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Session.
第四話 僕とボクでプリプレイ。
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今日は待ちに待った、僕とボクで創造した世界のプリプレイの日。
プリプレイとは、準備し終えたルールやシナリオを実際に遊んでみて、不具合などおかしな部分がないかを見るテストのことだよ。
学校を休みたいのもグッと我慢して、放課後になるまで耐えた僕。
授業中も休憩時間もグリモワールを開き、心躍らせていた――。
そんな中、新たに気付いたことがあった。
自分の身体を使って体感するだけに、蘇生のルールの部分を少し緩和修正したくて、鉛筆で書き込もうとしたら書けなかったんだ。
どうやらグリモワールとキャラクターシートに書き込む情報は、禍々しい筆記用具でないとできないらしい。
そして、一度書き込んでしまった情報は、後から修正もできないと言うことも解った。
重要な点については、一度、紙などに書き出して、良く考えてから記述することにする――。
◇◇◇
長く退屈な学校が終わって直ぐに帰宅した僕は、真っ先に自室に戻る。
『お帰り、僕。ボクの方は準備おっけ。僕は?』
メガネ、クイッ! と香ばしいポーズで出迎えてくれるボク。
「勿論、完璧に用意してあるよ!」
メガネ、クイッ! と香ばしいポーズでそれに応えた僕。
『「じゃあ、始めよう!』」
僕とボクが同じ台詞で頷き合った。
「いよいよ僕の男の娘デビューだ、楽しみだ!」
勉強机に向かい、ランドセルからグリモワールとキャラクターシートを取り出す僕。
手には禍々しい筆記用具に、白と黒の百面体ダイスを握り締める。
『今日はキャラチェックから始めるからね。グリモワールを開いて目を瞑ってみてくれる?』
僕の隣に丸椅子を引っ張ってきて座るボク。
普通のTRPGだと上座の位置か対面にGMが座り、手元の資料、シナリオ云々を隠すスクリーンを立てるんだけど……。
現実に体感して遊ぶんだから関係ないか。
「瞑ったよ、ボク」『もう良いよ、僕』
目を瞑って直ぐ、僅かに一瞬で許可が出た。
期待に胸を膨らまし、恐る恐る目を開ける――。
「あれ、真っ白……? あと……鏡?」
無限に広がる真っ白な空間に僕は立っていた。
その直ぐ隣には、大きな姿見の鏡が宙に浮いて揺蕩っている。
その有り様を見て疑問形で呟く僕の声も、キャラクター作りの参考にした、あの子の声そっくりに変わっていた。
これから起こるであろう、有り得ないくらいに凄いことに、期待が膨らんでいく――。
『キャラチェックって言ったじゃん? ほら、鏡で自分の姿を見てやってよ』
ボクに言われるままに鏡に近付き覗き込む。
僕の短い人生の中で、一番驚いた瞬間だった!
鏡の前に立っているのは、僕であって僕ではない――。
「――僕、男の娘になってる⁉︎ 本当にあの子そっくりだよ! ――凄い、本気で凄い!」
青味がかった黄緑色のグラデーションな長いツインテールに華奢な体躯。
鏡を覗き込んでる僕の目は碧眼と魔眼。
ちゃんと僕が創ったキャラクターのミックスの容姿になっていた。
しかし――。
「――でも、なんでいけない布地一丁なの?」
所謂、おパンツ一枚って状態。
『キャラクターシートの装備と所持品枠が空っぽだからね? 何処にも服って書いてないでしょ? 僕が決めたことじゃん。でもまぁ……流石に丸出しは可愛そうだから、ボクの方でいけない布地を標準装備にしておいた』
メガネ、クイッ! の香ばしいポーズで自慢げに胸を張るボク。
「ははは、そう言えばそうだった……ヤバいヤバい。どう見ても女の子だけど――良し、男の娘だ!」
メガネ、クイッ! の香ばしいポーズで、いけない布地を引っ張って中を覗き込み、見慣れた僕がちゃんと収まってるのを確認して何気に安堵する僕。
『変態』「ボクに言われたかは無いね!」
縞々柄のいけない布地が女の子用だった点ついても、何気に悪意を感じたってのは黙っておく。
結局は僕の趣味だから。
間違いなくブーメランで返ってくる。
「しかし……本当に本物の身体なんだね」
鏡の前で色んな香ばしいポーズを取りながら、ボクに感想を伝えていく。
『言っとくけど仮想空間とか、そんなちゃちなもんじゃないよ、僕。この現実世界に僕とボクで創造した世界に実在する、本物の身体だからね? 魂だけが入れ替わったって言うと解り易い?』
