121 / 154
第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。
佰弐拾肆話 閑話 俺と最妃と自転車と。【後編】
しおりを挟む
ナニがなんだか全く解らないままに、俺は言われるままされるがままになっていた。
理由が不明だが、ナニやら物々しい機材やら器材やらで全身を測定されている。
その間、ずっと凄ぇ双丘をガン見する俺。
気付いた最妃さんは頬を赤く染め、頬っぺたをぷくっと膨らませて俺を無言で睨む。
両腕を双丘の前で組んで隠してな?
可愛い……駄目だ……俺、もう駄目だ……。
「お客様、お疲れ様でした。そちらのソファーにお掛けになって、もう少々お待ち下さい」
測定し終えるとと、労いの言葉と一緒にコーヒーを差し出してくれた、めっさ営業スマイルの美人お姉さん。
更にイケメンお兄さんが奥からやって来て、一枚の紙を最妃さんに差し出し手渡した。
「コレで良くってよ。手配なさって下さる」
受け取った最妃さんは、それにサインをしながら、イケメンお兄さんに何ぞ指示を出す。
そして頬っぺたを膨らませながら俺の方へとやって来ると、徐に一枚の紙を差し出すのだった。
そして一言。
「――貴方、ここにサインして下さる?」
そこには……誓約書と記載されていた――。
え⁉︎ もしかせんでも買わされるのか⁉︎
めっさ欲しいけども⁉︎
貴女の方が……って、違っがーう!
そーじゃない、そーじゃないでしょ、俺!
「ちょっと待って下さい。俺……こんな大金ありませんよ?」
内心ではヤっべ、外面は平静を装って。
断腸の思いで一応は拒否る俺。
だがしかし――。
「――要りません。但し、条件がありましてよ?」
何故かそんなことを言ってきた。
「え⁉︎ お金は取らない⁉︎ じゃあ魂とか取るんですか⁉︎」
「なんですの、それ⁉︎ 私が悪魔にでも見えまして⁉︎」
恐る恐る尋ねる俺に、更に頬っぺたをぷくっと膨らませ言い放つ最妃さん。
側のスタッフさんからクスクス笑い声……今、ある意味で悪魔とも言えるなとか、呟いたスタッフも居たぞ?
「どっちかと言うと、俺には天界から降臨した女神にしか見えませんけど――付き合って……違うな。結婚して下さい――って。あーっ、すすす、すいませんっ⁉︎」
動揺のあまり、ついポロっと本音でが出てしまった。
「――ナ、ナニを、い、いきなり仰って⁉︎ あ、貴方は……」
顔を真っ赤にした最妃さん。
あゝ可愛い……。
「よ、良く読みなさい! 早く!」
「……あ、ハイ。では」
言われた通り、誓約書なるモノを良く読む俺。
内容は――従業員募集だと言うこと。
更に採用条件は――自転車に興味があるってこと。
まぁ、当たり前だな。
そして、オーナーが気に入ったヒト?
オーナーって? え? え~っ⁉︎
最後に採用認可印のところに、最妃さん直筆のサインが。
最妃さん、オーナーだったんかい⁉︎
更に――採用祝いにその自転車を差し上げても良くってよ? と、直筆で追記されていた!
「貴方……凄く良くってよ? ここで働くと良いかしら? 私も嬉――な、なんでもなくってよ? オホホホ~」
あらぬ方向に顔を背けて、高貴なオホホ笑いの最妃さんは顔が真っ赤。
俺は何処ぞに座す運命の女神さま何ぞに感謝しまくった。
そんな眉唾な高次存在、居るわけないんだけど。
◇◇◇
帰り際にスタッフが総出で俺達に丁寧に挨拶をして、更にお見送りまでしてくれた。
俺ではなく俺達の理由。
実は店外に出ても、何故か俺の手を離さず、一緒に歩いてついてくる最妃さんが居た。
なして? 俗に言うお持ち帰りですか?
