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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

佰伍話 追跡。

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 今までに遭遇したこともない奇行を繰り出し、俺達を窮地に追いやった蜥蜴のようなモノ。
 未来とアイのお陰で、なんとか退けることはできた――。

 だがしかし、ノウ特有の内臓剥き出しの様相ではなく、姿形が現存する爬虫類に似通っていたのが気になる……。


 アレは俺の良く知っているジャクソン・カメレオンだ。


 もしも元になる素体がそれだったとして、警備員のノウのように備わっている特殊技能が使えるとしたならば、一連の透明化や攻撃手段何ぞにも少しは納得できるってもんだな。


 ただ……良く似てはいる……いるんだが……カメレオンと呼べる生物とは断じて違う何ぞだった。

 比べようもないほどに細部が禍々しく、ナニより大きさが尋常ではなかったのだからな。


「やはり、何ぞかの実験体の類い……で合ってるのか?」

 俺達を散々苦しめた挙句、最後は無残に燃えて朽ちていく様を見やり、ノウ何ぞと全く違ったことに対して疑問を口にする俺だった。

「お約束的な実験でもやってんじゃないのか? 例えばだがな? 新種の生物の創造、或いは品種改良とか。アリサの立場で俺が考える近しい憶測は――化石何ぞのDNAを元に現代に蘇らせる実験とかだが……何処ぞの洋画じゃあるまいし……まさか、な」

 俺の隣でこちらに戻ってくる双子組を見やっていた最妃に、一番可能性のある憶測を伝えてみた。

「私は存じ上げませんが……アリサなら……ありそうですわね」

 アリサと言う人物を良く知っている最妃は、可能性を否定できないらしく、困ったような苦い顔をして答えてくれた。


 アリサは考古学や生態研究、超常の分野の専門家だからな。

 行き着く答えはあくまでも憶測だが……化石何ぞから蜥蜴のようなモノを作り出した可能性は少なからずある。
 昔、そんな洋画を見た覚えもあるしな、うん。

 太古の生物を現代に蘇らせる実験は、現実社会でも実際に行われてはいるし……成果は上がっていないようだがな。


 そんな考えに辿り着いた理由。


 未来に角が折られアイに木っ端微塵にされた大口が、ノウの何ぞで有れば損壊させられた部位は再生される筈。


 なのに、全く再生されなかったからだ。

 それにノウ共通の石のようなモノ――本体らしきモノも内包されていない。


 このことからも操っている側――つまりノウではないと言い切って差し支えないだろう。

 区画の酷い有り様から察するも、ヒトだろうが意思無き肉塊だろうが、無差別で捕食ないし敵対行動を取っていたように見えることからも、ノウではない何ぞやもしれんってことだ。

 勿論、ノウの暴走によって引き起こされた……って線も捨て切れないのだがな?

 ま、憶測は憶測。
 単なる可能性のひとつにしか過ぎない。
 アリサ救出をしてから、洗いざらい問いただせば済む話だしな。
 考えても無駄なことはいくら考えても無駄だな。

 だがしかし。
 最悪なのは……この蜥蜴のようなモノが結局はノウだった場合だ。


 体内に本体を潜ませていると言う仮定で俺が立てた、弱点を潰す策も根本から崩れ去ることになる……。


 ナニもかもが一切不明。
 コイツの正体は一体ナニなんだ――。

 
 思考の迷路にハマりそうになった俺。
 最妃の素敵笑顔で気分転換しようと見やって妙なことに気付いてしまった。

 リペアが最妃の左肩に二足立ちで載っていたかと思えば、背中が二つに割れていて、先端が明滅する触手のようなモノをウネウネと伸ばし、最妃の右肩の怪我を弄っていたのだ。


 あれ? リペアって……アイしか治せないんと違ったっけ? なして?


「えーと、リペア。なして最妃の肩を弄ってんの?」

「彼方。私が無理を言って、診てもらえるようお願い致しましたの」

 俺が尋ねると、肩に載るリペアの頭を優しく撫でながら、少し困った顔をして返事をする最妃。

「チュイン」

 撫でられたのが嬉しかったのか、目を細めて鼻を鳴らすリペア。


 さっきからアイの肩に居ないと思ったら……そーゆーことか……。
 最妃も何ぞかの人外だしな。
 これ以上、俺が理由を追求すると、制約か誓約何ぞに引っかかるやもしれん。
 そーゆーことで納得しておくのが最適解だな。


 俺達が話している間に未来とアイが戻って来る。
 

「最初は苦戦したけど、パパの援護で助かったよ」

 頭の後ろで手を組んで、壮絶な戦いをしたとは思えないくらいの自然体で歩いて戻る未来。

「お姉ちゃん、アイも頑張ったよう!」

 頬っぺたをぷくっと膨らませて、やや後ろを歩いて戻って来たアイは、自分も褒めてと両手を腰後ろに組み頭を差し出してきた。

「あゝ二人とも本当に……本当に、無事でナニよりだよ」

 愛娘二人の頭を思いっきりグシャグシャと撫でまくる俺だった。

「あのね、お姉ちゃん。さっき右目の色が――」

 アイは俺に頭を撫でられながら、隣の未来にナニかを尋ねようとする。


 その時――。


「どわぁー!」「あぅ!」

 頭を撫で捲ってる最中に、突如、俺とアイはナニかに吹き飛ばされた――。



 ―――――――――― つづく。
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