「うん、全く驚き。二次元が三次元になるとこんな感じなんだ。二.五次元のコスプレイヤーさんみたい」
『感動してくれて何よりだよ、僕。武器っぽい物を貸すから、ちょっと動きを試してみてよ。ポーン代わりに木偶人形は用意するから』
ボクがそう言うと、何もない空間に一本の木刀が湧き出し、宙に揺蕩っていた。
その少し先に、ボクが用意した木偶人形が現れる――。
ただ、名前からして木でできたヤツを想定してた僕だけど、妙に生々しい街のチンピラっぽい大人の人が出てきた。
目は虚で視点が定まってなく、口を半開きにして涎を垂らし、蹌踉めく不思議な踊りを披露する木偶人形。
ゾンビの動きって、確かこんな感じだったような気がする……。
「――真面目な話、これが現実って普通は信じられないよ。木偶人形は妙に生々しいけどさ」
『残念、間違いなく現実だよ? あ、そうそう。最初の案ではキャラシートが眼前に広がる仕様で遊ぶ予定だったじゃん? あれだと現実味に欠けるから、ボクの方で改変して置いたよ。いちいち書き込むのも面倒いから』
「――え⁉︎ だったら判定ダイスとか状態記入とかどーすんの⁉︎」
『ふっふっふ。木偶人形と戦えば解るよ。随時、ボクがレクチャーするから』
「そう? だったら良いか」
『ほら、早速、模擬戦の開始だ! 行くよ、僕――ミックス君』
「望むところだ、ボク――GM!」
僕とボクは互いに向き合って微笑み返す。
そして、人生初のTRPG――テーブル上じゃないけども。
僕とボクで創造した、楽しい僕とボクだけの世界初の戦闘が開始された――。
“ ――女子高生と女子小学生に続き、関連性があるとみていた重要参考人である都内に住む大学生の男性も、昨夜未明から行方不明になっており、警察は何らかの事件に巻き込まれてしまった可能性もあるとみて行方を追っています。尚、付近の住民の皆様からの情報提供も呼びかけております。特徴は―― ”
――――――――――
続きは広告の後。
運命はサイコロのみぞ知る!(笑)
プリプレイとは、準備し終えたルールやシナリオを実際に遊んでみて、不具合などおかしな部分がないかを見るテストのことだよ。
学校を休みたいのもグッと我慢して、放課後になるまで耐えた僕。
授業中も休憩時間もグリモワールを開き、心躍らせていた――。
そんな中、新たに気付いたことがあった。
自分の身体を使って体感するだけに、蘇生のルールの部分を少し緩和修正したくて、鉛筆で書き込もうとしたら書けなかったんだ。
どうやらグリモワールとキャラクターシートに書き込む情報は、禍々しい筆記用具でないとできないらしい。
そして、一度書き込んでしまった情報は、後から修正もできないと言うことも解った。
重要な点については、一度、紙などに書き出して、良く考えてから記述することにする――。
◇◇◇
長く退屈な学校が終わって直ぐに帰宅した僕は、真っ先に自室に戻る。
『お帰り、僕。ボクの方は準備おっけ。僕は?』
メガネ、クイッ! と香ばしいポーズで出迎えてくれるボク。
「勿論、完璧に用意してあるよ!」
メガネ、クイッ! と香ばしいポーズでそれに応えた僕。
『「じゃあ、始めよう!』」
僕とボクが同じ台詞で頷き合った。
「いよいよ僕の男の娘デビューだ、楽しみだ!」
勉強机に向かい、ランドセルからグリモワールとキャラクターシートを取り出す僕。
手には禍々しい筆記用具に、白と黒の百面体ダイスを握り締める。
『今日はキャラチェックから始めるからね。グリモワールを開いて目を瞑ってみてくれる?』
僕の隣に丸椅子を引っ張ってきて座るボク。
普通のTRPGだと上座の位置か対面にGMが座り、手元の資料、シナリオ云々を隠すスクリーンを立てるんだけど……。
現実に体感して遊ぶんだから関係ないか。
「瞑ったよ、ボク」『もう良いよ、僕』
目を瞑って直ぐ、僅かに一瞬で許可が出た。
期待に胸を膨らまし、恐る恐る目を開ける――。
「あれ、真っ白……? あと……鏡?」
無限に広がる真っ白な空間に僕は立っていた。
その直ぐ隣には、大きな姿見の鏡が宙に浮いて揺蕩っている。
その有り様を見て疑問形で呟く僕の声も、キャラクター作りの参考にした、あの子の声そっくりに変わっていた。
これから起こるであろう、有り得ないくらいに凄いことに、期待が膨らんでいく――。
『キャラチェックって言ったじゃん? ほら、鏡で自分の姿を見てやってよ』
ボクに言われるままに鏡に近付き覗き込む。
僕の短い人生の中で、一番驚いた瞬間だった!