若干、恥ずかしいのか照れてるのか俯き加減ではあるが、しっかりと握る手は離さないときた。
そのまま俺の手を引き、通りを優雅に歩く最妃さんに、恐る恐るも確認した俺。
「あの……最妃さん?」
「あ⁉︎ も、申し訳ありません⁉︎ 見ず知らずの女性が殿方のお手を握ったままで⁉︎ ご、ご気分を害されて当然ですわね⁉︎ 私ったら⁉︎ オ、オホホホ~」
「……いえ。寧ろご褒美ですよ? 俺何ぞで良いんですか……」
この一言が決定打となり。
「も、もっと今のお互いのことを知るべき? 否、コレは運命……そう運命なのよ……長い刻を待ち続け……再び同じ時代で巡り合い、前世……当時の姿のまま……偶然にも出逢うことが叶ったんですもの……このチャンスを逃しては……次はないかもしれないんだし……記憶は……幸い心は私に向いている――不束者モノですが、よ、宜しくお願い致します!」
とかなんとか。
目紛しく表情が入れ替わる百面相を披露する最妃さん。
お気付きではないでしょうが、なんか凄い壮大な中二病臭い物語が、ひたすらダダ漏れておられますよ?
もしかして貴女は、その美貌でこっち側の濃ゆいヒト?
「えーと……採用の件なんですけど……」
「――え? え~? ええっ⁉︎ ――って、わわわ、私ったらナニをっ⁉︎ オ、オホホホ~」
その反応は…… 今、会ったばかりだよね、俺達?
貴女も一目惚れとか?
否、待て待て……それは早合点の可能性が大だ。
動揺する意味は……なして?
――って、まぁ良いや。
考えても無駄なことはいくら考えても無駄だよ。
「――では、お世話になります」
「承知。こちらこそ」
そのあと、制服姿の金髪縦ロールな絶世の美女と、草臥れたリーマン姿に俺が手を繋いで談笑し、商店街を抜け帰路に着いた。
すれ違う通行人らからは、奇異の目を向けられたのは言うまでもなく。
そしてその翌日。
勤めていた職場を速攻で退職した――。
◇◇◇
俺は最妃さんの自転車店に鞍替えをして、毎日頑張っていた。
あの日に貰った自転車は、その数日後に俺居城……と言っても、この時はボロい安アパートだったけど――に届くも、知識が全くなく、暫くは俺部屋に飾って見つめるだけの手付かず状態が続いた。
最妃さんに気に入ってもらう為にも、この自転車を弄る為にも、必死になって猛勉強した俺。
邪な動機から始まったわけだけれども、途中から自転車のことが本気で、凄く愉しくなっきて、例によってやらかしまくってしまう。
気付けばあっという間だった。
この店一番の技術スタッフになってしまっていたのだ……。
最妃さんの父にも見染められ、トントン拍子に話が進み……ここの副店長、実質は店長だけども、昇格させてもらえた。
この頃には最妃さんと、結婚を前提にお付き合いを始めていた。
後日談だが、やはりお互いが一目惚れだったり。
当然、結婚して直ぐに未来を授かった。
いつか俺店を開業するつもりになった俺は、この間に民間の整備士免許や自転車技師免許云々、必要な資格何ぞも全て取得しておいた。
そうして、あらゆる自転車の知識を吸収した俺は、数年前に独立して開業し、現在に至る――。
そして俺が自転車屋何ぞを始めることになった、最妃との仲を取り持ってくれた記念すべき自転車。
今まで大切に保管してあったのだが、仕事の片手間に手掛けていくことにしたのだ。
足りない部品を探し集めて買ったりとか、色々と必死になってな?
