その人外、蜥蜴につき。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第一章 人外の冒険者。

05 俺と冒険者組合。

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 一連の騒ぎが落ち着き、普段通りの冒険者組合の様相へと戻ったところで、やはり気分転換も兼ねて美味しいと評判の飲食店に寄って帰ろうと再び話しを纏め始める俺たち三人。

 何故かは俺の知るところでは全くないのだが、フロウも一緒についてくるんだとか。

「仮にも副団長さまなんだろ? 事後処理とか色々良いのか?」

 長い舌を出したり引っ込めたりしつつ、呆れた物言いでそう尋ねると。

「書類なんて面倒くさいだけで真っ平御免よ。あとは下っ端に任せておけば済む話し」

「左様で。良いんかそんなで?」

「良いのよ」

 居残っていた随伴騎士二名も、笑顔で丸投げのフロウに諦めた表情で頷く。
 溜め息を吐きつつ肩を落とし、そのまま哀愁漂わせて帰っていった。

(まぁ、暴虐無人なフロウだしな。気苦労が絶えないだろうに……お二人ともご愁傷さま)

 そんなこんなで俺たちも冒険者組合から去ろうとしたんだが。

「すいません、ノワールさん。アーネ統括からの呼び出しです。三階の応接室へと急ぎお越し下さい」

 オーネイさんとはまた別の、俺の知らない受付嬢に呼び止められるのだった。

「アーネさんが? 俺に何用?」

「申し訳ございません。私はお呼びするようにと、ただ仰せつかっただけですので……」

 その受付嬢に連れられて応接室のある三階へと足を運ぶ。カテルとカテネも同伴するそうだ。

 そしてやはり何故かは俺の知るところでは全くないのだが、当然のようについてくるフロウ。

(オーヤ組合長からの呼び出しならまだしも、何故にアーネさんから? 面倒くさいことにならなければ良いけども……)

 怪訝に思いつつ、長い舌を出したり引っ込めたりと応接室に向かう俺たちなわけだが。

(――はぁ……アーネさん、まだ書き直してないんかい)

 途中にあるアーネさんの私室を横切る際、扉に記載された『近親者、関係者、部外者に関わらず、無許可で覗いた時点で即殺す。マジ殺す。なまら殺す』と、わけのわからない謎に物騒な警告文にただ苦笑うのだった。

(元特等級の暗殺者ってだけに、その警告文は洒落にならんし如何なもんかと――って、進言してやったのに華麗にスルーかよ。全く)



 ◇◇◇


 応接室に招き入れられたあとは、俺以外が席へと腰掛ける。

(さてと……)

 俺に振られる依頼ってのは、結構な頻度で訳ありとなる。
 まぁ俺がこんな姿だから、一般的かつ普通の依頼が回し難いってのもあるっちゃあるんだろうが。

 それにしても俺に振ってくる依頼ってのが、大概は面倒極りないもので容赦のない無茶振りばかりとなる。
 その依頼ってのは基本的に討伐系か探索、或いは開拓系のものが多いんだが……極秘裏かつ単独で遂行するものが実に多い。
 当然ながら掲示板に貼り出され公になることもなく、オーヤ組合長直々かつ内密でのご指名と相成るわけで。

 まぁ冒険者には階級ってもんがあり、見習いから始まり、初等、中等、上等、特等、勇等、神等級と分けられているものの、実のところ俺の持つ階級章ってのは、

 まぁ……一応の表向きの階級がとなっているわけだが。それもいかんと言えばいかんのだけども……組合の方針と言うか決定だからな。

 その所為でこの部屋にもちょくちょく? ――否。頻繁に顔を出している、だな。なので勝手知ったる何とやらなわけで。

「ちっ……相変わらず碌なもん置いてねぇのな――お? 美味そうな焼き菓子発見。ラッキー」

 適当に棚を漁り、お目当ての茶菓子などを引っ張りだしたあとは、長椅子に深く腰を落ち着け勝手に食べ始めたり。

「ノワール、ひとり占めは狡いって! 私にも頂戴っ!」

 座る俺の膝の上に飛び乗って、焼き菓子を両手いっぱいに摘み出す――否。即頬張るカテネ。

「ちょっ⁉︎ 勝手に食べちゃっても良いの? 怒られても僕は知らないからね?」

 向かいの席に腰掛けるカテルは呆れた物言い。そして。

「ノアは大概あんなものよ。遠慮って言葉を知らないのよね。私の家に来ても平然と家探しし始めるし……勝手に食糧庫は漁るし」

 何故かは俺の知るところでは全くないのだが、広い長椅子にも関わらず、くっつくように真隣に腰掛けるフロウ。なんぞブツクサ言いつつも横から手を伸ばし焼き菓子を摘みだす。

 そしてカテルを除く三人で、謎に焼き菓子争奪戦を開始。
 量が少なくタダかつ美味いもんであればそうなって然り。止むなし――って、それは俺んだっ!

「フロウ。お前も他人のこと言えんだろうが? あと腰かける位置がなまら近いっての。少し離れろ」

「良いのよ、この位置で。大体ね? 他人の家で勝手に家探しって何? 下着を引っ張り出された時には本気で殺そうかと思ったんだからね? ――結構、美味しいわね」

「あれはワザとじゃねぇっての。武具入れとか用具入れに一緒にしておくフロウが悪い」

「良いのよ、直ぐ着替えるんだし」

「あと思ったじゃねぇだろ? 見事に有言実行しただろうが。えらい剣幕で手加減無用。本気で斬りかかってきたじゃねーの。お? これは中々に旨いな――って、それは俺のっ! 食いかけを取るなっ!」

「乙女の秘密を暴く馬鹿は死んで詫びるのが当然なのよ。万死に値するの。ホント、この焼き菓子意外にどれも美味し――あ、それは私の食べかけっ⁉︎」

「乙女って歳かっ! これは元々俺んだっ!」

「永遠に乙女よっ! って、ケチっ!」

 遂に俺とフロウは互いの食いかけを奪い合うまでに発展。

「ちょっ⁉︎ フローレンスさんまで一緒になって何やってんですかっ⁉︎ 全く……こんな時、僕はどんな顔をすれば良いんでしょう……はぁ」

 あまりの大人気のなさに呆れるカテル。額に手を当てて天井を仰ぎ見ると、疲れたようにそう呟く。

「笑ってれば良いのよ、カテル。うまうま~」

 俺の膝の上で両足をぶらつかせ、焼き菓子をひたすらに頬張るご満悦のカテネ。

「カテネに激しく同意だな――って、離せっ!」

「遺憾ながら私も二人に同意――って、絶対に嫌っ!」

 互いに最後の焼き菓子を奪い合って睨み合いつつも、カテネのひと言に頷く俺とフロウ。

「満場一致っ⁉︎ しかも息ぴったりっ⁉︎ ノワールにフローレンスさん……仲良く半分っこ――」

「「絶対に嫌だ!」」「うまうま~」



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