なく五十嵐兄妹を攻め、圧勝した。

「子供相手に、大人げないなぁ」
「私ひとりだったら勝てたのに」

 どうやら敗因は、静流が足を引っ張ってしまったからのようだ。

「やるわね、あの子たち」
「いいなぁ、何をお願いするんだろう?」

 仁奈とリリィは、双子が静流に何をやらせるか、興味深々であった。

「さあ、約束ですよ? 静流様?」
「わかってますけど、一体何をすればイイんですか?」

 静流は、不安げに聞いた。

「そうですね、ちょっと疲れたから、マッサージをお願いするとしますかな?」
「そんなのでイイんですか? ふう。良かった。もっと陰湿なものを想像してたんで、安心しました」パァ

「「くふぅぅぅん」」

 双子は火照った顔を両手で押さえ、のけ反った。

「ムフゥ、喜ぶのはまだ早いですよ? 静流様?」
「え? どういう事ですか? 美紀さん?」
「ただのマッサージではありません!」

 双子がタイミングを計って一斉に言い放った。

「「『オイルマッサージ』です!!」」ハァハァ

「「「何ィィィ!!」」」

 静流たちは勿論、ギャラリーの少佐たちも目を大きく開け、動揺している。

「これからお風呂に入りますんで、その後にお願いしますね?」フーフー
「道具は私が持ってますから、丸腰で来て下さればイイので」フーフー

「「では、お部屋でお持ちしてますね?」」

 双子は温泉で汗をながしてから、静流のオイルマッサージを受けるつもりのようだ。  

「おい美千留、オイルマッサージのやり方って、どうやるんだ?」
「そんなの、知ってるわけ、ないじゃん」

 二人があーだこーだ言っていると、コツコツとヒールを鳴らしながら近寄って来る女性がいた。

「何でしたら、私がお教え致しましょうか?」
「フジ子さん!?」
「私、エステティシャンの経験、ありますので」ンフゥ
「そうなんですか? 是非お願いします。なるべく簡単なやつ、ありませんかね?」
「ありますわよ? 一瞬で昇天させる技が」ムフゥ

 フジ子は紅潮し、両手を前に出し、指をわきゃわきゃとやっている。

「お手柔らかに、お願いしますね」
「お任せください」



              ◆ ◆ ◆ ◆



工藤姉妹の部屋 ――

 卓球勝負に勝利し、温泉で汗を流した双子。

「ふう。イイお湯だったわぁ」
「美紀、このあとはお待ちかねの……」

 ピンポーン!

「「来たぁぁぁ!」」

 双子のどちらかわからない方がドアに飛びつき、開けた。ガチャ

「ど、どうも、ルームサービスでぇす」

 ドアを開けた先にいたのは、何と、ネコミミメイド服の静流と美千留であった。

「「ブッ、ブブゥー!」」

 メイド服姿の静流を見ただけで、双子は鼻血を吹き、仰向けに倒れた。

「うわぁぁ、だ、大丈夫ですか?」

「「し、幸せぇぇぇ」」ガク

 双子は失神した。



              ◆ ◆ ◆ ◆



「はっ! ココは天国……じゃない」
「あ、気が付きましたか」

 目を回していた双子をベッドに寝かし、目が覚めるのを待っていた五十嵐兄妹。

「「し、静流様ぁ」」
「ストーップ、気を確かに。落ち着いて、どうどう」

 折角起きた双子がまたトリップしてしまいそうだったので、静流は双子を落ち着かせた。

「少し刺激が強かったかな? イク姉がこれを着れば二人が喜ぶって言うから、仕方なく着たんだけど」

「あれ? もう準備出来てる?」
「はい、道具は勝手にお借りしてますよ」

 静流は美千留に指示しながら、てきぱきと用意を始める。

「では、お二人共、こちらにうつ伏せになって下さい」
「「は、はぃぃ」」
 
 双子は熱に浮かされたように、フワフワとうつ伏せになった。

「では、始めます。美千留、頼む」
「わかった」

 静流の指示で、美千留は双子の浴衣の帯をほどき、背中を露出させる。

「オイル、塗りますね」

 静流は手にオイルをなじませ、美紀の腰から背中全体にオイルをのばす。
 美千留は真紀の身体にオイルをのばし、手の動きを静流とシンクロさせる。
 手に力を入れ、大きく円を描くように腰から肩にかけて動かしていく。