その自転車が――アイシャ。
つまり、ヒト型に再構成されたアイなのである。
ありとあらゆる俺の大切な想い出が、山ほど沢山詰まった奇跡の車体……車体違うな。
俺の娘が、アイなのだよ。
もしもアイと出逢っていなければ、最妃とも出逢ってはいない。
更に言うと、未来も生まれていない。
人生、ナニがどう転ぶか解らんモノだな、うん。
◇◇◇
「彼方……起きて……ん~~」
好みの香りと、マシュマロを凌ぐ素敵過ぎる感触が頬に当たる。
更に耳元に甘い囁きが聴こえると、額に柔らかくも暖かい感触がずっしりと伝わった。
どうやら俺的超お至宝を枕に、いつの間にか眠っていたようだ。
俺も大概、ヒトのこと言えんのな。
油断し過ぎだよ、うん。
「貴方達……ラブラブ過ぎよ? アタシ、溶けちゃうよ」
「ボチボチ着くのよ?」
「パパとママだよ? 世界が滅ぶ一大事でも、お互いが最優先って言うほどだからね」
「ボクもパパとママを取るよ。パパはボクとママならどっちが大事――」
「最妃!」
「もぅ! 彼方ったら! ん~~」
「少しの躊躇もなく、一切の迷いすらなく、顔色ひとつ変えずに即答って……。ボク、聴かなければ良かった……」
「――お姉ちゃん、パパに聴くだけ無駄だから。パパの世界はね、いついかなる時でもママを中心に回ってるもん」
「即答したけどな、未来もアイ大事だよ、俺。勿論、アリサも。家族愛がナニよりも最優先だ。当然、クモヨにファーストも家族になったんだから大事にしていく……縁があって出逢ったんだから決定事項だ!」
「カナタサン……イエ。パパ……アリガトウ」
「貴方……もしかプレイボーイ?」
「あらあら。彼方は未来永劫、私のモノ。絶対き誰にも、欠片すら差し上げませんわよ?」
「ご馳走様……欠片も要らないわよ。でもさ、家族って良いよね……アタシなんかでも家族で良いの? なれるの?」
「さっきも言ったがバッチ来いだ! 全部終わったら名前も決めてやんよ。――ハジメとか」
「貴方……泣かすわよ?」
「ハジメって……ないわ~。ボクなら断固拒否する。一応見た限りは女の子だよ? 男の子の名前って、ナニ?」
「貴女……一応って酷くない?」
「……お姉ちゃんに激しく同意」
「私も……ちょっとそれは……」
「ぷっ――良いのよ? お似合いなのよ? ありふれたName、ハジメ程度でお似合いよ?」
「アリサ……アンタも泣かすわよ?」
「ステキナ オナマエ……」
「……貴女は……良いか。帰ったら、アタシが言葉のお勉強に付き合ってあげよう! 後は……下半身をどうにかしないとね……うーん」
「チュ、チュイーン;」
「ハッ;」「フン;」
「全国のハジメさんを敵にする気かよ。ちゃんと謝っとけ――お? ボチボチ出入口が見えてきた。皆、気を引き締めて事に当たるように!」
俺如きに何ぞもできやしないかもしれない。
だがしかし。
家族だけは護る――なんとしても、な?
俺達の頭上に見えて来た出入口。
見上げる限りに異常は感じない。
結界だったか? 有効に働いていることを切に願いたいモノだ。
そして……皆で無事に帰るんだ。
って、ナシナシ!
死亡フラグ立ってまうわ!
「――さぁ、行こう!」
地下三階層に無事に辿り着き、掛け声と共に行動を起こす俺達。
無事に帰り着けるのだろうか……。
――――――――――
閑話後編、おわり。本編へと、つづく。
理由が不明だが、ナニやら物々しい機材やら器材やらで全身を測定されている。
その間、ずっと凄ぇ双丘をガン見する俺。
気付いた最妃さんは頬を赤く染め、頬っぺたをぷくっと膨らませて俺を無言で睨む。
両腕を双丘の前で組んで隠してな?