鏡の前に立っているのは、僕であって僕ではない――。
「――僕、男の娘になってる⁉︎ 本当にあの子そっくりだよ! ――凄い、本気で凄い!」
青味がかった黄緑色のグラデーションな長いツインテールに華奢な体躯。
鏡を覗き込んでる僕の目は碧眼と魔眼。
ちゃんと僕が創ったキャラクターのミックスの容姿になっていた。
しかし――。
「――でも、なんでいけない布地一丁なの?」
所謂、おパンツ一枚って状態。
『キャラクターシートの装備と所持品枠が空っぽだからね? 何処にも服って書いてないでしょ? 僕が決めたことじゃん。でもまぁ……流石に丸出しは可愛そうだから、ボクの方でいけない布地を標準装備にしておいた』
メガネ、クイッ! の香ばしいポーズで自慢げに胸を張るボク。
「ははは、そう言えばそうだった……ヤバいヤバい。どう見ても女の子だけど――良し、男の娘だ!」
メガネ、クイッ! の香ばしいポーズで、いけない布地を引っ張って中を覗き込み、見慣れた僕がちゃんと収まってるのを確認して何気に安堵する僕。
『変態』「ボクに言われたかは無いね!」
縞々柄のいけない布地が女の子用だった点ついても、何気に悪意を感じたってのは黙っておく。
結局は僕の趣味だから。
間違いなくブーメランで返ってくる。
「しかし……本当に本物の身体なんだね」
鏡の前で色んな香ばしいポーズを取りながら、ボクに感想を伝えていく。
『言っとくけど仮想空間とか、そんなちゃちなもんじゃないよ、僕。この現実世界に僕とボクで創造した世界に実在する、本物の身体だからね? 魂だけが入れ替わったって言うと解り易い?』
「うん、全く驚き。二次元が三次元になるとこんな感じなんだ。二.五次元のコスプレイヤーさんみたい」
『感動してくれて何よりだよ、僕。武器っぽい物を貸すから、ちょっと動きを試してみてよ。ポーン代わりに木偶人形は用意するから』
ボクがそう言うと、何もない空間に一本の木刀が湧き出し、宙に揺蕩っていた。
その少し先に、ボクが用意した木偶人形が現れる――。
ただ、名前からして木でできたヤツを想定してた僕だけど、妙に生々しい街のチンピラっぽい大人の人が出てきた。
目は虚で視点が定まってなく、口を半開きにして涎を垂らし、蹌踉めく不思議な踊りを披露する木偶人形。
ゾンビの動きって、確かこんな感じだったような気がする……。
「――真面目な話、これが現実って普通は信じられないよ。木偶人形は妙に生々しいけどさ」
『残念、間違いなく現実だよ? あ、そうそう。最初の案ではキャラシートが眼前に広がる仕様で遊ぶ予定だったじゃん? あれだと現実味に欠けるから、ボクの方で改変して置いたよ。いちいち書き込むのも面倒いから』
「――え⁉︎ だったら判定ダイスとか状態記入とかどーすんの⁉︎」
『ふっふっふ。木偶人形と戦えば解るよ。随時、ボクがレクチャーするから』
「そう? だったら良いか」
『ほら、早速、模擬戦の開始だ! 行くよ、僕――ミックス君』
「望むところだ、ボク――GM!」
僕とボクは互いに向き合って微笑み返す。
そして、人生初のTRPG――テーブル上じゃないけども。
僕とボクで創造した、楽しい僕とボクだけの世界初の戦闘が開始された――。
“ ――女子高生と女子小学生に続き、関連性があるとみていた重要参考人である都内に住む大学生の男性も、昨夜未明から行方不明になっており、警察は何らかの事件に巻き込まれてしまった可能性もあるとみて行方を追っています。尚、付近の住民の皆様からの情報提供も呼びかけております。特徴は―― ”
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