「「あっふぅぅん」」

 
 双子はうっとりと静流たちに身体を預けている。
 
「次、足の方行きますね」

「「はぃぃぃ」」

 静流は少し顔を赤くしながら、腰にタオルを敷き、浴衣を全て脱がす。
 手にオイルをなじませ、足首から太ももまでにオイルを塗る。
 
「ふぁう、き、気持ちいい~」
「他に、こっている所、ありますぅ?」

 静流が美紀に聞いた。

「もう少し上、お願いしますぅ」
「こうですか?」
「もっと上……ですぅ」
「もっと上って、お尻ですよ?」
「はいぃ。お尻がこってるんです。私ィ」ムフゥ
「そ、それはちょっと、お客さん」

 美紀の無茶ぶりに、静流が困っていると、真紀が言った。

「本当なんですよぉ、ほら、私たちって、操縦席に何時間も座ったりしてるでしょう?」ヌフゥ
「たまに、イボとか出来ちゃうんですよぉん」ンフゥ

 操縦士の職業病なのか、可愛い顔をしてるのに過酷な労働をこなしている双子に静流は同情した。

「相当お疲れなんですね。わかりました。では失礼」むにゅう

 静流は美紀のお尻を、円を描くようにオイルをなじませた両手でマッサージした。

 「あ! ああ、い、イクぅぅぅん♡」バタ

 美紀はエビぞりになって昇天した。

 「静流様ぁ、私にも、お願ぁい」ハァハァ

 真紀は静流に懇願した。

「はい。美千留、こっち頼む」
「むぅ、わかった」

 美千留はつまらなそうに兄と代わった。

「静流様ぁ、早くぅん」ムフゥ
「はいはい。では、失礼」むにゅう

 静流は先ほど美紀に施した要領で真紀のお尻をマッサージした。

 「あ! あふぅ、い、イクぅぅぅん♡」バタ

 真紀もエビぞりになって昇天した。

「ふう。施術完了っと。美千留、お疲れ」
「フン、しず兄のスケベ大魔王」
「何言ってんの? これは施術、マッサージなの!」


              ◆ ◆ ◆ ◆


401号室 三人部屋 ――

 工藤姉妹への「ご奉仕」が終わった五十嵐兄妹は、自室である三人部屋に戻って来た。

「はあ、ただいま」
「お帰り。二人共お疲れ様」

 二人を迎えたのは、真琴と佳乃・澪コンビであった。

「お疲れ様であります!」
「静流クン? あの二人に無理矢理何かされたんじゃないの?」
「え? 特に何も?」
 
 キョトンとしている静流に、美千留が忌々し気に言った。

「しず兄が、二人のお尻をオイルまみれの手で撫でまわしてイカせた」

 「「「何ィィィィ!」」」

 三人が静流をガン見する。

「ちょと美千留? 言い方にトゲがあるよ? 僕は普段過酷な労働条件で疲弊しているお二人のお尻を、心を込めてケアしてあげたんだから」

 二人が言った事が本当であるならば、であるが。

「だったら、私にもしてくれるの? 私だって同じ条件で日夜訓練に励んでいるのよ?」
「自分も右に同じ、であります!」

 同じ部隊なのだから、二人が怒るのも無理は無い。

「そう言われてもなぁ。あれは罰ゲームみたいなものだし」

 興奮している二人に言い寄られて、タジタジになっている静流を見て真琴が、

「そう言えば、宴会の時に『ビンゴゲーム』やるらしいですよ?」
「ビンゴか……フフフ、良い事思いついちゃった」ムフゥ

 澪はニヤけ顔で静流を見た。

「何か、イヤーな予感、するんだけど」
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