可愛い……駄目だ……俺、もう駄目だ……。
「お客様、お疲れ様でした。そちらのソファーにお掛けになって、もう少々お待ち下さい」
測定し終えるとと、労いの言葉と一緒にコーヒーを差し出してくれた、めっさ営業スマイルの美人お姉さん。
更にイケメンお兄さんが奥からやって来て、一枚の紙を最妃さんに差し出し手渡した。
「コレで良くってよ。手配なさって下さる」
受け取った最妃さんは、それにサインをしながら、イケメンお兄さんに何ぞ指示を出す。
そして頬っぺたを膨らませながら俺の方へとやって来ると、徐に一枚の紙を差し出すのだった。
そして一言。
「――貴方、ここにサインして下さる?」
そこには……誓約書と記載されていた――。
え⁉︎ もしかせんでも買わされるのか⁉︎
めっさ欲しいけども⁉︎
貴女の方が……って、違っがーう!
そーじゃない、そーじゃないでしょ、俺!
「ちょっと待って下さい。俺……こんな大金ありませんよ?」
内心ではヤっべ、外面は平静を装って。
断腸の思いで一応は拒否る俺。
だがしかし――。
「――要りません。但し、条件がありましてよ?」
何故かそんなことを言ってきた。
「え⁉︎ お金は取らない⁉︎ じゃあ魂とか取るんですか⁉︎」
「なんですの、それ⁉︎ 私が悪魔にでも見えまして⁉︎」
恐る恐る尋ねる俺に、更に頬っぺたをぷくっと膨らませ言い放つ最妃さん。
側のスタッフさんからクスクス笑い声……今、ある意味で悪魔とも言えるなとか、呟いたスタッフも居たぞ?
「どっちかと言うと、俺には天界から降臨した女神にしか見えませんけど――付き合って……違うな。結婚して下さい――って。あーっ、すすす、すいませんっ⁉︎」
動揺のあまり、ついポロっと本音でが出てしまった。
「――ナ、ナニを、い、いきなり仰って⁉︎ あ、貴方は……」
顔を真っ赤にした最妃さん。
あゝ可愛い……。
「よ、良く読みなさい! 早く!」
「……あ、ハイ。では」
言われた通り、誓約書なるモノを良く読む俺。
内容は――従業員募集だと言うこと。
更に採用条件は――自転車に興味があるってこと。
まぁ、当たり前だな。
そして、オーナーが気に入ったヒト?
オーナーって? え? え~っ⁉︎
最後に採用認可印のところに、最妃さん直筆のサインが。
最妃さん、オーナーだったんかい⁉︎
更に――採用祝いにその自転車を差し上げても良くってよ? と、直筆で追記されていた!
「貴方……凄く良くってよ? ここで働くと良いかしら? 私も嬉――な、なんでもなくってよ? オホホホ~」
あらぬ方向に顔を背けて、高貴なオホホ笑いの最妃さんは顔が真っ赤。
俺は何処ぞに座す運命の女神さま何ぞに感謝しまくった。
そんな眉唾な高次存在、居るわけないんだけど。
◇◇◇
帰り際にスタッフが総出で俺達に丁寧に挨拶をして、更にお見送りまでしてくれた。
俺ではなく俺達の理由。
実は店外に出ても、何故か俺の手を離さず、一緒に歩いてついてくる最妃さんが居た。
なして? 俗に言うお持ち帰りですか?
若干、恥ずかしいのか照れてるのか俯き加減ではあるが、しっかりと握る手は離さないときた。
そのまま俺の手を引き、通りを優雅に歩く最妃さんに、恐る恐るも確認した俺。
「あの……最妃さん?」
「あ⁉︎ も、申し訳ありません⁉︎ 見ず知らずの女性が殿方のお手を握ったままで⁉︎ ご、ご気分を害されて当然ですわね⁉︎ 私ったら⁉︎ オ、オホホホ~」
「……いえ。寧ろご褒美ですよ? 俺何ぞで良いんですか……」
この一言が決定打となり。
「も、もっと今のお互いのことを知るべき? 否、コレは運命……そう運命なのよ……長い刻を待ち続け……再び同じ時代で巡り合い、前世……当時の姿のまま……偶然にも出逢うことが叶ったんですもの……このチャンスを逃しては……次はないかもしれないんだし……記憶は……幸い心は私に向いている――不束者モノですが、よ、宜しくお願い致します!」
とかなんとか。
目紛しく表情が入れ替わる百面相を披露する最妃さん。
お気付きではないでしょうが、なんか凄い壮大な中二病臭い物語が、ひたすらダダ漏れておられますよ?
