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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。
佰弐拾弐話 虚像、其の陸。
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「別ルートがないのなら止むなし……か。行くしかない」
ヒト型のファーストの手を取り、引き起こすと、やっぱりヒトのそれとは違う、妙な感触だった。
斗家の面々とアリサにクモヨも伴って、足早にここをあとにする。
「待つのよ?」
そして昇降機の出入口の前に辿り着くと、ソウルジェムを掲げたアリサ。
黄色い光を放つと収束し、昇降機を照らしだす。
すると大人二人分下がっていた昇降機が静かに上昇し、出入口にピタリと重なった。
「乗り込むのよ?」
アリサの先導で皆が昇降機に入る。
無事に全員が入ったところで、アリサはもう一度、ソウルジェムを頭上に掲げた。
昇降機側の内扉が閉じて直ぐ、一瞬の浮遊感に見舞われる。
そして、動いているのか解らないほど、音もなく静かに動きだした。
――って、外が見えんので全く解らん。
本当に動いてるのかコレ?
と、思うほどに静かだった。
「問題は――地上の様子だな。さっきの揺れ何ぞは、最早、大惨事の予感しかせんぞ」
「義兄さん、奇遇なのよ? アリサも嫌な予感なのよ?」
「貴方達が居るし大丈夫じゃない? ――特に奥様と長女さんは……まぁいいわ」
何ぞ言い掛けて口籠るファースト。
「ボクもファーストって呼べば良い? ファーストが言うようにパパ……ううん、皆をナニからも護ってみせる! 絶対に!」
「アイもだよ。……ボチボチ索敵もできるかな?」
「二人共、絶対に無理してはなりませんわよ? 最悪は――私が身を挺してなんとか致します」
「「はーい」」
「おーい……緊張感がまるでないの、ナニ? 気を張ってるのって、もしか俺だけなのか?」
「彼方、大丈夫でしてよ。私がついています。ナニかあれば全力で――」
「それが一番の心配なんだよ! あのな最妃、頼むから自重してくれ。暴走もすんなよ? ――俺、ヤだぞ? 最妃の居ない世界なんて」
「……彼方。帰ったら思いっきり構いっこしましょうね」
「おうふ⁉︎ ナニを当然……勿論、激しく頼むけど」
「――パパ、構いっこって、ナニ? えっち臭いヤツ?」
「……アホか」「オホホホ~」
「貴方達……本当に仲が良いのね? 羨ましい。アタシなんてさ、ずっと独りで孤独だったし――」
「それならアイ達と家族になちゃおうよ! ね、パパ!」
「俺のモットーは可愛いは正義。それがナニモノでも。ファーストはファースト、それで良い。つまり、バッチこいだ!」
「貴方……ありがと」
そんな場違いな会話を交えつつ、地上へと向かっていく俺達。
だがしかし――。
突如、音もなく動いていた昇降機が、ガクンと揺れた。
「何ぞ⁉︎」
「悪いお知らせなのよ? 止まったみたいなのよ?」
ソウルジェムを見ながら、不穏当なことを言言い出すアリサ。
どうやら昇降機の動作状態もそれで解るらしい。
だから嫌だったんだよ、俺。
エレベーター系は、こーなってまうと身動きが、一切、取れなくなってしまうんでな。
「仕方ない……クモヨ、ちょっと俺を持ち上げてくれん?」
「ハイ……」
「義兄さん、ナニをするのよ?」
天井にある点検ハッチを警戒しつつ静かに開けて、そっと頭を出し覗く俺。
「あゝそう言うことなのな」
止まった理由に、直ぐ様、納得した。
「すまん。実は降りて来る時にだな、クモヨに安全ネットを構築してもらったんだが……それに引っ掛かって止まったらしい」
「あらあら」
まさか帰りに使う何ぞ夢にも思っていなかった俺。
そのままにして放置して降りてきたのが災いした。
リアル恐るべし。
「クモヨ……申し訳ないんだが、また除去を頼めるかな?」
「でも、どーやって、パパ? クモヨちゃんのその身体では、ハッチからは出れないよ?」
「それついては考えがある――未来、伐採ヒートホークで溶かし斬ってくれ」
「――なるほどね……りょ!」
俺は点検ハッチを潜り、昇降機の天井に立つと、ワイヤーにカラビナ何ぞで身体を固定しておく。
天井をくり抜くんだから、当然、足場がなくなってしまうのでな?
俺の指示通りにクモヨに身体を持ち上げてもらった未来は、天井全体をくり抜くように溶かし斬っていく。
数分も掛からず作業が完了すると、クモヨが残りの脚で支えていた天井を傍へと立てかけてくれた。
そして上に上がって安全ネットの撤去作業を始める。
気を利かしたアイは、仮称、アイライトを点灯させて辺りを照らし、作業の手伝いを行った。
「貴方達……ホント、規格外ばっかり集まった家族なのね」
ファーストが呆れ気味に呟くが今はスルーだ。
ほどなく撤去が済むと、俺を抱き上げて中に下ろすクモヨ。
そして再び音もなく動き出した昇降機。
天井が丸ごとくり抜かれてるので、上がっていく様子が見て取れた。
意外に速く上昇して行く。
何度かそれを繰り返し、地下三階層へと向かう俺達だった。
果たして……今も時折起こる地鳴りと言うか、五キロメートルもある地下まで響く揺れの原因って一体何ぞ?
放置してきたノウ? ……否、無理だろう。
アイツらにはできそうにもないと思う。
だが、磯巾着擬き級でも居れば、可能かもしれんのだがな……現状は不明。
それに地上の方も気になる。
大好らは来てるのか? どーなっている?
