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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

捌拾肆話 迎撃、其の肆。

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 俺が手に持っているモノは欠片。
 コレが意思無き肉塊をも操っていたと考えると、まず間違いなく本体の類いになるだろうな。

「磯巾着のは固くてボクには砕けなかったけど、こっちのは意外に簡単に砕けたって、ナニ?」

 未来に言われて目を凝らして良く見てみる俺。

「俺的電波推測だが種類が違うんだろうな。ホラ、キングスライムと雑魚スライム、亜種と希少種みたいな違いだろうよ」

 やはり色々と細部が違うみたいだった。
 小さな欠片なので良く解らず断言は出来んが、似て非なるモノの可能性は大きい。

 だがしかし、本体だろうが別の何ぞだろうが、操っていると言う点においては結局は同じだ。

「相対した全てのノウに共通するモノか――ノウ……そのモノなのかもしれんな」

「ナニ?」

 不意に独り言ちった俺を怪訝そうに見る未来。

 もしもこれがノウそのモノを示すモノであれば、確実に弱点と呼べるモノでも合っている筈だ。

 つまり、ここを狙って潰すことができれば、如何に強大なノウでも息の根を止めることが可能だ。

「一応、持って帰るか。何ぞ解ると良いが。他にもこんなボスっぽいノウが居るやもしれん。できるだけ急ぎたいところだが、ここは慎重に進むぞ」

 俺は予備の俺的ガチャポンに欠片をしまうと、皆に注意喚起と方針を伝えておく。

 既にノウの反応が微弱とは言え、施設内全域に蔓延っていようとはな。
 正直に言って俺は甘かった。
 先手を取って動いたつもりだったが完全に後手に回っている。

 アリサ救出も急ぎたいが、焦れば見誤る恐れもある。
 慎重にことに当たらなければ、俺達が大惨事だからな。

 出入口のドアから見えるロビー内は、俺達とノウが破壊し尽した前半分は残骸のみだ。
 奥は備品と調度品などが散乱していた。
 更に奥にはエレベーターがあり、右横に階段がある。
 反対の左横には化粧室と喫煙所が見えた。
 あとは厨房と自販機各種が設置されている。

 多分、アリサが職員の為に併設したんだろうな。

「パパ、奥に行ってみよう」「だな」

 未来に促されエレベーターの手前まで皆で進み、その昇降ボタンに記載されている階数を確認する。


 地上三階から地下三階に行けるようになっていた。


 これには皆も慌ててはいないが、困惑気味の表情だった。

「彼方、上に登るか下に降りるかですわね。上か下か……どちらになさるおつもりですの?」

「手分けして……それは駄目だっけね、パーパ。見事に上下が同じ階って。どーしよっか?」

 最妃は辺りを見回し、手掛かりのようなモノを一生懸命手当たり次第に探してくれていた。

しらみ潰しは状況的に無理だ。どっちだ……上か下か……せめて施設内マップでもあれば!」

 未来も皆に気を遣ってか、言葉がいつもより優しい。

「アリサさんだもん、きっと大丈夫だから。落ち着いて、パパ」

 アイは悪態をつく俺を見て落ち着かせようと、素に戻り俺的軍装の裾を握ると慰めてくれた。

 リペアはアイの肩の上で先程から静かにしている。


 皆は俺に視線を集中させて判断を待っている――。


「ナニかないか……何ぞか……」

 俺は俺的電波脳をフル回転させ打開策を模索する。


 そしてあるひとつの共通点を思い出した。


 こう言った秘密基地的な謎の何ぞは、その殆どが地下に退避シェルターを設置したり、重要な施設やモノを隠す事が多い。

 現実世界の国家重鎮の居る重要拠点もまた然り。
 地上に設置する馬鹿なヤツはまず居ない。
 爆撃されようものなら即終わってしまうからだ。

 ここで選択ひとつ間違えたら結果は大惨事だが、迷っていても無駄に時間を浪費していくだけだ。
 勘だろうがナニだろうが行動するのが最適解だよ。

「地下へ行く。それが最も可能性が高いと見た! 研究施設が上階にあって何ぞ行っていたとして、更に重要な研究は地下に隠して行うがお約束だ。後は退避シェルター何ぞも同じく地下に多い。アリサ級の重鎮で更に電波脳なら尚のことだ。超常の研究または避難していると考えるならば、恐らくそれであっている筈だ。確実ではないが」

 選択を決めた俺は皆に選んだ理由を真剣に伝えた。
 判断を待っていた皆は大きく肯くいてくれた。

「パパの言う通り、ボクが読んでたラノベとかも、大体そのパターンだったよ。割に納得した」

「未来と私で見た彼方の聖典? そちらのお話でも、殆どが地下に重要な施設がありましたわね」

「アイもパパの意見に賛成かもだよ? 可能性に賭けて行動することも時には必要だと思うから」

「――決まりだな。後々の脱出も考えて、降りれるだけ降りて一番下の階から順にアリサを探して戻るとする」

「承知」「りょ!」「うん!」「チュイン!」

 皆からの賛成意見を聴き、俺も気合を入れ直す。
 真剣な表情で頷きあって直ぐに行動に移した。

「エレベーターはなしだ。階段を降りるぞ」

 エレベーターで降りて万一袋の鼠にでもなったら、洒落にならないのであえて階段を使うことにする。

 双子組が前衛、俺夫婦組が後衛のいつもの隊列で、右横の階段から下の階に降りて行く俺達。


 俺の判断が間違っていないことを、切に願いつつ――。



 ―――――――――― つづく。
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