もしかして貴女は、その美貌でこっち側の濃ゆいヒト?
「えーと……採用の件なんですけど……」
「――え? え~? ええっ⁉︎ ――って、わわわ、私ったらナニをっ⁉︎ オ、オホホホ~」
その反応は…… 今、会ったばかりだよね、俺達?
貴女も一目惚れとか?
否、待て待て……それは早合点の可能性が大だ。
動揺する意味は……なして?
――って、まぁ良いや。
考えても無駄なことはいくら考えても無駄だよ。
「――では、お世話になります」
「承知。こちらこそ」
そのあと、制服姿の金髪縦ロールな絶世の美女と、草臥れたリーマン姿に俺が手を繋いで談笑し、商店街を抜け帰路に着いた。
すれ違う通行人らからは、奇異の目を向けられたのは言うまでもなく。
そしてその翌日。
勤めていた職場を速攻で退職した――。
◇◇◇
俺は最妃さんの自転車店に鞍替えをして、毎日頑張っていた。
あの日に貰った自転車は、その数日後に俺居城……と言っても、この時はボロい安アパートだったけど――に届くも、知識が全くなく、暫くは俺部屋に飾って見つめるだけの手付かず状態が続いた。
最妃さんに気に入ってもらう為にも、この自転車を弄る為にも、必死になって猛勉強した俺。
邪な動機から始まったわけだけれども、途中から自転車のことが本気で、凄く愉しくなっきて、例によってやらかしまくってしまう。
気付けばあっという間だった。
この店一番の技術スタッフになってしまっていたのだ……。
最妃さんの父にも見染められ、トントン拍子に話が進み……ここの副店長、実質は店長だけども、昇格させてもらえた。
この頃には最妃さんと、結婚を前提にお付き合いを始めていた。
後日談だが、やはりお互いが一目惚れだったり。
当然、結婚して直ぐに未来を授かった。
いつか俺店を開業するつもりになった俺は、この間に民間の整備士免許や自転車技師免許云々、必要な資格何ぞも全て取得しておいた。
そうして、あらゆる自転車の知識を吸収した俺は、数年前に独立して開業し、現在に至る――。
そして俺が自転車屋何ぞを始めることになった、最妃との仲を取り持ってくれた記念すべき自転車。
今まで大切に保管してあったのだが、仕事の片手間に手掛けていくことにしたのだ。
足りない部品を探し集めて買ったりとか、色々と必死になってな?
その自転車が――アイシャ。
つまり、ヒト型に再構成されたアイなのである。
ありとあらゆる俺の大切な想い出が、山ほど沢山詰まった奇跡の車体……車体違うな。
俺の娘が、アイなのだよ。
もしもアイと出逢っていなければ、最妃とも出逢ってはいない。
更に言うと、未来も生まれていない。
人生、ナニがどう転ぶか解らんモノだな、うん。
◇◇◇
「彼方……起きて……ん~~」
好みの香りと、マシュマロを凌ぐ素敵過ぎる感触が頬に当たる。
更に耳元に甘い囁きが聴こえると、額に柔らかくも暖かい感触がずっしりと伝わった。
どうやら俺的超お至宝を枕に、いつの間にか眠っていたようだ。
俺も大概、ヒトのこと言えんのな。
油断し過ぎだよ、うん。
「貴方達……ラブラブ過ぎよ? アタシ、溶けちゃうよ」
「ボチボチ着くのよ?」
「パパとママだよ? 世界が滅ぶ一大事でも、お互いが最優先って言うほどだからね」
「ボクもパパとママを取るよ。パパはボクとママならどっちが大事――」
「最妃!」
「もぅ! 彼方ったら! ん~~」
「少しの躊躇もなく、一切の迷いすらなく、顔色ひとつ変えずに即答って……。ボク、聴かなければ良かった……」
「――お姉ちゃん、パパに聴くだけ無駄だから。パパの世界はね、いついかなる時でもママを中心に回ってるもん」
「即答したけどな、未来もアイ大事だよ、俺。勿論、アリサも。家族愛がナニよりも最優先だ。当然、クモヨにファーストも家族になったんだから大事にしていく……縁があって出逢ったんだから決定事項だ!」
「カナタサン……イエ。パパ……アリガトウ」
「貴方……もしかプレイボーイ?」
「あらあら。彼方は未来永劫、私のモノ。絶対き誰にも、欠片すら差し上げませんわよ?」