ヤバいことになってなければ良いんだがな……。
一抹の不安を胸に抱き、少しずつ運命の時を刻んで上がっていく俺達であった――。
―――――――――― つづく。
ヒト型のファーストの手を取り、引き起こすと、やっぱりヒトのそれとは違う、妙な感触だった。
斗家の面々とアリサにクモヨも伴って、足早にここをあとにする。
「待つのよ?」
そして昇降機の出入口の前に辿り着くと、ソウルジェムを掲げたアリサ。
黄色い光を放つと収束し、昇降機を照らしだす。
すると大人二人分下がっていた昇降機が静かに上昇し、出入口にピタリと重なった。
「乗り込むのよ?」
アリサの先導で皆が昇降機に入る。
無事に全員が入ったところで、アリサはもう一度、ソウルジェムを頭上に掲げた。
昇降機側の内扉が閉じて直ぐ、一瞬の浮遊感に見舞われる。
そして、動いているのか解らないほど、音もなく静かに動きだした。
――って、外が見えんので全く解らん。
本当に動いてるのかコレ?
と、思うほどに静かだった。
「問題は――地上の様子だな。さっきの揺れ何ぞは、最早、大惨事の予感しかせんぞ」
「義兄さん、奇遇なのよ? アリサも嫌な予感なのよ?」
「貴方達が居るし大丈夫じゃない? ――特に奥様と長女さんは……まぁいいわ」
何ぞ言い掛けて口籠るファースト。
「ボクもファーストって呼べば良い? ファーストが言うようにパパ……ううん、皆をナニからも護ってみせる! 絶対に!」
「アイもだよ。……ボチボチ索敵もできるかな?」
「二人共、絶対に無理してはなりませんわよ? 最悪は――私が身を挺してなんとか致します」
「「はーい」」
「おーい……緊張感がまるでないの、ナニ? 気を張ってるのって、もしか俺だけなのか?」
「彼方、大丈夫でしてよ。私がついています。ナニかあれば全力で――」
「それが一番の心配なんだよ! あのな最妃、頼むから自重してくれ。暴走もすんなよ? ――俺、ヤだぞ? 最妃の居ない世界なんて」
「……彼方。帰ったら思いっきり構いっこしましょうね」
「おうふ⁉︎ ナニを当然……勿論、激しく頼むけど」
「――パパ、構いっこって、ナニ? えっち臭いヤツ?」
「……アホか」「オホホホ~」
「貴方達……本当に仲が良いのね? 羨ましい。アタシなんてさ、ずっと独りで孤独だったし――」
「それならアイ達と家族になちゃおうよ! ね、パパ!」
「俺のモットーは可愛いは正義。それがナニモノでも。ファーストはファースト、それで良い。つまり、バッチこいだ!」
「貴方……ありがと」
そんな場違いな会話を交えつつ、地上へと向かっていく俺達。
だがしかし――。
突如、音もなく動いていた昇降機が、ガクンと揺れた。
「何ぞ⁉︎」
「悪いお知らせなのよ? 止まったみたいなのよ?」
ソウルジェムを見ながら、不穏当なことを言言い出すアリサ。
どうやら昇降機の動作状態もそれで解るらしい。
だから嫌だったんだよ、俺。
エレベーター系は、こーなってまうと身動きが、一切、取れなくなってしまうんでな。
「仕方ない……クモヨ、ちょっと俺を持ち上げてくれん?」
「ハイ……」
「義兄さん、ナニをするのよ?」
天井にある点検ハッチを警戒しつつ静かに開けて、そっと頭を出し覗く俺。
「あゝそう言うことなのな」
止まった理由に、直ぐ様、納得した。
「すまん。実は降りて来る時にだな、クモヨに安全ネットを構築してもらったんだが……それに引っ掛かって止まったらしい」
「あらあら」
まさか帰りに使う何ぞ夢にも思っていなかった俺。
そのままにして放置して降りてきたのが災いした。
リアル恐るべし。
「クモヨ……申し訳ないんだが、また除去を頼めるかな?」
「でも、どーやって、パパ? クモヨちゃんのその身体では、ハッチからは出れないよ?」
「それついては考えがある――未来、伐採ヒートホークで溶かし斬ってくれ」
「――なるほどね……りょ!」
俺は点検ハッチを潜り、昇降機の天井に立つと、ワイヤーにカラビナ何ぞで身体を固定しておく。
天井をくり抜くんだから、当然、足場がなくなってしまうのでな?
俺の指示通りにクモヨに身体を持ち上げてもらった未来は、天井全体をくり抜くように溶かし斬っていく。
数分も掛からず作業が完了すると、クモヨが残りの脚で支えていた天井を傍へと立てかけてくれた。
そして上に上がって安全ネットの撤去作業を始める。
気を利かしたアイは、仮称、アイライトを点灯させて辺りを照らし、作業の手伝いを行った。
「貴方達……ホント、規格外ばっかり集まった家族なのね」
ファーストが呆れ気味に呟くが今はスルーだ。
ほどなく撤去が済むと、俺を抱き上げて中に下ろすクモヨ。
そして再び音もなく動き出した昇降機。
天井が丸ごとくり抜かれてるので、上がっていく様子が見て取れた。
意外に速く上昇して行く。
何度かそれを繰り返し、地下三階層へと向かう俺達だった。
果たして……今も時折起こる地鳴りと言うか、五キロメートルもある地下まで響く揺れの原因って一体何ぞ?
放置してきたノウ? ……否、無理だろう。
アイツらにはできそうにもないと思う。
だが、磯巾着擬き級でも居れば、可能かもしれんのだがな……現状は不明。
それに地上の方も気になる。
大好らは来てるのか? どーなっている?
ヤバいことになってなければ良いんだがな……。
一抹の不安を胸に抱き、少しずつ運命の時を刻んで上がっていく俺達であった――。
―――――――――― つづく。
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