「ご馳走様……欠片も要らないわよ。でもさ、家族って良いよね……アタシなんかでも家族で良いの? なれるの?」
「さっきも言ったがバッチ来いだ! 全部終わったら名前も決めてやんよ。――ハジメとか」
「貴方……泣かすわよ?」
「ハジメって……ないわ~。ボクなら断固拒否する。一応見た限りは女の子だよ? 男の子の名前って、ナニ?」
「貴女……一応って酷くない?」
「……お姉ちゃんに激しく同意」
「私も……ちょっとそれは……」
「ぷっ――良いのよ? お似合いなのよ? ありふれたName、ハジメ程度でお似合いよ?」
「アリサ……アンタも泣かすわよ?」
「ステキナ オナマエ……」
「……貴女は……良いか。帰ったら、アタシが言葉のお勉強に付き合ってあげよう! 後は……下半身をどうにかしないとね……うーん」
「チュ、チュイーン;」
「ハッ;」「フン;」
「全国のハジメさんを敵にする気かよ。ちゃんと謝っとけ――お? ボチボチ出入口が見えてきた。皆、気を引き締めて事に当たるように!」
俺如きに何ぞもできやしないかもしれない。
だがしかし。
家族だけは護る――なんとしても、な?
俺達の頭上に見えて来た出入口。
見上げる限りに異常は感じない。
結界だったか? 有効に働いていることを切に願いたいモノだ。
そして……皆で無事に帰るんだ。
って、ナシナシ!
死亡フラグ立ってまうわ!
「――さぁ、行こう!」
地下三階層に無事に辿り着き、掛け声と共に行動を起こす俺達。
無事に帰り着けるのだろうか……。
――――――――――
閑話後編、おわり。本編へと、つづく。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
アルケミア・オンライン
メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。
『錬金術を携えて強敵に挑め!』
ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。
宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────?
これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘
橋本 直
SF
進歩から取り残された『アナログ』異星人のお馬鹿ライフは続く
遼州人に『法術』と言う能力があることが明らかになった。
だが、そのような大事とは無関係に『特殊な部隊』の面々は、クラゲの出る夏の海に遊びに出かける。
そこに待っているのは……
新登場キャラ
嵯峨茜(さがあかね)26歳 『駄目人間』の父の生活を管理し、とりあえず社会復帰されている苦労人の金髪美女 愛銃:S&W PC M627リボルバー
コアネタギャグ連発のサイキック『回収・補給』ロボットギャグアクションストーリー。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~
虎柄トラ
SF
音ゲーが大好きな高校生の紫乃月拓斗はある日親友の山河聖陽からクローズドベータテストに当選したアーティファクト・オンラインを一緒にプレイしないかと誘われる。
始めはあまり乗り気じゃなかった拓斗だったがこのゲームに特典として音ゲーが付いてくると言われた拓斗はその音ゲーに釣られゲームを開始する。
思いのほかアーティファクト・オンラインに熱中した拓斗はその熱を持ったまま元々の目的であった音ゲーをプレイし始める。
それから三か月後が経過した頃、音ゲーを全クリした拓斗はアーティファクト・オンラインの正式サービスが開始した事を知る。
久々にアーティファクト・オンラインの世界に入った拓斗は自分自身が今まで何度も試しても出来なかった事がいとも簡単に出来る事に気づく、それは相手の攻撃をパリィする事。
拓斗は音ゲーを全クリした事で知らないうちにノーツを斬るようにパリィが出来るようになっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる